世界キリスト教情報

世界キリスト教情報

世界キリスト教情報 第1073信(2011.08.15)

  • 英で暴動の街に宗教団体が共に「癒し」の手
  • 迫害にさらされるスーダンの教会
  • 中国で最初のカトリック奉仕団体が正式認可
  • ネパールで宗教差別反対キャンペーン
  • ネパールで新求道共同体の活動差し止め
  • ノルウェー教会が全世界からの支援に感謝
  • 告解の秘密を決して公開しない、とバチカン高官
  • 《短信》
  • 《メディア展望》

◎英で暴動の街に宗教団体が共に「癒し」の手

 【ロンドン=ENI・CJC】ロンドンから始まって英国各地に広がった若者による店舗や事務所襲撃に対し、キリスト教会始め宗教団体が対応に乗り出した。各地の教会は、愕然とする住民に援助を申し出ている。
 8月6日に暴動が始まった場所近くのトテナムにある『セントメリー・ザ・バージン教会』は、停電している地域に食事を配り、湯も提供、携帯電話の充電サービスも行っている。『セント・マークス・メソジスト教会』のヴァレンティン・デジ牧師は、警察に殺害されたことが判明したマーク・ダッガン氏(29)の家族のためにケアを行っている。この殺害への抗議が8月6日のデモになり、それが暴動にまで発展した。スタンフォード・ヒルの『セント・イグナチウス・カトリック教会』は、食糧を提供、カウンセリングも行っている。
 8日夕、キリスト者、イスラム教徒、ユダヤ教徒らがトテナムで徹夜祈祷会を行ったが、同様の催しはさらに計画されている。
 在英ユダヤ人団体の宗教間関係担当フィル・ローゼンバーグ氏は、ロンドンの様々な宗教団体が共に行動するのを見て、「わたしたち全てにこのようにやさしい都市」が再建されることは確かだ、と語った。
 イスラム教では、フェンスベリ・パーク・モスクの報道担当が、皆が暴動を懸念し、様々な方法で平和を打ち立てるために働こうとしている、と語った。
 カトリック教会ウエストミンスター教区のヴィンセント・ニコルズ大司教は、声明で暴力を非難、祈りを、特に「街頭での危険に直面している人、生活が破壊された人、恐怖に捉われている人、子どもたちの行動が心配な親たち、今この時に暴力や盗みに染まりかねない人たちのために」求めた。
 折から南アのダーバンでの会議に出席していたメソジスト会議のレオ・オズボーン会長は、皆が暴動のことを聞いて深く悲しんでいる、と語った。「わたしたちは、苦悩と損失に耐えている全ての人に対する世界中のメソジスト・ファミリーの祈りを覚えている。もちろんわたし自身も合わせて祈っている」と言う。


◎迫害にさらされるスーダンの教会

 【ナイロビ=ENI・CJC】キリスト者が主体の南スーダンが7月9日独立して1カ月、イスラム教が優勢な北部のキリスト教会は、閉鎖を要求する政府や市民の圧力にさらされている。
 教会指導者の中には、運営している学校や教会を閉鎖し、南への移転を考えている人もいるが、「北部のキリスト者」を自認しているだけに決断は容易ではない。
 「誰もいなくなった教会もあるが、閉鎖命令が正式に出されたわけではない。当局が個人的に閉鎖するよう言ってくるだけだ」と、スーダン教会協議会のラマダン・チャン・リオル総幹事(バプテスト)がナイロビのENIニュース記者に電話で伝えてきた。同協議会にはカトリック、プロテスタント、正教会が加盟している。
 南スーダン独立は、キリスト者、特に北部のキリスト者に、これまで認められていなかった教会運営の完全な自由が認められるものとの期待を持たせた。しかし現実は様々な団体からの圧力が増え続けている、という。
 「司祭や牧師の名前を集め、それを元に、日曜日にミサや礼拝を行わないよう警告、聞かなければ殺すと脅している」とリオル総幹事。
 首都ハルツームの当局者は、報道陣と会見することを禁じられており、在ナイロビ大使館も虐待については何も知らない、と語っていると言う。
 カトリック教会ハルツーム大司教区のダニエル・アドウォク補佐司教は、信徒の多くが南に旅行した結果、献金減少に見舞われており、教会学校閉鎖も検討中、と語った。「父兄の多くは難民になってしまい、僅かな収入から学費を出すことなどできない。十分な資金なしに学校を維持して行くのは困難だ」と言う。
 オマル・ハサン・アフマド・アル・バシール大統領は、『シャリア』(イスラーム法)に基づき、南部の分離後は、イスラム教を国教にする、と宣言している。8月7日、与党『国民会議』政治局のクトゥビ・アルマーディ氏は、関連法令がすぐに発布される、と『スーダン・トリビューン』紙に語った。
 内戦で壊滅的打撃を受けた南コルドファン州では、英国国教会カドゥグリ教区のアンドゥドゥ・アダム・エルナイル主教によると、大聖堂や事務所が略奪された。
 「武装した人たちが、わたしの名を呼びつつ家から家へと捜し回っていた」と同主教は8月4日、米下院アフリカ問題委員会で証言した。教会員が、スーダン軍と武装集団がカドゥグリで100人以上を埋葬したことを目撃したとも言う。
 「今日、皆さんに証言するためにここにいなかったなら、わたしもカドゥグリで埋葬されていたかも知れない」とエルナイル氏。ヌバ山岳地帯ではスーダン空軍による市民への爆撃に関する情報が繰り返し届く、とも言う。同氏はさらに、国が民族浄化を進め、それが実際に展開されているのではないか、との人々の不安についても説明した。


◎中国で最初のカトリック奉仕団体が正式認可

 【CJC=東京】カトリック通信『UCAN』によると、中国政府公認の天主教会(カトリック)が運営する社会奉仕団体『進徳公益』(本部・河北省石家荘)が設立14周年を機会に「基金」としての地位を申請していたが、この5月に認められた。
 このほど『河北進徳公益基金会』として新発足、募金口座を開設、正式領収印も定めた。マリア・胡麗敏募金部長は、これまでとの最大の違いは、「免税組織として法的に認められたこと、有効な正式領収書を発行できること」と言う。
 同基金会は1997年に河北省で設立された『北方進德』が前身。翌年に政府から認可された。2006年に河北省政府に非営利組織として登録されたので、『河北進德公益事業服務中心』(進德公益)に改称している。
 創設した洗礼者ヨハネ・張士江神父は「進徳公益は2004年から基金としての認可を受けるよう準備を進め、専門性、責任、透明性を強化するよう努めてきた」と言う。
 同会秘書長(総主事)のヨハネ・任大海神父は「スタッフには厳密な資格を今後も求め、信頼出来る愛の組織となるように努力する」と語っている。このところ中国では同種基金の中で不正監査を受けるところが出ているのを意識したものと見られる。
 現在『進徳公益』は、緊急人道援助、社会開発、教育・訓練、奨学金、HIV・AIDS防止、高齢者介護など多彩な分野で活動を展開している。
 貧者救援を強化するため中国内外の提携組織との協力も強化したい、と任神父は期待している。
 胡募金部長は、次の段階を新組織の地位をさらに向上させ、公衆からの募金を行えるようにすること、と語った。現在の募金は内外の献金者からのものだが、その多くは中国全土のカトリック信者からで、それにカトリック者以外、提携組織からのものが加わる、と言う。


◎ネパールで宗教差別反対キャンペーン

 【カトマンズ=ENI・CJC】ネパールでは、毛沢東主義色の濃い連立政権による新憲法採択を目前に、キリスト者、イスラム教徒、仏教徒など少数派が宗教差別反対のキャンペーンを始めた。
 『世俗化防止のための宗教間運動』が政府に、教会、モスク、寺院などヒンズー教以外のものにも宗教団体として登録し、免税を適用するよう求めている。
 同運動の報道担当チャリ・バハドゥル・ガハトラジ牧師は「国は4宗教組織を支援しているが、そのほとんどはヒンズー教系だ。そこには財政援助も行われている。2006年に政教分離を決定した時、わたしたちにも同様の便宜が図られると期待していた。それが未だに宗教組織としては認められるどころか、裁判に持ち込まれ閉鎖の危機に直面している」と語った。
 宗教委員会と宗教法が全教派の権利を保護し、国家組織の中も少数派宗教信者が一定の割合で構成されるよう運動側は要求している。
 ヒンズー王国だったネパールに政教分離をもたらす新憲法が8月末成立の可能性が危ぶまれている中で、運動側は、政府が最終的に成立させること、また宗教の自由を基本的権利として認めることを要求している。
 運動が出した報道声明は、市民はいかなる宗教にも従う権利、望むなら他の宗教に転向する権利、自分の宗教を宣伝する完全な自由を持つべきだ、と指摘している。
 民法・刑法草案では、転向に罰則を課していることも宗教少数派の懸念を呼んでいる。「それは暫定憲法に盛り込まれていた政教分離の精神に反しており、修正するべきだ」とイスラム教指導者ナズルル・フッサイン・ファラヒ氏が述べている。


◎ネパールで新求道共同体の活動差し止め

 【CJC=東京】カトリック教会ネパール代牧区のアンソニー・シャルマ司教は、カトマンズでの新求道共同体の活動を差し止めた。同共同体は1964年にマドリッドで設立された。ネパールでは独自に2004年から活動を始めている。
 カトマンズの聖母マリア被昇天教会の掲示板で、活動差し止めは8月1日から有効と発表された。
 共同体のメンバーは同教会の信徒でもあるが、差し止めの理由がわからないとして、その1人のテレンス・リー氏は「司教の決定には従うが、再考してくれるよう祈っている」と語っている。
 「わたしたちは20人強の会員で、週に2回、み言葉の祭儀と聖体の祭儀をしているだけだ。聖歌隊など教会のさまざまな活動に積極的に加わっており、それを続けたい。この運動は教会に色彩と熱情を加えた。わたしたちはカトリック者がミサのために教会に立ち戻るよう励ましてきた、と思っている」と言う。
 同教会の英語聖歌隊の指揮者パトリック・ウィルソン氏は、教会当局が問題について共同体側と協議しなかったことが残念だ、としている。「会員の中には、この運動によって主にいっそう近くなったとし、今は気持ちが傷ついた」人もいる、と言う。


◎ノルウェー教会が全世界からの支援に感謝

 【CJC=東京】ノルウェー教会(ルーテル派)は、7月22日に首都オスロと近郊ウトイヤ島で発生したテロ攻撃で、国際的な教会組織から祈りと支援が寄せられたことに深い感謝を表明した。
 同教会のニュース・リリースは、ニュースが伝えられるとすぐに全世界からお悔やみが教会とノルウェー市民に寄せられた、と報じた。
 「世界中のキリスト者から寄せられた力強い支援と慰めは、わたしたちに、それがキリストの体の部分であることを示した」とヘルガ・ハウグランド=ビフグリエン総裁監督が声明で述べている。さらに聖パウロのコリントの人々への言葉「一つの部分が苦しめば、すべての部分が共に苦しみ」(新共同訳)がノルウェーのキリスト者に、特別な方法で現実のものとなった、と監督は付け加えた。
 「全地球規模のキリスト者の連帯から寄せられた強い関心は、キリストの愛と思いやりが、悪魔に勝っていることを知って、わたしたちを深く動かしたばかりか、わたしたちの信仰とキリストにある望みを強めた。地球規模のキリスト者の家族の一部であることは、この難局にあってノルウェーの人々に向けて、わたしたちが言葉であれ行いであれ、キリスト者としての証しを示すよう力づけた」と監督は述べている。
 テロ攻撃の直後から、ノルウェーのルーテル教会は、他の教会と共に、すぐさま人々への奉仕を始めた。全国の教会は開放され、嘆き悲しむための場所を提供した、と同教会は明らかにした。
 「牧師、執事や教会の活動家は、嘆き悲しむ人に耳を傾け、親しい人を失った人、傷ついた人、攻撃から生き延びた人、その家族や友人、そしてこの悲しみの日々に教会を尋ねる多くの人を慰め、支えた」とニュースリリースは報じている。「これらの人の多くは、教会の空間の清らかさに安らぎを覚えた。また長年用いられてきた教会の儀式、聖句、詩篇に、この危機にあって慰めと希望を見出す人も多かった」と言う。


◎告解の秘密を決して公開しない、とバチカン高官

 【CJC=東京】カトリック教会は、告解の秘密を決して公開しない、とバチカン(ローマ教皇庁内赦院のジャンフランコ・ジロッティ司教が、伊紙『イル・フォリオ』7月27日付けで明らかにした。
 7月14日、アイルランドのエンダ・ケニー首相は、告解で性的虐待が告げられた場合、それを当局に通報しないと司祭を禁固5年に処すとの法律制定を提案した。
 「アイルランドがどのような法律を制定するにせよ、教会は告解者に当局へ連絡するよう強制しない」と同司教。
 告解の秘密を守ることは教会法に定められており、それを破ることは禁止されている。
 「犯罪者は皆、犯した罪に対して正義が示される義務を負っているが、それには告解の秘密を破ることは含まれない。告解は神の前に霊を清めることを意味している」と同司教は指摘している。


◆短信◆CJC通信速報(Twitter:cjcpress)から。

≪太平洋≫
▽ニュージーランド元総督でニュージーランド首座主教も努めたサー・ポール・リーブズ氏が8月14日死去した。78歳。

≪アフリカ≫
▽エジプト中部ミニヤ県ナズレト・ファラガラ村で8月7日夕、イスラム教徒がコプト教徒を襲撃、アッシリア国際通信によると、1人が殺害された。
▽エジプトの首都カイロのタハリール広場で8月12日夜、民衆革命を主導した若者グループなどが呼びかけ、1000人以上の市民が「宗教国家に反対」と気勢を上げた。7月末、保守的なイスラム主義者が大規模な集会を開き「エジプトをイスラム国家に」などと要求したのに反発した。


《メディア展望》

 =カトリック新聞(8月14日)=https://www.cwjpn.com
★"人類と核"問い、祈る=福島からの避難者にも聞く=広島教区平和行事
★原発選択で背負うもの=「司教のための社会問題研修会」=震災事故から学ぶ
★仙台教区サポート会議=3教会管区代表も加わる=各地で長期的支援準備
★日本カトリック幼稚園連盟教職員研修大会=子どもの真の幸せを求めて=大震災・いのち・食=福岡
★日本カトリック労働者運動(ACO)=原発事故で首相に抗議・要望

 =キリスト新聞(8月13日)=https://www.kirishin.com
★中国天主教(カトリック)愛国会=バチカンを「傲慢」と非難
★京都地裁=聖公会京都教区司祭が証言="代理人逮捕は行き過ぎ"
★バプテスト同盟=総会で「決意表明」="原発なくても暮らせる社会に"
★8月7日を「盲伝の日」に=盲伝協総会=日高議長、鳥羽副議長を再選
★日本ルーテル教団=信徒有志の勉強会が10年目=柴田千頭男氏が実践神学を指導

 =クリスチャン新聞(8月14日)=https://jpnews.org
★福島未来会議=全県の復興 夢語る=各教会の牧師ら「神の国広げたい」
★ヘドロ悪臭たちまち消えた=微生物活性液EM散布=被災地で威力発揮
★菅内閣に靖国不参拝継続を要望=平和遺族会、NCC靖国委員会
★新潟記録的豪雨=教会関係の被害
★オンヌリ教会=ハ・ヨンジョ氏急逝=日本の救霊に情熱注ぎ続け


 ◆世界キリスト教情報◆ご案内
☆活動紹介・メールマガジン(整形テキスト)お申し込みは
https://homepage3.nifty.com/cjc-skj/で。
☆ニュースレター(PDF)・同報メール(無整形テキスト)お申し込みは
cjcpress@gmail.comまで。
☆既刊号は下の各サイトで
・ニュースレター=PDF
https://www.evernote.com/pub/cjcpress/skjweekly/
・メールマガジン
https://blog.livedoor.jp/skjweekly/
・同報メール
https://cjcskj.exblog.jp/
☆記事検索は『教会と神学』(小原克博氏制作)をご利用ください
https://www.kohara.ac/church/
........................
☆CJC通信(メディア向けですが、どなたでもお読みいただけます。転載使用ご希望の方は巻頭の連絡先までお申し込みください)
https://blog.livedoor.jp/cjcpress/
☆CJC通信速報(Twitterを利用しています)
https://twitter.com/cjcpress/

月別の記事一覧