世界キリスト教情報

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世界キリスト教情報 第1071信(2011.08.01)

  • 中国、さらに7教区で司教叙階へ
  • 中国、バチカンを「傲慢」と叱る
  • 中国の対バチカン強硬姿勢の裏側
  • 中国『家の教会』への抑圧強化? 指導者に強制労働2年
  • 『カリタス・コリア』が北朝鮮に小麦粉100トン送る
  • 使徒フィリポの墓発見、とイタリアの考古学者
  • ジョン・ストット牧師死去
  • 《短信》
  • 《メディア展望》

◎中国、さらに7教区で司教叙階へ

 【CJC=東京】中国天主教(カトリック)愛国会は、適当な時期に、ローマ教皇の同意がなくても、さらに司教を叙階する準備を進めている。
 同会副秘書長のヨセフ・郭金才承徳司教が国営英字紙『チャイナ・デイリー』に語ったもので、7教区で司教叙階を行うという。
 具体的な日程は明らかにしなかったものの、準備作業はほぼ終わっている。候補者は宗教局地域委員会に承認申請書を提出する必要がある。他教区から参加する司教も日程調整を要求されている。
 バチカンと中国政府の対立は今回、司教がペテロの後継者(ローマ教皇)と結び付いた存在であるか、中国政府の役人として振舞うよう設定されたのか、という点にかかっている。
 中国政府は、新司教の任命を必要とする所は40教区あり、教皇の同意のあるなしに関わらず、任命すると公約している。


◎中国、バチカンを「傲慢」と叱る

 【CJC=東京】中国国務院宗教局は、天主教(カトリック)愛国会による新司教任命を、バチカン(ローマ教皇庁)が承認していないからとして対抗措置に出たことで「極度に不合理で傲慢」な反応、と非難した。
 中国政府は、司教に任命された聖職者は「その信仰に忠実で、権威、権能がある」として、バチカンが新司教の権威を認めなかったことで中国のカトリック者多数の感情を損ねた、と指摘している。
 中国政府声明は、バチカンが不当に叙階された司教に対する「いわゆる破門」を、北京(中国政府)とローマ(バチカン)との間の関係改善のために、取り消さなければならない、との要求を含んでいる。中国政府はこれまでも、外交関係は、バチカンが台湾政府との関係を断絶し、中国カトリック教会の内部問題に「介入」しないと誓約した時にのみ可能だ、と表明している。

※関連短信
▽中国国務院宗教局は、バチカン(ローマ教皇庁)が承認なしに就任した司教2人を破門したことは不当だ、と断定した。国営新華社通信が報じた。


◎中国の対バチカン強硬姿勢の裏側

 【CJC=東京】バチカン(ローマ教皇庁)の承認なしに、司教叙階を進めるなど、中国政府の強硬姿勢が目立つ。バチカン系『アジアニュース』のベルナルド・セルヴェッレラ編集長によると、それは強さと弱さの双方を反映したものだと言う。
 経済大国の一角を占めた中国にとって、もはや西側の支持を開拓する必要はなくなった。「2008年の北京五輪前には中国は、国際的に尊敬されるためにバチカンの承認を必要としていた。しかし今ではその必要がない」と同編集長。
 発言力が増したにも関わらず、北京政府は市民の間の不満への懸念を強めている。急速な経済成長と共に、中国は不平等、腐敗、環境破壊などと格闘してきた。そのことが、政権をして、カトリック教会を含め、組織的抵抗の潜在的可能性を排除しなければならないと決意させている。
 中国の指導者は、1980年代のポーランドの事態を中国の指導者は強烈に意識している。当時は教皇ヨハネ・パウロ2世が労働者の「連帯」運動を支持、共産党政権の倒壊とソ連圏解体につながった。こう指摘するのはポルトガルのカトリック大学国際関係専門のラクエル・ヴァズピント教授。
 昨年、ノーベル平和賞が中国の亡命民主活動家・劉暁波に授与されたのも北京にとっては衝撃で、その結果が、毛沢東の文化大革命以来という強烈な公式プロパガンダを進めることになった、と言う。
 香港の陳日君枢機卿が北京政府を厳しく批判しているが、同氏が中国問題に関する教皇アドバイザーであることからすると、「教皇に支持されていると思う」からこその発言だ、とヴァズピント教授は指摘する。

※関連短信
▽香港カトリック教会の陳日君枢機卿が、教会支配を図る中国政府の姿勢を「非常識で馬鹿げている」と非難する声明を発表した。


◎中国『家の教会』への抑圧強化? 指導者に強制労働2年

 【CJC=東京】中国のプロテスタント非公認教会の連合組織『中国家庭教会(家の教会)連合会』の施恩浩(シ・エンハオ)副会長(55)が無許可集会を組織したことで強制労働2年を言い渡された。正式裁判による判決ではなく、警察の超法規的措置。
 施牧師の教会は、江蘇省宿遷市周辺で多数の集会を行い、信徒数千人と言われる。裁判なしの警察の処置は、軽犯罪や非合法宗教団体の会員などに適用されることが多い。
 「法律の施行を妨げる」として、同牧師はこのところ当局の監視下に置かれていたが5月31日に逮捕、12日間、拘置所に入れられた。そして釈放直後に警察によっていずれかに連行されたという。
 自宅は6月1日に家宅捜索され書籍や自筆文書などが押収された。法的処理が進められ6月21日、処分が確定した。「迷信を利用して法律の施行を妨げた」ことが問題とされている。
 施牧師の教会は、集会を禁止され、警察が自動車、楽器、聖歌隊のローブなどのほか、献金14万元(約170万円)も押収された。牧師の娘3人とその配偶者全員も警察の監視下に置かれている。
 米国に本拠を置く、中国の人権擁護団体『対華援助協会』によると、今回の動きは『家の教会』に対する抑圧強化の徴候を示している。
 北京では最大の『家の教会』の守望教会が屋外集会を計画したところ阻止されたのに続くもの。同教会は礼拝用の場所を確保しようとして当局の妨害にあっているのに抗議して、4月10日の日曜日から屋外で礼拝を行っている。それに参加しようとする1000人もの教会員は拘束、自宅軟禁されたり、居宅を没収されたり、失職する例も出ている。
 同教会の問題の平和的解決と宗教の自由を求めて、5月には各地の家の教会牧師たちが立法府に向けて異例の請願を行うほど、『家の教会』側の活動も活発化している。
 『中国家庭教会連盟』に加盟する『家の教会』は、全土で数千カ所に上ると見られる。
 『家の教会』が政府への登録を拒否するため、当局は教会を「不安定な社会要素」と見なし、逮捕、建物閉鎖、暴力などさまざまな抑圧を加えている。中国ではキリスト教の実践を認められてはいるものの、それは国家が厳しく管理している教会の内部だけに限定されている。


◎『カリタス・コリア』が北朝鮮に小麦粉100トン送る

 【CJC=東京】韓国のカトリック救援団体『カリタス・コリア』が7月28日、小麦粉100トンを北朝鮮に送った。中国国営新華社通信が報じた。黄海北道江南郡の保育園や病院に配られる。
 韓国政府は、昨年の抗争事件を受けて対北朝鮮援助を差し止めている。その中で、韓国キリスト教協議会は北朝鮮の飢饉に、食糧緊急援助を呼び掛けていた。
 今回政府が援助許可したのは、援助物資の配布が実際に行われるとの保証が得られたことを考慮してのものと見られる。統一省は、高度被災者への人道的援助だけは許可するとの基本線に沿ったもの、としている。中国の新華社通信が速報したことも注目される。


◎使徒フィリポの墓発見、とイタリアの考古学者

 【CJC=東京】使徒フィリポの墓を発見した、とイタリアの考古学者が主張している。場所はトルコのアナトリア西部パムッカレ(ローマ帝国時代のヒエラポリス)で、フィリポがギリシャと小アジアで宣教した後に死んだ所とされている。
 イタリアの考古学者のチームは1957年から調査を始めたが、その後サレント大学のフランチェスコ・ダンドリア教授の指導の下に各国の学者も参加するようになった。
 バチカン(ローマ教皇庁)機関紙『ロッセルバトレ・ロマノ』は、2008年に調査団が墓所への参道を確定したことが今回の発見の重要な契機となったと指摘している。
 「フィリポが殉教したとされる場所に建てられた礼拝堂に隣接して5世紀の聖堂で身廊(細長い広間)が3カ所あるものを発見した。この聖堂は1世紀のローマ様式の墓を囲んで建設されており、最高度の配慮がなされていたことは明らかだ。これらのことを考慮して、ここへの巡礼が目的だった使徒フィリポの墓を発見したことを確信するに至った」とダンドリア団長。
 4世紀に、カエサレアのエウセビオスは、アジアで星が二つ、エフェソス(エフェソ)で埋葬されたヨハネとヒエラポリスで『永眠している』フィリポが輝いている、と書き残した。


◎ジョン・ストット牧師死去

 【CJC=東京】英国国教会(聖公会)の司祭、伝道者として大きな影響力を発揮したジョン・ストット牧師が老衰のため7月27日、ロンドンの自宅で死去した。90歳。
 1921年4月27日、ロンドン生まれ。医師であった父親は外交官としてのキャリアーを蓄積することを望んでいたという。
 ケンブリッジ大学トリニティ・カレッジで言語学と神学を学び、司祭を志してリドレー・ホール・セオロジー・カレッジに転科。45年、英国国教会の司祭となり、以後、若手聖職者が説教に現代的な取り組むよう指導するなど、福音派系の英国国教会伝道者として世界的な影響力を示した。
 500万部を売り、60言語に訳出された『基礎キリスト教』(日本語訳は有賀寿訳『信仰入門』)を始め、著書は50点以上に上る。59年にはエリザベス女王の名誉チャプレンに任命された。74年の第1回ローザンヌ世界伝道国際会議で発表された『ローザンヌ盟約』での起草委員長。同年、第1回日本伝道会議の主講師として来日もしている。オール・ソールズ教会名誉牧師。
 米週刊誌『タイム』はかつて「世界で最も影響力を持つ100人」の1人にストット氏をあげたことがある。歴史家のエイドリアン・ヘイスティングスは著書『英国のキリスト教史=1920〜1985』で「キリスト教世界で最も影響力のある1人」としている。
 米国の著名な大衆伝道者ビリー・グラハム氏は、「伝道界は、最も偉大なスポークスマンの1人を失った。わたしもまた個人的に最も親しい友人であり助言者を失った。わたしが天国に行く時には彼と再会したい」と語った。
 生涯独身だったが、臨終の際は、家族、友人に囲まれ大好きだったヘンデルの『メサイア』を聞いていた、とENIニュースは報じている。


◆短信◆CJC通信速報(Twitter:cjcpress)から。

≪アジア≫
▽香港の人権活動家フランコ・メラ神父が、深セン(土偏に川)で本土入国をみとめられなかった。

≪欧州≫
▽独カトリック教会からの脱会者が2010年は約18万1000人と、前年比46・5%増加した。AP通信。
▽法律で離婚が禁止されている地中海の島国マルタの議会は7月25日、離婚を合法化する法案を賛成52、反対11、棄権5の賛成多数で可決した。
▽伊フィレンツェのレンツィ市長はミケランジェロが構想したサンロレンツォ教会の正面部の改築を目指して、住民投票に諮る方針を示した。
▽欧州教会指導者が相次いで、ノルウェーの大量虐殺事件に遺憾と哀悼の意を表面。

≪バチカン≫
▽バチカン(ローマ教皇庁)は、駐アイルランド使節ジュセッペ・レアンザ大司教を協議のため召還した。同国議会で、聖職者による児童への性的虐待に批判が高まっている。

≪米州≫
▽ニューヨークの『9・11記念館』が鉄骨の十字架を設置することに、無神論者の団体『アメリカン・アシースツ』が違憲として提訴した。


《メディア展望》

 =カトリック新聞(7月31日)=https://www.cwjpn.com
★津波被災地区の教会が現状報告=支援方針と役割 確認=岩手
★高山右近=列福事由 殉教者に変更=教皇庁列聖省が認める=2015年の列福実現へ前進
★正義と平和仙台協議会主催=核廃絶と平和祈るミサ=福島からの参加者も
★東京災害支援ネットと麹町教会=子どもの遊ぶ場提供も=夏休み期間の方策出し合う
★難民委 臨時全国担当者会議=震災後の在日外国人=影響や動き 話し合う

 =キリスト新聞(7月30日・休刊)=https://www.kirishin.com

 =クリスチャン新聞(7月31日)=https://jpnews.org
★福島覆う「見捨てられ不安」=被災者ら「放射能問題を考える」シンポ
★イラン牧師=背教罪で死刑判決
★会堂・自宅流出体験で再献身=4か月目の3・11一致祈祷会で嶺岸浩牧師証し
★苦しみの中に神様の時が=拉致被害者 横田早紀江さんも共感=『流浪の教会』出版記念講演に涙
★「日本は愛されてます!」=ジーザス・マーチ2011


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