世界キリスト教情報

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世界キリスト教情報 第1064信(2011.06.13)

  • バチカンの承認得られず中国の司教選任進まず
  • ラテン語ミサの侍者は男子のみ、とバチカン
  • ペンテコステの日程を東西共通に、とWCC総幹事
  • エチオピアからユダヤ人のイスラエル「帰還」進展
  • 不安に脅えるエジプトのキリスト者
  • 『トリノの聖骸布』はジョットが描いた?
  • 裸体は罪深いか宗教美術か、米国で話題に
  • アメリカ人の神信心が半世紀で低下
  • 《短信》
  • 《メディア展望》

◎バチカンの承認得られず中国の司教選任進まず

 【CJC=東京】バチカン(ローマ教皇庁)の承認を得ていない中国武漢教区のジョセフ・シェン・グォアン司祭(50)6月9日に叙階される予定が2日前、突如延期された。
 苦境にあるカトリック教会を援助する団体『エイド・トゥー・ザ・チャーチ』(ACN)のジョン・ポンティフェックス氏は、無期限延期の情報が入った。まず本当のことだろうが、とにかくバチカンが一息つける、と語った。
 「中国当局が、司教任命は教皇の領域のものであることを認め、教会の内部問題に必要以上に介入しないようにするべき時だ。3週間前に、教皇は中国の聖職者に、ローマへの忠誠を明らかにするよう、また楽観的な甘言に乗せられないよう呼び掛けたではないか」と言う。
 バチカンと中国政府との関係緊張に伴い、高齢の司教が引退しても、本土の各教区で後任の任命が進まず、空席が目立つようになっている。


◎ラテン語ミサの侍者は男子のみ、とバチカン

 【CJC=東京】バチカン(ローマ教皇庁)・エクレジア・デイ委員会(委員長=ウィリアム・ジョゼフ・レヴェイダ枢機卿)は、教皇ベネディクト16世が特例として執行を承認した、旧来のラテン語による「特別形式のミサ」では、少女が侍者として奉仕することは許されないことを明らかにした。
 第2バチカン公会議の精神に従って1970年以降、新たに定められた各国語によるミサが行われるようになった。女性の祭壇奉仕許可は1984年の典礼秘跡省の回状で出されている。
 教皇ベネディクト16世は2007年7月7日に自発教令『スンモールム・ポンティフィクム』で、各教区において司教が、信徒の要望があった時に旧来のラテン語によるミサを許可する権限を与えた。62年のミサ典礼書注記では、ミサの際に女性が祭壇に立つことは許されていないことから、今回の指示になったと見られる。
 すでに英ケンブリッジ大学のカトリック・チャプレン、アルバン・マッコイ神父は特別ミサを女性侍者で執行している。侍者のチームに女性を入れようとしていたわけではないが、「女性2人が特別ミサで奉仕したいと言うのを断わらないことにした」と言う。
 チームは少年6人、少女4人で構成されている。「通常のミサであれ、特別ミサであれ、一つの典礼に一つの侍者チームとして、全てのミサに一つのチーム」なのだ、と言う。
 一方、ラテン語のミサを推進している『ラテン・ミサ協会』の報道担当は、今回の指示が「重要」であり、全司教は回文に述べられていることに沿って行動すべきだ、と語った。


◎ペンテコステの日程を東西共通に、とWCC総幹事

 【ジュネーブ=CJC】世界教会協議会(WCC)のオラフ・フィクセ=トゥヴェイト総幹事は、2011年のペンテコステ(聖霊降臨日)が東方教会、西方教会とも6月12日に祝われたことを歓迎、これからも同日に祝えるよう一層の努力を求めた。
 「ペンテコステは教会がその働きを始めるために聖霊が降ったことを記念している。貧困と暴力によって裂かれた世界にあって、わたしたちを強め、キリストの平和のための証しにおいてわたしたちを一つにするという聖霊の賜物に感謝する」と言う。
 ペンテコステは、イースター(復活祭)から50日後に祝われる。イースター自体が、西方教会ではグレゴリオ暦により、東方教会ではユリウス暦によるため、東西で日程が一致せず、ペンテコステも一致しないことが多い。およそ西方教会では5月初旬から6月上旬の日曜日、東方では5月初旬から6月下旬の日曜日に行われる。
 イースターとそれに続くペンテコステの日程が東西で一致したのはこの10年間で5回。今後は2017年と2025年に当たる。
 トゥヴェイト総幹事は、共通日程問題が、2013年に韓国釜山で開催されるWCC大会への準備の中に組み込まれることへの期待を表明した。
 共通日程問題は1980年代にも全正教会レベルで検討されたことがある。しかし当時は教会の多くが共産主義体制の下にあり、現実の問題にまでならなかった。1997年にWCCと中東教会協議会がシリアのアレッポで開催した協議では、新たな日程算出法が提案されている。
 トゥヴェイト総幹事は、アレッポ協議の路線に沿って今後の作業が、多彩な伝統に立つキリスト者の間で進められるよう希望する、と語った。


◎エチオピアからユダヤ人のイスラエル「帰還」進展

 【CJC=東京】エルサレムに本拠を置く宣教団体『国際キリスト教大使館』は6月7日、エチオピア在住のユダヤ人8700人のイスラエル「帰還」を支援する、と明らかにした。「帰還」実施組織『ジューイッシュ・エージェンシー』の要請に応えるものと言う。
 1948年のイスラエル建国以来、国外に居住するユダヤ人を「帰還」させる運動が起き、すでに300万人以上が入国した。
 エチオピアでは、干ばつや政治的混乱で食糧不足に陥り、アラブ世界の反体制運動の影響もあり、難民収容所では保健衛生問題も大きくなっていることから、緊急に「帰還」を進めることが課題と言う。
 ただイスラエル当局は、「帰還」対象者にイエスを救世主と信じるユダヤ人を含めることを拒否している中での、『国際大使館』への協力要請であることが注目される。
 今年初め、『ジューイッシュ・エージェンシー』と国務省は、米シンガー、バーブラ・ストレイサンドの従弟デール・ストレイサンド氏(57)のイスラエル居住を拒否したが、それは同氏がキリスト教宣教活動に従事していたことをインターネットのフェイスブックで明らかにしていたため。
 エチオピアのユダヤ人も同様の問題に直面している。しかし『大使館』側は、エチオピアのユダヤ人は150年前に経済的理由で改宗したもので、今もユダヤ教の伝統を守り、ユダヤ人と自認している、と言う。
 エチオピアの「帰還」を希望するユダヤ人8000人の受け入れをイスラエル政府とユダヤ教指導者が昨年11月認めた。『ジューイッシュ・エージェンシー』は毎月200人の空輸を始めたものの、これでは全員「帰還」には4年かかる、と『大使館』は指摘する。事態が緊迫しているところから『ジューイッシュ・エージェンシー』はスピードを上げたいが資金難に悩んでいたところへの『大使館』の援助とあって受け入れに踏み切ったようだ。


◎不安に脅えるエジプトのキリスト者

 【CJC=東京】エルサレム発ENIニュースによると、エジプトの保安状況は、この2月にホスニ・ムバラク大統領の退陣以来、急速に悪化し真空状態を生み出している。援助活動家は、キリスト者が「これまでにない脅威」を感じている、と伝える。
 「人たちに個人的な安全感を大きく意識させるべき所で、安全が確保されていない。ムバラク退陣以来、イスラム教徒とキリスト者の間の緊張が高まっている。コプト派キリスト者だけでなくエジプト市民全体がこのところ不安感を強めている」と『カトリック救援』のジェイソン・ベランガー氏は語った。
 ムバラク退陣後、カイロでの抗争は死者24人、負傷者200人以上に上り、教会3カ所も破壊された。暫定政府は、キリスト者への攻撃に「不干渉」の方策で、即時対応はなされておらず、これではムバラク政権時代の何も変わっていない、とキリスト者は感じているようだ。
 ムバラク氏は、キリスト教関係の問題は、コプト教会の指導者シェヌーダ3世教皇と直接接触して解決していたと見られる。「キリスト教とイスラム教指導者の間に緊張緩和への動きはあるものの、それに関与している人はごく少数だ。そしてエジプト各地では非識字層がそれぞれの指導者に従い、その言うままに動く」とべランガー氏。
 イスラム圏諸国で勢力を増している『イスラム同胞団』に対するキリスト者の懸念も強い。イスラム教国家建設を目指す同派がこの9月選挙で過半数を占めた場合、エジプト脱出を迫られることにもなりかねない。事実このところ、米、英、カナダ大使館に査証を求める人が増えているとの情報もある。


◎『トリノの聖骸布』はジョットが描いた?

 【CJC=東京】英紙テレグラフによると、『トリノの聖骸布』はルネサンス初期の巨匠ジョットが描いた、とイタリアの歴史家ルチアーノ・ブソ氏が主張している。セピア色の布に隠されていた署名を発見した、と言う。
 ブソ氏はまた「15」という数字も発見したが、それは1315を意味するのではないか、としている。ジョットが、長年にわたって聖地やヨーロッパ各所に持ち回られたため損傷が著しい聖骸布の正確な複製品の製作を委託されたのだ、と言う。
 1315年に作られたとすると、炭素同位元素法による調査で14世紀初めのもの、との鑑定結果とも一致する。
 ブソ氏は、キリストの身体を覆った布が実在したのだが、複製が完成した後に分解してしまったか、喪失したか、または焼却されたのではないか、と考えている。
 ブソ氏は、これまで他の専門家多数が見逃していたのは、暗号風に見える筆遣いであったり、ほとんど肉眼では見えないからだ、と言う。
 これに対し、『トリノ聖骸布博物館』のブルノ・バルベリス館長はこの主張に強い疑念を示している。「まず物理・化学的試験で、布は描かれたものではないことが分かっている。第二に、布の拡大図を多くの学者が作り、いばらの冠やアラム語、ギリシャ語、ラテン語がないか、捜したが見つからなかった」と語った。「月を眺めていて、目や鼻、口を見ることが出来ると思うようなものだ」と言う。


◎裸体は罪深いか宗教美術か、米国で話題に

 【CJC=東京】米ユタ州ソルトレークシティーにあるキャルバリー・バプテスト教会のフランス・デービス牧師は、教会堂ないにアダムとイブの絵を置かない、たとえそれがミケランジェロが描いたものであっても、と言う。創世記でも書かれているように人間の身体には、他人にさらすには恥ずかしい部分があるとして、「そういった類の絵は寝室ような所に置くべきだ、と言う。
 同地の新聞が報じた事柄だが、デービス牧師の意見は決して少数ではない。ミケエランジェロがバチカン(ローマ教皇庁)のシスティーナ礼拝堂に描いた『最後の晩餐』も当初はもっと裸体が露骨に表現されていたとされている。アダムとイブが本来着けていないイチジクの葉が描かれている例がほとんどだ。十字架上のイエスも腰布をまとっていなかった、との指摘もあるほど。
 慎み深い信者を悩ましたくない、という牧師の意図なのか、米国ではやりの目立ちたがりの発言なのかまでは明らかでない。


◎アメリカ人の神信心が半世紀で低下

 【CJC=東京】米調査組織『ギャラップ』によると、アメリカ人の92%が神を信じている。1967年調査では98%だった。神または『ユニバーサル・スピリット』を信じるかとの質問には、神を信じる人が80%、ユニバーサル・スピリットが12%。
 神を信じる人をグループ別に見ると、男性が90%、18〜29歳では86%、東部居住者86%、リベラル自認者85%と、それぞれ対比されるグループより定率だった。


≪短信≫CJC通信速報(Twitter:cjcpress)から。

≪アジア≫
バチカンの承認なしに執行されると見られていたシェン・グォアン神父の司教叙階が延期された、とカトリックCNA通信。

≪欧州≫
▽ルーテル世界連盟(LWF)は6月9〜14日の日程で、ジュネーブで常議員会を開催。
▽教皇ベネディクト16世は6月9日、「人間を危険にさらさないエネルギーを維持し、環境に優しいライフスタイルの実現が優先課題」と述べた。バチカン関係者は「福島第一原発事故後の脱原発の動きを意識した発言」と言う。
▽アイルランド教会の性的虐待問題調査終了をバチカン(ローマ教皇庁)が6月6日発表。報告書は来年に。
▽英国国教会の司祭54人が6月12日のペンテコステにカトリックに改宗。

≪北米≫
▽「ブラック・スワン」のダーレン・アロノフスキー監督が、旧約聖書の「創世記」に登場する「ノアの方舟」を題材にした作品の製作を計画。
▽米国の反ユダヤ活動監視団体『サイモン・ウィーゼンタール・センター』は6月7日、ナチス・ドイツ総統アドルフ・ヒトラーが反ユダヤ主義の思想を初めて記した書簡を入手したと発表した。
▽米メリーランド州ブラデンバーグの聖公会教会(信徒100人)がカトリック教会への加入を決めた。
▽安楽死推進論者で「ドクター・デス(死の医師)」の異名で知られたジャック・キボキアン元医師が6月3日、米ミシガン州の病院で死去。83歳。


《メディア展望》

 =カトリック新聞(6月12日)=https://www.cwjpn.com
★被災地に行けなくても=「支援したい」=信徒有志が活動開始=新潟震災ボランティア会議
★教皇、クロアチア訪問=家庭といのちの擁護促す
★国際カリタス総会=新総裁と事務局長選出=日本から菊地司教らが出席
★駐日教皇庁大使 ハンガリーへ転任
★日本女子修道会総長管区長会総会=現代の「闇」と向き合い=修道者としての課題話し合う

 =キリスト新聞(6月11日)=https://www.kirishin.com
★最高裁=「君が代」斉唱不起立/再雇用拒否訴訟=「間接的制約」は合憲
★大阪=「君が代」起立条例案に抗議=同盟基督教団・日本キリスト教連合会
★遠藤周作没後15年で森一弘氏が講座=「号泣する神」の理解が必要
★創作グループ「ふらここ」児童文学中心に34年="真理を求め、人間を追究"
★「国際カリタス」にバチカンの意向注入="教会は慈善団体ではない"

 =クリスチャン新聞(6月12日)=https://jpnews.org
★「君が代」条例=「規律の問題」ではない=橋本大阪府知事に 少数者の良心尊重を要請
★思想弾圧受けたホーリネス=法の趣旨から再考求む
★最高裁=「起立」命令に合憲の初判断
★「神の領域に手を付けたのでは...」=土肥隆一議員=原発問題に危機感
★米国「国際宗教の自由委」=エジプトを監視国リストに


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