世界キリスト教情報

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世界キリスト教情報 第1060信(2011.05.16)

  • カトリック教会にラテン語ミサが本格的に復活か
  • バチカン福音宣教省新長官にフィローニ大司教
  • 米長老教会が同性愛教職を容認
  • 中国のキリスト者に資格のある聖職者必要、と政府高官
  • バチカン駅から5月21日、『カリタス急行』出発
  • プーチン首相を聖人に?とロシアの新興宗教
  • 《短信》
  • 《メディア展望》

◎カトリック教会にラテン語ミサが本格的に復活か

 【CJC=東京】バチカン(ローマ教皇庁)教理省が全世界のカトリック司教に向けて5月13日、伝統主義のカトリック者のために、昔ながらのラテン語によるミサを司祭が執行することを許可するとの教皇自発教令に、賛否に関わらず従うべきだという指示『ウニヴェルサエ・エクレシアエ』を出した。
 1962年から65年にかけて行われた第2バチカン公会議では、ミサを現地語で行うように定めたが、それまでのラテン語によるミサも特例として行って良いとの教皇自発教令が2007年に出されている。今回の指示はそれを再確認し、さらに強化したもの。
 第2バチカン公会議の決定にも関わらず、伝統主義の保守派はラテン語ミサの実施を要求、その指導者が1988年に前教皇ヨハネ・パウロ2世によって破門されている。現教皇ベネディクト16世は2005年の着座以来、伝統主義者の声に耳を傾け、それに応える形で教令を07年に発した。
 「指示」は、教皇自発教令が破門された伝統主義者への応答であるだけでなく、多くの信徒からの正当な要求に対する応答であり、典礼尊厳を増進し、カトリックの教義の継続性を確実にする手段でもある、としている。
 今回の「指示」に困惑する司教もいる。ラテン語でミサを行える司祭が少なく、現実に伝統主義の信者が望んだとしても、日程の中にラテン語ミサを入れることが出来ない、と頭を抱える。バチカンからの調査に回答した司教は僅か3分の1だったと当局者がもらしたほどだ。
 ラテン語ミサは、懐古趣味で堅苦しく、時代に合わせて第2バチカン公会議が行った改革を後戻りさせるもの、とするカトリック者も多い。


◎バチカン福音宣教省新長官にフィローニ大司教

 【CJC=東京】教皇ベネディクト16世は5月10日、バチカン(ローマ教皇庁)福音宣教省長官イヴァン・ディアス枢機卿の定年を理由とした引退願いを受理、後任に国務省総務局長官代理フェルナンド・フィローニ大司教を任命した。
 また教皇は、国務省総務局の新長官代理(総務局長に相当)として、駐キューバ教皇大使ジョヴァンニ・アンジェロ・ベッチウ大司教を任命した。バチカン放送が報じた。
 フィローニ大司教は1946年、イタリア・マンドゥリア生まれ。70年、司祭叙階。2001年、司教叙階。国務省総務局長官代理となる以前に、フィリピン、イラクの教皇大使を務めた。
 ベッチウ大司教は1948年、イタリア・パタッダ生まれ。1972年、司祭叙階。2001年、司教叙階。


◎米長老教会が同性愛教職を容認

 【CJC=東京】米長老教会(PCUSA)が、33年にも及ぶ論議の末、同性愛教職を容認することになった。これまで同派の教規は、教職になる条件として「誠実な結婚」か「貞潔な独身」を要求していたが、これを削除することになり、教職、長老などに公然同性愛者や婚外同棲をしている人も就任出来るようになった。
 同派総会で撤回案はこれまで3回承認されていたが、施行に至るには構成している173中会の過半数の批准が必要で、これまでは満たされなかった。それが5月10日、これまで批准反対だったミネアポリス、セントポール両市を管轄する『トゥインシティーズ中会』が賛成205、反対56、棄権3で批准、過半数に達したもの。今回は19中会が反対から批准に回った。
 ただ各中会は、公然同性愛者の教職・長老任命の可否を独自に決定出来る。一方すでに任命している中会もある。今回の決定で、教会の中には離脱したり、任命否定を決めた中会への転入を検討する動きも出そうだ。
 米国の主流プロテスタントで同性愛教職を受け入れたのは、聖公会、福音ルーテル教会、合同キリスト教会に次いでPCUSAが4番目。会員数200万のPCUSAに比べ少数教派のPCAは、女性の教職任命も禁止している。
 主流プロテスタントでも合同メソジスト教会、さらにカトリック教会、南部バプテスト会議、末日聖徒イエス・キリスト教会(モルモン教会)などの大教派はいずれも同性愛聖職を容認しない構え。その信徒総数は1億人近いのに対し、容認4教派の信徒は1100万人弱と推定される。


◎中国のキリスト者に資格のある聖職者必要、と政府高官

 【CJC=東京】中国のキリスト者には、社会の発展に貢献出来る資格のある聖職者が必要だ、と政府国家宗教事務局の王作安(ワン・ツォアン)局長が5月13日語った。
 「かつては、キリスト教は外国の宗教として扱われていたが、今わたしたちは、キリスト教を自分たちのものとして扱っている。キリスト者は多数いるものの、聖職者が不足しちる。発展的な働きを進める資格のある聖職者が見つからない」と、ケニア聖公会(英国国教会)首座のエリウド・ワブカラ大主教とナイロビで会見した際に語ったもの。
 同局長のアフリカ訪問は初めて。今回は12日から24日までの日程でケニア、ウガンダ、南アを訪問、10人が随行している。訪問の目的は聖公会、『南半球アングリカン共同体』と中国の教会との関係強化。聖公会側は、中国側が国家と宗教の共存について学びたいと希望している、と明らかにしていた。
 ワブカラ大主教は、このほど聖公会では保守的な『グローバル・アングリカン・フューチャー・カンファレンス』(GAFCON)議長に選出された。「中国の教会を南半球の活動に積極的に参加・介入してもらうために招待した」として、中国の教会はGAFCONとの協力に関心を示している、と語っている。
 中国はケニアに道路、住宅、スポーツ施設建設のため資金、資材、専門家派遣など様々な協力をしている。大主教は、「道路など開発部門での政府間協力は大きいが、倫理的側面が立ち遅れていることを懸念している」と言う。
 局長ら一行は、ケニアの3日間の滞在中、教会、ケニア聖書協会、職業技術学校、セントポール大学やスラム地区のコミュニティセンター、孤児院などを訪問した。


◎バチカン駅から5月21日、『カリタス急行』出発

 【CJC=東京】バチカン(ローマ教皇庁)には鉄道の駅がある。サンピエトロ大聖堂の上からだと誰でものぞくことが出来るが、「教皇のプラットホーム」と呼ばれるホームも普段は使われていないし、駅に入る線路は扉で閉ざされている。それが5月21日には扉が開けられ、午前10時、バチカン駅から蒸気機関車に牽引されて客車5両の『カリタス急行』が出発する。
 カトリック教会系の救援組織『国際カリタス』が募金活動の一環として打ち出したイベント。
 代表のロベルト・J・ヴィティヨ神父は「創設60周年記念総会を控えて、普段はありえないことで、非常に喜ばしい」とバチカン放送に語った。
 客車5両への乗車希望を受け付けるが、寄付も求められる。行く先はローマ北方約100キロの古都オルヴィエート。帰路は、バチカン駅ではなくローマの有名な終着駅『スタチオーネ・テルミーニ』に午後7時半到着の予定。
 カリタス関係では、これまでにも救援物資が北イタリアなどの被災地に向け、特別仕立ての列車が「教皇のホーム」から出発したことはある。


◎プーチン首相を聖人に?とロシアの新興宗教

 【CJC=東京】使徒パウロの生まれ変わりとして、ロシアのウラジーミル・プーチン首相を崇める宗教が登場した、とAFP通信が報じている。
 ロシアの週刊誌『ソベセドニク』の報道を紹介したもので、ロシア西部ニジニー・ノブゴロドに拠点を置くこの宗教は、元鉄道職員で前科のある「聖母フォティーナ」と名乗る女性が率いている。
 この創始者によると、「聖書によると使徒パウロは最初は軍の司令官だった。プーチン首相もKGB時代には邪悪なことをしていたが、大統領になってからはパウロのように聖なる精神で満たされ、自分の仲間たちを導くようになった」と言う。信徒の数は報じられていない。
 『ソベセドニク』誌の取材に、ドミトリー・ペスコフ大統領報道官は、「こういう宗教集団は聞いたこともない。彼らがそれほどまでに首相の仕事を高く評価しているとは素晴らしい」と、驚きを持って受け止めたものの、「しかし大事な十戒の一つも覚えておこう。『誤った偶像を崇拝してはならない』」と付け足した。
 AFP通信によると、プーチン氏に対する尊敬を示すグループや組織はロシアに多く、さらにプーチン氏について歌ったポップスや、プーチン・ブランドのウォッカ、プーチン氏をテーマにしたクラブ・パーティーまで登場している。


≪短信≫CJC通信速報(Twitter:cjcpress)から。

≪アジア≫
▽米キリスト教救援団体「サマリタン・パース」主宰者フランクリン・グラハム氏が5月10日、北朝鮮を訪問。
▽北朝鮮最高人民会議常任委員会の金永大副委員長は5月12日、平壌の万寿台議事堂で、同国訪問中のフランクリン・グラハム牧師と一行と会見した。

≪中東≫
▽イスラエルとパレスチナ自治区やシリア、レバノンなどとの境界で5月15日、パレスチナ人のデモ隊が越境しようとしてイスラエル軍と衝突、少なくとも13人が死亡。
▽カイロ・マスペル地区のコプト教会に5月15日深夜、イスラム教徒に襲撃され、負傷者100人。

≪欧州≫
▽2012年のロンドン五輪を伝道の好機と捉える教会やキリスト教団体の数は史上最高になりそうだ。
▽英国国教会からカトリック教会への転会進み、ペンテコステには司祭50人誕生か。

≪米州≫
▽米カトリック週刊誌『クライシス』は2007年に休刊したが、このほどオンライン版として再刊する。
▽米大衆伝道者ビリー・グラハム氏(92)は肺炎で入院していたが、5月15日退院、自宅に戻った。
▽米国では聖書関係のアプリケーション(ソフトウエア)がスマートホンの普及に沿って急成長している。
▽『ニュー・クリスチャン・ミュージック』(NCM)の創設者ポール・デービス氏が5月6日死去。67歳。
▽シカゴ・マコーミック神学校校長にフランク・ヤマダ氏(44)。アジア系では初めて。


《メディア展望》

 =カトリック新聞(5月15日)=https://www.cwjpn.com
★ヨハネ・パウロ2世列福=強く寛容な信仰の故に
★列福、本当にうれしい=「平和への愛実践されたパパ様」=アグネスチャンさん
★さいたま教区のベトナム人信徒ら=避難所で炊き出し=福島=「日本に恩返ししたかった」
★さいたま教区サポートセンター=「傾聴」で研修会
★子を放射能から守れ=福島でネットワーク発足

 =キリスト新聞(5月14日・休刊)=https://www.kirishin.com

 =クリスチャン新聞(5月15日・休刊)=https://jpnews.org


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