世界キリスト教情報

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世界キリスト教情報 第1058信(2011.05.02)

  • 前教皇ヨハネ・パウロ2世、カトリック教会の「福者」に
  • 前教皇、福者認定まで6年余は史上最短
  • 前教皇の「列福」祝おうとバチカンに大群衆
  • エジプトも監視リストに、米『国際宗教の自由委』
  • 米竜巻被害復興へボランティアが支援
  • 北朝鮮で6月食糧枯渇か、米『サマリタンズ・パース』
  • 《短信》
  • 《メディア展望》

◎前教皇ヨハネ・パウロ2世、カトリック教会の「福者」に

 【CJC=東京】前教皇・神のしもべヨハネ・パウロ2世(在位1978年10月〜2005年4月)を、カトリック教会で最高位の崇敬対象「聖人」の前段階である「福者」とする列福ミサが5月1日午前、イタリアとポーランドの大統領はじめ約90カ国の政府代表が列席し、バチカン(ローマ教皇庁)で行われた。
 教皇ベネディクト16世が、サンピエトロ広場でミサを司式、この中でヨハネ・パウロ2世を「福者」と宣言した。
 列福ミサはラテン語で行われた。前半部分の列福の儀式では、ローマ教区司教代理アゴスティーノ・ヴァッリーニ枢機卿がヨハネ・パウロ2世を福者の列に加える旨を願い出る式文を述べ、続いて前教皇の人となりを紹介した。
 教皇は、ヨハネ・パウロ2世の列福を宣言。その記念日を教会の典礼暦で10月22日とすると発表、大聖堂正面に掲げられた新福者の肖像が除幕された。100万人を超した会衆からの拍手が長く続いた。
 ミサ終了後、教皇は大聖堂に入り、中央祭壇前に安置された福者ヨハネ・パウロ2世の棺に祈りを捧げ、この後、る教会関係者、巡礼者たちの列が続いた。
 バチカン放送(日本語電子版)によると、教皇はミサの説教で、6年前、この聖ペトロ広場でとり行われたヨハネ・パウロ2世の葬儀を回想、その時、深い悲しみはもとより、それを上回るさらに大きな感謝の念が世界を包んだことを想起した。
 6年前、すでに人々はヨハネ・パウロ2世の聖性の香りを感じ、尊敬をいろいろな方法で表してきたが、「今日、その日は早く訪れました。ヨハネ・パウロ2世は福者となりました」と、教皇は語り、ヨハネ・パウロ2世自身が命名した「神のいつくしみの主日」であると同時に、聖母月である5月の初日、また労働者聖ヨセフを記念するこの日に、前教皇の列福を祝うことができた摂理を留意した。
 「ヨハネ・パウロ2世は、その信仰の証し、愛、使徒的な勇気、また豊かな人間性をもって、キリスト者であること、教会に属すること、福音を語ることを恐れないようにと、世界中の信者たちを助けた」と教皇は述べ、「真理を恐れるな。真理は自由を保証する」ということを教えながら、キリストを信じるための力を再び信者たちに与えたヨハネ・パウロ2世の教会への偉大な貢献を賞賛した。
 ミサの福音朗読中、「見ないのに信じる人は、幸いである」(ヨハネ20・29)というイエスのこの言葉が説くものは「信仰の幸い」であると指摘しながら、教皇はヨハネ・パウロ2世の強く寛大で使徒的な信仰、神から受け取った信仰の恵みを教会のために捧げ尽くしたその生き方を指摘した。
 教皇は、ヨハネ・パウロ2世が「恐れてはいけません。キリストに扉を開いてください」という、すべての信者たちに投げかけた言葉を自ら最初に実行し、社会・文化・政治・経済をキリストに向かって開きながら、神から汲み取った超人的な力をもって、くつがえすことはできないと思われた世の潮流に立ち向かっていったと、振り返った。
 そして、ヨハネ・パウロ2世は神の民を3千年期に導く道のりの中で新しい未来、神の未来への指針を人々に示しながら、マルクス主義や発展至上主義が失わせた希望の力をキリスト教精神をもって取り戻し、人間の完成、正義と平和の構築を目指しながら新しい時代の到来を生きるよう励ましていったと述べた。
 教皇は1982年に教理省長官としてローマに着任して以来、ヨハネ・パウロ2世の協力者として過ごした23年間を思い起こされ、前教皇の常に深く祈る姿勢、苦しみの神秘を身をもって証しした生き方、キリストに完全に一致した謙遜さから受けた、深い感銘を語った。
 「幸いなるかな、愛するヨハネ・パウロ2世よ、なぜならあなたは信じたからです。神の民の信仰をどうか天国から支え続けてください」と教皇は説教の最後に祈った。


◎前教皇、福者認定まで6年余は史上最短

 【CJC=東京】前教皇ヨハネ・パウロ2世「列福」は、2005年に死去してからわずか6年余りで福者に列せられた。「列福」までには死後数十年かかるのが通例。列福に関する審議自体、少なくとも死後5年後に始まるのが慣習とされていた。
 今回、前教皇死去2カ月後の05年5月末にベネディクト16世は審議開始を決めた。前例としては、カルカッタの聖母と言われ、ノーベル平和賞も受賞したマザー・テレサ(1997年死去)がいる。
 審議に当たるバチカン(ローマ教皇庁)列聖省は、世界から前教皇にまつわる「奇跡」の候補217件を集め、フランスのシモン・ピエール修道女(50)に起きた事例を選んだ。同修道女は長く前教皇と同じパーキンソン病を患ったが、本人と同僚たちが死んだ直後の前教皇に向かい治癒を祈ったところ、突然完治したという。前教皇がもたらしたかどうかは証明不能だが、奇跡と認められた。
 前教皇は在位期間が約四半世紀と長く、東西冷戦終結前後に平和と宗教間対話を強く訴えたことで知られる。訪問先も104カ所に及ぶ。81年には広島を訪れ「戦争は人間の仕業だ」とする「平和アピール」を発表している。またイラク戦争に反対するなど積極的にバチカン外交を展開した。
 カリスマ性に富む人柄に、信者が圧倒的支持したことも評価されたと見られる。


◎前教皇の「列福」祝おうとバチカンに大群衆

 【CJC=東京】前教皇ヨハネ・パウロ2世を「福者」とするミサに参加しよう、とサンピエトロ広場に集まった信者・観光客は100万人を超えた。150万人との報道もある。
 前教皇の肖像画や出身国ポーランドの旗を掲げた人も多数見られた。教皇ベネディクト16世が前教皇を福者に認定、サンピエトロ大聖堂の正面に掲げられた前教皇の肖像画が除幕されると、群衆から大きな拍手とイタリア語で「サント・スビト(直ちに聖人に)」の声が巻き起こった。
 バチカンにこれほど多くの信者が集まるのは、前教皇の葬儀が営まれた2005年以来のこと。ローマ市内のホテルはいずれも満員で、宿泊費も高騰した。主な教会は祈りのために前夜に開放、前教皇の母国ポーランドなどからは、広場に泊まり込む信者もいた。
 早朝から信者たちがサンピエトロ広場に詰めかけ、ローマ市警察は広場から半径500メートル以内への立ち入りを禁止し、周辺各所に設置した巨大スクリーン前に誘導した。赤十字などの救護所も開設された。
 バチカン(ローマ教皇庁)は、参列できない信者のために、インターネットのミニブログ「ツイッター」や交流サイト「フェイスブック」に専用ページを開設し、式典の様子を生中継した。
 前教皇は1978年にローマ教皇に選ばれた後まもなく、旧ソ連の共産圏下にあった故国ポーランドを訪れた。それが、後にポーランドの共産主義政権を崩壊させる原動力になったといわれる。1日にはかつてポーランドの首都だったクラクフにも5万人あまりの信者が集まった。


◎エジプトも監視リストに、米『国際宗教の自由委』

 【CJC=東京】米国の『国際宗教の自由委員会』は2011年版報告書を4月28日発表した。今回初めて、コプト派キリスト者など宗教少数派への暴力行為が続発するエジプトを、宗教の自由を侵害する国、と認定した。米政府の「特に監視が必要な国」のリストに載せるよう提案している。
 同委員会のレオナード・レオ委員長は、エジプトがホスニ・ムバラク前大統領が2月に辞任して以来、政府の抑止策にも関わらず、暴力行為が減少していない、と指摘する。
 エジプトのほか、「特に監視が必要な国」として、同委員会はビルマ、中国、エリトリア、イラン、イラク、ナイジェリア、北朝鮮、パキスタン、サウジアラビア、スーダン、トルクメンスタン、ウズベキスタン、ベトナムを上げている。
 さらに「要監視国」としてはアフガニスタン、ベラルーシ、キューバ、インド、インドネシア、ラオス、ロシア、ソマリア、タジキスタン、トルコ、ベネスエラを上げている。
 「宗教的少数派だけでなく多数派宗教の中の少数派に対する暴力的攻撃があるのに、多くの国では見逃されている。これは国家による直接的な抑圧と同様、宗教の自由を危うくするもの」と同委員長は指摘している。
 同委員会は1998年、超党派の独立機関として設立された。米国以外の国での思想、良心、宗教、信仰の自由状況を監視し、政策提案を行う。米国務省は、独自に国際的な宗教の自由に関する報告書を発表するが、同委の提案には必ずしも拘束されない。


◎米竜巻被害復興へボランティアが支援

 【CJC=東京】米南部で4月27日発生した竜巻と暴風雨の死者は、アラバマ、ミシシッピー、テネッシー、ジョージア、バージニア、ケンタッキーの6州で350人に上っている。米史上最悪の竜巻被害は1925年3月に発生、死者は747人とされているが、今回の竜巻はこれに次ぐ死者を出した。
 バラク・オバマ大統領は30日、惨状から立ち直るためには「長い道のりがかかるだろうが、被災した米国民たちを私たちの記憶と祈りに留め置かねばならない。今後の厳しい数か月間、あるいは数年間、彼らを支える必要がある。連邦政府はそれを実行する、と明言しておきたい」と述べた。
 犠牲者の確認作業が続けられる中、がれきなどの撤去作業が開始されたが、復旧作業は長期化すると見込まれている。
 被災した州の当局は、ボランティアによる支援を全国に呼びかけた。捜索および復興作業の後、数カ月間にわたりボランティアによる支援活動が必要となるとみられている。
 著名な大衆伝道者ビリー・グラハム氏が設立した『緊急救援チーム』は、竜巻襲来直後にバーミンガムに到着、同市と近くのタスカルーサの被災者を見舞った。
 プレストン・パリッシュ副会長は「被災者に、キリストが顧みてくださること、わたしたちも祈り、傍にいるyことを知ってほしかった」と語った。
 救世軍アラバマ・ルイジアナ・ミシシッピ軍区は給食10部隊、連絡1部隊を動員した。さらに配食トラックや移動キッチンなど22移動給食部隊が1日当たり2万食を野外給食出来るよう配備した。ケンタッキー・テネッシー軍区の移動給食部隊はテネッシー州のチャタヌーガとクリーブランドで被災者に給食している。


◎北朝鮮で6月食糧枯渇か、米『サマリタンズ・パース』

 【CJC=東京】米キリスト教系支援団体『サマリタンズ・パース』は4月27日、北朝鮮の一部地域で、不作のため2カ月以内に食糧が底をつく恐れが高いと警告した。AFP通信が報じた。
 2月に北朝鮮を訪問した米5団体の一つ『サマリタンズ・パース』のケン・アイザックス副代表は、米シンクタンク『アメリカンエンタープライズ研究所』で開かれたセミナーで、厳冬で穀物生産が最大半減しており、すでに草や葉、木の皮などを食べている人びともいたと指摘。「われわれの訪問した地域の多くで、6月半ばに食糧が尽きると考えられる。われわれの現地調査によれば緊急支援が必要なのは確かで、もし支援がなければ年内に人びとは餓死するだろう」と語った。


≪短信≫CJC通信速報(Twitter:cjcpress)から。

≪アジア≫
▽ベトナム総選挙にカトリック司祭3人が立候補。教会の規制を無視した。
▽米中人権対話が4月27〜28日、北京で開催された。米国側は、反体制活動家や人権派弁護士の弾圧について「強い懸念を抱いている」と述べ、この問題は米中関係の妨げになる可能性もあると指摘した。中国外務省は、米国の問題提起は「内政干渉」であるとの見解を示した。
▽米ラジオ・フリー・アジアによると、2月から行方が分からなくなっていた中国の法学者で人権活動家の滕彪氏が4月29日、北京の自宅に戻った。縢氏は当局に拘束されていたとみられ、米中人権対話でも米側が懸念を表明していた。
▽中国地下カトリック教会のリ・ホンギェ洛陽司教が復活徹夜祭の最中、心臓麻痺で死去した。

≪欧州≫
▽バチカン(ローマ教皇庁)行政庁次官のフェルナンド・フィローニ大司教が福音宣教省長官に近く任命される、と伊紙ラスタンパのバチカン担当アンドレア・トルニエッリ記者が予測している。現長官イヴァン・ディアス枢機卿が75歳の誕生日を迎え、引退必至と見られるため。

≪アフリカ≫
▽ツツ大主教の新刊『神はキリスト者ではない=危機の時代に真実を語る』 。
▽英国国教会(聖公会)の保守派大主教が『グローバル・アングリカン将来会議』(GAFCON)を4月25〜28日、ナイロビで開催、ケニアのエリウド・ワブカラ大主教を首座主教協議会議長に選出した。

≪北米≫
▽バラク・オバマ米大統領は5月1日、オサマ・ビンラディン氏が殺害されたと発表。
▽カトリック修道会『キリスト教修士会』北米支部が、会員の性的虐待問題から自己破産申請。
▽米フラー神学校が聖書研究に『共通英語聖書』(CEB)を採用。
▽ニューヨークのタイムズスクエア教会創設者のデービッド・ウィルカーソン牧師がテキサス州で4月27日、自動車を運転中、対抗車線にはみ出しトレーラーと衝突、即死した。79歳。同乗していたグエン夫人とトレーラー運転手は病院に搬送された。
▽クリスタル・カテドラルのオーケストラ・メンバーが給料が半減されたことに不満を持ち、「職場放棄」した。
▽サイエントロジー教会がハリウッドの映画スタジオを購入。


《メディア展望》

 =カトリック新聞(5月1日)=https://www.cwjpn.com
★「闇が深いほど光は明るい」=復活徹夜祭で 仙台教区・平賀司教
★仙台教区司祭団=被災後の教区方針 承認=「新しい創造」基本計画
★震災被災者への慰めと希望願う=教皇「復活祭メッセージ」
★創立60余年の支援法=宮城・気仙沼=幼稚園が地域拠点に
★シスターズ・リレー=震災復旧に陰で協力=交代で修道女派遣=現地のボランティア支える

 =キリスト新聞(5月2日・休刊)=https://www.kirishin.com

 =クリスチャン新聞(5月1日)=https://jpnews.org
★「現地の声聞き続けて」=対応 時に負担に=「自己満足」支援に警鐘
★十字架塔が地域復興の希望の光に=単立シーサイド・バイブル・チャペル
★キングス・ガーデン源流30年=筑波を模範に 広がった50施設=高齢者→障害者、夢は幼児施設も
★震度7の栗原市 被災教会が救援拠点に=不登校生らも「与える側」
★韓国教会が日本災害対策=教派を超えて共同窓口


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