世界キリスト教情報

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世界キリスト教情報 第1056信(2011.04.18)

  • バチカン、中国の教会に微妙な姿勢
  • 中国三自運動指導者がキリスト者に団結要請
  • 政府との緊張関係公然化は覚悟?中国の「地下教会」
  • イスラム教徒も聖書読め、と米南部のある刑務所
  • イエスを十字架にかけたクギ発見、とイスラエル映画監督
  • 《短信》
  • 《メディア展望》

◎バチカン、中国の教会に微妙な姿勢

 【CJC=東京】バチカン(ローマ教皇庁)の『中国教会委員会』の会合が4月11〜13日行われた。中国のカトリック者へのメッセージが15日発表された。
 今回の会合は、承徳司教の不法な叙階と『中国天主教(カトリック)代表者会』開催という、教皇ベネディクト16世と聖座(バチカン)にとって屈辱的な事態を受けて開催された。2件とも教皇の意向に反するもので、さらに教皇に忠誠を表明している司教が双方に参加していることも、中国の教会の置かれた事情の複雑さを示している。
 メッセージは、これらの事態を取り上げている。叙階は、信仰の名の下に行われる、教皇の権限によるもので、「国の内政事情」によって不適当な干渉が行われるべきでない、と指摘している。
 教皇の命令へ不服従の行為については教会法上の制裁(破門)が課される。司教は自らの行為を説明し、事態発生の理由を聖座と信者に説明することが求められている。今回は教皇命令への侮辱に当たる。
 しかし、メッセージは1人として破門していない。教皇の意図とも見られるが、委員会の関心が、中国教会の一致に集中していたことも確か。中国の教会に向け、教皇は2007年に書簡を送り、一致を呼び掛けている。
 会議の最終日に出席した教皇は、「教会の信仰は、カテキズムに展開されており、それは犠牲を払ってでも守られるべきものであり、中国のカトリック共同体が一致と聖体にあって成長するべき基盤だ」と強調した。
 教会を「独立、自治、自養と教会の民主的な運営」によって教会形成しようとして教会の生命を侵害することは、カトリックの教義と相容れない、とメッセージは強調している。
 教皇書簡は、カトリック代表者会議を、司教の権威の上に置こうとするものとし、天主教三自愛国会を、司教の生活と正式な共同体を支配するもの、と指摘していた。
 しかし、メッセージはここでも特別な行動を示唆はしておらず、教会的な価値を再確認するに留めている。
 中国政府に関しても、姿勢は堅固と寛容両様の構え。司教任命は聖座に属すとしながらも、候補選択に関しては北京に、同意に達する可能性を提示していたことも、それを裏づける。

※関連短信
▽中国河北省で、地下カトリック教会司祭2人が拘束され、虐待された、とアジア・ニュース報道。公認教会への登録を強要された、という。
▽香港カトリック教会正義と平和委員会が、拘束された芸術家アイ・ウエイウエイ氏の釈放を北京当局に要求した。


◎中国三自運動指導者がキリスト者に団結要請

 【CJC=東京】中国キリスト教三自愛国運動北京委員会のツァイ・クイ委員長が4月11日、市内のキリスト者に、愛国的であること、法によって団結することを要請した。国営新華社通信が報じた。
 北京のキリスト者は、神の善良な弟子であると共に良い市民であるべきだ、としてツァイ氏は「国への愛は宗教への愛と対立するものではない」と言う。
 キリスト教によって擁護される「倫理コード」は、中国政府によって推進されるものと、多くの点で合致する、と言うツァイ氏は、キリスト者に、「国家と社会の安定と一致」に貢献するよう呼び掛けた。
 プロテスタント教会の三自愛国運動は、1950年代以来、主流の地位を占めている。「三自」原則とは、自治、自養、自伝の立場をとるもの。
 3月、三自愛国運動委員会のシェン・シュエビン副議長は、教会員に、国中で毎日曜午後に公開の場所で開く計画のある街頭集会への参加呼び掛けに応じないよう勧告した。同氏の指摘は、中国のキリスト者に、毎日曜午後に38の公共の場所で集まるよう呼び掛けた声明がインターネット上で流されている、と外国メディアが報じてから、出された。
 シェン氏は、中国のキリスト者が国を愛し、社会の安定を保護すべきだ、と語っている。


◎政府との緊張関係公然化は覚悟?中国の「地下教会」

 【CJC=東京】北京警察が4月10日、非公認の『守望教会』(プロテスタント)の信徒が公共用地で日曜礼拝を計画した、として数十人を拘束した。教会側は、これまで礼拝に使用していた飲食店から追い立てられたための対策、としている。
 中国政府は、礼拝を公認教会の中で行うものしか認めていない。しかしキリスト者の多くは非公認教会に属している。そのような「家の教会」は「地下教会」とも呼ばれ、その昔のカタコンベでの集会のように、当局の目につかぬよう極秘裏に行っていた段階から成長して来た。登録教会として認可し、管理下に置こうとする意向も当局側に見られ、双方の緊張関係も複雑な経緯をたどっている。
 非公認では北京最大と見られる『守望教会』も、礼拝の権利を長年にわたって当局に求めてきた。2006年に登録申請したが却下された、という。
 09年12月、教会は日曜礼拝のために不動産を購入したが、政府が介入し、使用は出来なかった。
 礼拝場所として北京市内の飲食店を借りていたが、そこから4月初め立ち退きを求められた。教会側は、一時的に公共空間で礼拝を守ることを決めたが、これに対し警察は一帯を立ち入り禁止にし、礼拝に参加しようとする人を皆拘留した。そこで海淀区の広場で行う計画を立てた。しかしそこにも制私服の警察職員が、教会員の集まると思われる事務所やショッピングセンターを固めた。
 『守望教会』の金天明、李小白牧師が警察に拘留され、他の指導者多数が10日、自宅軟禁されたのも、同教会への一連の抑圧策の一環、と米国に本拠を置く人権監視団体『対華援助協会』は見ている。
 牧師2人は北京公安局の係官によって前夜に自宅から連れ出された、と同協会のボブ・フー総裁がEメールで語った。教会員の中には、教会を閉鎖するとの市側の宣伝のため、居宅を失ったり、失職した人もいる。

※関連短信
▽4月10日、北京警察に拘束された非公認の守望教会(プロテスタント)の信徒170人以上が、牧師夫妻を除き全員釈放された、と教会側が明らかにした。UPI通信。


◎イスラム教徒も聖書読め、と米南部のある刑務所

 【CJC=東京】AFP通信が、米サウスカロライナ州のバークレー郡の刑務所では、H・ウェイン・デウィット保安官が受刑者に聖書以外の読み物の持ち込みを一切禁じていたので、司法省が裁判所に訴えた、と報じている。信教の自由を保障した憲法修正第1条など複数の法律に抵触するとの判断だ。さすが米国と言うべきか、司法省が1保安官相手に訴訟に持ち込まなければならない、ことに通信社も驚いたから報じられたのだろう。
 同保安官が、手紙類や雑誌、司法関係の会報などの持ち込みを禁止しているとの苦情が多数の受刑者から出ていたようだ。「実際、被告が唯一持ち込みを認めていた書籍・雑誌・新聞・宗教的刊行物の類は、聖書だけだ」と、司法省の訴状には記されている。
 受刑者らには無料で聖書が配られたが、それが「欽定訳聖書」だったというのも面白い。ユダヤ教徒やイスラム教徒の受刑者がトーラー(ユダヤ教の経典)やコーランを希望しても、家族の差し入れ以外は不可と言われ、あるイスラム教徒の受刑者が恋人にコーランの差し入れを頼んだところ、刑務所側は受け取りを拒否したという。


◎イエスを十字架にかけたクギ発見、とイスラエル映画監督

 【CJC=東京】イエスを裁いた大祭司カイアファ(カヤパ)の墓から見つかった約2000年前のクギ2本は、キリストを十字架にかけた時に使用されたものの可能性が高いと、イスラエルのドキュメンタリー映画監督が4月12日発表、イースターがらみのニュースとしてメディアも取り上げた。
 エルサレムで行われたテレビ『ヒストリーチャンネル』の新番組発表会見で、番組プレゼンターを務めるシムチャ・ジャコボビッチ監督が、長さ約8センチの曲がった鉄クギ2本を公開した。番組は、このクギがキリストの磔に使用されたかを検証する内容。
 AFP通信によると、2本のクギは20年前、エルサレムにあるカイアファ家のものと思われる墓所を発掘した際に発見された。その後2本とも行方不明になり、写真やスケッチも残っていなかった。
 ジャコボビッチ監督は、テルアビブ大学で、やはり20年前に発掘された同年代のクギ2本を偶然発見、カイアファの墓で見つかったものと確信したと言う。
 なぜカイアファが、処刑に使われたくぎと一緒に埋葬されることを望んだのか。監督は、カイアファが罪悪感に苦しめられていたためではないかと推測するが、番組では、カイアファが実はイエス・キリストをひそかに信じており、その身柄をローマ人に引き渡すことが彼を死に追いやる結果になるとは想像していなかった、というシナリオ。
 ただ40年にわたり墓を発掘しているテルアビブ・バルイラン大学のガビ・バルカイ教授は、ジャコボビッチ監督の主張には懐疑的だ。
 教授によると、問題のくぎは確かに1世紀のものだが、厳密な年代は特定できない。「問題のくぎがカヤパの墓で発見されたものだという証拠もない」と述べ、すべては可能性にすぎないとの見方を示している。


≪短信≫CJC通信速報(Twitter:cjcpress)から。

≪アジア≫
▽ブータンのジグミ・ティンレイ首相が、キリスト者には信仰を証しする権利はあるが、それを改宗に利用したり、宗教的優位性を強調してはならない、と米宣教専門コンパス通信に語った。

≪中東≫
▽パキスタン北西辺境州マルダンのサルハディ・ルーテル教会が、イスラム教過激派の執拗な攻撃目標になっている。米宣教専門アシスト通信報道。

≪欧州≫
▽故教皇ヨハネ・パウロ2世の列福が間近になるに連れ、カトリック教会内から、「あまりに早すぎる」など、疑問の声が上がっている、とAP通信報道。
▽聖公会からカトリック教会に転入した人のための属人区(オルディナリアーティ・ペルソナーリ)のキース・ニュートン「司教」が、教皇ベネディクト16世に4月1日接見、教皇は「重大な関心」を示し、いつも祈っている、と語った。
▽カトリック教会の「世界青年の日」に備えて、青年向けカテキズムが13言語で刊行する計画だったが、イタリア語版は、避妊に関する部分で誤訳が見つかり、配布を一時打ち切ることになった。
▽バチカン図書館史全7巻編集の作業が進み、第1巻の全容が明らかになった。イタリア語500ページ。
▽フランスで、顔を覆うブルカ着用を禁止する法律が施行され、それに反対して、パリで行われたデモに参加した女性2人が逮捕された。
▽国際アムネスティは、ブルカ着用禁止法反対者を拘留したことで、フランスを非難した。
▽キューバ政府が拘束していた「良心の囚人」37人と家族246人が4月12日、マドリッドにチャーター機で到着した。拘束者115人全員が釈放された。
▽英国への移民規制強化に伴い偽装結婚が増大していることに、英国国教会主教会議が4月12日、チェックを厳しくするようガイドラインを発表した。
▽教会で賛美歌にマイクを使うと「教会カラオケ」になりやすい、とロンドン・シンフォニー・オーケストラ合唱部門の指揮者ジョセフ・カレン氏が警告。
▽マザー・テレサは40年前、アイルランドのベルファストから、当時の司教によって追放された、と現地紙『インディペンデント』が報道。

≪北米≫
▽米カトリック神学会は、元会長のエリザベス・ジョンソン修道女の著作を司教団が批判したことに、反論した。
▽米国ではカトリック信者の女性のおよそ98%が、教会から禁止されているにもかかわらず避妊しているとの調査結果が4月13日、明らかとなった。ロイター通信。
▽昨年9月、米フロリダ州のテリー・ジョーンズ牧師に、コーラン焼却を思い留まらせたのは現地イスラム協会の指導者イマム・ムハンマド・ムスリ。今回の焼却実行に衝撃を受けている。
▽米カトリック教会は昨年、聖職者による性的虐待問題の補償に1億2400万ドル(約100億円)を支払った。ロイター通信。


《メディア展望》

 =カトリック新聞(4月17日)=https://www.cwjpn.com
★仙台教区サポートセンター=継続的支援体制に向け3司教と関係者が会議=東日本大震災
★教皇庁大使が被災地訪問
★被災児童・生徒を支援=日本カトリック学校連合会
★ローマで被災者支援=日本人会がコンサート=グレゴリアン大学
★原発増設計画 破棄求める=韓国の司祭ら

 =キリスト新聞(4月16日)=https://www.kirishin.com
★ネットワーク構築が急務=錯綜する情報の"交通整理"を="悲嘆"の理解も課題
★日韓のキリスト教異端相談所が警鐘=「新天地」元幹部が証言
★「統一協会問題キリスト教連絡会」=バチカン訪問、現状伝える
★「竹島問題」で離党の土肥議員="これからも双方の架け橋に"
★フロリダの牧師がコーラン焼却=アフガニスタンで抗議デモ

 =クリスチャン新聞(4月17日)=https://jpnews.org
★CRASHジャパン=地域教会通し「希望」を=5か所に救援拠点=ボランティア千人募集
★各地で震災支援ネットワーク=情報共有・活動の交通整理めざす=被災教会を地域の支援教会に=いわて教会ネット
★「闇に勝」目覚めに期待=再臨待望聖会に延べ千500人
★「時が悪い」からこそ=開催促した被災地からの声=ユーオーディア賛美の夕べ
★八束和心牧師が逝去=聖霊派の一致に尽力


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