世界キリスト教情報

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世界キリスト教情報 第1055信(2011.04.11)

  • 陳枢機卿が中国問題でバチカン高官を非難
  • 北京で地下教会が公共用地で礼拝計画し信徒拘束
  • ブルジョワ神父、メリノール会から除名か
  • 2011年度テンプルトン賞にM・J・リーズ氏
  • マレーシアで聖書に「キリスト教出版」と押印
  • パキスタンのキリスト者女性、投獄中に健康悪化
  • バチカンが「ブロッガー」のための集会
  • 《短信》
  • 《メディア展望》

◎陳枢機卿が中国問題でバチカン高官を非難

 【CJC=東京】香港カトリック教会の引退大司教ジョセフ・陳日君枢機卿が、中国政府との妥協策を模索している教会当局を手厳しく批判した。
 中国本土の司教には、対立回避ではなく、北京政府からの圧力に抵抗するよう勧めるべきだ、と言う。
 教会を自己の管理下に置こうとする中国当局の動きに反対するカトリックの指導的な声の役割を果たしてきた陳氏。バチカン(ローマ教皇庁)の指示が混乱していることは、ローマに忠誠を尽くすという司教の多くが、教皇の承認なしに中国政府が任命した司教の昨年11月叙階式典に参加したこと、教皇が分派的として非難している天主教(カトリック)愛国会の新指導者選出に参加した、ことにも表われている、と言う。
 「わたしたちの司教には勇気を供給する必要がある。しかし司教たちは見当違いの同情を受けている。それが奴隷的な屈従というぬかるみにより深くはまり込ませている」と陳氏。
 陳氏の挑発的とも言える発言は、バチカンに中国問題で影響力を持つベルギー・ルーバンのカトリック大学教授のジェローム・ヘインドリックス神父を直接批判したもの。しかし陳氏の議論が、他のバチカン、特に福音宣教省と国務省高官を批判していることは明らかだ。
 陳氏は、賢明なバチカンの「融和」政策が、中国に真正の宗教的自由をもたらすだろうという期待を否定し、ソ連との融和を目指した同様な政策が教皇ヨハネ・パウロ2世に拒否された、と主張している。
 そのヨハネ・パウロ2世が、北京からの強い圧力にも関わらず、中国人殉教者の列聖延期を却下した、とも指摘する。
 「対話や妥協は必要ではあるが、譲れない一線というものがなければならない。私たちの信仰と基本的な教会の規律を、北京政府を喜ばすために放棄は出来ない」と言う。


◎北京で地下教会が公共用地で礼拝計画し信徒拘束

 【CJC=東京】北京警察は4月10日、非公認の守望教会(プロテスタント)の信徒が公共用地で日曜礼拝を計画した、として数十人を拘束した。信徒の1人によると、これまで礼拝に使用していた飲食店から追い立てられた、と言う。
 計画を知った警察が警告し、一帯を立ち入り禁止にした。中国政府は、礼拝を公認教会にしか認めておらず、非公認の「家の教会」はさまざまな抑圧にさらされている。
 警察の拘束を逃れた教会員の1人がAP通信に、約200人が拘束され、付近の学校に留置された、と語った。携帯電話は押収されたという。十数人が警察によって市バスに乗せられ、走り去ったのを見た人もいる。
 守望教会のユアン・リン牧師は、前夜から自宅軟禁状態に置かれたため、参加出来なかった。自分の他にも少なくとも6人が自宅軟禁されたという。


◎ブルジョワ神父、メリノール会から除名か

 【CJC=東京】長く平和運動に従事していた、カトリック宣教会『メリノール会』のロイ・ブルジョワ神父は、女性の聖職叙階を支持したことに関し、上長のエドワード・ドーハティ神父と書記のエドワード・マクガバン神父から3月18日付け書簡で、15日間の期限付きで「公式撤回」を求められた。書簡はさらに、同神父を除名する際には、「還俗要求」と共にバチカン(ローマ教皇庁)教理省に連絡する、と警告している。
 ブルジョワ神父は2008年8月、ジャニス・セーブル=ドゥスジンスカ女性司祭の叙階式典に出席、説教した。これが自動的破門に当たる、と直後から問題になっていた。同神父は女性叙階支持の姿勢を変えず、今年2月2日には映画「バチカンを覆うピンクの煙」公開の際にパネルスピーカーとして参加した。これも、「上長の指示への不服従」と見なされた。
 ただブルジョワ神父は「司祭への召しは賜物であり、神から来たもの。男性として神からの召しが根拠のあるものだと言えるなら、どうして女性はそうでないと言えるのか」と撤回要求には応じない構え。


◎2011年度テンプルトン賞にM・J・リーズ氏

 【CJC=東京】2011年度のテンプルトン賞に英ケンブリッジ大学トリニティ・カレッジ学長のマーティン・J・リーズ氏が選らばれた。ジョン・テンプルトン財団が4月6日、ロンドンで発表した。リーズ氏は、宇宙に関する深い洞察で、人類最高の希望と最悪の恐怖について語れる理論天体物理学者。
 テンプルトン賞は、米国の投資家ジョン・テンプルトン氏が1973年に創設した。宗教間の対話・交流に貢献のあった宗教者・思想家・運動家を表彰するもので、賞金は100万ポンド(約1億3800万円)と高額。「宗教のノーベル賞」とも呼ばれる。


◎マレーシアで聖書に「キリスト教出版」と押印

 【CJC=東京】マレーシアで発行された聖書が「神」を「アラー」と表記したことからイスラム教徒の反発を買った事件で、政府は4月10日、抗争回避のため、聖書に「キリスト教出版」とスタンプを押す、と発表した。
 イスラム教指導者が、「アラー」をイスラム教徒以外が使用してはならない、と反発してから、政府はこの2年間で3万5000冊以上の聖書を押収した。
 その後は、番号が打たれ、「キリスト者限定」とのシールが貼られたものだけが使用を認められていた。
 マレーシア聖書協会が輸入した聖書5100冊も、これまでのものの上に新しくスタンプが押し直されることになった。政府提案を受け入れた聖書協会は「深く感謝している」と言う。


◎パキスタンのキリスト者女性、投獄中に健康悪化

 【CJC=東京】パキスタンのイスラム教冒涜処罰法は厳格で、明確な証拠なしでキリスト者が死刑に処せられることもある。その中でアシア・ビビさん(45)も死刑宣告を受けた。米宣教専門アシスト通信が報じた。
 5人の子どもを残してシェイクプラ地区監獄の独房に3カ月以上収監されているが、現在、水痘にかかり健康状態が極度に悪化した、という。


◎バチカンが「ブロッガー」のための集会

 【CJC=東京】インターネットでブログを運営しているカトリックの「ブロッガー」のための集会が5月2日、ローマで開催される。バチカン(ローマ教皇庁)文化評議会と広報評議会が主催する集会は、ブロッガーと教会当局者との対話を図り、ブロッガーたちの経験を聞き、理解を深めようというもの。バチカンから地域レベルまで活用法の提案なども計画されている。
 パネルディスカッションが2回予定されている。第一は、様々な言語を代表するブロッガー5人によるもの、第二は教会のコミュニケーションに関するもの。
 集会は、ヨハネ・パウロ2世の列福の翌日に行われるので、列福目当てにローマに来るブロッガーたちにも参加を呼び掛ける。ただ150人限定という。イタリア語、英語、仏語、ポーランド語、スペイン語の同時通訳も行われる。


≪短信≫CJC通信速報(Twitter:cjcpress)から。

≪太平洋≫
▽豪マイトランド=ニューカッスル教区のマイケル・ジョン・マロン司教(71)が「任務遂行に耐えられない」のを理由に辞任を申し出ていたが、教皇ベネディクト16世が承認した、とバチカン(ローマ教皇庁)が4月4日発表。
▽オーストラリアで、カトリック司祭3000人に調査したところ、その多くが司教を信頼せず、教義の重要な部分を信じていないjことがわかった。ENI通信報道。

≪インド・パキスタン≫
▽パキスタン唯一のキリスト者閣僚が殺害されたのを契機に浮上したキリスト者迫害。欧州の教会が対応に苦慮している。ENI通信。

≪中東≫
▽イラン政治警察が、福音派キリスト者を抑圧し、裁判所に有罪判決を出させるよう働きかけている、との情報。

≪欧州≫
▽バチカンのサンピエトロ大聖堂は巨大なドームで知られているが、安全性を点検したところ、推定より堅固なことが分かった。CWN報道。
▽バチカン(ローマ教皇庁)福音宣教省局長のサヴィオ・韓大輝〔ホン・タイ=ファイ)大司教が、伊日刊紙『アッベニーレ』とのインタビューで、政府からの圧力に抗して教会の権威を守ることの重要性を強調した。
▽バチカン(ローマ教皇庁)が、国際カトリック報道連合(UCIP)の運営に懸念を表明、名称から「カトリック」を削除するよう要求した。

≪アフリカ≫
▽コートジボアール内乱を避け、首都アビジャンのカトリック教会聖パウロ大聖堂に2000人が避難している。
▽コードジボアールの抗争で、宗教的対立に世界教会協議会が懸念表明。

≪北米≫
▽世界で最も影響力のある有名人を選出する米雑誌『タイム』の企画でアーティスト部門の1位にも選ばれたレディ・ガガがカリフォルニア州アナハイムでコンサート会場に向かうところ、原理主義キリスト者の抗議に会った。
▽米カリフォルニア州のコンパス・バイブル教会がイースター礼拝を宣伝する広告映画を作成したものの、「イエス」の名を2回触れただけで、問題だ、とされ広告会社から上映を拒否された。
▽北米キリスト教改革教会(CRCNA、信徒数約30万)のジェリー・ディクストラ代表の辞任が4月5日発表された。代行にブルース・アデマ氏が任命された。
▽エキュメニカル運動の中で、コミュニケーション(情報伝達)を再構築することが現在の課題だ、と世界キリスト教コミュニケーション連盟のカリン・アクテルステッター総幹事が語った。
▽世界福音同盟(WEA)は、米フロリダ州のテリー・ジョーンズ牧師がコーランを焼却したこと、またそれへの反発がアフガニスタンで暴動化し、国連職員を殺害したことを強く非難した。
▽米フロリダ州の教会でコーランを焼却したことに、アフガニスタンで反発のデモが暴動化したが、パキスタンにも飛び火しそうだ。CNS報道。
▽米教会協議会は、教会女性連合と提携して、ワシントンに女性の権利擁護のため活動する事務所を4月5日設置した。


《メディア展望》

 =カトリック新聞(4月10日)=https://www.cwjpn.com
★福島沿岸=津波と原発の傷 深く=南相馬市原町教会=信徒4人残る
★被災地支援へ=在日ブラジル人が力結集=日本各地の60グループ
★「東日本大震災支援全国ネットワーク」始まる
★外国人被災者のための多言語ホットライン
★カトリック東京国際センター=外国人被災の情報収集=仙台市中心部など訪問

 =キリスト新聞(4月9日)=https://www.kirishin.com
★深まる絆 続く模索=東日本大震災=「教会は何ができる?」="弔い"のための協働も視野に
★"危機からの救い祈ろう"=「内村鑑三と現代」テーマにシンポ=生誕150年
★ホーリネス教団が性暴力事件で検証=元牧師なおも加害を否認
★カトリック=高松教区、大分教区に新司教
★残るべきか、去るべきか=悩む宣教師 それぞれの葛藤

 =クリスチャン新聞(4月10日)=https://jpnews.org
★いわきから東京へ被災者の声=不安の中 見出した「福音宣教は急務」
★原発30キロ圏 教会は今...=復興に向け 神に希望=「住民いる限り留まる」牧師も
★災害カウンセリング=いかに寄り添えるか=サドルバック教会講師来日セミナー
★被災地に聖書・絵本を提供
★いのちのことば社を創立=ケネス・マクビーティ氏急逝


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