世界キリスト教情報

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世界キリスト教情報 第1052信(2011.03.21)

  • 「東北地方・太平洋沖地震」にキリスト教会も素早く救援
  • バチカンなどが緊急救援金を日本へ
  • 国内で海外でキリスト教団体も募金活動展開
  • 一部に宣教師避難の動きも
  • 世界教会協議会など、核兵器の撤去を要求
  • 米ルーテル派にカトリック復帰の動き
  • バチカン高官がロシア正教会最高指導者と会談
  • 《短信》
  • 《メディア展望》

◎「東北地方・太平洋沖地震」にキリスト教会も素早く救援

 【CJC=東京】マグニチュード9という日本の観測史上最大規模の「東北地方・太平洋沖地震」(東日本大震災)は、巨大な津波を誘発、さらには東京電力福島第一発電所の損壊・放射能流出、供給電力削減と被害の規模・種類が拡大の一途をたどった。そのニュースを受けて全世界から救援の手が差し伸べられる中、キリスト教会・関係団体からのすばやい救援も展開している。
 米南部バプテスト連盟の災害救援調査チームの2人が東日本大地震発生の翌日には東京に到着、活動を開始していたことが明らかになった。『ワールド・ビジョン』が派遣した救援専門家は、ハイチやパキスタン地震被害救援にも当たったが、今回の地震は「世界中どこでも見られなかった」と報告してきた、とレイチェル・ウォルフ報道担当。
 『バプテスト・ワールド・エイド』は米、シンガポール、ハンガリーから活動家を日本に送り込んだ。なお待機中、とバプテスト世界連盟のイーロン・ヘンリー報道担当が語った。
 米合同メソジスト教会救援委員会のメリッサ・ヒンネン報道担当は、どこから救援活動家を派遣するか、要望を聞いて調整したい、と語った。
 米国の大衆伝道者ビリー・グラハム氏関係の救援団体『サマリタン・パース』(フランクリン・グラハム総裁)は、日本の協力教会がトラックを確保、毛布、医薬品、食糧、水、緊急救援資材などの購入を始めた、ことを明らかにした。
 朝鮮日報によると、韓国飢餓対策機構(KFHI)、グッドネーバーズ、ワールドビジョンなどが、東日本大地震の被災地へ、物資支援や支援チームの派遣に向けた準備に入った。

※関連短信
『ローザンヌ運動』は、日本を襲った地震と津波で人たちが想像を絶する被害に、深い悲しみを示す、とリンゼイ・ブラウン国際担当が「報道発表」を明らかにした。
韓国キリスト教教会連合会(NCCK)、カトリック、大韓仏教曹渓宗、円仏教など宗教界は、「惨事で亡くなった日本国民に哀悼の意を示し、1日も早く被害が復旧することを望む」といったメッセージを一斉に発表した。朝鮮日報報道。


◎バチカンなどが緊急救援金を日本へ

 【CJC=東京】バチカン(教皇庁)開発援助促進評議会は3月14日、教皇ベネディクト16世が今回の地震被災者救援活動のために、日本カトリック司教協議会に15万ドル(約1200万円)を寄付する、と発表した。教皇は、日本の司教協議会に宛て10万ドル(約800万円)を送った。
 アジア・キリスト教協議会は10万ドル(約800万円)を支援する、と同協議会ヘンリエット・フタバラット総幹事が日本キリスト教協議会(NCC)に伝えてきた。NCCが明らかにした。

※関連短信
中国仏教協会は3月16日、北京の広済寺で、日本で発生した大震災の犠牲者のための法会を開いた。同法会に際して義捐金100万元(約1231万円)を集めたという。中国新聞社報道。


◎国内で海外でキリスト教団体も募金活動展開

 【CJC=東京】CNA通信によると、カトリック救援団体『カリタス・ジャパン』は、救援募金を呼び掛けている。
 英メソジスト教会の『ワールド・ミッション・ファンド』は日本の教会のため募金を開始した。
 朝鮮日報は、救世軍大韓本営は、3月18日から19日までソウル市内の約20カ所で「日本地震被害支援特別募金活動」を行う、と報じた。


◎一部に宣教師避難の動きも

 【CJC=東京】AP通信によると、モルモン教会(末日聖徒イエス・キリスト教会)の、仙台と東京にいた宣教師200人が放射能に汚染された原発付近からの避難を始めている。ジェフリー・R・ホランド長老は3月15日、在日宣教師638人全員の無事を確認した。
 米政府は、政府職員家族たち、英政府は不要不急の旅行者、中国政府も留学生などに、被災地だけでなく東日本からの避難を勧告しており、成田、関空、新潟などの各空港に輸送のためのチャーター機を派遣した国もある。


◎世界教会協議会など、核兵器の撤去を要求

 【CJC=東京】ENI通信によると、世界教会協議会などキリスト教団体は、欧州に配備されている米国の核兵器を全て撤去するよう要求する書簡を3月17日、北大西洋条約機構(NATO)、米、ロシアの指導者に送った。
 「冷戦時代の戦略の遺物として核兵器が約200発存在している。NATOは欧州における抑止・安全協力を再検討すべきだ」と言う。
 書簡はWCCのほか、欧州教会会議(CEC)、米国キリスト教会協議会、カナダ教会協議会の代表が署名している。


◎米ルーテル派にカトリック復帰の動き

 【CJC=東京】米週刊紙『ナショナル・カトリック・レジスター』が、ルーテル派からカトリックに復帰する動きを「ルーテル派の地すべり」という衝撃的な見出しで報じている。
 ルーテル派の著名な聖職者の例としてまず1990年のリチャード・ジョン・ニューハウスを取り上げ、それ以降転会の動きが加速している、と言う。
 2000年にはカナダ・ルーテル派のジョセフ・ジェイコブソン監督がカトリックになった。2006年に「イエスの救いを実際に繰り返せる教会は他にない」とウエスタン・カトリック・リポーター紙に語っている。
 2003年、『ルサラン・フォーラム』編集長だったレオナード・クラインがカトリックに転会した。現在、この2人はカトリック司祭。
 ルーテル派の神学者にも、カトリック教会に転会する数が増えている。その中には今、カトリック系大学で教鞭をとる人もいる。ポール・キスト(2005年)、リチャード・バラード(2006年)、ポール・アビー(同)やトーマス・マクマイケル、ミッキー・マトックス、デービッド・フェイガーバーグ、ブルース・マーシャル・ラインハルド・ハッター、フィリップ・マックス・ジョンソン、さらにはマイケル・ルートに及んでいる。
 ルートは、「ルーテル教会は、わたしにとって40年間も知的霊的な家庭だった。しかしわたしたちはみずからの信念の主ではない。エキュメニカル(教会一致の)研究の危険は、別の伝統が、心の中に深刻な変革に至らせるものを見出させることにある。先ごろ、わたしには、もはや自分を誠実さをもってルーテル派の神学者だということを許さないほどに、格闘なく、自分が心からカトリックになったということが明白になった。これは決断というよりは認識の問題だ」と言う。
 転会者の多くは『聖三一協会』のメンバー。同協会は1997年に、ルーテル派諸教会の告白的霊的革新を図るために組織された。
 さらに同協会に留まらず、『アングロ=ルサラン・カトリック教会』(ALCC)の聖職者・信徒が、先ごろ聖公会離脱者受け入れのため米カトリック教会に設置された制度『オルディナリアーテ』に加入する可能性も出てきた。
 ルーテル派とアングロ・カトリック双方の伝統の上に立つALCCは、2009年5月13日、当時のキリスト教一致推進評議会議長ウォルター・カスパー枢機卿に、「マルチン・ルター神父の過ちを無効にし、わたしたちの主イエス・キリストが、祝福された聖ペトロを通して設立された一つの、聖なる、真のカトリック教会に復帰することを希望する」と述べていた。書簡は教理省に送られた。
 2010年10月、ALCCは教理省から書簡を受け取ったが、それには、ドナルド・ウール大司教が『アングリカノルム・コエティブス』(聖公会のグループ)設立を援助するための代表に任命された、との伝達があった。ALCCは、再一致の一部に含めて欲しい、と応答したと言う。

※関連短信
教皇ベネディクト16世は、このほどカトリック教会に転会した英国国教会前主教3人に「モンシニョール」の称号を授与した。


◎バチカン高官がロシア正教会最高指導者と会談

 【CJC=東京】バチカン(ローマ教皇庁)キリスト教一致推進評議会議長のクルト・コッホ枢機卿がモスクワを訪問、3月16日、ロシア正教会の最高指導者モスクワと全ロシアのキリル総主教と会談した。
 総主教座から発表された声明によると、会談場所は総主教公邸で行われ、両教会の間の「主要な協力分野」を中心に話し合った。これらの問題は、神学的対話のための国際合同委員会で討議されてきた。
 神学的相違にも関わらず、「欧州における伝統的なキリスト教価値観の防衛。社会経済面におけるキリスト教的立場の擁護、科学的研究や生命の倫理など、両教会ともすでに立場が一致している領域、たとえば欧州における伝統的なキリスト教価値観の防衛、社会経済面におけるキリスト教的立場の擁護、科学的研究や生命の倫理などに関しては、国連、欧州連合などの国際機関での提携を強化する」と述べている。
 総主教と枢機卿は、「キリスト教恐怖症」問題にも言及した。キリスト者が迫害にさらわれている地域だけでなく、古くからのキリスト教伝統のある欧州各国でも問題になっている、と言う。
 枢機卿はまた、聖キリル・メトディオス学院やモスクワの神学校などを訪問した。


≪短信≫CJC通信速報(Twitter:cjcpress)から。

≪中東≫
マロン典礼カトリック教会の新総主教にレバノン・ジベイルのベチャラ・ライ主教が選出された。

≪欧州≫
カトリック修道会『イエズス会』のアドルフォ・ニコラス総長は、同会のローマ本部の組織を改革する、との書簡を全世界の会員に送った。
カトリック教会の世界青年の日大会は8月18〜21日にスペインのマドリッドで行われるが、登録者はすでに30万人を超え、最終的には150万人が参加すると主催者側は見ている。

≪アフリカ≫
エジプト軍が、カイロ南郊で焼き討ちされたシャヘディン教会の再建を始めた。CNN報道。

≪北米≫
米カリフォルニア州ガーデングローブのクリスタル・カテドラル聖歌隊は、神が性交は既婚者の間だけのものとされた、との宣言に署名することを求められている。
米オレゴン州ユージンの第一クリスチャン教会が1911年3月12日に埋められていたタイムカプセルを、100周年を機に掘り出した。聖書、文具、教会の図面などが封じ込められていた。

≪中南米≫
国際エキュメニカル平和会議が5月17〜25日にジャマイカのキングストンで行われるが、その最終準備のため現地の教会指導者らが3月15日会議を開いた。


《メディア展望》

 =カトリック新聞(3月20日)=https://www.cwjpn.com
 震災後の停電等で、印刷と配送が困難な状況となっているため、急遽休刊

 =キリスト新聞(3月19日)=https://www.kirishin.com
★主演・村上弘明さん語る=留岡幸助の試練描く=映画「大地の詩」=使命全うする幸せ
★日本宗教連盟=東京でシンポジウム=「代理出産」の問題点を考える
★留岡幸助の生涯「大地の詩」完成試写=東京・中野=山田監督らあいさつ
★パキスタン=唯一のカトリック閣僚バッティ氏殺害される

 =クリスチャン新聞(3月20日)=https://jpnews.org
★異端「新天地」だましの手口=元最高幹部が証言=「信徒に情報与え警戒を」
★新改訳全面改定による新たな翻訳聖書=いのちのことば社に出版頒布委託で合意
★変わらぬキリスト焦点に半世紀=第50回 日本ケズィック・コンベンション
★準強姦容疑で逮捕の卞在昌被告=犯行否認のまま懲役7年の求刑=水戸地裁土浦支部
★「君が代」強要 見解質す=地方選候補者に有権者の声


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