世界キリスト教情報

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世界キリスト教情報 第1048信(2011.02.21)

  • 英国で同性間カップルの宗教的「結婚式」容認へ
  • カトリック教会は教勢増加
  • 米主流各派の退潮続く
  • 中央委、諸宗教間関係の激変にWCCの対応問う
  • 「神は倫理の怪物か」無神論者の批判に答える書が米国で出版
  • 《短信》
  • 《メディア展望》

◎英国で同性間カップルの宗教的「結婚式」容認へ

 【CJC=東京】英内務省は2月13日、婚姻法を改正し、同性間カップルが宗教的「結婚式」を行うことを認める方針を明らかにした。リン・フェザーストーン内務閣外大臣(平等担当)の発表では、イングランドとウエールズにおいて禁止されている、宗教的設定の元で市民間の「結合」式典執行を認めようというもの。ただ礼拝堂で行われる同性間の「結合」式典が正規な「結婚」とされるのか、は明確ではない。
 現行の『市民パートナーシップ法』は2005年12月に施行された。無宗教形式による同性間の「結合」式典実施を認めたもの。その次の段階として宗教団体が同性結婚式を行うことを認める方向で検討すると言う。
内務省は「同性間カップルが望むなら、宗教的設定の中でその関係を証明することを宗教団体としてどのように許すかを含め、市民パートナーシップの次の段階として宗教団体が同性結婚式を行うことを認める方向で政府は検討する」と言う。
 『市民パートナーシップ法』は、同性間カップルにも異性間の婚姻とほぼ同等の権利を認めているが、差別的だ、との批判もある。同性愛者の権利擁護派は、同性間のカップルにも「結婚」を認め、一方で異性間カップルにも市民パートナーシップを認めるべきだ、という。
 今回の内務省の方針に、英国国教会は直ちに教会堂や関連施設での同性間の「結合」式典を認めないと言明した。内務省の案は「矛盾」と「混乱」をもたらす、と言う。ただヨーク大主教のジョン・センタム氏は公営BBC放送で、「自由民主主義を信じており、それは実際には全ての人が平等であることを望む」と慎重ながら受け入れの方向を示唆している。
 またサンデー・テレグラフ紙は、クエーカーやユニテリアン、ユダヤ教自由派などは、内務省案に理解を示している、と報じた。
 英国立統計局によると、2010年5月現在、英国内の同性間カップルは2万6000組。


◎カトリック教会は教勢増加

 【CJC=東京】全世界のカトリック者はなお増加している。2009年11億8000万人(前年比1500万人増)。その半数が南北アメリカに居住。聖職者や神学生の数も増加している。2月19日、バチカン(ローマ教皇庁)国務省長官のタルチジオ・ベルトーネ枢機卿が教皇ベネディクト16世に提出した『教皇年鑑』2011年版で明らかになった。
 地域別に見ると、2008年から09年に掛けて、南北アメリカは総人口では全世界の13・6%を占めているが、カトリック者は同49・4%を占めている。アジア人口は全世界の60・7%だが、カトリック人口は同10・7%で、前年より0・1%増加。
 全世界の司教は08年の5002人から09年5065人と微増。司祭は教区司祭、修道司祭合わせて2000年の40万5178人が09年には41万593人に増加している。前年比で見ると修道司祭が0・08%減少したのに対し教区司祭は0・56%増となっている。修道司祭はアジア、アフリカで増加した以外は各地域とも減少している。
 終身助祭は09年に3万8155人と前年の3万7203人比2・5%増。
 修道女は11万7978人で前年の11万7024人比0・82%増。


◎米主流各派の退潮続く

 【CJC=東京】米国ではプロテスタント主流各派の退潮が続いている。教会員数でローマ・カトリック教会、南部バプテスト連盟の1、2位は変わらないものの、2月14日発行された米加教会年鑑2011年版によると、カトリックが1%弱でも成長したのに対し、南部バプテストは3年連続の減少となった。
 主流プロテスタントの会員数減少は1970年代から。米国の教会員全体では約1%減少して1億4580万人となった。
 同年鑑は、2009年の数字を2010年に集計した。上位25教派では、長老教会(PCUSA)の減少が2・6%と最大。その他、合同メソジスト教会、福音ルーテル教会、聖公会、ルーテル教会ミズーリ・シノッドも減少した。
 増加したのは僅か6教派。エホバの証人の増加率が4・37%と最大だった。独自の訪問活動が奏功したと見られる。またペンテコステ系では、アセンブリーズ・オブ・ゴッドとチャーチ・オブ・ゴッドの2教派が増加している。
 25教派の中にペンテコステ系が4教派数えられる。
 上位10教派は次の通り。
(1)カトリック教会=6850万人(0・57%増)、(2)南部バプテスト連盟=1610万人(0・42%減)、(3)合同メソジスト教会=780万人(1%減)、(4)末日聖徒イエス・キリスト教会(モルモン教会)=600万人(1・42%増)、(5)チャーチ・オブ・ゴッド・イン・クライスト=550万人(正式報告なし)、(6)米国ナショナル・バプテスト会議=500万人(正式報告なし)、(7)福音ルーテル教会=450万人(1・96%減)、(8)アメリカ・ナショナル・バプテスト会議=350万人(正式報告なし)、(9)アセンブリーズ・オブ・ゴッド=290万人(0・52%増)、(10)長老教会(PCUSA)=270万人(2・61%減)。


◎中央委、諸宗教間関係の激変にWCCの対応問う

 【CJC=東京】世界教会協議会(WCC)中央委員会は2月16日、ジュネーブのエキュメニカル・センターで開催された。中央委員会は総会に次ぐ重要意思決定機関で、2006年2月、ブラジルのポルトアレグレで開催された第9回総会以来、4回目の開催。
 中央委では、2013年10月に韓国の釜山で開かれる第10回総会では、一致、正義、平和問題が取り上げられなければならない、と言う点に議論が集中した。またエキュメニカル(教会一致を目指す)な、また諸宗教間関係が急激に変化していることへの対処方法も協議された。WCC自体の在り方も問われる場面もあった。
 WCCとの共同作業グループ議長、バチカン(ローマ教皇庁)キリスト教一致推進評議会のゴスベール・ビャムング神父は、世界のキリスト教が今直面している問題に立ち向かうことの必要性を指摘した。
 この半世紀、カトリック教会とWCCは、「不信と憎悪が信頼と友好にとって代わられる」ような関係から、さらに「教理面での合意を共通の証しと奉仕に変えてゆくことが課題」となったと言う。
 アルメニア使徒正統教会(レバノン)のナレグ・アレメジアン大主教は、移住者への宣教、宣教活動と諸教派間の関係、グローバリゼーションの挑戦への対決などに際し、目に見える教会の一致が必要だ、と訴えた。

※関連短信
▽世界教会協議会が設立したジュネーブ近郊ボセーにあるエキュメニカル研究所が、ジュネーブ大学との協定により、学生が所定の学業を終え、試験に合格した際には同大学の学位を取得できることになった。


◎「神は倫理の怪物か」無神論者の批判に答える書が米国で出版

 【CJC=東京】宗教は暴力と不正の根源、と無神論者の批判は昔からのもの。キリスト教については、旧約聖書の多くの記述が現代の価値観と相容れないと指摘する。
 神学者ポール・コパーン(パームビーチ・アトランチック大学教授)がこれら批判に答え「神は倫理の怪物か=旧約の神のメーキングセンス』(ベイカー・ブックス社=米ミシガン州エイダ)を出版した。カトリック系ZENIT通信が報じた。
 哲学者リチャード・ドーキンズが神を「倫理の怪物」とし、ねたみ深く、卑劣で、不正、執念深い、と描写したのを受け、書名にも取り入れた。
 批判する側では、クリストファー・ヒッチンズが、旧約聖書は人身売買や奴隷、虐殺を正当化している、と言い、ダニエル・デネットは、神が自らを崇められることに貪欲で、人を自分の姿に似せて創造したことで、虚栄心を露わにした、と言う。
 コパーンは、自分の姿に人類を創造することで、神は実際にその優しさを示し、わたしたちば神と結び付き、理性的に考え、創造的であることを可能にした、とする。「これは特権であって束縛ではないのだ」と言う。
 エゴイズムの現われなどでは全くなく、神を崇めさせようとされるのは、究極の現実からわたしたちを離れさせないことを望まれていることの反映だ、とコパーンは説明する。
 さらに神の謙虚さをキリストの受肉に見ることが出来る、キリストは人の形をとり、わたしたちのために十字架上で死なれた、とコパーンは指摘している。


≪短信≫CJC通信速報(Twitter:cjcpress)から。

≪太平洋≫
▽豪カトリック教会で11月に『ミサ典礼書』の英語新訳使用を指示されても、元来のラテン語により近い現行訳を使用する、と2桁台の司祭が公言している。

≪中東≫
▽イラク第二の都市モスルでは緊迫事態は緩和してきたものの、キリスト者はなお恐怖の中で生活している、とカルデア典礼カトリック教会のエミル・シモウン・ノナ大主教がニュースマックスの取材に語った。
▽パレスチナ自治区ベツレヘムの『生誕教会』がユネスコの世界遺産委員会に登録を申請している。

≪欧州≫
▽国際規模で活動を展開するカトリック救援・開発団体『国際カリタス』のレスリー=アン・ナイト総裁の再任をバチカン(ローマ教皇庁)国務省が拒否している、と英週刊誌『タブレット』が報じた。
▽教皇ベネディクト16世のイエスに関する著作第2巻は、バチカン出版部『リブレリア・エディトリチェ・バチカーナ』が30万部を印刷中で3月11日に売り出される。受難と復活に焦点を当てたもの。
▽ポーランド・カトリック教会系の出版社ツナク社は、ナチスのユダヤ人虐殺に関連して、当時のポーランド市民がユダヤ人を引き渡し、その財産を横領した、と告発する著作『黄金の収穫』(ヤン・グロス著)に「反ポーランド的」との批判にも関わらず、出版を決めた。
▽アイルランド・カトリック教会ダブリン大司教ディアルムイド・マーティン氏が2月20日、聖職者の性的虐待に謝罪する行為として、犠牲者の女性5人、男性3人の足を洗った。

≪アフリカ≫
▽エジプトのギザで、イスラム教徒が2月19日、コプト教徒の家に侵入、18歳のネスマ・サルワトさんを誘拐した、とアッシリア国際通信が報じた。
▽エジプトのキリスト者は全人口の1割とされてきたが、米キリスト教調査団体『ピュー』によると、最近の調査では5%という。その大部分はコプト教会に属している。
▽エジプトのコプト派キリスト者は、今回の自由化への動きを歓迎しながらも、イスラム教徒、特に『ムスリム同朋団』が実権を握った場合、抑圧が高まることを懸念している。AP通信が報じた。

≪北米≫
▽米テレビ伝道者ベニー・ヒン氏は「信仰治癒」でも知られているが、女性の伝道者ポーラ・ホワイト氏とローマで手をつないでいる写真がナショナル・エンクワイラー誌に掲載されるなど、倫理面での問題が発覚、著作出版を契約していたストラン・コミュニケーションズ社から契約違反で訴えられた。
▽米陸軍従軍司祭団副長のドナルド・ルサーフォード准将が2月17日、同性愛将兵の生き方を受け入れ、それを援助するよう語った。
▽米マサチューセッツ州西部のカトリック教会3カ所の信徒が、教区の閉鎖方針に反発、教会堂に立て篭もるなどしていたが、バチカン(ローマ教皇庁)が、ティモシー・マクダネル司教に閉鎖撤回を指示した。
▽米国のアフリカへの衣料支援が本来の意図から逸脱して来ているのではないか。RNS通信が実態を報じた。

≪中南米≫
▽キューバ政府は、拘束している反体制派の釈放を進めて来たが、さらに7人を釈放する。カトリック教会が2月19日、明らかにした。
▽アマゾン地域の環境を破壊したとして、エクアドル・ラゴアグリオ裁判所は2月14日、米石油会社シェブロンに86億ドル(7200億円)の賠償支払いを命じた。
▽メキシコ東部モンテレー工科大学で2月15日、トニー・ブレア元英首相は、学生たちに「中国では、ヨーロッパ以上にイスラム教徒が多く、また中国のカトリック者はイタリアより信仰を実践している」と語った。


《メディア展望》

 =カトリック新聞(2月20日)=https://www.cwjpn.com
★教皇、エジプト情勢で=混乱の平和的解決祈る
★長崎=家族内で宗教が異なる時の姿勢=「黙想会」で具体的に学ぶ
★列聖列福特別委員会が計画=右近最期の地に巡礼=現地マニラで歓迎受け共に祈る
★ドン・ボスコの聖遺物=各地を巡礼=東京で教育シンポジウムも
★四旬節を迎える前に=「求道者と歩む信仰」学ぶ=横浜教区典礼委員会が研修会

 =キリスト新聞(2月19日)=https://www.kirishin.com
★東京・小金井="違い持ちながら一つに"=市内11教会が一致祈祷会
★一致祈祷週間に各地で集会=NCC・カトリック中央協議会
★救世軍大将にリンダ・ボンド氏=歴代3人目の女性
★WCRP日本委=創設40周年で記念式典=「世界のモデルになり得る」
★「日韓教会交流史」研究会が始動=聖学院大学×長老会神学大学=共同研究の可能性示唆

 =クリスチャン新聞(2月20日)=https://jpnews.org
★明治期キリスト者青年の志 今に=熊本バンド結盟135周年=花岡山で早天祈祷会=命がけの誓約に 思い新た
★救世軍新大将選出 女性で3人目=「神への信頼と従順を誓う」
★多様な教会"一つ"を体現=名古屋キリスト教協議会60周年=若い世代の問題を共有するには=記念会で討議
★住民基本台帳ネットワーク切断に違法判断=東京地裁判決=関口博国立市長=「市民の生命守り離脱続ける」
★エジプト騒乱で少数派キリスト教徒が危機に=イスラム過激派が勢力を伸ばす?


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