世界キリスト教情報

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世界キリスト教情報 第1047信(2011.02.14)

  • 米合同メソジストが同性愛問題に4月に審判
  • 難民保護に動くメキシコの神父自身に脅迫の手
  • iPhoneで告解は出来ない、とバチカン
  • カナダ聖公会が連邦最高裁に分離派の提訴却下を要請
  • 司祭の性的虐待隠ぺい報道にオランダの枢機卿反論
  • 《短信》
  • 《メディア展望》

◎米合同メソジストが同性愛問題に4月に審判

 【CJC=東京】米合同メソジスト教会でウイスコンシン州のエミー・デロン牧師の審判が4月11日行われることになった。
 同牧師は牧師に任職して14年。最近では同性愛擁護グループの長を務めていた。問題の事件は2009年に、同性愛者の結合式典を司式するのに同意したことがきっかけ。その年、牧師は16年間連れ添ってきたパートナーとの関係を州の家庭関係会議に登録した。牧師はそれらの行為を教会ウイスコンシン年会(地域組織)に報告した。
 「わたしは、自身のあり方を隠し、2人が別々に生きているのを隠すことが、修復不可能になってしまうかも知れない方法で霊と精神に負担を掛けていることが、何年もかけ、分かってきた」と言う。
 同派の戒規には、「同性愛の実施は、キリスト教の教義と相容れない。それ故、公然同性愛者は候補と認められたり、聖職に叙階されたり、合同メソジスト教会で役職に任命されることはない」との規定がある。
 戒規にはまた結婚は男性と女性の間のこと、とされている。同派の最高審判機関『規則協議会』は2009年に、同性間の結合式典を司式することは、それを合法としている州にあっても、合同メソジストの聖職としては違反、と判示している。
 デロン牧師を審問したウイスコンシンの調査委員会の姿勢にも戸惑いが見られた。2010年12月10日に発表された報告書で、委員会は彼女の性的指向を公然と認めた「強烈な勇気」を賞賛したものの、事態は「基本的に不正」と評価している。
 「委員会は、性的指向による違反が、人間の性と平等の権利は性的指向に関係ないとする戒規の社会的原則と相容れないとしても、このような事態を違反とする合理的な基盤があるか考慮することを求められた」と報告書は述べている。


◎難民保護に動くメキシコの神父自身に脅迫の手

 【CJC=東京】メキシコで中南米からの難民が麻薬取引に引き込まれるなど虐待されるのを防ごうと努力しているアレハンドロ・ソラリンダ・グエラ神父。その神父自身に脅迫の手が伸びていることに、連邦政府に保護を求める動きが出ている。
 カトリック系ZENIT通信によると、メキシコ上院が2月8日、連邦政府とオアハカ州当局に、同神父の保護を要請した。
 神父は、中米諸国からメキシコを経由して米国へ入国を図る難民のためのシェルター(保護施設)を運営している。
 難民たちは身代金目当てに誘拐されたり、米国への麻薬密輸に利用されたり、麻薬カルテル間の抗争で殺人を強制されたり、と犯罪に利用されることが続発している。
 この虐待防止に神父が声を上げ救援活動に乗り出したことから、今度は神父自身が脅迫の対象になったもの。
 『路の兄弟』と名付けられたシェルターも襲撃されている。中には難民を敵視し、犯罪者と見なす現地住民によるものもある。
 このほど神父は、メキシコと中米諸国政府が、誘拐、強奪などの犯罪阻止を図ることなしに、問題の責任を押し付け合っている現状を遺憾だ、と指摘した。
 神父によると、メキシコ政府は「国のイメージをきれいなもの」に出来ていない。ただ「犯罪がメキシコで行われていることも否定出来ない」にしても、とにかく犯罪とは戦わなければならない、と言う。


◎iPhoneで告解は出来ない、とバチカン

 【CJC=東京】カトリック教会で信徒に求められる「告解」。ミサに預かる前提とまでされていたものが、徐々に敬遠されるようになった。中には「告解」の意義、方法すらうとい信徒が出るようになった米国で、告解準備用にインジアナ州のリトル・アイアップス社が開発した『告解=ローマ・カトリック教会アプリ』がiPhoneなど携帯電話・スマートフォン用に発売された。販価1・99ドル(約160円)。
 開発担当者のパトリック・ライネン氏は、教皇ベネディクト16世が、「新しい技術をよい目的のために活用せよ」と語ったことから、アプリの開発を思いついたという。アプリでは、告解室での手順や、方法の一覧もわかる。
 実際の告解と同じように事が進むものの、このアプリはこれまでの告解に取って代わるものではない、というのが開発者の姿勢。むしろ実際に司祭の所に行く前に、告解への理解を深めるのに役立つとしている。
 フォートウェーン・サウスベンド教区のケビン・C・ローズ司教の承認を得て発売されたが、教会がこのモバイル用アプリを認めたことに着目した一部のメディアが、iPhoneでも告解が可能になったと報じたことから話題となった。
 ただバチカン(ローマ教皇庁)は、フェデリコ・ロンバルディ広報事務所長が、「告解には罪を悔いる本人と聴罪司祭との個人的な対話が不可欠だ」と述べ、告解の代用にはならない、とクギをさしている。
 またアプリでは、利用者の良心を、性別、年齢、未既婚などを元に判断する。個人情報保護には配慮されているので、利用者は秘密を公開されることはないとしてはいるが、仮にiPhoneで告解した場合、個人情報が流出する危険が全くない、とも断言出来ない。


◎カナダ聖公会が連邦最高裁に分離派の提訴却下を要請

 【CJC=東京】カナダ聖公会ではブリティッシュ・コロンビア州ニューウエストミンスター教区は2月11日、連邦最高裁に、分離派の提訴を却下するよう要請した。分離派は3年以上も前から、同性間の結合祝福に反対、『アングリカン・ネットワーク・イン・カナダ』に加入していた。
 カナダ通信によると、離脱後、教会堂と銀行預金などの所有をめぐって、訴訟が行われ、州控訴裁と州最高裁はカナダ聖公会側の主張を認めたことから、分離派が連邦最高裁に上告したもの。
 聖公会側は、分離派司祭のいた教会には新たに司祭を任命する計画。教区民には離脱を勧めない、と言う。
 分離派の弁護士チェリル・チャン氏は、連邦最高裁に持ち込むのは、神学上の違いで分裂した時の課題はあらゆる教派に影響することだから、と言う。
 ただ聖公会側は、対立は法律問題であり裁判には経費が掛かると言う。分離派は、連邦最高裁が却下したり、敗訴した場合には司祭は建物を明け渡す、と語っている。


◎司祭の性的虐待隠ぺい報道にオランダの枢機卿反論

 【CJC=東京】オランダ・カトリック教会の元ユトレヒト大司教アドリアヌス・シモニス枢機卿(79)が、児童に性的虐待を加えた司祭を1990年代にかばったとの報道に反論、問題の聖職者を治療させたが、その後の虐待については関知していない、と言う。
 問題は、同枢機卿が25年にわたって大司教を務めていた間のこと。オランダを占領したナチスによる残虐行為について、第二次大戦後、知らなかったと説明したことも憤激を買った。
 オランダのメディアは、同枢機卿が問題の司祭を、治療目的で異動させてから、その後の虐待について被害者の親からの苦情を聞きながら、適切な措置をしなかった、と報じていた。


≪短信≫CJC通信速報(Twitter:cjcpress)から。

≪アジア≫
▽カトリック教会ソウル大司教区は2月9日、視覚障害者のための「特別教区」設立を発表した。ステパノ・コ・ヒョンソ神父を担当司祭に任命した。
▽米植民地時代にフィリピンに伝わったプロテスタント宣教が100周年を迎えた。
▽インドネシアのイスラム過激派が2月8日、ジャワ島中部テマングンの裁判所や教会2カ所を焼き討ちした。イスラム教を誹謗したとして禁固5年の判決が出たことに反発、被告の死刑を要求してのこと。
▽ネパールのジャラ・ナス・カナル新首相に、英キリスト教擁護組織『クリスチャン・ソリダリティ・ワールドワイド』が新憲法の施行とキリスト教保護を訴えた。

≪インド・パキスタン≫
▽パキスタン・パンジャブ州で、キリスト者青年イムラン・マシ氏がイスラム教徒で大地主の雇用者に虐待、殺害された、とバチカンのFIDES通信が報じた。
▽パキスタンに隣接するカシミール地方で、聖書を読んでいた、という理由で10代の少女2人が1月31日射殺された。

≪中東≫
▽遊牧民によってエリトリアから拉致誘拐され、シナイ半島の砂漠に幽閉されている人たちの中で11歳の少年もいることが判明した。イタリアのNGO『アゲンチア・ハベシア』が伝えた。
▽イラク政府観光省は2月9日、教皇ベネディクト16世が来年にも、アブラハムの生誕の地ウルを巡礼訪問する可能性があることを明らかにした。
▽パレスチナ自治区ヨルダン川西岸地区のクエーカーがイスラエルの侵攻によって生活が脅かされていることに抗議、ボイコットを呼び掛けている。

≪欧州≫
▽ロシアのドミトリー・メドヴェージェフ大統領がイタリアを訪問する際、教皇ベネディクト16世とも会見する、とRIA・ノボスチ通信。
▽ウクライナのビザンチン典礼カトリック教会の指導者ルボミル・フサル枢機卿(77)が健康上の理由で辞表を提出していたが、教皇ベネディクト16世が受理した。
▽ポーランド東部ルブリンのヨーゼフ・ジチンスキー大司教(62)が滞在先のローマで2月10日急死した。最初は風邪のためとされていたが、検視の結果、心臓麻痺と判明した。神学者で著作も多数ある。
▽ハンガリーで活動を開始したキリスト教通信『ボスニュース・ライフ』は2月9日、メディアとして登録するよう、政府から通告を受けた。
▽独カトリック神学者の教会改革提案に、司教協議会のハンス・ランゲンドルファー書記は、教理に抵触するものが多い、と消極的な反応。
▽サッカー・ワールドカップに優勝したスペイン・チームがカップを教皇ベネディクト16世に贈呈し、2月14日に接見する予定だったが、11日取り消し、8月に延期することになった。
▽教皇ベネディクト16世が典礼秘跡省の改変を意図しているのは、第二バチカン公会議が示した典礼改革にブレーキを掛けるため、とする観測を、報道事務所長のフェデリコ・ロンバルディ神父が否定した。
▽故教皇ヨハネ・パウロ2世の列福式が5月1日に行なわれるのを目指して、巡礼250万人がローマを訪問すると見られている。ローマはすでに満員。宿泊費も急騰、二つ星クラスで3万7000円、四つ星では20万円にもなっている。
▽教皇ベネディクト16世が、5月15日の第48回『世界召命祈願の日』に向けたメッセージを発表した。教会の全てのメンバーに、召命を盛んにすることの必要を訴えた。
▽教皇ベネディクト16世は、聖座財務情報監視局局長に、聖座財務管理局局長のアッティリオ・ニコラ枢機卿を兼任を発令した。聖座財務情報監視局は、マネーロンダリング(資金洗浄)とテロリズムへの資金供与防止の国際的取り組みに協力するため設置された。
▽バチカン放送が1931年に電波を出して以来、80周年を迎えた。
▽国土の4分の1が海面下にあるオランダで、建設業のヨハン・フイベルス氏が洪水に備え、ドルトレヒトで現代版『ノアの箱舟』の建造を進めている。
▽仏国鉄(SNCF)がパリ郊外ボビニーにある廃駅を、ナチの強制労働収容所に送られた多数のユダヤ人を記念する施設として提供することになった。
▽英国国教会が洗礼式の際に、教会員特に普段教会に来ない人でも理解できるよう、わかりやすい言葉を使うことにした。

≪北米≫
▽カトリック教会ロサンゼルス教区は、ニューヨーク・タイムズ紙の報道に応え、マーチン・P・オロレン神父を教会の義務から解放した、と述べた。60年代に女子高校生と性的関係を持ったことを認めたため。
▽米宣教団体『ライフウエー・クリスチャン・リソーシズ』がホルマン聖書(HCSB)をネット上に11月無償公開したところ、利用者が急増している。
▽米長老教会(PCUSA)上級審判機関は、同性愛カップルの結婚式を司式したジーン・K・サザード牧師を教規違反とする下級機関の判定を否認した。
▽バラク・オバマ米大統領は2月5日、諮問機関『信仰基盤の隣人協力機構』の顧問に、米福音同盟(NAE)のレイス・アンダーソン理事長や、米聖公会のキャサリン・ジェファーツ・ショリ総裁主教など12人を選出する意向を明らかにした。
▽米宣教団体『オープン・ドアーズ』は、第3回「抑圧された人たちへの情熱」賞を、『クリスチャン・ポスト』に授与することにした。
▽米連邦捜査局(FBI)は、サイエントロジー教会が、人身売買や給料支払いに関し不正を行った容疑で捜査に入った。
▽カナダ聖公会ではブリティッシュ・コロンビア州ニューウエストミンスター教区は2月11日、連邦最高裁に、分離派の提訴を却下するよう要請した。分離派は3年以上も前から、同性間の結合祝福に反対、『アングリカン・ネットワーク・イン・カナダ』に加入していた。

≪中南米≫
▽メキシコで中南米からの難民が麻薬取引に引き込まれるなど虐待されるのを防ごうと努力しているアレハンドロ・ソラリンダ・グエラ神父自身に脅迫の手が伸びていることに、連邦政府に保護を求める動きが出ている。


《メディア展望》

 =カトリック新聞(2月13日)=https://www.cwjpn.com
★"地方での宣教"テーマに=修道会宣教会フォーラム開催=沖縄
★教皇、奉献生活者に=み旨を行う喜びを示すよう促す
★除雪作業 各教会で続く=容易に解けず「日に2、3度」も=東北・日本海側で記録的大雪
★長崎=日本二十六聖人殉教記念ミサ=西坂に2600人集う
★新燃岳噴火の降灰=都城=ミサ後、協力して掃除=学校・幼稚園は通常どおり

 =キリスト新聞(2月12日)=https://www.kirishin.com
★東京高裁=予防訴訟で逆転判決="信仰上の教義に反しない"=「ピアノ裁判」最高裁判決を踏襲
★朝祷会年頭集会=エキュメニカル礼拝="キリストにあって一つ"
★"教会フリーペーパー"発行=北海道・士別教会=他教区の教会員にも
★牧会塾=プレスクールで山口陽一氏が指摘=「牧師像を築きにくい」
★「一線を越えたこともあった」=宣教と政治めぐり=グラハム氏認める

 =クリスチャン新聞(2月13日)=https://jpnews.org
★東京高裁=「予防訴訟」逆転敗訴=「君が代強制」通達の違法性 門前払い
★イラン=キリスト者70人逮捕=ケープタウン会議参加者も
★自殺者3万人超13年連続=封印された死の解除を=偏見・差別から尊厳回復へ向け=宗教者の役割に期待
★朝祷会が40年=若返りへ他団体と連携模索
★がんで逝ったホスピス医の夫=遺志継ぎ出版記念会で伝道

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