世界キリスト教情報

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世界キリスト教情報 第1045信(2011.01.31)

  • 中国でキリスト教が急成長
  • 「一致への悲観は神への信頼欠如」と教皇
  • 教皇、ブログなどへの指針を発表
  • 「政治とは距離を置こうとした」とグラハム氏
  • 《短信》
  • 《メディア展望》

◎中国でキリスト教が急成長

 【CJC=東京】在米の中国キリスト教抑圧監視団体『対華援助協会』によると、中国のキリスト者が急増し、中華人民共和国が成立した1949年当時の100倍に達した。
 最近の推計では8000万人から1億3000万人もの熱心な信徒がおり、中国人キリスト者ビジネスマンの中には、次の世代にはこの数字がさらに倍増、三倍増すると予測する人も出てきたという。
 『北京のイエス』(米レグナリー社)の著者、デービッド・アイクマン元タイム誌北京支局長は、キリスト教が中国文化を形成する主要な力の一つになるかもしれない、と見ている。
 「中国人がキリスト教化されるということは、人口の多数を占めるということではなく、人口の25〜30%のキリスト者が政治、文化、メディアなどで影響力のある地位にいるということ。そうなると、生きる指針としてキリスト教を熱烈に受け止める大きな力になり、中国指導者の世界観をも変えるだろう」と言う。
 一方では、そのような推計も10億人を超える人口から見れば「雀の涙」に過ぎないとの見方もある。
 ただ中国で説教したこともある伝道者ルイス・パラウ氏は、キリスト者は核心グループの内にいる、として「皆が同じ福音を語る。そこにはリベラルも保守派もない。皆が同じものを信じているのだ」と指摘する。
 キリスト者を8000万人としても、2010年6月調べの共産党員7800万人(英字紙チャイナ・デイリー)を上回っている。
 『対華援助協会』のボブ・フー氏によると、急成長は天安門事件後から。当時の学生側の指導者30人の名kで6人がキリスト者になった、と言う。
 中国政府がキリスト教拡大を注視していることは確か。公式にはキリスト者を2860万人としている。ただそれは登録(公認)教会信徒だけの数字。キリスト者への姿勢を緩和する一方で、非公認の地下教会への抑圧は厳しくなっている。


◎「一致への悲観は神への信頼欠如」と教皇

 【CJC=東京】イエス・キリストが最後の晩餐でも祈られた「一致」にはまだほど遠い、としてあきらめや悲観論が漂っているが、それは聖霊の力を信じていないからだ、と教皇ベネディクト16世が1月25日語った。
 『キリスト教一致祈祷週』の閉幕にあたり、ローマの『聖パウロ城壁外教会』でのミサの際に述べたもの。
 教皇は、エキュメニカル(教会一致)運動がこの数十年に大きく前進し、「さまざまな課題に関し収束と合意に進む兆しが、互恵、協働と共に認められる」と指摘した。
 「しかし、わたしたちはなおキリストが祈られ、また初代のエルサレムの共同体の姿に見られる一致とはほど遠い所にある」と認めた。
 教皇は、一致が構造的な段階のものだけでなく、一つの信仰告白、礼拝を共にすることでもある。と断言した。
 「一致への過程は、道徳的な要請であり、まさに主の召しに対する応答である」として、教皇は「あきらめとか悲観への誘惑を克服しなければならない。それは聖霊の力への信頼が欠けているからだ」と指摘した。


◎教皇、ブログなどへの指針を発表

 【CJC=東京】教皇ベネディクト16世は、カトリック教会の第45回「広報の日」にあたり、メッセージを1月24日発表した。教皇は信者に対し、責任、誠実、分別のある「キリスト教型のあり方」を採用するよう訴えている。
 「わたしたちが担おうとする真理は、『人気』とか注目を集める度合いということで価値があるのでないことに気づかねばならない」として教皇は「福音の宣言は、直ちに敬意が払われ、また配慮のあるコミュニケーションを必要としている」と指摘した。
 教皇は名指しをしなかったが、広報事務所長のクラウディオ・セリ大司教は、教皇の訓戒がいくつかの保守的カトリック・ブログやユーチューブなどの、カトリック的でないと見なす司教や当局、政策への激しい非難に対するものである、と示唆した。
 「危険があることは疑いない」と大司教は、広報評議会がカトリックのオンライン活動に適切な様式と行動指針を提示するために活動していることを指摘した。
 教皇は、今回のメッセージでデジタル時代の利害についてこれまで述べていた課題を繰り返している。社会的なネットワークは関係と共同体を形成するためのすばらしい方法である、と言う。しかし現実の友好関係をバーチャル(仮想)のものに替えてしまうことには警戒している。また公的な紹介を行う時に真正のものではなく人工的に創造したくなる誘惑にも警戒している。
 「コミュニケーションには、誠実、公開、責任、他者への敬意といったキリスト教的なやり方がある。福音をニューメディアを通じて宣伝することは、異なるメディアに宗教的内容を盛り込むだけでなく、自分のデジタル上でのプロフィールや、コミュニケーションのやり方や判断の中で福音と十分に合致することでもある」と言う。
 83歳の教皇自身は技術的なものが得意というわけでもない。文書は手書きだし、インターネットについても知識不足と認めていることはバチカン内部では知られている。
 しかし聖座は、教皇ベネディクト16世の下でオンライン世界では存在感を強めている。ユーチューブも始めており、教皇の訪問日程や演説なども流している。アイフォンやフェースブックで、ユーザーが教皇の写真やメッセージを使うことも認めている。


◎「政治とは距離を置こうとした」とグラハム氏

 【CJC=東京】「大統領の牧師」とも呼ばれた著名な大衆伝道者ビリー・グラハム氏(92)が福音派系誌『クリスチャニティ・トゥデー』(1月21日号)とのインタビューで、宣教と政治との間の一線を踏み越えたことがあったのを遺憾だ、と認めた。
 同誌のオンライン質問に回答したもので、「政治問題は避けようとしていた」と言う。ただリチャード・M・ニクソン氏との友情や、ウォーターゲート事件の際に擁護したことに特に言及はしなかった、
 グラハム牧師はジョージ・W・ブッシュ大統領とも親しかったと言われている。
 「高い地位にある人たちに宣教する機会を神が与えてくれたことに感謝している。権力の座にある人も、他の人と同様に霊的、個人的な欲求があり、しかも話し相手がいないことも多い」とグラハム氏。
 「顧みて、わたしは一線を超えたこともあった。今ではそうしないことだろう」と言う。健康悪化に伴い、グラハム氏が公然と意見を表明することは少なくなっている。
 ニクソン氏を初め権力者と親しくすることに、批判の声も上がっていた。神学者ラインホルド・ニーバーは、1969年に「王の会堂と王の法廷」という評論の中で、グラハム氏の「体制宗教」は、「独りよがりで自己満足というカルトの高僧」が行う職業になってしまう危険がある、と警告を発している。
 他にも、家族と過ごす時を多くすべきだった、また説教する時間を減らしもっと勉強すべきだった、と述べている。
 米国だけでなく、世界的にも伝道活動が成功したのでは、との問いにグラハム氏は、この半世紀に世界規模で福音復興が起こったことは感謝だが、真にそれは神がなされたことだ、と言う。
 そして「成功は常に危険なものだ。注意深くなければならず、自身の成功の被害者になることは避けなければならない」と語った。


≪短信≫CJC通信Twitter速報『cjcpress』から。

《アジア》
▽カトリック教会アジア司教協議会連合(FABC)第10回総会をベトナムが招致することが受け入れられた、とホーチミンのジャン・バプチスト・ファム・ミンマン枢機卿が1月28日、UCAN通信に語った。
▽インド最高裁は1月25日、キリスト者殺害を認めたオリッサ州のマノイ・プラダン議員の保釈を認めなかった。

《中東》
▽世界のイスラム教徒人口は2010年の16億から2030年には22億と35%増加する。全人口の増加率は16%。
▽エジプトでは携帯電話が使えなくなった。ネットやメールだけでなく通話も出来ない。

《バチカン》
▽バチカン(ローマ教皇庁)と不可知論者、無神論者との対話が3月24〜25日にパリで開催される。

《欧州》
▽アイルランドのダブリンで開催された聖公会首座主教会議には、38人の内、到着したのが22人に留まったことが分かった。
▽ダブリンで開催される英国国教会(聖公会)首座主教会議には、米聖公会の同性愛主教叙階に抗議して、世界の首座主教の2割が欠席する、とロイター通信。
▽英語聖書欽定訳刊行400周年を記念して英メソジスト教会の各教区が分担して、手書きによる複製をすすめることになった。

《アフリカ》
▽かつての反アパルトヘイト(人種差別)運動の闘士、ネルソン・マンデラ氏の健康が高齢のため懸念されているが、このほど2日間入院した。
▽エジプトのアル・アズハル大学が、教皇発言に反発して聖座(バチカン)との対話中断を決めたが、諸宗教評議会議長のジャン=ルイ・トーラン枢機卿は、イスラム教との対話への可能性を今も追求している。
▽エジプトのアブデル・マギド・マームド検事総長が1月24日、元旦早朝のコプト教会前の自爆テロ事件捜査に関する報道を禁止した。

《北米》
▽スキャンダルにまみれた大衆伝道者テッド・ハガード牧師を米男性誌『GQ』2月号が取り上げた。
▽「フェースブック」など人と人とのつながりを促進・サポートする、コミュニティ型のネットワーク・ツールを採用する動きが米国の教会で広がっていることが調査結果で分かった。
▽米国に本拠を置く『クリスチャン・ソリダリティ・ワールドワイド』は、イランではこの3〜4カ月で、少なくともキリスト者100人が拘束された、との情報を入手した。
▽モルモン教会(末日聖徒イエス・キリスト教会)がインジアナ州でこの20年で信徒倍増。それを受け同州で初めてカルメルに敷地約20万平方メートル規模の聖堂建設計画を打ち出した。
▽米ミスーリ州西部セント・ジョゼフの福音派教会『ニューライフ・バイブル・チャーチ・オブ・イーストン』と高齢者や障害者に交通手段を提供している『OATS』社で働いていた男性に性的虐待を受けたと主張していた女性が逆訴訟を受けていたが、和解した、と弁護士が発表。条件は秘密という。

《中南米》
▽メキシコ南部で貧者や先住民の擁護活動で知られたサミュエル・ルイズ・ガルシア引退司教が1月24日、闘病の末に死去した。86歳。


《メディア展望》

  =カトリック新聞(1月30日)=https://www.cwjpn.com
★一致祈祷週間 朝祷会が年頭集会=「キリストにあって一つ」=東京カテドラル
★高松教区=溝部司教、新年の書簡で 「道」の活動中止命じる=教区の再生と一致のため
★教皇「道」メンバーに謁見="各地元教区とのきずな"求める
★司祭叙階された元英国国教会主教=「属人教区」裁治権者に=イングランド・ウェールズ
★初のプロテスタント信者=教皇庁科学アカデミーの新会長=ウェルナー・アーバー博士

  =キリスト新聞(1月29日)=https://www.kirishin.com
★宗教文化教育推進センター設立=研究者ら「宗教文化士」制度運営へ
★矯風会が「パレスチナ問題」で講演会=「誤解の原因はキリスト教」
★「ふるさと納税」制度で名護市を応援=基地問題=千葉眞教授ら呼びかけ
★日基教団=第1回常議員会で5時間超の審議=「伝道方策検討委」を設置
★酪農学園大がTPP参加反対表明="「連携する社会へ」の転換目指せ"

  =クリスチャン新聞(1月30日)=https://jpnews.org
★豪ブリスベン市内=日本人教会も被害=洪水のさなか特別祈祷会
★英国YWCA=「名称が時代に即さず」=改称「プラットフォーム51」に批判
★混迷する世界を覚えて=東京で断食祈祷聖会2011
★有償で氏子に公有地提供も逸脱=「砂川政教分離訴訟」差し戻し審判決を批判=バプ連盟靖国委
★アッセンブリー教団総会=教師倫理の法整備に着手



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