世界キリスト教情報

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世界キリスト教情報 第1043信(2011.01.17)

  • 英YWCAが『プラットフォーム51』に改称
  • 「改称を議論したことない」と世界YWCA 
  • 故ヨハネ・パウロ2世、5月1日に列福式
  • 聖公会元主教が正式にカトリック教会司祭に
  • バチカン科学アカデミー会長に初めてプロテスタント就任
  • オバマ大統領、ホワイトハウス近くの教会で礼拝守る 
  • 《短信》
  • 《メディア展望》

◎英YWCAが『プラットフォーム51』に改称

 【CJC=東京】1855年に英国で創設されたYWCA(女子キリスト教青年会)、今では世界150国で活動を展開しているが、肝心の英YWCA(イングランドとウエールズYWCA=ヘレン・ウォラス理事長)が2010年12月、『プラットフォーム51』に改称した。ただ『YWCA・オブ・グレートブリテン』という包括団体の一員であることに変化はない。
 156年にわたって、キリスト者の支援により財務的にも支えられて来たものの、これまでの名称では実態をもはや21世紀では表現しきれない、と改称を決断した。
 新名称は「人類の51%は女性であり、少女も成人女性もわたしたちを、自らの意思を貫く場とする、というわたしたちの現在の姿とか、わたしたちの働きをより正確に表わしている」という。ウォラス理事長は同性愛活動家であり、『機会平等委員会』委員長でもあった。
 英国国教会の年報には、「主要関係組織」として掲載されているものの、理事や運営責任者に教会関係者はいなくなった。
 しかし今回の改称と目的の中に「キリスト教」が消えたことに批判の声が上がっている。
 英国のキリスト教調査機関『クリスチャン・インスティチュート』のマイク・ジャッジ報道担当は、「公的助成を受ける慈善団体選定に際し、キリスト教への差別があると広く信じられている」ことを改称の理由と見ている。「YWCAを成長させたのは、それがキリスト教だからだった。その価値を捨ててしまうのは恥ずべきことだ」と言う。
 キリスト教関係慈善団体で、名称からキリスト教を外す動きの例として、英国ではスコットランドの『ホームレスのための教会行動』がある。2009年に検討を始めたが、それも寄付を受けるのに宗教がらみが障害になるからだ、と理事長が語ったのが契機となった。
 YWCAと並び称されるYMCA(キリスト教男子青年会)に同様の動きはないのか。
昨年、米YMCAが『ザ・Y』に呼称を変更したものの、YMCAであることを捨てたとはしていない。


◎「改称を議論したことない」と世界YWCA 

 【CJC=東京】英YWCAが『プラットフォーム51』に改称したことについて、ジュネーブにある連合組織『世界YWCA』のシルヴィ・ジャカット報道担当は、英国以外の124団体で同様の構想をしているところはない、と語った。英紙デイリー・メールが報じた。 
 「この名は150年以上も続けてきたもので、変更を議論したこともない」と言う。


◎故ヨハネ・パウロ2世、5月1日に列福式

 【CJC=東京】故教皇ヨハネ・パウロ2世(カロル・ヨゼフ・ボイティワ)の列福が決まった。列福式は、復活祭後の最初の日曜日で、同教皇自身が在位中に制定した「神のいつくしみの主日」を記念する5月1日に、教皇ベネディクト16世の司式によってバチカンで行われる。
 教皇は1月14日、バチカン(ローマ教皇庁)列聖省長官アンジェロ・アマート枢機卿と会見、列福調査対象者らの奇跡または殉教、英雄的徳を認める教令を承認した。この教令の中で、ヨハネ・パウロ2世の取り次ぎによる奇跡が認められ、前教皇の列福が確定した。
 バチカン放送によると、列福・列聖調査に着手するには、対象者の死から5年の経過が必要だが、ベネディクト16世は特令でこの待機期間を免除、前教皇の逝去からおよそ3ヵ月後の2005年6月28日から調査が開始された。
 ヨハネ・パウロ2世の取り次ぎによるものと認められた奇跡は、2001年に複数の医師からパーキンソン病と診断されたフランス人修道女が、同じ疾患を持っていた故教皇に祈ることで、教皇の帰天から間もない2005年6月に完全に回復し、医師から治療の不要を告げられた件。


◎聖公会元主教が正式にカトリック教会司祭に

 【CJC=東京】英国国教会(聖公会)の、キース・ニュートン(リッチボロ教区)、アンドリュー・バーナム(エップスフリート教区)、ジョン・ブローダースト(フラム教区)ら元主教3人が1月15日、カトリック教会の司祭に叙階された。
 3人は、英国国教会の女性聖職容認傾向に強く反対しており、離脱の最大理由は女性主教実現が必至になったことにある。
 教皇は教会法上の組織の一つ、属人区(オルディナリアーティ・ペルソナーリ)の形を導入する使徒憲章『アングリカノルム・チェティブス』(聖公会のグループ)を2009年11月4日発表した。聖公会内で、カトリック的な伝統を尊重するアングロ・カトリックのグループをカトリック教会に受け入れるためのもの。属人区は、聖公会に属していた信者がカトリック教会との完全な交わりに入ることを可能にすると同時に、司祭妻帯を含むアングリカンの精神遺産と典礼の要素を保つことが出来るようにする。
 今回の動きで懸念されることの一つは聖職者独身制の行方。カトリック教会は、東方典礼の一部を除き、聖職者は独身であることを要件としている。これまで妻帯した聖公会司祭がカトリック教会に転会した場合、その権能が限定的なものだった。これが属人区とは言え、そこで妻帯司祭が完全な機能を果たすことになれば、新たな混乱を生じかねない。
 さらにこれまでの軍人区のような生活上の必要から生み出されたものと異なり、『アングリカノルム・チェティブス』は、教義・典礼上の差を容認する。各教派間の「一致」を目指す、エキュメニズム(教会一致)の意図する方向が変質する可能性さえ想定される。


◎バチカン科学アカデミー会長に初めてプロテスタント就任

 【CJC=東京】教皇ベネディクト16世はバチカン(ローマ教皇庁)科学アカデミーの会長にスイスの分子生物学者で1978年にノーベル生理学・医学賞受賞者ヴェルナー・アーバー氏を任命した。同氏はプロテスタント。非カトリック者のアカデミー会長任命は400年にわたる歴史で初めて。同氏は81年に会員に選ばれている。
 非カトリック者でアカデミー会員では86年のノーベル賞受賞者でイタリア人のユダヤ教徒リタ・レヴィ・モンタルチーニさんが有名。


◎オバマ大統領、ホワイトハウス近くの教会で礼拝守る 

 【CJC=東京】バラク・オバマ米大統領とミシェル夫人が1月16日朝の礼拝を、ホワイトハウス近くのアフリカン・メソジスト・エピスコパル教会で守った。同教会は「アフリカ・メソジストの全国大教会」と自身を位置づけている。 
 礼拝の祈祷では、アリゾナ州ツーソンの乱射事件の犠牲者のことを憶えるよう勧めが行われ、会衆は「アーメン」と声を合わせた。また翌17日に47歳の誕生日を迎えるミシェル夫人のために会衆が祝いの歌を歌った。 
 同教会のエイダム・J・リチャードソン牧師は、12日にツーソンで行われた大統領の追悼演説を賞賛、「あなたのリーダーシップに感謝する」と語った。 
 17日が故マーチン・ルーサー・キング・ジュニア氏の記念日であることから、そのことも礼拝で敬意が払われた。 
 オバマ氏は大統領就任以来、礼拝に出席することが少なく、信仰についても触れることが少ないことから、調査によっては米国人の2割が大統領がイスラム教徒だと思っていることが分かっている。


≪短信≫CJC通信Twitter速報『cjcpress』から。

≪太平洋≫
▽オーストラリア北東部クインズランド州の洪水被害が拡大、キリスト教団体も緊急救援態勢。飛行機を利用して、ボランティアを現地に送り込むところも。
▽オーストラリア北東部クインズランド州の洪水被害はさらに広がり、1月12日午前の時点で行方不明者が90人以上に増えた。死者はすでに10人確認されているが、さらに増えそう。洪水は州都ブリスベンに達している。
▽深刻な水害に見舞われているオーストラリアの犠牲者は12人を超えた。経済損失は60億豪ドル(約4900億円)に上るとみられている。復興支援に3000万豪ドル(約25億円)が集まった。1月10日には教皇ベネディクト16世も5万米ドル(約420万円)を寄付することが明らかになった。

≪中東≫
▽『聖地協力』グループを結成している各派指導者の年次会議が1月10日からエルサレムで行われ、「第5福音」として知られるキリスト者共同体支援を最終日の13日確認した。
▽パレスチナ自治区エフラトの主任ラビ、シュロモ・リスキンが1月13日、教皇ベネディクト16世と会見、イスラエルで活動している『ユダヤ教・キリスト教理解協力センター』の活動について説明した。ラビはニューヨーク出身。教皇は「協力の必要がある」と応じた。
▽エジプトでコプト教会への攻撃懸念が高まる中、「人間の盾」となろうとするイスラム教徒が、1月6日の教会ミサに参加した。

≪欧州≫
▽ENI通信会長にミシェル・コシェイ前副会長が、1月12日総会で任命された。
▽教皇ベネディクト16世は1月13日、レオポルド・ギレッリ大司教を、インドネシア、シンガポール教皇庁使節、マレーシア、ブルネイ教皇庁代表に任命した。また外交関係のなかったベトナムの教皇代表にも任命した。
▽アイルランド・ダブリンの病院で、『エホバの証人』夫妻の幼児が12月25日、重態に陥り輸血が必要になったが、輸血を拒否した。裁判所が事情聴取の上、27日に命令を出し輸血が行われた。幼児は重態を脱した。
▽ギリシャ政府が1月11日、イスラム教に関する正教会ピラエウスのセラフェイム主教の意見を「人種的宗教的憎悪を助長する」と非難した。

≪アフリカ≫
▽2010年1月6日深夜にエジプト南部ナガハマディのコプト教会付近で起きた襲撃事件で、エジプトの国家治安裁判所は1月16日、主犯格のイスラム教徒の男性被告に死刑判決を下した。国営テレビが報じた。
▽エジプト政府は1月11日、バチカン駐在大使を召還した。少数派キリスト者の保護を訴えた教皇ベネディクト16世の姿勢に反発したものと見られる。
▽エジプト中部ミニヤ県で1月11日、列車内にいた男が銃を乱射。乗客の男性1人が死亡、女性4人を含む5人が負傷した。内務省によると、死傷したのはいずれもコプト教徒だという。

≪北米≫
▽米ウィスコンシン州ボンデュールのルーテル教会で、1670年に印刷されたルター訳聖書が金庫の中から見つかった。教会内の温度や湿度が保存に適した状態で、真鍮製の装丁のため保存状態は良好という。
▽故ジョン・F・ケネディ大統領関係の文書などを集めた資料館が、全面的な電子化を完成した。
▽米カトリック教会ニューヨーク大司教区は、運営している小学校26校、高校1校を閉鎖する、と発表した。入学者減と経費高騰を理由としている。生徒4700人が影響を受ける。
▽すぐにピケを張るので有名な米カンザス州トピカのウエストボロ・バプテスト教会の指導者シャーリー・フェルプス=ローパーさんが、アリゾナ州ツーソン乱射事件の被害者の1人、9歳のクリスティナ・テイラー=グリーンちゃん(9)の葬儀でも計画していたピケを実施しない、と1月12日発表した。
▽ウエストボロ・バプテスト教会のピケ撤回は、カナダとアリゾナのラジオ局が指導者フェルプス=ローパーさんに番組登場の機会を与えることに同意したため、と言う。


《メディア展望》

  =カトリック新聞(1月16日)=https://www.cwjpn.com
★教皇「世界平和の日」に キリスト者攻撃を非難
★10月にイタリア・アシジで世界平和祈祷集会
★「教会の道徳 変わらない」=教皇の見解に教理省が「覚え書き」公表
★聖公会元主教3人がカトリック教会へ転籍
★判員裁判での死刑判決受け正平協が声明

  =キリスト新聞(年始休刊)=https://www.kirishin.com

  =クリスチャン新聞(年始休刊)=https://jpnews.org


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