世界キリスト教情報

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世界キリスト教情報 第1040信(2010.12.27)

  • 世界各地で激動の中、クリスマス祝う
  • イラクのキリスト者が相次ぐ襲撃で居住地脱出
  • 中国がバチカンの批判に反論
  • 米宗教記者会メンバーが選ぶトップ10ニュース
  • オバマ米大統領はハワイの基地内にある教会で礼拝守る
  • 《短信》
  • 《メディア展望》

◎世界各地で激動の中、クリスマス祝う

 【CJC=東京】2010年12月24日、世界各地で激動の中にも関わらず、クリスマスの式典、祝祭が行なわれた。
 中国のカトリック者は、教会の現状にもかかわらず、喜びと平和でクリスマスを祝った。大雪に見舞われた中国北東部では、非公認の司祭が教会や「祈りの場」を巡回し、深夜ミサを守った。
 フィリピン南部のイスラム教優勢地域で、警察基地内にあるカトリック教会で25日朝、100人がミサに参列している最中に爆破事件があり、屋根が吹き飛ばされ、司祭ら6人が負傷した。
 インドネシア・ジャバ島西部では、当局の中止要請を振り切ってカトリック、プロテスタント双方がクリスマスを祝った。
 イラクでは、国際テロ組織アルカイダ系の『イラク・イスラム国』(ISI)が21日、キリスト教徒攻撃を続けるという声明を発表したのを受け、24日のミサは中止され、25日のミサも時間を朝に変更した。カルデア典礼カトリック教会のルイ・サルコ大主教がキルクークから、恐怖はあるが、イラクのキリスト者は平静を保たなければならない、と語った。
 サウジアラビアではイスラム教以外の宗教行為は禁止されているため、キリスト者はクリスマスを祝うのに極力目立たないように配慮した。首都リアドにはクリスマス・シーズンを示すものは何もなかった。
 キリスト生誕の地、ヨルダン川西岸ベツレヘムは、季節外れの暖かさ。イスラエル・パレスチナ間の紛争も一時的にではあれ治まっていることもあり、24日深夜から恒例のクリスマスミサが催された聖カテリナ教会は、教会や前の広場が多くの巡礼や訪問者でにぎわいを見せた。
 ただイスラエルが設置したコンクリート製の分離壁で、ベツレヘムは聖地エルサレムと分断され、観光客は同国軍の検問を受けている。それでもイスラエル当局は、クリスマス・シーズンにベツレヘムへの訪問客は前年の7万人を2万人上回ると見ている。
 パレスチナ自治政府によると、今年、ベツレヘムを訪れた巡礼者や観光客は西岸での治安改善を受けて、計145万人に達し、過去最高を記録した。
 ラテン典礼カトリック教会のフアド・トゥアル・エルサレム総大司教もエルサレムからやって来て、「我々の教会の鐘の音が、中東に響く武器の音を消し去りますように」と述べ、中東和平の実現を呼び掛けた。
 同教会に隣接する『聖誕教会』前の広場には、世界中から信者や観光客が集まり、聖夜を祝った。ただ『聖誕教会』は傷みが激しく、緊急修理が必要で、それまでは入場者を制限しなければならなくなる、と現地当局が24日、警告を発した。
 ただベツレヘムの住民5万人のうち、キリスト者は3分の1。1950年代は75%だった。キリスト者人口は中東全域で減少が続いている。暴力を含む抑圧を逃れ、外国で立ち直りを図って出国する人が多い。
 教皇ベネディクト16世は24日、バチカン(ローマ教皇庁)のサンピエトロ大聖堂で行った恒例の深夜ミサで、虐待のない世界の実現へ祈りをささげた。信者約1万人が参列した。
 教皇は「キリストは人類に虐待行為を克服する力を与えた」と述べ、人権の重要性を世界に訴えた。さらに助けを必要としている人たちに手を差し伸べる「友愛精神」を持つよう語り掛けた。
 教皇は、ソマリア、スーダン ダルフール、コートジボワール、アフガニスタン、パキスタンなどの地域で起きている政情不安や混乱の収拾を求めた。
 教皇は、さらに中国国内のカトリック教徒が迫害を受けている問題にも触れ、信教と良心の自由について共産主義の制約に直面して勇気を持つよう促すクリスマスメッセージを発表した。教皇がメッセージの中で中国の宗教政策に懸念を示し、間接的にでも批判するのは極めて異例で、バチカンの影響力が国内に浸透するのを抑えようと中国政府が規制を強めていることに対応したものと見られる。
 教皇は、北朝鮮による韓国・大延坪島への砲撃で緊迫が続く朝鮮半島情勢に触れ、「和解が進むことを希望する」と述べ、さらにイスラエルとパレスチナの平和的共存を呼びかけた。このほか、大地震で大きな被害を受けたハイチでコレラの感染の広がりが問題となっていることを受け、感染が抑えられ、被災者に希望がもたらされるよう願うと述べた。
 続いて教皇はサンピエトロ大聖堂のバルコニーから「クリスマスと新年おめでとうございます」と、日本語を含む65の言語であいさつ、「ウルビ・エト・オルビ」(ローマ市と世界へ)の祝福を行なった。
 ナイジェリア北東部では24日、教会2カ所が襲撃され、バプテスト派の牧師など少なくとも6人が殺害された。また中央部でも爆発があり死者20人が出ている。

※関連短信
▽12月21日、北朝鮮との軍事境界線に近い韓国の京畿道金浦市でクリスマスの電飾が行なわれ、キリスト教信者らが集まり、賛美歌を歌った。
▽ナイジェリア中部プラトー州の州都ジョスで12月24日夜、キリスト教会付近など爆発があり、少なくとも11人が死亡、多数が負傷した。同州は、農地の帰属をめぐりこれまでも衝突が発生、今年3月にはジョス近郊のキリスト教の村で約500人が殺害された。
▽著名な大衆伝道者ビリー・グラハム氏は、92歳の病身を押して、12月20日にジョージ・ブッシュ前大統領夫妻と訪問したばかりのビリー・グラハム伝道協会に23日にも姿を見せ、スタッフにクリスマス・メッセージを述べた。


◎イラクのキリスト者が相次ぐ襲撃で居住地脱出

 【CJC=東京】イラクでは、キリスト者が宗教的理由から迫害を受け、居住地から脱出する例が続出している。10月末に50人以上が死亡したバグダッドの教会襲撃事件でも、国際テロ組織アルカイダ系の『イラク・イスラム国』(ISI)が犯行声明を出してから、キリスト者の脱出が増加した。ISIは12月21日、キリスト者攻撃を続けるという声明を発表、これを受けてクリスマスのミサを中止する教会も出た。
 バグダッド以外でも中部ディヤラ、北部サラハディン、ニネベの各県などでキリスト者が攻撃される事件が目立っている。
 脱出先は、治安が比較的安定している北部クルド人自治区だけでなく、隣国のシリア、ヨルダンから欧州各国にまで及んでいる。この結果、2003年のイラク戦争前は総人口の約3%がキリスト者だったが、相次ぐ襲撃で脱出する人が多く今では1%を割り込んだとも推定されている。


◎中国がバチカンの批判に反論

 【CJC=東京】中国国家宗教事務局は12月22日、バチカン(ローマ教皇庁)が17日、第8回全国天主教(カトリック)代表者会議の開催を極めて遺憾だとする声明を発表したことに対し「極めて無礼で根拠がない」と反論した。国営新華社通信が報じた。
 国家宗教事務局の報道担当者は、バチカンが中国の最近の教会事情を正しく理解しておらず、宗教を政治的に利用しようとしていると指摘、それは中国の教会の健全な発展に重大な障害となる、と言う。
 代表者会議はカトリックの教義に関与せず、カトリック信仰の基盤を冒すこともしていないし、他国や外国宣教団体の認知も必要としていない、と同担当者は強調した。
 バチカンは、会議に参加する聖職者を処罰すると脅すなど様々な手段を介して、会議を阻止しようとした、として、「強い手で宗教的信念を扱っているのは誰か、『良心』に反してカトリックを強制しているのは誰か、非常に明確ではないか」と言う。
 同担当者によれば、中国天主教三自愛国会と司教協議会の新しいトップは、大多数の信認で選出されたものであり、会議参加者の意向と期待を反映している。
 バチカンが関係を悪化させず、対話を正しい路線に戻すため、注意深く自己抑制することを中国政府は望む、と広報担当者は指摘している。

※関連短信
▽中国天主教(カトリック)三自愛国会のリュー・バイニアン名誉議長が12月24日、バチカン(ローマ教皇庁)の中国批判は、中国を「植民地」に戻すもの、と非難した。


◎米宗教記者会メンバーが選ぶトップ10ニュース

 【CJC=東京】米宗教記者会メンバーが選んだ2010年の宗教トップ10ニュースが発表された。第1位は、ニューヨークの同時多発テロが発生した『グラウンドゼロ』付近にイスラム教センターやモスクが建設される計画をめぐる論議。数カ月にわたって信教の自由をめぐる問題としてメディアに取り上げられたことが重視された。
当事者であるイマーム・ファイサル・アブドル・ラウフは「2010年のニュースメーカー・宗教版」に選ばれている。
フロリダ州の小教会の牧師が計画に抗議してコーランを燃やすと宣言したことも、大きな反響を呼び、海外からの反米感情は、焼却断念が発表されるまで悪化の一方だった。
 トップ10は次の通り。
 (1)イスラム教センターとモスクのグラウンドゼロ付近に建設する計画をめぐる論議とフロリダ州の牧師による抗議のためのコーラン焼却計画。
 (2)ハイチの壊滅的な地震と宗教団体による救援活動。アイダホ州南部バプテスト連盟の活動家が児童誘拐容疑で収監。
 (3)教皇ベネディクト16世が、アイルランド、ドイツ、米国などの聖職者による児童性的虐待に関する教会の対応遅れを非難。
 (4)『ティーパーティー』運動が台頭。宗教右派勢力の政治的復権か、不況への反発か。
 (5)バラク・オバマ大統領が署名した医療改革法案は、宗教団体が成立を働きかけてきたもの。一方でカトリック司教は、中絶のための資金提供につながるとして強硬に反対している。
 (6)同性愛聖職者の容認などセクシュアリティ問題で主流各派が様々な動きを見せ、議論も白熱。一部に離脱の動きも。
 (7)長引く景気低迷が教会や宣教活動に影響。『クリスタル・カテドラル』が破産、ルーテル派系の『アウグスブルグ・フォートレスプレス』が年金制度廃止、『フォーカス・オン・ザ・ファミリー』はスタッフ110人解雇、セブンスデー・アドベンチスト系出版社がトップを更迭。
 (8)相次ぐ自殺で「いじめ」が注目集める。宗教団体は強く非難するものの、原因の中には同性愛がらみのものがあり、宗教自体が「いじめ」の原因になっている、
 (9)『ピューフォーラム』が発表した、米国の宗教知識調査では、無神論者、不可知論者、ユダヤ人、モルモン教徒の正解率が最高という結果が出た。
 (10)米連邦最高裁判所判事がカトリック6人、ユダヤ教徒3人で、プロテスタントが初めていなくなった。
 調査は同協会によって30年近く続けられている。今回もジャーナリスト300人以上にオンラインで依頼、回答率は3割弱だった。


◎オバマ米大統領はハワイの基地内にある教会で礼拝守る

 【CJC=東京】バラク・オバマ米大統領は12月26日朝、ハワイの海兵隊基地内にある教会で家族・友人と一緒に礼拝を前列で守った。全参列者は約100人。読み上げられた聖句はマタイによる福音書10・29〜31だった。
 オバマ氏は自らの信仰に関しては私的なものとする立場と見られる。大統領就任以来、ワシントンで通う教会を決める、と語っていたが、保安上の問題もあってか実現していない。黒人系の教会を選んだ場合の反発を懸念しているものとも推定されている。


≪短信≫CJC通信Twitter速報『cjcpress』から。

≪アジア≫
▽シンガポール最古のローマカトリック教会『グッドシェパード・カテドラル』で2011年、補強工事が開始される。工期2年。費用は4000万シンガポール・ドル(約25億5400万円)と見込まれている。

≪太平洋≫
▽女性の聖職叙階に反対して、オーストラリア聖公会から来年6月までに約1000人がカトリック教会に転会すると見られる。

≪中東≫
▽イエス・キリストが話したといわれるアラム語も今では話者の減少で、絶滅の危機にあるが、英オックスフォード大学でが現在56人が学ぶ盛況だ。
▽死海の底にソドムとゴモラの遺跡を探ることでロシアの企業が選定され、ヨルダン政府と契約した、とブレイキング・クリスチャン・ニュースが報じた。
▽イラクのキリスト者が亡命申請したのにスウェーデン政府が拒否したことを国連難民委員会が厳しく批判した。

≪欧州≫
▽減少傾向が続いていた英国国教会だが、今年は教勢が増加に転じた。カトリック教会のミサ出席は増加が続いており、ペンテコステ派やバプテストの教会出席も急増している。
▽聖職者の性的虐待問題が影響してか、ドイツ・カトリック教会を離脱する人が急増している。ロッテンブルグ=シュトゥットガルト教区だけで、今年1万7659人が離脱した。昨年は4563人。
▽教皇ベネディクト16世の下でバイオテクノロジーに慎重なバチカンに、遺伝子組み換え食品を支持するよう、米外交陣が長年にわたって働きかけていたが、成功していない。ウイキリークスが暴露した。
▽スイス・ティチーノ州のジョルナール・デル・ポポロ紙が12月16日、第1面を日本語で発行した。「ニッポン、日本の芸術と文化」イヴェントの一環。2011年2月末までルガーノで特別展が開催されている。

≪アフリカ≫
▽コンゴ民主共和国の首都キンシャサには、キリスト教原理主義に基づく新興宗教が数千あるが、これらの教会は「魔女狩り」サービスで収入を得ている。子どもが悪魔に取りつかれていないかを有料で調べる。悪魔に取りつかれた子どもの悪魔払いには別途料金がかかる。

≪北米≫
▽米ウイスコンシン州チャンピオンは牧場地帯。その中にある『アワ・レディ・オブ・グッドヘルプ』チャペルで1859年に処女マリアが顕現したことを、グリーンベイ教区のデービッド・L・リッケン司教が「道徳的な確実性」をもって「信ずるに足る」超自然的な出来事だ、と宣言した。
▽ロジャー・ニコル氏(ゴードン・コンウォール神学校元教授)が12月11日死去。91歳。ニュー・ゼネヴァ・スタディ・バイブル副編集長。NIVの訳出にもあたった。
▽米アリゾナ州フェニックスの『セント・ジョセフ病院・メディカルセンター』は今後「カトリック系」と名乗ってはならない、とトーマス・J・オルムステッド司教が12月21日発表した。2009年に妊娠中絶を行なったことが明らかになったため。
▽バラク・オバマ米大統領は12月22日、公然同性愛者が軍務に就くことを禁じる米軍規定を撤廃する法案に署名、同法は成立した。
▽米経済誌『フォーブズ』が、今年の最も影響力のあるツイッター・ユーザーベスト20位を発表し、カリフォルニア州サドルバック教会のリック・ウォレン牧師が20位にランクインした。


《メディア展望》 ※クリスマス特集のため休載



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