世界キリスト教情報

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世界キリスト教情報 第1039信(2010.12.20)

  • ENI通信が現行サービスを年内で停止
  • 中国で「家の教会」抑圧が本格化?
  • 教皇、新求道共同体問題で日本司教訪問団と会談
  • 司教側が新求道共同体に活動5年間中止を要請
  • ベツレヘムで『国際イスラム教・キリスト教会議』
  • イラク北部モスルで青年女性キリスト者拉致
  • 《短信》
  • 《メディア展望》

◎ENI通信が現行サービスを年内で停止

 【CJC=東京】プロテスタント系では代表的なENI通信(エキュメニカル・ニュース・インターナショナル)が12月21日に現在の形での活動を停止することが15日明らかになった。通信活動を維持するための新編集チームが組織された。
 同通信と契約している通信員50人には15日、ピーター・ケニー編集長から「不運にも、財務上の制約から、これまでのようには通信を続けて行けなくなった。ENI通信の運営体は、ジュネーブのエキュメニカル・センターに置いていた現編集部を2010年末で閉鎖することを決めた。望みは、新スタッフによる新活動が2011年に新たな基盤の上に始められることだ」との連絡があった。ケニー編集長だけでなくスティーブン・ブラウン編集主任ら現在働いているスタッフは1月以降、留任しないことも伝えられた。
 16日、エキュメニカル・センターでスタッフの「お別れ会」が行なわれた。
 ENI通信再建は、設立団体の一つ世界教会協議会(WCC)が5月6日に、2011年度の支出を半分以上削減すると通告したことを受けて進められてきた。
 10月、ENI通信常議員会が、再建案作成のための特設委員会を設置した。同委員会は、常勤編集長と編集主任の代わりに非常勤の編集長兼ゼネラル・マネージャーを置くことを提案した。
 常議員会では、現任スタッフの処遇で議論が白熱、編集長兼ゼネラル・マネージャーを監督するため無給の発行人を置くという特設委の提案でも紛糾したが、結局、全く新しいスタッフで2011年に活動開始することを決定した。
 ENI通信は、エキュメニカル・センターに本拠を置く世界教会協議会、ルーテル世界連盟(LWF)、世界改革教会連盟(WCRC)、欧州教会会議(CEC)によって1994年設立され、約50国の通信社、ラジオ・テレビ、新聞、教会メディアや調査研究所に記事を配信して来た。
 世界教会協議会の支出削減が通知された2日後の5月8日、ENI通信は、米国の『教会報道協会』(アソシエーテッド・チャーチ・プレス)から『宗教通信部門優秀賞』を受賞した。また『編集の勇気』部門で、世界教会協議会関係の報道を認められ受賞した。「ウォッチドッグ(監視)という伝統の中の偉大なジャーナリズムとして、編集の勇気が最も良く示された。記者にとってリスクは大きいが、読者は評価する」と審査員のアンドリュー・ハーマン氏(シカゴ・サンタイムズ編集長)はコメントしている。
 12月21日付けでENI通信のニュース提供は、新チームが組織されるまで停止される。


◎中国で「家の教会」抑圧が本格化?

 【CJC=東京】米キリスト教専門アシスト通信は、中国当局が、この所急成長している非公認「地下教会」を「カルト」と決め付け弾圧に乗り出した模様と報じている。
 米国に本拠を置くキリスト教抑圧監視団体『対華援助協会』によると、中国共産党政治局が12月1日、「抑止作戦」を極秘指示した。2011年3月まで、本土教会の中では最大部分の抑圧に力を入れると見られる。
 関係当局は、全土の「家の教会」に関する情報を集め、上長に報告するよう求められているという。教会指導者や有力信徒のブラックリストも作成されるようだ。
 「抑止作戦」は予備的報告段階では、人権擁護者を広範に抑圧するものとし、すでに20人が逮捕され、有罪判決を受けた、と『対華援助協会』は指摘している。
 ただ同協会が得た情報によると、今回の抑圧の狙いは「家の教会」のネットワークと会員に絞られているようだ。
 有力な家の教会指導者への迫害、バチカン(ローマ教皇庁)の意向を無視しての司教叙階、同協会ウエブサイトへのサイバー攻撃など、最近の政府の行動は、抑圧の前兆だったとも見られる。
 『対華援助協会』はこの所、北京政府が「家の教会」運動に行なってきた強烈な敵対行動を控えるようになった、と見ていた。中国内外のキリスト者の中にも非公認の教会が、公認の三自愛国運動に加入しなくても認可されるのではないか、との期待が高まっていた。
 しかし同協会は、今回の指示で政府の態度が再び硬化したことを示すと述べている。
 当局が「家の教会」を「カルト」とする理由を、中国のキリスト教化を進め、中国の全教会の一致を求め、世界の教会との一致を推進、政府との対話を求めている点にある、と同協会は見ている。
 中国では、一度「カルト」と指定された組織なりメンバーが、指定を解除されることはまずないと見られる。仮に解除されたとしても、市民の反感を消すのは容易ではなく、生活にも困難が残る。
 気功法の団体『法輪功』も学習者が爆発的に増えて、中国政府は1999年に「カルト」として厳しい抑圧姿勢に出ている。


◎教皇、新求道共同体問題で日本司教訪問団と会談

 【CJC=東京】日本カトリック教会司教協議会会長の池長潤大司教ら4人が12月13日、バチカン(ローマ教皇庁)で教皇ベネディクト16世及び高位聖職者と『新求道共同体』(ネオカテキュメネイト)について討議した。教皇の招請によるもの。共同体が高松に設立した『レデンプトリス・マーテル神学校』が閉鎖されて以来、問題討議は初めてのこと。
 池長大司教が米カトリック通信CNSに語ったところでは、討議は2時間近く続き、国務長官タルジチオ・ベルトーネ枢機卿ほか数人の枢機卿も参加した。
 会談の内容について同大司教は説明しなかったものの、司教団はなおバチカンや共同体のキコ・アルグエリヨ創設者との討議を必要としている、と言う。「計画を前進させなければならない。慎重にしなければ」と大司教は語った。
 米国の共同体ジュセッペ・ジェンナリーニ報道担当はCNS通信に、バチカンが司教側と共同体との間の対話継続のため代表を任命する、と語った。
 『新求道共同体』について、高松教区の溝部脩司教と司祭協議会は、共同体メンバーの活動が、日本の小規模なカトリック共同体の一致を破壊するとの懸念から、かねて共同体の神学校閉鎖が必要と表明していた。
 司教側の、共同体とその神学校に対する懸念は深刻で、2007年12月の定例の「アドリミナ」訪問直後の08年にも2回、ローマを訪問、当時の司教協議会会長・岡田武夫東京大司教が「深刻な問題」と指摘したものを討議するためバチカン当局と教皇に会見した。
 「共同体メンバーのセクト類似の強力な活動は不和をもたらし対立的だ。教会内部に鋭く苦痛な分裂と紛争を引き起こした」と岡田大司教は07年12月の「アドリミナ」訪問の際、教皇に表明した。大司教は教皇に援助を訴え、教皇の介入が「真に必要」と語った。
 バチカンは07年と08年に調査を行い、ベルトーネ枢機卿が、神学校を閉鎖、神学生と教授陣の大多数はローマのレデンプトリス・マーテル神学校に移籍するという書簡を発表した。


◎司教側が新求道共同体に活動5年間中止を要請

 【CJC=東京】日本カトリック司教協議会のバチカン訪問団は、「問題」続きの年月だったとして、新求道共同体に今後5年間、活動を中止するよう要請した。
 高見三明・長崎大司教が長崎から電話でカトリック通信CNAに12月15日語ったところでは、司教側の提案は共同体のキコ・アルグエリヨ創設者に直接行なったが、受け入れられなかった。
 教皇ベネディクト16世は、司教側の計画に満足していないと見られる。ただバチカンも共同体当局者も会談や提案について公式なコメントは出していない。
 ローマのレデンプトリス・マーテル神学校副校長のアンゲル・ルイス・ロメロ神父は、CNA通信に、自身も主任の平山高明司教も、現段階で意見を明らかにするのが賢明とは思っていない、と語っている。
 ロメロ神父は、日本神学校プログラムに登録している学生は21人。ローマに移籍以来、日本人とイタリア人の2人が司祭に叙階され、現在ローマで活動中と語った。
 高松の神学校閉鎖の際、バチカンは共同体が日本で活動を継続する際の管理方法を決定するため司教団と協力する教皇代理を任命した。当時、バチカンは、神学校が将来、「日本の福音化のために最も適当と見られる方向で貢献を続けられるよう」との「信頼」を表明していた。
 しかし高見大司教は、問題解決は難しいと見ている。共同体は「長年の間、高松教区で問題を数多く引き起こしてきた」と言う。大司教は、共同体のある司祭との経験や、他の司教からの同様な問題に対する聞き取りで、自分の教区では共同体の宣教を許可しないことに決めたと語った。
 共同体の司祭は、現地の司教と東京にいる上長の双方に従属することが、大きな問題だ、と大司教は説明する。「彼らは、活動している教区の司教に従いたいとは言うものの、それを全く実行していない。とにかく十分でも正当な方法でもない」と言う。
 問題は、権威に関することだけでなく、行なわれるミサの方法にもある。共同体の司祭は、ミサで日本語を使うが聖歌などは異なる。「彼らは全てキコ創設者の霊性に従うが、それは私たちの文化は心情からは全くかけ離れている」と高見大司教。
 さらに、教区司祭が執行するミサを「不完全」として、共同体のメンバーが自分たちのミサを優れたものとして推進しており、これも教区内に分裂をもたらした、と言う。
 財務面の問題もある。共同体は財務を教区から独立させており、官庁への収支報告を困難なものにし、また教区の力を削いでもいる。
 司教側は、共同体の日本でのあり方に指針を設ける方法を探っている。
 高見大司教は、今回の教皇と司教団との会談で何が討議されたか正確に把握してはいないが、「日本の全司教が今回の会談に深い関心を寄せていることは確か」と言う。大司教は、日本の司教が、共同体の日本における将来について教皇の決定に従おうとしていることでは結束していることを強調した。
 高見大司教は、キコ創設者に出した提案が、共同体の活動5年間停止と、その期間を「日本における活動を反省するためのもの」とすることと言う。「5年経過した後に、司教側は共同体と問題の議論を始めたい。私たちは、彼らに立ち去って、二度と戻るなと言いたいのでは決してない。望ましい形で活動して欲しい。日本語と特に日本文化を学んでほしいのだ」と語った。


◎ベツレヘムで『国際イスラム教・キリスト教会議』

 【CJC=東京】キリスト教、イスラム教、ユダヤ教の指導者約400人が12月14日、パレスチナ自治区ベツレヘムで開かれた『国際イスラム教・キリスト教会議』に参加した。『平和を目指す宗教=パレスチナ』と『パレスチナ・イスラム教・キリスト教委員会』が開催した。
 会議は、パレスチナのキリスト者とイスラム教徒の間の対話と協力を推進するためのもの。共存という文化と互恵の強化をも目指している。パレスチナでこの種の会議が開催されたのは初めて。
 エルサレムとパレスチナのイスラム教大法典官シェイク・モハンマド・フセインと、エルサレム名誉総主教ミケル・サバ氏(『平和を目指す宗教=パレスチナ』共同会長)が会議を主導した。
 ミケル・サバ氏が「イスラム教徒、キリスト者、ユダヤ教徒がパレスチナでは何世紀もの間共存して来た。ところがパレスチナとイスラエルの政治的紛争が宗教関係にも影を投じた。
『平和を目指す宗教=パレスチナ』は草の根レベルから地球規模まで共存のための活動を展開している」と語った。


◎イラク北部モスルで青年女性キリスト者拉致

 【CJC=東京】イラク北部モスルで12月15日、青年女性キリスト者宅に武装した男性が押し入り、女性を拉致した。一連のキリスト者迫害の一環と見られる。
 拉致された女性は現地の技術学校生徒。拘束されている場所も、現状も不明だが、多くの場合、被害者は殺害されている。
 モスルのキリスト教共同体は一時、10万人を数えたが、脅迫を恐れて同市を脱出する家族が相次ぎ、現在は5000人にまで落ち込んだ。
 シリア典礼カトリック教会のイグナチウス3世ヨウナン総主教は、治安を維持出来ていないと、イラク政府を非難した。


≪短信≫CJC通信Twitter速報『cjcpress』から。

≪インド≫
▽インド・ムンバイ警察は12月6日、売春施設の所有者と経営者を逮捕、少女6人を救出した。キリスト教団体『インディアン救助ミッション』が協力した。

≪中東≫
▽イスラエル政府考古局が、エルサレムで1800年前の水浴場を発見した。
▽アラブ首長国連合のスリバニヤス島にある古代ネストリウス派の修道院と教会遺跡が公開された。この遺跡は1990年代初めに発掘されたもの。
▽エジプト・カトリック教会広報担当のラフィック・グレイシェ神父が、会堂建設不許可に抗議したキリスト者が投獄されるなど、最近の抑圧事情を12月16日、バチカン放送に語った。
▽パレスチナ自治政府当局者らが12月16日に米CNN放送に語ったところによると、1967年の中東戦争以前の国境線に基づいてパレスチナ国家を承認するよう、英、デンマーク、仏、スウェーデン各政府に正式に要請したという。
▽死海文書を立体的にスキャンした画像を数ヵ月以内にグーグルが提供する。費用約2億8000万円。全文の提供には数年掛かる。

≪欧州≫
▽ロシア政府が、米国のラジオ宣教団体『ロシアのためのクリスチャン・ラジオ』が運営している『ニューライフ・ラジオ・サテライト・ネットワーク』のFM2局のうちクラスノヤルスク地方ノリリスクの1局を閉鎖したことが明らかになった。番組構成比率が許可基準を満たさなかったため、という。
▽ルーテル世界連盟のムニブ・ヨウナン会長とマーティン・ユンゲ総幹事は12月16日、教皇ベネディクト16世とバチカンで会談した。教皇はルーテル派の一致を目指す動きを歓迎した。ヨウナン会長は、宗教改革500年を記念して両派が聖体(聖餐)に関して共同声明を出すべきだ、と述べていた。
▽バチカンのサンピエトロ広場に立てられた樹齢93年の高さ約30メートルのクリスマスツリー点灯式が12月17日、バチカン市国行政庁長官兼市国委員長ジョヴァンニ・ラヨロ大司教の司式で行なわれた。
▽バチカンが12月17日、司教会議への出席強制と、非認可司教の首座選出は、相互信頼を損なう、と中国を避難する声明を発表した。
▽教皇ベネディクト16世が2011年9月22〜25日、ドイツのベルリン、フライブルグ、エルフルトなどを訪問する。
▽教皇ベネディクト16世は2011年に母国ドイツの他、6月4〜5日にクロアチア、8月18〜21日にスペイン、11月18〜20日にはベニンを訪問する。スペインでは世界青年の日の式典を司式する。
▽オランダ・ドルトレヒトで12月10〜11日、プロテスタント各派の「全国教会会議」が開催され、50教会から約700人の代表が参加した。ただ完全な教会一致は「現実的ではないユートピア」という雰囲気は、その昔のドルト会議をほうふつとさせるものだった。

≪北米≫
▽米マサチューセッツ州アマーストのノース・コングリゲーショナル教会がこのクリスマス・イブ礼拝で閉鎖される。1826年創設以来、地域の支えとなって来たが、長引く不況で財務面で立ち行かなくなった。
▽米聖公会が発行していた月刊紙『エピスコパル・ニュース・マンスリー』と季刊紙『エピスコパル・ニュース・クオータリー』が2011年1月号で停刊する。通信『エピスコパル・ニュース・サービス』はオンライン配信を継続する。
▽米国で「メリー・クリスマス」と祝う人は49%、「ハッピー・ホリデイズ」とか「シーズンズ・グリーティングズ」とより一般的な人は44%、と宗教ニュース調査。


《メディア展望》

  =カトリック新聞(12月19日)=https://www.cwjpn.com
★巡回して「祈り」学ぶ=月1回、7教会で順番に=神奈川第3地区
★初の国際フェスタ開催=静岡県の掛川教会="国境"の無い共同体
★路上生活者招きクリスマス音楽=仙台・元寺小路教会でコンサート
★テゼの祈り 全国で=仏から修道士来日
★ラヴェンナの世界遺産=東京藝大のキリスト者=「修復にかかわれて幸せ」

  =キリスト新聞(12月25日)=https://www.kirishin.com
★女性国際戦犯法廷から10年="性暴力の認識低い"=元「慰安婦」らが来日し証言
★世界AIDS・DAY記念礼拝="エイズと共に生きる"
★国会クリスマス晩餐会でツルネン議員=「戦いが少しでもなくなれば」
★「教会の環境が大事」=ギタリスト・井草聖二さん=米音楽フェスで表彰楯
★中国=カトリック教会最高指導者にバチカン非承認司教

  =クリスチャン新聞(12月19・26日)=https://jpnews.org
★「故郷」のモデルは天国=唱歌・童謡に受け継がれた賛美歌=歌と解説でドキュメンタリーDVD
★自民議員のバンド演奏に社民党首も「ハッピー」=国会クリスマス参加議員は最多
★元関西聖書神学校校長、金井由信氏が逝去


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