世界キリスト教情報 第1037信（2010.12.06）
- 世界教会協議会のトゥヴェイト総幹事がバチカンで教皇と会談
- 韓国初の民営刑務所はキリスト教系
- 教皇、山口駐バチカン大使に平和追求の模範として日本の役割期待
- バチカン関係の文書漏えい８００通以上
- ドミニカでメノナイト系諸派が平和会議
- 《短信》
- 《メディア展望》
◎世界教会協議会のトゥヴェイト総幹事がバチカンで教皇と会談
【ＣＪＣ＝東京】世界教会協議会（ＷＣＣ）のオラフ・フィクセ＝トゥヴェイト総幹事は１２月４日、バチカン（ローマ教皇庁）を訪問、教皇ベネディクト１６世と１５分間会談した。会談では、目に見える教会の一致、中東のキリスト者が置かれた状況などについて話し合ったという。
「とても打ち解けた親密な会話が出来た。教皇はＷＣＣと、私が総幹事として召された業の重要性を強調した」とトゥヴェイト総幹事は会談後に述べた。
教皇はまた「将来に行なおうとしている働きをどのように開発、計画するかについての関心を示した。教皇自身、ＷＣＣの信仰職制委員会に参加したことがあり、わたしたちの働きの重要なことを知っている」、と総幹事は指摘した。
教皇は、１９７０年代初め、神学者、ヨーゼフ・ラッツィンガー大司教として同委員会の一員だった。
カトリック教会は、ＷＣＣに正式加盟はしていないものの、信仰職制委員会、世界宣教伝道委員会、両派合同委員会などには代表を派遣している。また２０１３年に韓国・釜山で開かれる第１０回ＷＣＣ世界大会の計画にも参画している。
教皇との会談に先立ち、トゥヴェイト総幹事はキリスト教一致推進評議会議長のクルト・コッホ枢機卿とも会談、ＷＣＣなどキリスト教連合組織が集まっているジュネーブを教皇が訪問する可能性を検討した。
総幹事は、カトリック系の『フォコラーレ運動』や『聖エギディオ共同体』の本部、「スープキチン」や高齢者施設も訪問した。またローマで開かれたイタリア・プロテスタント連合の礼拝で説教した。
◎韓国初の民営刑務所はキリスト教系
【ＣＪＣ＝東京】キリスト教団体『アガペ基金』が、韓国で最初の民営刑務所『希望』をソウル郊外ヨジュに１２月１日開設した。最初の収容者は３０人。同基金のキム・サムファン議長は、同刑務所の狙いの一つは再犯率を３％にまで低下させることにある、と言う。
韓国政府法務省は、「民間部門の参画は、刑務所運営の効率化に貢献する」と新聞発表で指摘した。
韓国のプロテスタント教会は１９９５年依頼、私営刑務所制度の創設を議会筋に働き掛けてきた。国会は創設案を１９９９年通過させている。
キム氏は、私営刑務所を成功させる鍵は、収容者を更生させるためのプログラムを充実させること、と言う。
『希望刑務所』では、収容者にボランテア６００人による個人的なコンサルテーション、聖書研究に基づくヒーリング（癒し）、被害者との間の和解、音楽や芸術によるセラピーなどを実施する。
改宗を強要するのでは、との懸念に関し、キム氏は刑務所を「プロテスタントの数を増やすためだけに」設立したのではない、と言う。刑務所は様々なプログラムによって更生したいという受刑者だけを受け入れるので、「宗教的自由の問題はない」と強調している。
『希望刑務所』は３６０人まで収容可能。前科２犯未満で、禁固７年以下の２０歳から６０歳までの男子受刑者を収容する。麻薬、公安関係、組織暴力関係の犯罪者は収容しない。
敷地２１ヘクタールに十字架型６階の刑務所建設費用は２８８億ウォン（約２１億円）。韓国政府は公営刑務所運営費の９割相当分を支出することになっており、運営を１民間団体に委ねることへの懸念も強い。法務省は、批判を避けるため係官４人を派遣するという。
また施設が充実していることは、収容者の待遇に平等さを欠くことになる、との議論もある。
宗教団体が運営する刑務所は米国やブラジルにあり、いずれも公営施設では犯罪者を収容しきれていない。
◎教皇、山口駐バチカン大使に平和追求の模範として日本の役割期待
【ＣＪＣ＝東京】教皇ベネディクト１６世は１１月２７日、新任の山口英一駐バチカン大使の信任状を受け取った。
バチカン放送によると、教皇は大使への挨拶で、日本と教皇庁が特にこの６０年間に築いてきた非常に友好な関係を喜び、これからもよりいっそうの関係強化を要望した。
日本が周辺地域と国際社会で担う重要な役割に触れ、教皇は、日本が国連との関連において、極東地域の特に発展途上国での平和と民主主義、人権の拡大に意味ある貢献を行ってきたことを賞賛した。
教皇は、今年が広島と長崎への原爆投下の悲劇から６５年が経過したことを想起、核不拡散と軍縮への努力をこれからますます忍耐強く続けていく必要を強調した。
教皇はまた、日本のカトリック教会が長い間取り組んできた、諸宗教間の開けた尊重ある対話の推進を評価した。
◎バチカン関係の文書漏えい８００通以上
【ＣＪＣ＝東京】ウィキリークスによるバチカン（ローマ教皇庁）関係の情報漏えいを有害だ、と米大使館が強く非難した。８００通以上の文書がバチカンについて触れており、そのうち７００通以上が同大使館から発信されたもの、とカトリック系ＣＮＡ通信が報じている。
内容は、バチカンの情報活動、国家安全、内部統治、米国務省との関係などにわたってお
さらにバチカン関係文書には中国、キューバ、イラク、イスラエル、ベネズエラ、ベトナムに関するものも含まれている。
大使館の報道担当者は、情報漏えいが大使館の活動を危うくするかどうか明らかにしなかった。国務省も出先の各大使館も、漏えいされたものかどうかを含め、コメントしない、と指摘している。
英紙テレグラフは１１月２９日、さらにバチカン関係の文書が、この数週間に公表される、と報じた。
※関連短信
▽ウイキリークスによる米政府の外交文書暴露の中で、現教皇ベネディクト１６世選出の際、米国の情報担当者で、ラッツィンガー枢機卿の選出を予想した人がいなかったことも明らかになった。
◎ドミニカでメノナイト系諸派が平和会議
【ＣＪＣ＝東京】メノナイト系諸派の平和会議がドミニカのサントドミンゴで１１月２７日開催、メノナイト、ブレスレン教会、フレンド派（クエーカー）など各派の代表７７人が１７カ国から参加した。会議は１２月２日、最終文書を採択、閉幕した。
文書は１３章で構成され、会議の総括と平和の神学的理解を盛り込み、女性、児童、ユース、移住者などへの暴力に特に注目したもの。またコロンビアの内戦、ドミニカとハイチの関係、チリとハイチの災害などにも言及している。
≪短信≫ＣＪＣ通信Twitter速報『cjcpress』から。
≪アジア≫
▽『アジアにおける水と衛生、共同体の権利』会議が１１月２８日から１２月３日までマニラで開催。
▽北朝鮮による砲撃で韓国・延坪島のカトリック教会（仁川教区）も被災した。同島住民１７００人のうち４５０人がカトリック者という。
▽パキスタンで、ムハンマドを侮辱したとして死刑宣告を受けたことに特赦の可能性が出ているが、それでも生命の危険にさらされており、肉親もまた殺されるかも知れないと言う。
≪太平洋≫
▽オーストラリアで私費を投じ伝道放送に貢献したウォレン・ルー氏が１２月５日早朝死去した。
≪インド・パキスタン≫
▽イスラム教過激派聖職者が、イスラム教を侮辱したとして訴追されているアシア・ビビ被告（４５）を殺害した人に賞金を出すと申し出たことを、パキスタンの少数派対策主管のシャバズ・ハッティ長官が、非道徳、不義、無責任だと非難した。
▽パキスタンのラホール高裁は１１月２９日、侮辱罪で死刑判決を受けたアシア・ビビ被告（４５）へ、大統領が特赦することを禁止した。
▽インド・オリッサ州で１１月２７日、地雷が爆発、妊婦や子どもを含むキリスト者５人が死亡。
≪中東≫
▽イスラエルでは建国以来最大規模の山火事に見舞われた。１２月２日の発生以来、死者も４０人を超えた。消火のための航空機が欧州各国から飛来している。救援活動も始まる中、ユダヤ人への宣教団体『国際キリスト教大使館』もイスラエルの救援団体と連絡を取って活動を展開している。
▽サウジアラビアの大イスラム法学者シェイク・アブドル・アジズ・アルシークが、テロを厳しく批判、和解を勧め、イスラム教徒が一致し、信仰に忠実であることを要請した。
≪欧州≫
▽教皇ベネディクト１６世は１２月１日、水曜日恒例の一般接見の際、中国の教会の状況について言及、特に困難な時にあっても中国の教会を信頼している、と語った。
▽ロシアの首都モスクワでイスラム教のモスク計画が持ち上がったが、住民の間から反対運動が起きている。ロシア正教会の会堂建設も反対にあっているが、いずれも住民への根回しが不足していたと見られる。
▽英国国教会総会は１１月２４日、世界聖公会共同体の一致を図る文書を採択したが、『グローバル・アングリカン・フューチャー会議』は、１月にアイルランドのダブリンで開催される管区長会には出席しない、と語った。
▽スコットランド・エジンバラ在住の「ノアの箱舟」探検家ドナルド・マッケンジー氏（４７）がトルコ東部のアララト山に向かったまま、消息を絶っている。
▽欽定訳聖書が１６１１年に刊行されてから４００周年を迎える英国では、早くもエディンバラ公によって、ホワイトホール宮殿バンケットハウスで、最初の記念行事が始まった。
▽教皇ベネディクト１６世は１１月３０日、正教会エキュメニカル総主教バルトロメオス１世に宛てたメッセージで、正教会との完全相互聖餐関係に進む必要を強調した。世界に対するキリスト者の大きな証になる、という。
▽バチカン諸宗教対話評議会議長のジャン＝ルイ・トーラン枢機卿が、女性キリスト者の死刑判決でもめるパキスタンを１１月２５日訪問した。アーシフ・アリ・ザルダリ大統領とも会談する。
▽カトリック新聞にはキリスト者の良心を形作り、時事問題に教会の見方を示すという代え難い役割がある、と教皇がイタリアのカトリック新聞１８８紙の代表に１１月２９日語った。
▽バチカンのサンピエトロ大聖堂で、バグダッドで殺害されたキリスト者のためのミサが１１月２９日行なわれた。
▽教皇が新設した財団の目的の一つは『ノーベル神学賞』設立、と関係者。
▽フランス国鉄のギヨーム・ペピ会長が、第二次大戦当時、国内のユダヤ人７万６０００人をナチスの強制収容所に輸送したことで、ユダヤ人殲滅計画の一端を担ったとして、１１月初め遺憾の意を表明した。
▽英国ではボクシング・デー（12月26日の祝日）に、営業する支店を大手スーパーが大きく増やす見込み、とデイリー・ テレグラフ紙。
≪アフリカ≫
▽ソマリアでイスラム教からキリスト教に改宗した１７歳の女性が１１月２５日、短銃で射殺された。親類か、その指示を受けたものによる「名誉殺人」と見られている。
▽エリトリア難民８０人が拉致され、エジプトとイスラエル国境のシナイ砂漠に１カ月も拘留されている、とキリスト教ソリダリティ・ワールドワイドが明らかにした。ほとんどが福音派キリスト者と見られる。
≪米州≫
▽アメリカ人で教会に月に３回以上通う人は２３％。しかしさまざまな調査では３５〜４５％の数字が出る、とミシガン大学のフィリップ・ブレナー教授。
▽米『バイブル・ワークス』が１１月１８日、トゥイッターによる毎時聖句サービスを開始した。４９言語、１００種類の訳本から選択出来る。１回は１４０字で全部を受信するには１１カ月かかる。アドレスは「https://www.oi.com/」。
▽中間選挙後の米国で公共宗教調査研究所が行なった調査で、アメリカ人の６割近くが、神は人類の歴史においてアメリカに「特別な役割」を与えた、と信じていることが分かった。
《メディア展望》
＝カトリック新聞（１２月５日）＝https://www.cwjpn.com
★日韓司教交流会＝「自死」テーマに学ぶ＝両国に共通の社会問題
★「宣教地司祭育成の日」＝昨年の献金額の報告
★広島教区＝「平和の使徒となろう」＝教区代表者会議５年目の振り返り＝司祭、修道者、信徒、共に振り返り今後へ
★北朝鮮＝ヨンピョン島砲撃＝韓国・現地教区の司祭たち＝対話による説得促す
★配布で問題解決できず＝コンドームで教皇見解示す＝「人道責任の第１歩」とも言及
＝キリスト新聞（１２月４日）＝https://www.kirishin.com
★教職、信徒が「障がい」の意味問う＝「恵み」か？「苦しみ」か？＝東京でシンポ
★バプ連盟＝総会で中長期活動方針を審議＝１０年後の教会見据えて
★聖公会管区審判廷＝性的虐待で加害者弁護は懲戒に当たらず＝「司祭の無実を信じた」
★キリスト教一致推進評議会議長＝プロテスタントを非難＝「エキュメニズムの当初の目標放棄」
★中国カトリック教会＝司教を独自任命＝バチカンが異例の声明
＝クリスチャン新聞（１２月５日）＝https://jpnews.org
★延坪島砲撃で祈り要請＝韓国国教界 戦争拡大防止へ「知恵深く」＝神だけが解決、国家安保に教会一致を
★ケープタウン会議参加者ら＝祈りのネット広がる
★砂漠化した社会のオアシスに＝ＪＥＣＡ・本郷台キリスト教会＝宣教計画「ミッション３０００」前進
★アジア発・世界宣教ビジョン共有＝ペンテコステ・アジア宣教会議 日本初開催
★初期の韓国長老教会で聖書はどう読まれたか？＝朱基徹牧師記念の集いで朴元珠氏が講演
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