世界キリスト教情報

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世界キリスト教情報 第1034信(2010.11.15)

  • スウェーデン教会総監督が中国プロテスタント教会の変化を指摘
  • 聖公会保守派聖職がいよいよカトリック教会へ
  • 教皇はコーランも聖なるものと考えるようイラン宗教指導者期待
  • イスラエルの入植住宅新設計画で緊張高まる
  • 古代都市エリコが観光名所として再開発へ
  • バチカンで「歴史的図書」に触れる展示
  • 《短信》
  • 《メディア展望》

◎スウェーデン教会総監督が中国プロテスタント教会の変化を指摘

 【CJC=東京】中国のキリスト教の様相が変化する中で、公認の中国基督教協議会の重要性が減少している、とスウェーデン教会(ルーテル派)のアンデルス・ウェイリド総監督が香港でENI通信に語った。同氏はスウェーデン教会訪問団のリーダーとして、11月7〜14日に中国を訪問した。
 「私は、中国での成長勢力が諸教会の中にあると見ており、中国基督教協議会は政府との連係の面では重要な地位にある。しかし事態は変わり、同協議会の影響力は減少する可能性がある」と言う。
 観測筋は、プロテスタント教会の数と規模が拡大し、それが諸教会の連絡調整機関としての協議会の役割を低めている、と見るようになった。
 同協議会は1980年、各地の教会の上部組織として設立された。1966年から始まった文化大革命では信仰生活を表出することは実質的に禁止されていたが、その収束を受けてのことだった。
 かつて存在していた教派は1950年代の「大躍進」時代に消滅していた。
 同協議会は、各地の教会を支援し、神学教育、聖書・賛美歌などの出版推進のために活動した。今もなお協議会は自身を「教派後」の組織と規定しており、実際にも伝統的な教派とは異なり、特定の職制理解に拘束されてはいない。
 公認の協議会の重要性が薄くなるとしたら、中国のプロテスタント教会にとって堅固な神学(教会論)を持つことが重要になる。「国家の規制で一つにされていないなら、教会論という思考が重要になる」とウェイリド氏は言う。
 各地の教会が活発になると、「各個教会が完全な教会ではありえない」ことが理解されるべきだ、として「教会が健全に発展するには、特定の監督方式か相互監督方式が必要になる。これは昔ながらの監督制だ」と指摘する。
 協議会は、中国のプロテスタントを少なくとも1800万人と推定している。しかしさらに多数のキリスト者が非公認の『家の教会』に属していると見られる。
 スウェーデン教会訪問団は8人で構成され、杭州の華東神学院、南京金陵協和神学院、河南省周口の訓練センターなどを訪問した。
 訪中の間に人権問題を持ち出すか、との質問に、ウェイリド総監督は「もちろん教会がこれについて意識するよう奨励する。スウェーデンでも欧州ども、人権問題は非常に重要だ」と述べた。
 スウェーデン900万人口の75%がスウェーデン教会に属している。同教会はルーテル世界連盟では最大の加盟教会。


◎聖公会保守派聖職がいよいよカトリック教会へ

 【CJC=東京】教皇ベネディクト16世は2009年9月、英国国教会(聖公会)からカトリック教会に入ることを望む聖職者・信者らに応えるための使徒憲章を承認した。英国国教会のメンバーであることとこれまで守っていた典礼の多くをそのまま保持しつつ加入を認めるという方式で、主教5人を含む聖職50人が2011年にもカトリック教会に迎えられることになろう。
 これらの聖職者の1人、ロンドン東方エブスフリートのアンドリュー・バーナム主教は、国教会の自由化傾向と、それに伴う保守派への扱いに幻滅を感じたことが転会の動機になったと言う。
 「女性聖職を認めないのは時代遅れ、と言われるが、論議は神学よりも社会学の領域のものになっている」とし、国教会が女性聖職反対派に適正な措置をとるとした約束を果たしていない、と非難している。
 「アングロ・カトリック」と呼ばれる保守派の大多数は、女性叙階が2012年に正式に決定されることになるか、最終段階での否決を期待して注視している。
 ケント州リッチバラのキース・ニュートン主教も、離脱を準備しているが、国教会の自由化進展に失望した、と言う。「離脱は辛い。国教会には大きな世話を受けた。しかしこれ(オルディナリアーティ)は嬉しい機会だ」として、今すぐオルディナリアーティに加わりたいという聖職者もいるが、しばらく様子見の人もいる、と語った。
 近くのカトリック教会ノッティンガム教区のマルコム・マクマホン司教は、実際にカトリック教会への聖職者加入は来年早々になるだろう、と言う。「オルディナリアーティは、時がたつと共に増えよう。もはや留まれないと感じるかどうかは、国教会次第だ。国教会を混乱させることがカトリック教会の意図ではない」
 転会するとされているジョン・ブローダスト主教は、オルディナリアーティの実情を注意深く見守っている、と語った。英国だけで約1000教会が女性司祭を認めないと決議している。
 一方で、教皇が打ち出したオルディナリアーティに英国のカトリック教会司教が全面的に賛成しているわけでもない。代表的な意見かどうかは分からないとしながら、聖書学者のN・T・ライト主教は、『チャーチ・オブ・アイルランド・ガゼット』紙に、今でも伝統主義者がカトリック教会には多すぎるのに、と思う聖職者もいる、と語った。

※関連短信
▽英国国教会の霊的最高指導者カンタベリー大主教ローワン・ウイリアムズ氏が11月17日に、バチカンを訪問する。キリスト教一致推進評議会設立50周年記念式典に出席のため。


◎教皇はコーランも聖なるものと考えるようイラン宗教指導者期待

 【CJC=東京】イランの宗教指導者大アヤトラ・アブドラ・ジャヴァディ=アモリがバチカン(ローマ教皇庁)諸宗教対話評議会議長のジャン=ルイ・トーラン枢機卿に、イスラム教の聖典コーランを、教皇ベネディクト16世が福音と同様に聖なるものと考え、また米国の中東での行動を非難するよう期待している、と語った。
 「教皇がコーランを福音書やトーラーと同様に聖なるものと考え、それを焼き捨てるような恥ずべき行為を非難することを期待する」として、「イランの東側、アフガニスタンやパキスタンでは人々が毎日殺されている。西側のイラクではテロと殺害が毎日続いている」として大アヤトラは、中東全域で殺人が日常的だ、と言う。


◎イスラエルの入植住宅新設計画で緊張高まる

 【CJC=東京】パレスチナ自治政府が将来の独立国家の首都と主張する東エルサレムで、米国や国連から懸念が示されているにも関わらず、イスラエルのベニアミン・ネタニエフ首相は、ユダヤ人入植住宅約1300戸の新規建設計画を進める方針を11月8日明らかにした。
 パレスチナ側が怒りの抗議を行なったところ、イスラエル警察は道路遮断という対抗策に出ており、緊張が高まっている。


◎古代都市エリコが観光名所として再開発へ

 【CJC=東京】聖書にもたびたび登場する都市エリコは、ヨルダン川河口付近にあり、海面下250メートルと、世界で最も低い町として知られるが、1万年の歴史を持っている。そこにサラム・ファイヤド首相が「エリコ1万年祝典」を打ち出した。住民は特別に祝うほどのことはない、と冷淡だが、パレスチナ自治区政府は、観光名所として再開発することにした。リゾート、空港、1000エーカー(約16平方キロ)ものヤシ林などを造成すると言う。ただ総額5億ドル(約480億円)もの費用は民間に頼みだ。
 ファイヤド首相は「エリコ1万年祝典」を、パレスチナ国家の完成を目指した国家プロジェクトの一環、と意気込んでいる。パレスチナ観光省は「古代史、文化、宗教的遺産と地理学上の独自性」を打ち出して、エリコをベツレヘムに次ぐ観光地になる、と期待している。


◎バチカンで「歴史的図書」に触れる展示

 【CJC=東京】バチカン(ローマ教皇庁)の図書館が所有する貴重なコレクションに、実際に触れる気分を味わえる展示が11月10日から来年1月31日まで開催される。
 ロイター通信によると、サンピエトロ広場にフレスコ画で飾られたバチカン図書館の部屋を小さなサイズで再現、1492年に教皇に就任したアレクサンデル6世のクリスマスミサ典礼書や1564年のダンテの「神曲」などの高品質な複製品が並べられる。
 気分を盛り上げるため、来館者には白い綿の手袋が用意され、展示品に触れてもらうという。


≪短信≫CJC通信Twitter速報『cjcpress』から。

≪アジア≫
▽パキスタンの裁判所が11月11日、キリスト者の農場労働者アシア・ビビさんに、イスラム教の始祖ムハンマドへの侮辱罪で死刑判決を出した。4人の子どもの母親であるビビさんは、作業中に同僚に信仰の話をしていたという。

≪中東≫
▽テロ攻撃を受けたバグダッドの教会で11月7日、ミサが行われ、信徒60人が出席した。

≪欧州≫
▽英国のクエーカー派の団体『ブリテン年会』(BYM)は、国際的な石油大手BPへの投資を縮小した。
▽バチカン(ローマ教皇庁)はユーロビジョンの衛星を通じ、教皇ベネディクト16世がクリスマスと新年ミサを執行するのを、全世界に同時中継する。クリスマスの深夜ミサは現地時間午後4時から、25日のメッセージと呼び掛け「ウルビ・エト・オルビ」は午前6時から、新年ミサは同4時から。
▽バチカン(ローマ教皇庁)がアイルランドの聖職者による性的虐待問題に関する応答として、「使徒的訪問」を開始する。第1段階は2011年のイースターまでに完了する。
▽バチカンのキリスト教一致推進評議会が設立50周年を迎えた。
▽世界学生キリスト教連盟(WSCF)は11月9日、新総主事に米聖公会のクリスチン・ハウゼル氏を選出した。
▽独福音教会(EKD)はハノーバーで開いた総会で11月9日、ニコラウス・シュナイダー牧師(63)を同派評議会議長に選任した。

≪アフリカ≫
▽2011年1月9日、スーダン南部の独立をめぐる国民投票が行なわれるが、世界教会協議会のオラフ=フィクセ・トゥヴェイト総幹事と世界福音連盟のジョフ・タンニクリフト総幹事は、自由で公正な投票が行なわれるよう、アフリカ始め全世界の教会が声を上げるべきだと語った。
▽コンゴのカニャバヨンガで、クリスチャン・バクリン神父が、制服姿の2人に射殺された。他の神父への脅しと見られている。

≪米州≫
▽米国のカトリック者には、悪魔に取り付かれたと恐れている人が多く、悪魔払いの正式な訓練を受けた司祭が少ないところから、米司教協議会が11月11〜12日に対策会議を開催した。
▽バラク・オバマ米大統領は11月11日、韓国駐留の兵士に演説、北朝鮮の人道危機を強調した。
▽国際アムネスティは、ジョージ・W・ブッシュ元米大統領がテロ容疑者の尋問に「水責め」を使うことを容認していたことを犯罪だとして、捜査を要請している。
▽米ネブラスカ州オークランドの第1合同メソジスト教会では、昨年末にオルガニストのパット・アンダーソンさんが80歳を迎え、引退したが、後継者が見付からない。音楽奉仕者2人はピアノしか弾けないのだ。


《メディア展望》

  =カトリック新聞(11月14日)=https://www.cwjpn.com
★教皇、スペイン訪問=聖家族教会を献堂=いのちの擁護促す
★「待ちつづけた夢が叶うとき」=日本カトリック難民移住移動者委員会全国研修会=フィリピンからの"花嫁"と日本人信徒の協働の実り=新庄教会の献堂も祝う=山形
★エルサレムで総会=100年目の世界女性団体連盟
★全日本合唱コンクール大会で清泉女学院(神奈川)=中・高部門とも金賞に=純心女子高(長崎)も銀賞を受賞
★教皇=「不条理な暴力」と非難=イラクで大聖堂占拠=多数の死者と負傷者

  =キリスト新聞(11月13日)=https://www.kirishin.com
★第37回日本基督教団総会=「一致」はいずこに?=常議員選挙は全数連記=戒規関連議案、激論の末「審議せず」
★日本聖公会京都教区=被害者代理人・鎌田司祭が起訴受け=拘置所から「無罪」訴え
★ライシャワー生誕100年で祝賀会=札幌子どもミュージカルが出演
★キリスト教文化協会=キリスト教功労者を顕彰=中山、モス、大木、高橋の4氏
★フォンテス神父叙階50年=関係者ら120人が祝う

  =クリスチャン新聞(11月14日)=https://jpnews.org
★第3回ローザンヌ世界会議「ケープタウン決意表明」=苦悩する世界に「全福音」を=誓約を深化「ケープタウン決意表明」
★第37回日本基督教団総会「一致はいずこに?」=未受洗者配餐めぐり紛糾=北村慈郎牧師の免職決定で=石橋新総会議長 路線を継承
★"感謝・感激・感動"で信徒育成を=OBI創立20周年=使命新たに前進
★「聖書物語」朗読CD遺し長岡輝子さん逝去
★ルーテル学院理事長・石原寛氏が逝去


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