世界キリスト教情報

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世界キリスト教情報 第1033信(2010.11.08)

  • 教皇、サンチャゴ・デ・コンポステーラとバルセロナ訪問
  • 聖公会南半球管区首座主教にチリのザヴァラ氏
  • キューバ福音派が教戒師300人の教習始める
  • キリスト者はどこにいても「目標」=アルカイーダ
  • ロビンソン主教、来年1月引退を発表
  • 米経済誌フォーブスが「最も力のある人」選定、教皇を5位に
  • 《短信》
  • 《メディア展望》

◎教皇、サンチャゴ・デ・コンポステーラとバルセロナ訪問

 【CJC=東京】教皇ベネディクト16世は11月6日朝8時30分、ローマ市郊外のフィウミチーノ空港を出発、11時30分にスペインのサンチャゴ・デ・コンポステラ空港に到着、スペイン司牧訪問を開始した。空港で、教皇はフェリペ皇太子夫妻に迎えられた。
 教皇は、「人間は常に真理を求める歩みの中にある」と教皇は空港での歓迎式典で述べながら、サンチャゴ・デ・コンポステーラの聖年を機会に、自分はキリストへの愛を胸に歩む「巡礼者」としてこの地を訪れたと語った。教皇は、市内を巡礼、市民と共にミサを捧げた。
 ガリシア州の州都サンチャゴ・デ・コンポステーラは、キリストの十二使徒の1人、聖ヤコブの墓の上に立てられた大聖堂を中心とした街で、エルサレム、ローマに並ぶキリスト教の重要巡礼地。
 同地は、現在「聖ヤコブ年」と呼ばれる「聖年」が祝われている。教皇は大勢の巡礼者たちに迎えられ、大聖堂に入った。
 聖ヤコブの墓前で深い祈りを捧げた教皇は、大聖堂に集まった人々への挨拶で、「巡礼とは単にある場所を訪ね、その自然や美術や歴史に接するだけではなく、何よりも自分自身から抜け出し、神に会いに行くこと」が大切と語った。
 教皇は、聖ヤコブを訪ねるその歩みを通して信仰のうちに自分自身を変容させていった数知れない巡礼者たちの群れを想起し、ここで養われた文化、祈り、憐れみ、回心が、教会や病院、宿や修道院という形で具現化されていったことを指摘した。
 さらに教皇は、イグナチオ・デ・ロヨラ、アビラの聖テレジア、十字架の聖ヨハネ、フランシスコ・ザビエルなど、偉大な聖人を輩出し、現代も様々な新しいグループや活動が盛んなスペインの教会に励ましをおくると共に、この豊かな精神遺産に刺激され、スペインはじめヨーロッパが人間の正真の真理・自由・正義に基づいた、物質的追求にとどまらない倫理や社会に配慮した未来を築くことを強く要望した。
 同日夕、オブラドイロ広場で行われたミサで教皇は、今日のヨーロッパに広がる世俗主義に警告を発した。
 教皇は、神が人間と自由の敵であるという考えに対し、「神が愛していないのならば、神はこれらすべてを創造されただろうか」「神が人間を守ろうとしないのならば、なぜ神はご自分を啓示されたのか」と問いながら、人間は神という光のない闇の中に生きられないと強調。ヨーロッパの人々が喜びをもって神を取り戻すように、と要望した。
 7日、教皇はバルセロナに移動、『サグラダ・ファミリア』の献堂ミサを行った。
 ミサには、フアン・カルロス1世国王夫妻始め約30万人が参加した。教皇は、祭壇の聖別をはじめとする献堂儀式を行い、『サグラダ・ファミリア』を「バシリカ」(重要な教会の称号)と宣言した。
 『サグラダ・ファミリア』は、カタルーニャ出身の建築家、アントニオ・ガウディの設計で知られる。1882年の着工から130年近く経った今も工事が続けられ、その完成は2026年を目標にしているともいわれる。
 ミサの説教で教皇は、ガウディを「天才建築家」であると同時に「尊厳ある厳格な生活をおくり、信仰の灯を最後まで保った言動一致のキリスト者」と想起した。また教皇は、誕生からその自然な死に至るまでの人間の生活の基礎にある「家庭」の大切さと、愛と祈りの学び舎であるその役割を強調、今日の社会において家庭を支え、保護する必要を訴えた。スペイン政府が同性間の結合を容認したことを念頭においてのものと見られる。ただ今回はあくまで司牧訪問であることから、政治的な問題に深く立ち入ることはなかった。


◎聖公会南半球管区首座主教にチリのザヴァラ氏

 【CJC=東京】聖公会南半球管区第10回総会がアルゼンチンのブエノスアイレスで行なわれた。アルゼンチン、ボリビア、チリ、パラグアイ、ペルー、ウルグアイから主教、司祭、信徒が出席した。11月4日の首座主教選挙では、チリのエクトル・ザヴァラ主教を、2002年以来のグレゴリー・ヴェナブレス氏の後任として選出した。任期3年。同管区首座主教にチリ人として初めての就任。
 チリではこの2月にマグニチュード8・8の地震が発生、死者800人、家屋倒壊1500万戸の大被害を受けたが、その救援にザヴァラ氏は活躍した。その際に氏は、世界の聖公会から多大な支援を受けたことに感動した、と語っている。
 今回総会では、女性の聖職叙階を認めるとの教憲改定案を否決した。聖公会管区総会の決定には、主教、司祭、信徒の各部会の賛成が必要で、今回は主教と信徒は賛成したものの、司祭部会は反対した。
 同管区は1981年成立、信徒総数2万2000人で、聖公会共同体の中では最少規模だが、管轄地域は最大の部類。


◎キューバ福音派が教戒師300人の教習始める

 【CJC=東京】中南米のキリスト教専門ALC通信によると、キューバ政府が刑務所で福音派の礼拝を許可する見通しの下、キューバ教会協議会(CIC)教戒師牧会宣教部会は10月18〜27日、18教派の教戒師55人の教習コース第1段階を終了した。
 教習はマタンザスの福音派神学校の支援を受けている。同協議会は総計300人の教習を構想している。


◎キリスト者はどこにいても「目標」=アルカイーダ

 【CJC=東京】バグダッドのカトリック教会襲撃後、イスラム教過激テロ組織『アルカイーダ』が犯行を認めるとともに、キリスト者はどこにいても「目標であり得る」と語ったことで、世界各地の抑圧されるキリスト者援助団体『バルナバス・ファンド』が、エジプトのコプト教会抑圧などキリスト者への迫害が広がっていることに注意を呼び掛けた。
 「脅迫はキリスト教のあらゆるセンター、組織、制度、指導者、信徒にまで及ぶ」と、『バルナバス・ファンド』は警告している。

※関連短信
▽イラクから英国に本拠を移したアタナシオス・ダウッド大主教が、イラクのキリスト者に国外脱出を勧めている。英公営BBC放送が伝えた。
▽エジプトのホスニ・ムバラク大統領は11月6日、アルカイーダ系集団がエジプトのコプト教会キリスト者を脅迫していることを非難、保護を約束した。公営MENA通信が報じた。


◎ロビンソン主教、来年1月引退を発表

 【CJC=東京】米聖公会ニューハンプシャー教区のジーン・ロビンソン主教が11月6日、来年1月に引退する、と語った。同派初の公然同性愛者の主教として、世界聖公会共同体の分裂にも至りかねない賛否両論に巻き込まれてきたことが、早期引退を決意させたものと見られる。ただ引退発表は、再任を予想していた総会出席者に衝撃を与えた。
 死の脅迫も受けたロビンソン氏は、「2004年以来の7年は、わたしにとって、また家族にも、教区の皆さんにも重荷だった」と、コンコードで開催された教区総会で語った。


◎米経済誌フォーブスが「最も力のある人」選定、教皇を5位に

 【CJC=東京】米経済誌『フォーブス』が恒例の「最も力のある人」を選定、発表した。」トップは中国の胡錦濤国家主席、2位、バラク・オバマ米大統領、3位、サウジアラビアのアブドッラー・ビン・アブドルアジーズ・アール・サウード国王、4位、ウラジミル・プーチン・ロシア首相に次いで5位に教皇ベネディクト16世を選定した。
 宗教関係ではダライ・ラマが39位に名を連ねている。


≪短信≫CJC通信Twitter速報『cjcpress』から。

《太平洋》
▽インドネシア・ジャワ島のムラピ火山の噴火による死者は、11月7日までに少なくとも158人に上ったという。支援団体などによると、避難した周辺住民は約20万人に上る。CNNが報じた。

《インド/パキスタン》
▽パキスタンで、ファトワー(イスラム法による見解)が殺害対象と認めた、スルマン・ナスリ・カーン博士が11月1日、イスラマバード近郊のチャスマでレンガや棒で殴打され重傷を負った。同氏はイスラム教からキリスト教へ改宗していた。

《中東》
▽イラクの首都バグダッドで、武装集団がキリスト教会を襲い信者らを人質に立てこもった事件で、神父と信徒46人、治安部隊7人、武装集団側は5人が死亡した。
▽フランスのベルナール・クシュネル外相は、バグダッドの教会襲撃事件の負傷者約30人を手術のため、フランスへ搬送する、と訪問先のレバノンのベイルートで語った。
▽バグダッド教会襲撃事件の際、殺害されたシリア典礼カトリック教会の司祭の1人が、9月に米国でコーラン焼却の計画が出た際に、教会員に最悪の事態に備えるよう語っていたことが明らかになった。
▽国際アムネスティは、バグダッドのキリスト教会襲撃を、戦争犯罪だと決めつけ非難した。

《欧州》
▽第二次大戦中の教皇ピオ12世を取り上げたイタリアのテレビ番組を「一方的で明白な宣伝」と、ローマの主任ラビ、リッカルド・ディ・セニが11月2日批判した。
▽バチカン(ローマ教皇庁)の国連常駐代表フランシス・チュリカット大司教が11月1日、バグダッドでの教会襲撃にからみ、国連の宗教的寛容に関する報告が、キリスト者への迫害に対して有効に機能していない、と批判した。
▽世界一高かったブラジル・リオデジャネイロのキリスト像を抜く高さ36メートルのキリスト像が、ポーランドのシフィエボジンに登場した。
▽英国国教会のウィリアム・フィッタル総会書記が11月1日、カトリック教会に転向した人たちも、国教会の教会堂を使用出来る、と発言した。
▽ベルギー・カトリック教会聖職者の児童に対する性的虐待問題にからみ、超保守派のアンドレ・レオナール大司教の報道担当ユルゲン・メッテペニンゲン氏が大司教の姿勢に反発、辞任した。
▽ジュネーブで開催されたイスラム教・キリスト教の指導者・学者会議で、ヨルダンのハジ・ビン・ムハンマド・ビン・タラル王子は、他の宗教が弱小で抑圧されている時には、それぞれに保護することが必要だ、と参加者に呼びかけた。
▽駐ノルウェー中国大使が各国政府に対し、12月10日にオスロで開かれるノーベル平和賞の授賞式に出席しないよう警告する書簡を送っていたことが分かった。
▽ロシア伝道を専門にする『ラッシャン・ミニストリーズ』が、今年のクリスマスに、旧ソ連圏全域の子ども5000人に向け、子ども聖書やプレゼントを入れたボックスを配布する。

《アフリカ》
▽コンゴとアンゴラ国境付近で、コンゴから退去を命じられた難民女性600人以上が、性的虐待を受けたことがわかった。加害者の国籍が不明なため、国連は両国がそれぞれ捜査に乗り出すよう要請している。

《米州》
▽英語聖書で奴隷を表わす言葉はギリシャ語で「ドゥロス」で124回使われているが、奴隷と訳出されたのは1回だけで、後は全部「召使」とされている。キリストの友ではなく、奴隷となることを命令されているのに、聖書訳出の間違いだ、と米国のジョン・マッカーサー牧師。
▽チリ鉱山落盤事件で地下に閉じ込められた鉱山作業員のホセ・エンリケ氏が、サンチャゴで10月29日行なわれた大衆伝道者ルイス・パラウ氏の伝道集会に出席、救助を待つ間に作業員33人のうち22人がキリストに従ったと語った。
▽米紙ワシントン・ポストなどによると、ジョージ・ブッシュ前大統領が、自分の回顧録で、2001年の米同時テロの容疑者に水を浴びせて自白を迫る「水責め」の尋問を承認したと記述していることが分かった。
▽米カトリック教会メイン州フォールリバー教区のジョン・P・ハリントン司祭が、自らが前に司牧していたファルマスの聖パトリック教会の主任で教区代理のジョン・A・ぺリー司祭とセント・アンソニー教会のウィリアム・M・コステロ司祭を、名誉毀損で同州上位裁判所に訴えた。
▽米キリスト教ラジオ放送番組では最長の歴史を持つ、大衆伝道者ビリー・グラハム牧師の『決断の時』が60周年を迎えた。


《メディア展望》

  =カトリック新聞(11月7日)=https://www.cwjpn.com
★中東特別シノドス閉会=教皇、「平和は可能」
★バチカン、執行停止願う=イラク元副首相の絞首刑
★インドネシア=津波と火山噴火被害=教会も緊急支援に動く
★軍記物語で宣教師養成=17世紀、『太平記抜書』使う=上智大学キリシタン文庫所長 高祖神父が校註版完成
★東京JOC=働く青年ら勉強合宿=年金、保険、職場環境学ぶ

  =キリスト新聞(11月6日)=https://www.kirishin.com
★『殉教と殉国と信仰と』出版記念シンポで高橋哲哉氏=「犠牲の論理」へ警鐘
★宮平勉牧師(日本福音教団)が窃盗容疑で逮捕=現地牧師会の抗議に反論
★日基教団第37回総会=新議長に石橋秀雄氏
★いのちのことば社60周年「オープンチャペル」=東後勝明氏「心の平安」を強調
★「ケセン語」訳聖書の山浦玄嗣氏講演=「教会用語は世間に通じない」

  =クリスチャン新聞(11月7日)=https://jpnews.org
★教会・信徒=福音で一つに=関西フランクリン・グラハムフェスティバル=来場者3万超=大阪城ホールに賛美と福音満ちる
★奄美豪雨で全島に霊的痛み=ホーリネス・大島教会、祈り要請
★ハイチでコレラ感染拡大=ワールド・ビジョンが予防活動
★窃盗容疑の牧師不起訴=地元牧師会は教団に抗議
★「きよめと怒り」問題提起=第25回関東聖化大会=S・ハーパー氏=「我々は祭司の王国の一員」


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