世界キリスト教情報

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世界キリスト教情報 第1031信(2010.10.25)

  • 中東シノドス閉幕、教皇は「共にある」ことを強調
  • 教皇が新枢機卿24人を任命
  • 第3回ローザンヌ会議、「第二の改革」呼び掛け
  • 米国の家庭は聖書が一杯だが...
  • 死海文書の高画質画像をインターネットで公開へ
  • クリスタル・カテドラルが破産申請
  • 《短信》
  • 《メディア展望》

◎中東シノドス閉幕、教皇は「共にある」ことを強調

 【CJC=東京】教皇ベネディクト16世は10月24日、中東司教会議(シノドス)開幕ミサを、バチカンの聖ペテロ大聖堂で特別ミサを行なった。
 教皇は、中東各地のカトリック者に対し、孤立しているのでなく、いつも聖座(バチカン)と全体教会と共にある、と説教で述べた。
 中東地域のキリスト者が減少していることに、教皇は「たとえ少数でも、人々に対する神の愛の福音の担い手である。その愛はイエス・キリストがその地にあって啓示したものである」と指摘、その地において平和を作り出すもの、和解の使者となることが出来、またそうすべきである、と勧めた。
 シノドスは23日の最終会合で、中東でキリスト教徒が存亡の危機にあることを世界に訴え、イスラム、ユダヤ教との共存を呼びかける声明を発表した。
 イスラエル占領下で、パレスチナ人キリスト者が移動の自由を奪われ、家屋を破壊されていること、イラクでキリスト者の殺害や教会への攻撃が続いていることを指摘、パレスチナではイスラエルとの2国家解決の実現、イラクでは宗教や民族にかかわらず市民の安全確保を国際社会に訴えた。
 今回のシノドスには、中東各地約170人と、アフリカ北部・東部諸国、中東の信者の移民が多い欧米諸国の司教ら、教皇庁の関係者、専門家らが参加、「中東にあるカトリック教会=交わりと証し」を主題に現状を10日から2週間の日程で協議した。
 シノドスはこれまで、大陸別や、個々の国をテーマとして行われてきたが、「地域」を対象としたのは今回が初めて。また中東の流動的な情勢の中での開催ということから、2週間という短期間だったことも初めて。
 今回は、ラテン典礼の他に、コプト、シリア、ギリシャ・メルキト、マロン、カルデア、アルメニアの各典礼の教会が合同して行い、初めてアラビア語も公用語とされ、討議の際にはイタリア語、英語、仏語と共に使用された。


◎教皇が新枢機卿24人を任命

 【CJC=東京】教皇ベネディクト16世は10月20日、新枢機卿24人を任命した。「教会の王子」は11月20日、ローマで正式に任命される。24人の氏名は恒例の水曜日の一般接見の最後に発表された。
 米首都ワシントンのドナルド・ウール大司教、バチカン(ローマ教皇庁)列聖省長官のアンジェロ・アマート大司教、最高裁判所長官のライモント・レオ・バーク大司教、キリスト教一致推進評議会議長のクルト・コッホ大司教、文化評議会議長のジャンフランコ・ラヴァージ大司教は予想通り。
 ワルシャワ、ミュンヘン、キンシャサ(コンゴ)、キトー(エクアドル)、アパレシーダ(ブラジル)、ルサカ(ザンビア)、コロンボ(スリランカ)の各大司教が新枢機卿に任命された。
 これで教皇ベネディクト16世は5年の在任中に80歳未満の枢機卿会議定員120人の半数近くを任命したことになる。今回、80歳未満のイタリア人枢機卿を8人任命しており、これで次期教皇にイタリア人が選ばれる可能性が強まったとの見方もある。
 教皇ゆかりのミュンヘンのラインハルト・マルクス大司教は57歳と最年少。ドイツ教会の司教による児童性的虐待に強硬姿勢で取り組んだことも評価されたようだ。


◎第3回ローザンヌ会議、「第二の改革」呼び掛け

 【CJC=東京】南アのケープタウンで開催された第3回世界宣教ローザンヌ会議は10月24日閉幕した。197国、約4300人の代表は、これから各地で、福音派系諸教会が抱えている諸問題に取り組むことになる。
 ローザンヌ神学作業グループ議長を引退するランガム・パートナーシップ・インターナショナルのクリス・ライト国際部長は、「世界中の福音派は大いに恥じるべきだ。私たちには第二の改革が必要だ」と語ったが、それは大きな反響を呼んだ。
 今回会議には中国本土の教会からの参加が期待され、関心も高まっていたが、実現しなかった。

《関連短信》
▽南アのケープタウンで開催された第3回世界宣教ローザンヌ会議は全世界に向けインターネットで情報を提供を始めたところ、早速ハッカーの攻撃を受けた。


◎米国の家庭は聖書が一杯だが...

 【CJC=東京】聖書は教会の礼拝で使うものと思われがちだが、教会にある聖書より、家庭やホテルなどにある聖書の方が多いだろう。ギデオン協会の聖書は、全世界のホテルに15億冊置かれている。
 キリスト教専門調査団体『バーナ・グループ』の調べでは、米国の家庭の9割に聖書がある。しかも1冊ではなく、平均3冊だ。家庭にある聖書を全部積み上げると、エベレスト(チョモランマ)山の高さ約8850メートルの1000倍になるという。
 米聖書協会は、聖書を毎年500万冊配布しており、出版の世界では聖書の売り上げは、ダイエットもの、ミステリー、著名人の自叙伝などをしのぎ、「永遠のベストセラー」なのだ。毎年の聖書販売部数を正確に算出することはまず不可能、と専門家は言う。ただ聖書がビジネスにとってありがたいことは確か。
 出版専門誌『パブリッシャーズ・ウイークリー』の宗教担当を長く務めてきたフィリス・ティックル氏は、「聖書は多くの点で金を生む牝牛」と言う。ドル箱なのだ。
 福音派キリスト教出版協会のマイケル・コビントン広報・教育部長によると、福音派系の出版社だけで見ても、2009年の不況の最中に2000万冊の聖書を5億ドル(約480億円)売り上げている。
 とは言え、聖書がたくさんありすぎるのも問題だ、と懸念する学者もいる。さまざまな訳があり、さらに「ニッチ・バイブル」と呼ばれる特定層向け版も出されると、キリスト者に困惑と分裂を生じさせることにもなる。相対論者からは笑いものにされ、神の言(ことば)を「お好み次第」にするようなものだ、と言う。
 聖書翻訳の専門家、ベイラー大学前学長のデービッド・ライル・ジェフリー氏は、かつて欽定訳が果たしていたような、俗化しないで、聖書の崇高さを伝えられる『共通聖書』が必要だと言う。
 福音派では有力なイリノイ州ウイートン大学のリーランド・ライケン教授はもっと率直に、「各種の訳が大きく異なった場合、原典はどうなのか、読者は知りようがない」と言う。
 一方でキリスト教出版社の側は、出来る限り多くの人が聖書を読めるようにする義務が、神の呼び掛けさえある、と言う。
 普及しているからと言って、アメリカ人が皆、聖書を熱心に読んだり、親しんでいるわけではない。宗教専門調査団体『プーリサーチセンター』の調査では、新約聖書の最初の4巻の名を言えない人も半数おり、創世記が聖書の最初だと知らない人も3分の1いた。
 そこで親しみやすい聖書を目指そうと、プロテスタント系出版社から『コモン・イングリッシュ・バイブル』計画が打ち出された。近く新約がお目見えし、来年には旧約も含む聖書が登場する。
 ただ聖書が儲かると言っても、投資額も半端ではない。
 『コモン・イングリッシュ・バイブル』の訳出に100万ドル(約8000万円)、宣伝に300万ドル(約2億4000万円)をすでに投じたと言う。
 米国では20世紀に入ってからでも、改訳を含めると200以上の聖書訳が出された。中には専門家でもその差の意義が不明なものもある。
 書店の棚がさまざまな聖書で溢れかえっていると、購入するつもりで来ても、買わないで帰ってしまう客も半分はいる、という研究もある。
 キリスト教出版社ゾンダーバン社の2010年版カタログは聖書だけで223ページ。そこには学生、救いを求める人、ガンにかかった女性、多忙なお父さんなど、さまざまな需要に応じた聖書が列挙されている。
 ライケン氏は、出版社の 狙いは霊的なものではなく、経済的なものだ、と見る。「聖書は権威ある神の言葉と見られなくなり、あってもなくても良いものになってしまった」と言う。


◎死海文書の高画質画像をインターネットで公開へ

 【CJC=東京】イスラエル考古学庁は10月19日、国内にあるグーグルの研究開発センターと協力して、管理している死海文書をすべてデジタル画像化すると発表した。2008年にデジタル化の試験プロジェクトを実施している。
 来年初めに研究施設に高度なイメージング技術を導入し、死海文書の3万の断片の高画質画像をインターネットで公開する。これで数世紀にわたって色あせてきた文章をよみがえらせ、研究に寄与するだけでなく、文書を再び露光する必要もなくなり、保存状態のレベルを維持できる、と見られる。
 死海文書は、遊牧民が1947年に死海近くの洞穴で多数の断片を見つけたものの、学者の功名争いもあってか、公表が遅れ、文書全体が公開されたのは91年になってからだった。


◎クリスタル・カテドラルが破産申請

 【CJC=東京】米カリフォルニア州ガーデングローブにあるメガチャーチ『クリスタル・カテドラル』(信徒数約7000人)は、負債が5000万ドル(約40億円)を超え、支払いも滞るまでになり、ついに連邦破産法第11章の適用申請を行った。
 宣教活動の主体となったテレビ番組『力の時』の負担が大きく、献金減少もあって申請に踏み切った。
 主任のシェイラ・シュラー・コールマン牧師は、教会が公表した声明で、「景気退行のため収入が予想外に急減、支出削減が間に合わなかった」と述べている。
 クリスタル・カテドラルはこの1月、献金の連続減少に対応して職員50人解雇と余剰資産の売却を発表した。2008年の3000万ドル(約24億円)あった収入が、前年の09年には2200万ドル(約18億円)と27%も減少した。毎年入場券数万枚を売り上げていたページェント『イースターの栄光』も今年は中止した。
 ロバート・H・シュラー牧師が50年前に設立した『クリスタル・カテドラル』だが、同氏の引退後、一家の内紛が表面化し会員減少につながった。最初は息子ロバート氏が後継者となったが、父親と意見が対立、2008年に退陣、今では息女が主宰者。
 コールマン牧師は、教会の礼拝や諸活動は継続すると、語った。いくつかの宣教事業や、テレビ番組『力の時』も継続するが、放送局数は減少必至。
 「55年の間に困難な状況に陥ったことは初めてではない」とコールマン牧師。「ドライブイン映画館で教会を始めた時にも、失敗すると言う人がたくさんいた。しかしすばらしい成功を見せた。ロサンゼルスとそれからニューヨークで1970年に礼拝をテレビで放送しようとした時にも、失敗すると多くの人が語った。しかしこれまでは成功してきたではないか。77年、座席数2800、総ガラス貼りの教会堂を地震が頻発する南カリフォルニアに建設するという計画も、出来るわけがない、と多くの人が予想した。わたしたちは偉大な神にいつも信頼を寄せている。いかなる問題よりも偉大で、わたしたちが直面する課題よりも偉大だ」と言う。
 コールマン牧師は、破産について「神が書き続けられる本にもう1章加えるだけのこと。わたしたちは神の計画は良いものであることを知っており、その章も良いものとなることを疑わない」と語った。


《短信》CJC通信Twitter速報『cjcpress』から

 《アジア》
▽香港の陳日君枢機卿が10月11〜12日、上海を訪問、公認教会のジン・ルシアン司教らと会談した。カナダ通信が報じた。

《中東》
▽トルコ政府宗教問題関係者が、イスタンブールのハギアソフィア・バシリカでキリスト者、イスラム教徒双方が礼拝することを認める可能性について言及した。

《米州》
▽米国防総省は10月19日、カリフォルニア州連邦地裁が同性愛者の軍務禁止規定の執行停止を命じたことを受け、公然同性愛の入隊希望者を受け入れるよう新兵募集部門に指示したことを明らかにした。
▽ジョセフ・ラングフォード神父がガンのため10月21日、メキシコ北部ティファナで死去。59歳。福者マザー・テレサの承諾を得て、神の愛の宣教者神父会を設立した。


《メディア展望》

  =カトリック新聞(10月24日)=https://www.cwjpn.com
★チリ全土の教会=鉱山落盤事故全員救出で感謝の祈り 
★宣教は競争ではない 福音を告げること=教皇が注意促す
★評議会 公式に設立=教皇 「新福音化」を推進
★印刷メディア なお不可欠=教皇、ジャーナリストに語る
★京都教区=「病者・高齢者訪問」を学ぶ=教区福音宣教企画室が奈良地区で講座

  =キリスト新聞(10月23日)=https://www.kirishin.com
★聖書協会世界連盟 韓国ソウルで総会=「神の言葉、世界のための命」
★"障害は恵みか"問うシンポ=どう語り、どう聞く?=東京で来月開催
★ラテンアメリカ・キリスト教ネット=ディアス神父招き特別講義
★バチカンで中東シノドス開催=信徒の現状と将来を考察
★ノーベル平和賞の劉氏=釈放求める声拡大

  =クリスチャン新聞(10月24日)=https://jpnews.org
★カレン族来日=教会にフォロー期待=行政の来日半年研修に「不十分」の声
★神の栄光が当時のままの姿で=世界遺産ガッラ・プラチディア廟モザイクの保存と修復
★クリスチャン看護師ら交わり実る国際協力=ナースクリスチャンフェローシップ国際会議=日本で初開催
★牧師が窃盗の現行犯で逮捕=日本福音教団
★「宗教者九条の和」=長崎で大会と巡礼


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