世界キリスト教情報

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世界キリスト教情報 第1029信(2010.10.11)

  • バチカンで中東シノドス開催
  • バチカン聖職者省長官にピアチェンツァ大司教、コルウヌム議長にサラー大司教
  • ノーベル平和賞の劉氏釈放求める声拡大
  • 比『人口抑制法案』支持のアキノ大統領「破門」は誤報、とカトリック教会
  • 南アの「良心」ツツ大主教が79歳迎え正式引退
  • 統一教会が韓国で7200組合同結婚式
  • 《短信》
  • 《メディア展望》

◎バチカンで中東シノドス開催

 【CJC=東京】教皇ベネディクト16世は10月10日、バチカンの聖ペテロ大聖堂で特別ミサを行い、中東司教会議(シノドス)を開幕した。
 今回シノドスの目的は中東の信徒、住民の現状と将来を考察するもの。イスラエル・パレスチナ紛争、イラク紛争、過激なイスラム主義、地域の経済危機、キリスト教会の分裂などが具体的に挙げられている。
 24日までの日程で、サウジアラビア、バーレーン、キプロス、エジプト、アラブ首長国連合、ヨルダン、イラン、イラク、イスラエル、クウェート、レバノン、オマーン、カタール、シリア、トルコ、パレスチナ自治区、イエメンなど各国の司教(主教)170人以上と、バチカン(ローマ教皇庁)当局者、他派キリスト者、専門家などが中東のキリスト教共同体の将来について意見を交わすと見られる。
 教皇は、中東が「出エジプト以来の」地であり、流浪から立ち戻る地であること、イエスが生涯を過ごし、死に、復活した地である、と説教で語った。キリストの福音を地の果てにまで広めるように、と教会が生まれた所である、とも指摘した。
 教皇はさらに、中東で生まれた三大宗教は「人々を一つにし、いかなる形の暴力をも排除する精神的文化的価値を推進すべきなのだ」と付け加えた。
 国際社会は、中東での「平和を目指す、信ずべき、誠実で建設的な路」を支援すべきであり、「シノドスはユダヤ教やイスラム教との建設的な対話の続ける好機」と言う。
 シノドスの正式な目標は、イスラム圏諸国で、キリスト教のアイデンティティを強め、エキュメニズム(教会一致)を推進すること。また礼拝の自由、人権教育の実施といった宗教的自由確立も取り上げられる。
 中東の総人口約3億5600万人の中でカトリックは僅か570万人(1・6%)、全キリスト者でも2000万人(5・6%)に過ぎない。
 中東のカトリック教会は独自の体制にある。コプト教会、シリア教会、ギリシャ・メルキト教会、マロン教会、カルデア教会、アルメニア教会の六つの独立(スイジュリス)教会があり、それぞれが首長を擁している。典礼など東方正教会のものでありながら、ローマ・カトリック教会の教義を受け入れ、ローマ教皇の首位権を認めている。
 教皇は、シノドスの「名誉議長」にマロン教会のナスララ・スフェイル総主教、カルデア教会のエンマヌエル3世デリー総主教を任命することで、東方教会重視の姿勢を示した。
 またユダヤ教から米ユダヤ委員会のデービッド・ローズン宗教間関係部長、イスラム教からレバノン・スンニ派のムハンマソ・アル・サンマク氏、イラン・シーテ派のシャヒド・ベヘシュティ氏ら指導者を来賓として招いている。
 シノドスとしては初めてアラビア語も公用語とされ、討議の際にはイタリア語、英語、仏語と共に使用される。


◎バチカン聖職者省長官にピアチェンツァ大司教、コルウヌム議長にサラー大司教

 【CJC=東京】教皇ベネディクト16世は10月7日、クラウディオ・フンメス枢機卿の教皇庁聖職者省長官からの定年を理由とする引退を承認、後任に同省現次長のマウロ・ピアチェンツァ大司教を任命した。ピアチェンツァ氏は1944年、イタリア生まれ。69年司祭叙階、2003年司教叙階、07年大司教。
 また、教皇は同日、ポール・ジョセフ・コルデス枢機卿の教皇庁開発援助促進評議会(コルウヌム)議長の定年引退を認め、後任にコナクリ名誉大司教で福音宣教省現次官のロバート・サラー大司教を任命した。サラー氏は1945年ガーナ生まれ。69年司祭叙階、79年コナクリ大司教。
 今回の任命は、バチカン業務への習熟を考慮した順当なもので、一部に取りざたされていた、教皇がバチカンの大改革に着手するとの噂を打ち消す形となった。


◎ノーベル平和賞の劉氏釈放求める声拡大

 【CJC=東京】ノーベル平和賞選考委員会は、2010年のの受賞者に、中国人作家、劉暁波氏(54)を選んだ、と10月8日発表した。劉氏は、北京で1989年に起きた天安門事件以来、民主化を訴え、現在は、共産党の1党支配を批判する「08憲章」と呼ばれる文書をインターネット上に発表したとして、国家と政権の転覆をあおる罪に問われ、懲役11年の判決が確定、東北部遼寧省錦州市の刑務所で服役中。
 賞の選考にかかわるノルウェーのノーベル研究所の所長が、ことし6月、中国政府の幹部から、劉氏を選べば中国との関係に影響が出るとして、圧力とも受け取れる警告を受けたと伝えられた。中国外務省も、劉氏は「中国の法律を犯し、刑罰を科された人物であり、その行為はノーベル平和賞の趣旨に反するものだ」と述べている。
 劉氏は10日午前、錦州市内で妻の劉霞さん(49)と面会したことがわかった。関係者が明らかにした。受賞決定の事実などを伝えたとみられる。劉氏は、「賞を天安門事件の犠牲者にささげる」と涙ながらに語ったという。
 劉氏の受賞決定に、改めて同氏の釈放を求めるなど中国政府に開放政策を求める声が広がっている。昨年の平和賞受賞者バラク・オバマ米大統領は「中国は経済改革で劇的な発展を遂げたが、劉氏受賞は、中国の政治改革が、その発展に追いついていないことが示すものだ。すべての基本的人権は尊重されねばならない。中国政府に劉氏のできるかぎり速やかな釈放を求める」と述べた。ドイツ、フランス両政府も、劉氏の釈放を要求した。
 台湾の馬英九総統は当初、祝意を示すだけにとどめていたが、9日、台北での在外華僑の集まりに参加した際、「中国大陸当局が劉暁波氏を出所させ、自由にするよう希望している」と明言した。
 1989年に平和賞を受賞しているチベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世は11日、「中国政府は個人が政府と異なる意見を持つことを認めないが、中国の人々を救う唯一の方法は、透明性のある、開かれた社会をつくることだ」と成田空港で共同通信記者に語った。
 バチカン(ローマ教皇庁)文化評議会関係者は、バチカン放送に、劉氏への授賞は「中国で、展開しつつある問題と進歩双方への関心を高めることになる」と語った。
 香港のカトリック教会正義と平和委員会、『香港基督教関心協会』は、劉氏釈放を求める声明を8日発表した。香港基督教協議会のポ・カムチョン総幹事は、劉氏の受賞は全く趣旨に叶ったものだ、と歓迎の意を表明している。
 台湾の人権、環境保護、女性運動など約50団体も、共同声明で、劉氏を速やかに釈放するよう中国当局に要求した。声明は、中台間で結ぶ協定に人権擁護の項目を盛り込むことも求めている。


◎比『人口抑制法案』支持のアキノ大統領「破門」は誤報、とカトリック教会

 【CJC=東京】フィリピン・カトリック教会が、ベニグノ・アキノ大統領を破門する可能性がある、と報じたカトリック放送『ラジオ・ベリタス』が、原稿の誤りだった、と謝罪した。
 司教会議会長ネレオ・オッチマル司教とのインタビューの際に、同氏が家族計画施策を推進するなら、教会は何らかの制裁を科す可能性がある、と述べたもの。
 破門も考えられるか、との質問に、オッチマール司教は、「可能性はある。しかし、今プロクシメイトな可能性がある、と見ているわけではない」と答えたが、放送原稿は、「見ているわけではない」という個所が抜けていた。
 オッチマル司教は、事態明確化のため、現段階で、破門は論理的な可能性だけだ、と釈明した。
 カトリック教会の影響が強いフィリピンでは、人口妊娠中絶は事実上の完全禁止。しかし人口増加率は年2%近く、民間調査機関によると、国民の68%が人工避妊を支持している。
貧困削減のためには人口問題の解決が重要との姿勢から、コンドームやピルを使った人工避妊を支援する『人口抑制』法案が提出された。
 法案は政府が事実上、無料で家族計画に必要なサービスを提供し、学校でも性教育を行うと規定。カトリック教会に配慮し、家族計画は強制ではなく、あくまでもカップルの意思を尊重するとしている。
 アキノ大統領は9月28日、訪問先の米国で「政府は、家族計画を必要とする人々を支援する義務がある」と、法案への支持を表明したことに教会側は「神の教えに背き、生命倫理上問題がある」と反発した。その中でカトリック司教協議会の議長が、ラジオ番組で「大統領が人工的な避妊を支持するのであれば、破門の可能性もある」と警告した、と報じられたもの。


◎南アの「良心」ツツ大主教が79歳迎え正式引退

 【CJC=東京】1984年のノーベル平和賞受賞者で、南アの「良心」と呼ばれて来た聖公会のデズモンド・ツツ大主教が10月7日に79歳を迎えたのを機会に、正式に引退した。
 反アパルトヘイト政策運動の推進者の1人で、改革後もさまざまな公的活動に従事、メディアとのインタビューにもしばしば登場したが、それらを一切止め、今後は時間をリア夫人と家族のために使う、と言う。
 楽しみはクリケット、ラグビー、サッカーなど南アでポピュラーなスポーツ観戦が楽しみだ、としながら「口を閉ざすつもりだが、そう出来ない時もあるかもしれない」と語った。
 現地紙デイリー・ディスパッチは10月7日付の社説で、「彼は忍耐を持って、許しを求め、常に『他者への愛』を示す能力であるウブンツというアフリカの概念を理解し、普及させた」と述べた。


◎統一教会が韓国で7200組合同結婚式

 【CJC=東京】文鮮明派統一教会が10月10日、韓国忠清南道牙山で7200組の合同結婚式を行なった。
 この日、参加したカップルは、主催者発表によると、米国、日本、フランス、イタリア、ドイツ、カナダ、タイ、フィリピン、ガーナ、ナイジェリア、イスラエル、ルーマニアなど40以上の国の7200組、その内1200組が未婚者という。
 会場の鮮文大学広場で、文鮮明総裁が聖水を振りまいたり、結婚宣言を行なった。式には関係者2万人以上が出席、衛星中継も行われた。


《短信》CJC通信Twitter速報『cjcpress』から。

≪アジア≫
▽香港高等法院は10月5日、性転換した元男性が男性パートナーとの結婚を婚姻登記処に拒否されたことをめぐって起こした裁判で、元男性が男性と結婚することはできないとの判断を下した。中国国営新華社通信が報じた。元男性側は上訴する構え。

≪欧州≫
▽セルビアの首都ベオグラードで10月10日、同国史上2回目となる同性愛者らの権利擁護を訴えるパレードが開催されたが、これに抗議する集団が暴徒化し警官隊と衝突、警察発表によると、警官を中心に少なくとも141人が負傷した。AFP通信が報じた。
▽フランスの憲法会議は10月7日、イスラム教徒女性の全身を覆う衣装、ブルカやニカブを公共の場で着用することを禁止する法律が憲法違反に当たらない、との判断を下した。
▽教皇ベネディクト16世はバチカン(ローマ教皇庁)広報評議会主催のカトリックメディアの世界会議で、新技術の誕生・発展に伴いメディアの画像依存度が高まっていることについて、実生活と仮想現実を混乱させる危険がある、と指摘した。
▽世界初の体外受精児を誕生させたロバート・エドワーズ英ケンブリッジ大名誉教授へのノーベル医学生理学賞授与が決まったことに、バチカン(ローマ教皇庁)生命アカデミーのコロンボ委員は10月4日、「深刻な道徳的疑問を引き起こす」と批判した。

≪米州≫
▽米疾病対策センターが2006〜08年に行った成人23万5000人以上の聞き取り調査の結果を分析した結果、全体の9%が「うつ病」、うち3・4%が「重いうつ病」と診断された。無職であることと関連しているケースが多いという。


《メディア展望》

  =カトリック新聞(10月10日)=https://www.cwjpn.com
★召命を祈り求めて=横浜教区=一粒会大会=交流、分かち合い 子どもも共に楽しむ
★理念と使命を再確認=日本カトリック児童施設協会全国会議
★外国人を支えて20年=記念国際ミサと祝賀会=CTIC=カトリック東京国際センター
★「国際ファミリーディ」開く=京都教区=ことしは京都北部地区が担当
★いのちを守るプロジェクト=自死防止と遺族ケア目指す=東京・麹町教会=ホームページを開設

  =キリスト新聞(10月9日)=https://www.kirishin.com
★新約学者ゲルト・タイセン氏が主張=「イエスは実在していた」="伝統的釈義に新しい地平"=大阪・福岡など各地で講演
★海外医療協力会が50周年で感謝礼拝=『贖罪の思いに立ち返りたい』
★「コルネリオ会」で山北宣久氏講演="軍人は他人のために血も流す"
★米で規模別・成長別教会調査
★強風が紅海裂いた?=米科学者が分析結果発表

  =クリスチャン新聞(10月10日)=https://jpnews.org
★「みんなで生きる」世界目指し=JOCS創立50周年=アジア・アフリカ地域で医療協力
★81歳足取り軽く峠越え=今年は「Walk with Jeses 中山道」
★"伝道"スピリット継承=初代宣教師が再チャレンジ=日本福音自由教会60周年
★郷里沖縄で「音楽と交流の夕べ」=普天間の虚脱感から戦ない「神の国」を
★教会だけでなく職場に神はいる=「自活伝道者の系譜」で講演と討論


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