世界キリスト教情報

世界キリスト教情報

世界キリスト教情報 第1027信(2010.09.27)

  • 強風がモーセのため紅海を裂く、と米科学者が分析
  • 古代イスラエル人はワインもビールも、と米学者
  • バチカン天文台の修道士「地球外の知的生物に洗礼の可能性」
  • イタリア当局がバチカン銀行の預金押収 テデスキ総裁らも捜査
  • 米司教会議教理委が『性的人間=改定カトリック人類学に向けて』批判
  • 《短信》
  • 《メディア展望》

◎強風がモーセのため紅海を裂く、と米科学者が分析

 【CJC=東京】聖書には現実に起こったように書かれていても、それが事実であるかが常に議論される事例がある。モーセがイスラエル人を率いてエジプトから脱出した際、紅海までたどり着いた時、目の前で水が二つに裂けて壁を作り、その間を通り抜けたが、追ってきたファラオの軍勢が海底の道を通る時に水が元に戻り、全員が溺れ死んだことは、良く知られているが、しかしそれは歴史的事実なのか、疑問を抱く人は今日も多い。
 米コロラド州ボールダーの国立大気研究センター(NCAR)の科学者カール・ドゥルーズ氏が、強風が紅海の水を押しのけて道を作れることをコンピューター・モデルを使って証明出来た、と語った。強い東風が紅海の水を、道が出来るほどにまでエジプト側に押し戻したのだという。
 問題は紅海のどの地点でモーセたちの前に道が出来たのか、特定出来なかったこと。
 ドゥルー氏と協力者、コロラド大学海洋学者のウェイキン・ハン氏は、モーセたちの渡った場所と推定されていたスエズ湾内かアカバ湾付近の2個所を排除した。そしてスエズ運河の北側、地中海沿岸のナイル・デルタに狙いを定めた。古代にはナイル川の支流と湿地帯が合わさった所。
 査読オンライン雑誌『パブリック・ライブラリー・オブ・サイエンス』に掲載された研究論文は、モデルでは時速63マイル(101キロ)の風が12時間にわたって海水の特定部分に吹きかけると、理論的には元の海岸線から海水が6フィート(約2メートル)の深さまで傾斜して後退し、長さ2マイル(約3・2キロ)、幅3マイル(約4・8キロ)にわたって海底部を4時間、干潟のように露出した。これなら強風の中でもモーセたちが渡るのに十分。風が吹き止むと海水はたちまち元に戻った。
 「シミュレーションでは、出エジプト記の記述にかなり一致した」とドリューズ氏。「水が裂かれることは、流体力学でも理解可能だ。風が物理法則に基づく方法で水を移動させ、両側に安全な通路を水で作り出し、それから急激に水を元に戻したのだ」と言う。


◎古代イスラエル人はワインもビールも、と米学者

 【CJC=東京】古代イスラエル人はワインだけでなくビールも飲んだ、とザビエル大学(米ルイジアナ州ニューオーリンズ)の聖書学者マイケル・ホーマン氏が『聖書考古学レビュー』9・10月号で発表している「ワインも飲まなかった禁酒のナジル人など例外はあるが、古代イスラエル人は、堂々とビールをしかも大量に飲んでいた」と言う。
 英語訳聖書では、例えば欽定訳で「強い、酔わせる飲み物」と訳出されている個所は、元のヘブライ語は「シカル」。それを「リカー」「強い飲み物」「発酵した飲み物」などと"誤訳"して来たので、言語学的、考古学的調査に基づけば「ビール」と訳せる、とホーマン氏。
 古代イスラエル人がビールを飲んでいたかどうか、見解がまちまちなのは、イスラエルの出土品の中からビール製造の痕跡を発見、確定することの困難さが理由にあげられる。
 ビール醸造に使われた道具は、パン製造にも使われたものと類似している。古代イスラエル人は、大麦麦芽や小麦のケーキを焼くように、それを水の中に置き、酵母を加えることで、ビールを作った。
 さらにこれまで100年以上にわたって、学者がビールを飲むことは"粗野な"行動として来たために、イスラエル人のビール嗜好が無視されて来たのだ、と言う。「これが、圧倒的な証拠に反して、イエスは発酵していないブドウ汁を飲んだと信じたいキリスト者と同様に、聖書の中の英雄をビールを飲む世界とは切り離すように聖書学者をも誘導してきた」とホーマン氏。
 聖書は節度を求めているにしても、ビールはイスラエル人の主食だった、と言う。ビールは、穀物のカロリーを増大し、必須ビタミンを含み、汚染された水を殺菌する「スーパー食品」なのだ、とホーマン氏。
 「あらゆる階層の男も女も、子どもでさえもビールを飲んだ。古代イスラエルの消費量は、その宗教と公式に結び付いて奨励され、容認された」と言う。


◎バチカン天文台の修道士「地球外の知的生物に洗礼の可能性」

 【CJC=東京】バチカン天文台のギー・コンソルマーニョ修道士が、地球外の地的生物が霊魂を持っていれば、人類と遭遇した際に洗礼を授ける可能性はある、と指摘した。また「インテリジェント・デザイン」は米国の創造論者が作り上げた「悪の神学」と批判している。
 同氏は、知的生命体が宇宙空間で発見されれば、「喜ばしいことだ」と述べた。しかし私たちがその生命体とコミュニケーションを交わせることは、実際にはまずないだろう、と言う。
 教皇の訪英を前に、英バーミンガムでの「科学の祭典」を控えて語ったもの。霊魂の伝統的定義は、知性、自由意志による愛する自由、決心する自由だ、として、外形はどうであれ、霊魂を持っている生物には、求められれば洗礼を授けることになろう、と語った。
 サイエンス・フィクションを読んで科学に関心を持つようになったというコンソルマーニョ修道士、バチカン(ローマ教皇庁)は、科学研究の最新動向を十分に意識している、と言う。
 スティーブン・ホーキンズ氏も会員になっているバチカン科学アカデミーが教皇や枢機卿の意識向上に努めている。物理学の法則に神は無関係だ、といるホーキンズ氏の主張に、「彼は優れた物理学者で、神学についても彼は優れた物理学者なのだ」と言う。
 同氏はまた、「インテリジェント・デザイン」について、創造論の偽科学版だ、と片付けている。「この言葉は、本来の意味とは全く異なるものを意味するように、米国の創造論極端派の一部グループによってハイジャックされた。真の神を、異教の雷光の神に変えてしまう悪の神学だ」と言う。


◎イタリア当局がバチカン銀行の預金押収 テデスキ総裁らも捜査

 【CJC=東京】イタリア司法当局は、「神の銀行」といわれる、バチカン(ローマ教皇庁)の財政管理組織『宗教事業協会』(IOR、通称バチカン銀行)の資産を押収、エットーレ・ゴティ・テデスキ総裁ら同行幹部の捜査を始めた。IORが巨額のマネーロンダリング(資金洗浄)を行っていた疑い。
 IORは、イタリアの銀行『クレジト・アルティジャーノ』に預けていたものを9月中旬、独フランクフルトの米JPモルガン・チェースなど2行に受取人を明らかにしないまま送金しようとした。送金金額は一方が2000万ユーロ(約23億円)、もう一方が300万ユーロ(約3億4000万円)だった。これをイタリアの中央銀行『イタリア銀行』が司法当局に通報した。イタリア当局は1年以上前、IORとイタリアの銀行からの送金について取り調べを開始した、との報道もある。
 ゴティテデスキ総裁らは、イタリアの法律で必要とされている顧客の身元を開示しなかった疑いで捜査を受けている。イタリア国内メディアは、司法当局が押収した同行の資産を3000万ユーロ(約34億円)と報じている。
 バチカン国務省は9月21日、IORが資金洗浄防止の国際基準を確実に準拠するため、イタリア銀行や経済協力開発機構(OECD)と協力しており、テロと資金洗浄防止のための対策をすべて講じていると指摘、「検察の捜査について当惑し驚いている」とする声明を発表した。送金は通常の取引であり、総裁を信頼しているし、サポートしていく、と言う。
 教皇ベネディクト16世は17日、訪問先の英国で金融危機について「経済活動に関する堅固な倫理規定がなかったため」と説教している。
 ゴティテデスキ総裁は、イタリアのカトリック大学で金融倫理を教えており、1年前に業務改革のため、同行総裁に就任した。教皇と同じく倫理を失った現代資本主義を厳しく批判し、タックスヘイブン(租税回避地)規制など銀行の近代化に取り組んでいた。
 IORは昨年11月にも、伊最大手銀行『ユニクレジット』のサンピエトロ広場近くの支店経由で、受取人を明らかにしないまま計1億8千万ユーロ(約203億円)を送金していた疑惑が発覚、伊司法当局が捜査していた。同行は長年にわたり顧客の身元を明かさず、他行への送金を代行していたとされる。
 IORは1942年に設立され、教皇直属の枢機卿からなる小規模の委員会によって運営されており、財務報告は明らかにされていない。ゴティテデスキ氏の就任までバチカンは20年以上、総裁を変えていなかった。
 同行の主要顧客はバチカン当局者と聖職者。長年にわたって顧客の身元を十分明かさずに、顧客の他銀行への送金を代行していたが、2007年にイタリアで厳しい情報開示規則が施行された。バチカンの広報担当者によると、捜査対象になっている送金先の口座名義は依然IORとなっており、顧客名ではない。以前はマフィアとのかかわりも指摘され、改革を唱えた教皇ヨハネ・パウロ1世が78年、就任1カ月余で死亡した。82年には主力取引行のイタリアの銀行の不正融資が発覚し頭取が変死。歴代頭取の秘書も自殺したうえ、IORが関与していた疑惑も浮上したことがある。
 CNN放送によると、マネーロンダリングの専門家ジェフリー・ロビンソン氏は、IORは「世界でもっとも秘密に包まれた銀行」で、広大な不動産などを収入源とする同行の資金の動きを、外部が把握することはほぼ不可能だと指摘している。
 バチカンは、『市国』として独立国家であるため、イタリアの司法当局がどこまで捜査を進められるかは不明。


◎米司教会議教理委が『性的人間=改定カトリック人類学に向けて』批判

 【CJC=東京】米カトリック教会司教会議教理委員会が、クレイトン大学(ネブラスカ州オマハ=イエズス会運営)の神学者マイケル・G・ローラー氏とトッド・A・サルツマン氏が2008年に発表した『性的人間=改定カトリック人類学に向けて』を批判する文書を発表した。
 ローラー氏は引退しているが、サルツマン氏は現在同大学神学部教授。
 ワシントンのドナルド・ウール大司教を長とする教理委は、同書が、同性愛行為、婚前性交、避妊、人工授精などの倫理に関して「誤った結論」を提示している、と言う。「読者が困惑したり誤解する、特に同書が教会の教えやキリスト教の伝統に合わないキリスト者の生活を提示していることが問題」としている。
 これを受けて、クレイトン大学は、教理委員会の批判を「権威あるもの」として受け入れる、と語った。大学としては学生に、本当の教理と見なされるものだけをカトリックの教理として示す、と言う。
 同大学は『正しい大学を選ぶ』という保守的なガイドの最新版では推薦されていつが、カトリック色の強い大学を選定するニューマン枢機卿協会のリストには含まれていない。


《短信》CJC通信Twitter速報『cjcpress』から。

《アジア》
▽北朝鮮の金正日総書記が8月末に中国・吉林市を訪れた際、カトリック教会堂の建物を参観したことを、国営朝鮮中央通信も報じた。北朝鮮は事実上、宗教の自由を禁じており、金総書記の宗教施設訪問やその事実を伝える報道は極めて異例。

《中東》
▽パキスタン東部で9月13日夜ペンテコステ派のエマニュエル・ベシル牧師が路上で、5人組の男に「キリストが主で、他に救いはない」という理由を問われ、伝道を続けると語ったところ、暴行を受けた。

《欧州》
▽独ミュンヘン近郊ダッハウに置かれたナチスの強制労働収容所で飢餓と肺炎で死去したゲルハルト・ヒルシュフェルダー神父が9月19日、ミュンスター大聖堂で、殉教者として列福された。
▽ベルギー・カトリック教会の司教2人が、ラテン典礼の西方教会で守られている司祭独身制に問題を提起した。独身を維持出来なくても司祭になる機会を与えられるべきだ、と言う。
▽イタリア警察がバチカン銀行の捜査に入った。資金の不法操作の疑い。バチカン国務省は「困惑し驚いている」という声明を発表した。
▽ロンドン警視庁は、教皇ベネディクト16世を襲撃しようとしたとして逮捕した男6人を釈放したが、日曜紙サンデー・ミラーによると、6人が逮捕される前日、勤務先の社員食堂で「教皇を狙撃するのは難しい」などと冗談を言い合っていたのを聞いた別の社員が通報したようだ。

《アフリカ》
▽コプト教会のビショイ主教が、コーランの内容の一部は後代に挿入された、と主張してイスラム教徒の反発を招いたことで、同派最高指導者のシェヌーダ3世教皇は9月26日、テレビ会見で謝罪した。

《北米》
▽同性愛者に対して差別的な米軍規則の廃止などを盛った国防権限法案に関し、米上院は9月21日、同法案を採決するための動議を反対多数で否決した。
▽バラク・オバマ米大統領は9月19日、ホワイトハウス近くの聖ヨハネ聖公会教会へ徒歩で向かい、礼拝に参加した。ワシントンではほとんど礼拝に出ていないが、米国民の2割が「オバマ大統領はイスラム教徒」だと誤認しているとの世論調査結果が公表されたことを意識したものと見られる。
▽コーラン焼却計画を打ち上げ、直前に撤回した米フロリダ州のテリー・ジョーンズ牧師に、警備会社が費用として20万ドル(約1600万円)を請求している。


《メディア展望》

  =カトリック新聞(9月26日)=https://www.cwjpn.com
★キリスト教伝統の保持訴える=教皇、英国を訪問
★信仰を公に示すように=教皇、グラスゴーのミサで促す
★「典礼と信心」考える=全国典礼担当者会議=長野
★3教区の青年ら交流=アジアの真の和解に向けて=広島、インファンタ、プサン
★主題は「教えと社会」=カトリック神学会学術大会

  =キリスト新聞(9月25日)=https://www.kirishin.com
★9・11から9年で"亀裂"=「コーラン焼却計画」に国内からも憂慮の声
★「すぐ書房」36年の歴史に幕=有賀寿さん="学生に役立つ本を"
★WVカフェに宇宙飛行士・野口聡一さん=「美しい地球見てほしい」
★聖学院「速水優先生記念会」="土の器"としての生き方示す
★スイスの牧師が開設=男性専用シェルター

  =クリスチャン新聞(9月26日)=https://jpnews.org
★関西フランクリン・グラハム・フェスティバル=本大会へ増す期待=総決起・奉仕者大会「多くの人を救いへ」
★コーラン焼却=「独善的で排他的」=日本のキリスト教界 相次いで批判
★同時テロ9年=イスラム教めぐり米国の亀裂深刻=コーラン焼却中止も同調者広がる
★軍民共に救いが必要--日本自衛隊宣教大会
★サラン教会元老牧師、玉漢欽氏逝く=弟子訓練65か国に感化


           ●世界キリスト教情報●ご案内
 ☆速報をTwitterで発信しています ............ https://twitter.com/cjcpress/
 ☆活動紹介・購読(無料)お申し込みは
        ........................... https://homepage3.nifty.com/cjc-skj/
 ☆既刊号をご覧頂くには ..............................
   (FAX版=PDF)https://www.evernote.com/pub/cjcpress/skjweekly/
        (テキスト版閲覧用) https://blog.livedoor.jp/skjweekly/ 
         (テキスト版転載用、非整形) https://cjcskj.exblog.jp/
 ☆記事検索は『教会と神学』(小原克博氏制作)をご利用ください
            ........................... https://www.kohara.ac/church/

月別の記事一覧