世界キリスト教情報

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世界キリスト教情報 第1023信(2010.08.30)

  • 米福音ルーテル不満派が新組織『北米ルーテル教会』結成
  • 「全ての言語で福音を」
  • 少数民族「ロマ」標的に仏・伊が治安強化
  • パキスタン洪水被害、救援活動家がタリバンの標的に?
  • 《短信》
  • 《メディア展望》

◎米福音ルーテル不満派が新組織『北米ルーテル教会』結成

 【CJC=東京】米福音ルーテル教会(ELCA)の不満グループが新組織結成に動いた。同派が同性愛関係にある人を教職に任命する決定をしたことに反対、「信仰告白の原則を維持する」ためという。
 新組織は、これまで準備を進めてきた『ルサラン・CORE』がオハイオ州で8月26、27の両日開催した年次会議で、『北米ルーテル教会』(NALC)として発足することを決定した。会議には1100人以上が出席した。
 NALC発足会議には、タンザニアの福音ルーテル教会、エチオピアの福音ルーテル教会ミケーネ・イエススの代表も出席した。両派合わせると信徒は530万人で、世界のルーテル派ではそれぞれ2位と3位の規模。
 「NALCは、聖書とルーテル派諸信条の権威を重んじることを含め、ルーテル派の信仰告白原則を維持する」と、声明は述べている。
 会議は教会憲法を採択、暫定指導者としてペンシルベニア州ステイトカレッジのポウル・スプリング牧師を監督に選出した。来年、最初の年次会議を開催、そこで正式指導者を選出する。スプリング氏はELCA北西ペンシルベニア・シノッドの監督を14年間務めてきた。
 同氏は、「NALCは、そのミッション(使命)として、キリストの福音を全ての人に述べ伝えることを掲げた。神の名において前進するわたしたちの教会の側に、神が立ってくださるように祈る」と語った。
 2009年、ELCAは、「同性愛者の教職就任や専門活動家としての活動を認める」ため、教会規則変更に踏み切った。
 『ルサラン・CORE』のライアン・シュワーツ副議長は、ENI通信に、ELCAの同性間関係に関する方策は、不幸の原因というよりは「病気だ」と語った。同氏は、ELCA大会で行われた礼拝での祈りの中に「わたしたちの内なる母」というのがあったが、これではほとんど異教ではないか、と言う。
 不満派が、保守的な『ルーテル教会ミズーリ・シノッド』に加入しない理由を問われて、シュワーツ氏は、同派が聖書の「字句に捕らわれすぎ」であり、また女性教職を認めないことには賛成出来ないからだ、としている。
 同氏は、新組織加盟を決定した教会が18、現在準備中が100を超えている、と述べた。
 ELCAは、米国とプエルトリコ、バージン諸島に1万300教会を擁し、信徒450万人。ジョン・ブルックス報道担当は、「新組織結成はELCA離脱につながる」として遺憾の意を表明した。


◎「全ての言語で福音を」

 【CJC=東京】全ての人に福音を伝えたい、という願いの中に、言葉の壁を乗り越えよう、とする動きがある。数え方により多少の違いが出るものの、米言語専門サイト『エスノローグ』は、現在世界で話されている言語を6900としている。方言まで考慮すると、1万を超えるという見方もある。
 ギリシャ語で書かれた聖書(新約)とヘブライ語で書かれた、いわゆる旧約は、ラテン語をはじめ多くの言語に訳出されてきた。それでもなお自らの言語で聖書を読めるように、と『ウイクリフ聖書翻訳協会』などが訳出の努力を続けている。
 1言語に聖書を訳出するには、その言語を使いこなせる翻訳者と、内容の正確さをチェック出来る専門家が必要だ。文字のない言語の場合、アルファベット(ローマ字)などで表記法を定めるところから始めなければならない。
 世界総人口67億3000万人の中で、「福音が届かない」人たちを27億4000万人(約40・7%)と米専門サイト『ジョシュア・プロジェクト』は推定している。
 本としての聖書は、携帯に便利だし、どこでも読めるなどの特徴があるが、製作・複製に手間も費用もかかる。
 福音を素早く届けるには、音声や映像を活用しよう、という動きもある。
 米豪で活動している『グローバル・レコーディング・ネットワーク』(GRN)のサイトには、5800もの言語に訳出された福音文書へのリンクが張られている。GRNが提案するのは、オーディオ・プレイヤーの活用だ。サイトには電源を得られないところでも聞くことの出来る手回し式のMP3プレーヤーも紹介されている。
 そこからダウンロードしたものを、プレーヤーで聞けるようにすれば、今すぐにでも、たとえば容易に近づけないような遠隔地に住んでいる人たちにも福音を届けられる。
 GRNのサイトには、録音・録画案内だけでなく、言語に関するさまざまなデータ、情報が盛り込まれている。日本語に関するものもある。


◎少数民族「ロマ」標的に仏・伊が治安強化

 【CJC=東京】フランスのサルコジ政権が、移動生活する少数民族ロマや「非定住者」への取り締まり強化を相している。法を犯した外国出身者の本国強制送還に加え、治安要員を襲撃した者の国籍を剥奪する方針も表明した。
 中部サンテニャンで、仲間が警官に射殺されたことに反発した「非定住者」の集団が警察署を襲撃したのを受け、7月28日の関係閣僚会合で、「非定住者」の違法キャンプを強制撤去するとともに、ロマの多くがルーマニアやブルガリア出身とみられるのを念頭に、外国籍の「非定住者」が法を犯せば本国へ強制送還する方針を決めた。
 仏政府は、欧州連合(EU)外相会議で、「ロマ問題の解決でEUは協力すべきだ」と主張したが、60万人ものロマを抱えるルーマニアは、「ロマを犯罪集団として扱うべきではない」と指摘した。欧州の人権組織『欧州会議』の幹部も、「仏は非定住者と市民を平等に扱うべきだ」と指摘している。
 仏の「非定住者」は、キャンピングカーで国内各地を移り住む元遊牧民など約40万人を指しており、流入したロマ2万人とは区別される。人権団体は、政府の対応を「非定住者とロマを混同している」とも批判している。
 8月6日、外国籍のロマや仏国籍の非定住者が住む違法キャンプ300カ所の撤去が開始された。世論調査では8割がこの措置を認めているが、人権団体は、「人権侵害」と批判しているなど、国内外から「外国人や移民の排斥だ」との強い批判も出ている。国連の差別撤廃委員会では「ナチスまがいの政策」との異例の強い意見が出た。15日には、ロマ族などが高速道路を車両で一時封鎖しサルコジ政権に抗議した。
 北部リールのアルチュール・エルベ神父(71)は22日、4年前に受章した国家功労章を政府に返上した。同神父はリール周辺で暮らすロマの支援活動をしている。神父は「この3カ月のロマの状況はひどく、彼らは戦争を耐え忍んでいる」と指摘。「私には、政府に戦争をやめさせるには最後のボールしか残っていない」と語った。
 南部エクサンプロバンス地区の大司教も同日、ロマ対策を発表した7月末の大統領演説について「ロマが劣った民族と受け取られる演説で許せない」と述べた。
 イタリアのマローニ内相は21日までに、国内に居住するロマについて、十分な収入や定住先などの要件を満たしていなければ、欧州連合(EU)市民であっても出身国に送還する政策を進める考えを明らかにした。
 内相は、EU欧州委員会がこうしたロマ送還を禁ずる決定をしているため、9月6日に予定されるEU内相会合で、決定を見直すよう働き掛けると語った。


◎パキスタン洪水被害、救援活動家がタリバンの標的に?

 【CJC=東京】パキスタンを襲っている洪水被害は、モンスーン(季節風)がもたらした豪雨によるもので、なお拡大を続けている。自宅などを失い避難した住民は北部から南部にかけ1700万人以上に達したと見られる。下旬に入ってさらに被災者は100万人増加した、と国連緊急援助調整官室は明らかにした。
 新たな避難を強いられているのは南部シンド州の住民。被災者は食料や飲料水が供給される避難キャンプに収容されているが、その数は毎日増えているという。
 北部スワット渓谷地帯では、救援活動していた3人が、反体制勢力『タリバン』と見られる暴徒に殺害され、負傷者も出ている。襲撃は8月24、25の両日行われた。家屋を失った人は2000万にも上る、とされる中でパキスタン政府が進めている救援活動を阻止しようとしたもの、と豪カトリック教会のマカロック神父(コロンバン会)がカトリック系メディアに語った。
 テロリスト集団は、略奪や店舗、住宅を砲撃、地域支配を狙ったものと見られる。
 「このような襲撃は目新しいものではない。長年にわたって、パキスタンのキリスト者は度重なるタリバンの襲撃を恐れ、受けた被害に耐えるか、今回のように殺されるかだった。自らを守れる道はないのだ」とカトリック・ミッションのマーティン・トーラン代表は語った。タリバンや関連過激派は、スワット渓谷で中央・地方政府の高官を襲撃するだけでなく、国外からの援助活動家やキリスト者を、政府転覆の手段として狙い撃ちしている、と言う。


《短信》CJC通信Twitter速報『cjcpress』から。

▽マニラのバス立て篭もり事件で犠牲になった香港からの観光客8人に、香港とフィリピンのカトリック教会が哀悼の意と、当局に抗議表明。
▽生誕100周年を迎えたマザー・テレサの業績を全国に広める特別列車『マザー急行』がインド・コルカタ駅に登場。観客2万5000人が詰め掛けた。
▽インド・オリッサ州での反キリスト教攻撃はヒンズー教過激派の、下層階級を奴隷化する組織的なもの、とニューデリーの特別裁判所で明らかになった。 
▽パキスタンで7月13日、マグダレン・アシュラフ修道女が拘束され性的虐待を受けた病院の2階から飛び降り、重傷を負った。キリスト教関係始め人権擁護団体が抗議の声を上げている。
▽オーストラリアの小学校の仮装大会で、ナチス・ドイツの独裁者アドルフ・ヒトラーに扮した少年が優勝したことに保護者らから苦情が殺到、学校は8月27日謝罪を表明した。
▽ロシア正教会の対外関係責任者フィラレ府主教が、教皇ベネディクト16世とキリル総主教との会談の機が熟し、2011年にも実現しそうだ、と語った。 
▽教皇ベネディクト16世の著作『ナザレのイエス』の第2巻が、来年、四旬節第一主日の3月13日出版される、とバチカン出版部が明らかにした。キリストの受難と死を扱っている。英語版は米イグナチウス・プレス社が発行する。
▽WCCのトゥベイト総幹事が、中東のキリスト教会や関係団体に、和解と癒しのために協力するよう訴え。
▽独オスナブリュックの女性が、3年以上にわたってカトリック司祭と性的関係を維持していたことを公表した。問題の司祭は聖務執行を停止されている。
▽米オハイオ州のストリップ・クラブ閉鎖を訴える教会に抗議して、礼拝時にビキニ姿の女性が会堂前でデモ。すでに3カ月。
▽『9・11』事件で破壊された聖ニコラス正教会の再建にマイケル・ブルームバーグ市長が支持表明。
▽ニューオーリンズなど米南部に大打撃を与えたハリケーン・カトリーナ5周年。
▽米オハイオ州シンシナチの聖アンソニー・メッセンジャー・プレスが、アイフォン向けに『今日の聖人』を配信する。その日に取り上げた聖人の生涯、今日の生活にとっての意義、関係聖句などが内容。
▽米宗教記者会の年次会議が9月23〜25日、コロラド州デンバーで開催される。


《メディア展望》

  =カトリック新聞(8月29日)=https://www.cwjpn.com
★平和行事各地で=名古屋 中高生「ヒロシマ巡礼」 教区信徒が作った折鶴携え=東京 ミサや巡礼ウォーク、講演会など 「差別がある限り本当の平和は来ない」〜作家 落合恵子さん=さいたま 各県で講演会など開催 「"どうなるか"でなく"どうするか"」〜教育学者 大田尭さん
★思いは東ティモールに=外務大臣表彰の亀崎善江修道女
★フィリピンで医療奉仕=現地のヘルスワーカーも育成=日本カトリック医師会メディカルミッション
★観想修道女の聖歌 CDに=米レコード大手から今秋発売
★祈りと支援を呼び掛け=洪水被害でパキスタン司教団

  =キリスト新聞(8月28日・休刊)=https://www.kirishin.com

  =クリスチャン新聞(8月29日)=https://jpnews.org
★苦難が培った神との絆=併合100年、光復節65年、朝鮮戦争60年の節目に=韓国教会8・15大聖会に50万人
★クリストファー・サン国際大会=9月 有明コロシアムで
★戦後65年の8・15集会=平和遺族会 「韓国併合」100年の清算を=東アジア協力は和解への情熱から=同盟基督平和祈祷会 戦争の悲劇、数で表せない 今もある途上国への差別心=東京告白教会で沖縄主題に 「もう我慢できない!」 普天間基地に見る沖縄差別
★米ゾンダーバン=電子書籍の4割 Eバイブル=ハードカバー版聖書の売り上げ超す
★第1回 聖書&科学カンファレンス盛況=立場異なる創造論で対話=聖書信仰に立つ科学者がネットワーク


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