世界キリスト教情報

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世界キリスト教情報 第1017信(2010.07.19)

  • バチカンが聖職者の「重大な犯罪」に関する法規の改正を発表
  • アルゼンチンで同性カップルの結婚合法化
  • 英国国教会の女性主教が一致への大きな障害、とファレル司教
  • 独ルーテル教会のイェプセン監督が、性的問題処理で引責辞任
  • 米YMCAの名称変更はブランド戦略の一環
  • 中国のキリスト者作家、温家宝首相の批判本出版強行の構え
  • 《短信》
  • 《メディア展望》

◎バチカンが聖職者の「重大な犯罪」に関する法規の改正を発表

 【CJC=東京】バチカン(ローマ教皇庁)教理省は7月15日、『教理省に保留される重大な犯罪についての法規の改正』を報道事務所を通じ発表した。バチカン放送(日本語電子版)が報じた。
 この改正には、聖体の秘跡、ゆるしの秘跡に対する犯罪、また聖職者による未青年虐待などの重大な犯罪における教理省の介入と措置がまとめられている。
 特別に重大な犯罪を教会法に従って裁く上で、その管轄を教理省下に定めた教皇ヨハネ・パウロ2世の2001年の自発教令『サクラメントールム・サンクティタティス・トゥテーラ』を補足・刷新し、諸問題により効果的に対応することを目的としたもの。
 改正文書は本質的規則について述べる第1部と、裁判上の規則を記す第2部からなり、教皇ベネディクト16世により今年5月21日に承認され、各国の司教協議会に宛て、送付されていた。
 改正の意義について、バチカン広報事務所長のフェデリコ・ロンバルディ神父は、「教会が特別に重大とみなし、教理省の法廷の管轄に保留されるすべての犯罪について扱った文書の中で、未成年に対する聖職者の性的虐待に対する教会法上の規則がより組織化・今日化した形で記された。未成年への性的虐待に対する法規は、特に緊急で重大な状況に迅速かつ効果的に対応できるよう配慮している。また、時効は10年から20年に延ばされ、事理弁識能力のない人への虐待を未青年への虐待と同様に扱い、未成年ポルノの犯罪にも対応している。未成年への聖職者による、あるいは教会系組織内の虐待問題に関する方針が、より厳しく、一貫性を持ち、効果的なものであるように、教理省は司教らに対する指示についても準備を進めている」と指摘した。
 今回の「改正」の中に、女性の聖職への叙階を、小児性愛と同等の「最も重大な犯罪」として、教理省が取り扱うとしたことは、内外の困惑を招いている。
 バチカン側は、女性の聖職叙階が、聖職者の性的虐待と同一文書内で取り扱われても、それが教会の観点から同等だ、としたわけではない、と説明している。
 ただ、米国に本拠を置く『女性叙階会議』は今回の決定を「何と中世的」とし「脅し戦術」と反発、「教会内で女性の平等を求める声が高まっているのに、それを打ち消そうとしている」と指摘している。


◎アルゼンチンで同性カップルの結婚合法化

 【CJC=東京】アルゼンチン上院が7月15日、同性間の結婚を認める法案を、15時間に及ぶ審議の末、賛成33、反対27、棄権3で可決した。同性カップルの結婚合法化は中南米では初めて。
 国民の9割がカトリック信徒の同国で、教会は激しく反発、法案の是非を国民投票で問うよう政府に要求していた。


◎英国国教会の女性主教が一致への大きな障害、とファレル司教

 【CJC=東京】バチカン(ローマ教皇庁)キリスト教一致推進評議会局長のブライアン・ファレル司教は7月15日発表されたインタビューで、英国国教会(聖公会)の女性主教任命がキリスト教一致の「大きな障害」になる、と語った。
 「最初のミレニアム(千年紀)、カトリック、東方教会、正教会などすべての教会は、男性のみが叙階されうる、と定めた。これら諸教会は、女性叙階を真正な伝統の不当放棄と見ている」と言う。
 「この点について、アングリカン・コミュニオン(聖公会共同体)は、その初めから、教会の本質的な伝統とわたしたちが考えているところから離れてしまったことが悲しい。しかし、このプロセスは長時間前に始まった」。
 「わたしたちは、物事をあるがままに受け入れる現実認識を持ってエキュメニカル(教会一致)な対話を続ける。その道のりは長く困難なことは認めている」、と同司教。「しかし、対話がキリストご自身によって課され、聖霊の憐れみ、キリストの教会の魂によって支えられていることを知っている」と言う。
 ファレル司教はまた、対話とは別に、聖公会共同体に対して、個人としていつでもカトリック教会に受け入れられることを強調した。


◎独ルーテル教会のイェプセン監督が、性的問題処理で引責辞任

 【CJC=東京】独ルーテル教会ハンブルグ教区のマリア・イェプセン監督が、性的問題の処理について批判され、信用が傷つけられた、として7月16日辞任した。女性監督として世界のルーテル派では最初に監督に選出されたのは1992年だった。
 80年代にアーレンスブルグの町で聖職者が少年少女に性的虐待を加えていたことを、同監督はこの5月までは、知らないと述べていた。ところがその発言に疑念が出されたことから「これでは福音をもう広めることは出来ない」という。
 ドイツの教会指導者が辞任に追い込まれたのは、ドイツ福音教会(EKD)議長のマルゴット・ケースマン監督の飲酒運転発覚、児童殴打を訴えられて辞任したカトリック教会のヴァルター・ミクサ司教に次いでのこと。


◎米YMCAの名称変更はブランド戦略の一環

 【CJC=東京】米YMCAが『ザ・ワイ』(The Y)と呼ぶことになったことは、ニューヨーク・タイムズ紙が報じて以来、欧米各国のメディアの関心を呼んでいる。
 米国では、メキシコ湾の重油流出事故で有名になったBPのように企業名の略称化が進んでいる。、最近、『米国公共ラジオ』も『NPR』と改名した。
 ただ米YMCAは、単なる略称化ではなく、名称変更により、「青少年育成、健康な生活、社会的責任」の各方面で活動しているYMCAの存在を社会に印象付けようとするブランド戦略を立てた。ただ正式名称としての「YMCA」は残ると見られる。
 副会長兼マーケティング担当のケイト・コールマン氏は「暖かさ、純粋、歓迎」といったYMCAの特徴を訴えたい、と言い、「もう何年も『ザ・ワイ』と呼ばれて来た。それを正式なものにしたかったのだ」と7月12日、ワシントンのナショナル記者クラブでの会見で語った。
 「リブランディング」と呼ばれる今回の名称変更は、ロゴマークからネット・サイトの改変、さらには公共奉仕の発表方法にも及んでいる。
 ニール・ニコル会長は、『ザ・ワイ』の使命(ミッション)が変わったわけではない、として「私たちのやっていることを短く簡潔に語りたい。呼び名もそうだ」という。
 YMCAは1844年、ロンドンでジョージ・ウィリアムズら12人の青年キリスト者によって、青年に対する啓蒙および生活改善のための奉仕団体『キリスト教男子青年会』として創立された。
 今回の変更は、1500人を対象に行った調査を、2年以上にわたって分析した結果、多くの人が、YMCAの働きを理解していないことが分かったため、という。ただ、その経過が知らされておらず、突然の発表だったことが、メディアの関心を呼んだ、と見られる。
 全米各地のYMCAでは、「キリスト教」を強調するプログラムに今後も力を入れようとするところもある。「わたしたちのミッション(使命)は、全ての人に健全な「スピリット、マインド、ボディ」を育成しようとするプログラムに、今後もキリスト教原則を生かすことだ」と、オハイオ州ニューアークの『リッキング・カウンティ・ファミリーYMCA』のエド・ボーレン総主事は、現地紙『アドヴォケイト』に語っている。
 カナダ・バンクーバーのYMCAが5月3日に中心街のバラードストリートに開設したセンターには、この2カ月で、5000人が会員登録をした盛況ぶり。ブランド変更に水を差すような動きだ。サービス・マネジャーのケリー・ウォーカー氏は、「YMCAはただのジムとしてではなく、コミュニケーションを図る場として多くに人に利用してほしい」と利用を呼びかけている。
 世界YMCA同盟は、今回の米YMCAの動きに、リブランディング戦略は米国独自のもので、全世界のYMCA運動を左右するものではない、とする立場。125国のYMCAによって構成されている同盟としては7月14日、「それぞれのYMCAは独自のコミュニケーションとブランド戦略を持っており、それはその国の独自性と会員制度と結びついている」と、米宗教専門RNS通信の取材に答えている。


◎中国のキリスト者作家、温家宝首相の批判本出版強行の構え

 【CJC=東京】中国のキリスト者作家、ユー・ジエ(余杰=36)氏が、『中国最優秀俳優:温家宝』と題した著作を出版しようとしたところ、中国本土では出版禁止となったため、香港の出版社と交渉を進めている。それに対しても、北京警察から脅迫されたが、香港での出版を諦めていない、と7月10日、ENI通信に電話で語った。
 同氏は5日、警察に呼び出され、「温家宝は普通人ではなく、温家宝批判は国家機密と国益を害する」として著書出版断念を求められた。
 「国家指導者に対する批判は合憲だ」と、非公認の「家の教会」のメンバーでもあるユ氏は主張したが、「出版を主張するなら、何年も獄中生活を送ったリュー・シャオボ(劉暁波)のようになるぞ」と言われたという。リュー氏も作家兼活動家で、民主化と共産党支配反対運動で、2009年末に懲役11年の刑を言い渡されている。
 著作は香港で、今秋にも出版される。ユ氏は、温首相が本質的に政治改革に興味はないものの、「俳優のように」自分の関心を示す振る舞うので、タイトルをアカデミー賞にひっかけて付けたと言う。
 国際人権擁護団体『アムネスティ・インターナショナル』の2010年報告によると、中国当局は「表現の自由に関する規制の強化を続けて」いる。


《短信》CJC通信Twitter速報『cjcpress』から。

▽バチカン(ローマ教皇庁)がサイバー攻撃の対象にされた。7月17日、グーグル検索で入力の際に英語でバチカンと打ち込むと、《www.pedofilo.com》というサイトに誘導された。バチカン報道事務所長のフェデリコ・ロンバルディ神父がグーグルに連絡、18日朝には正常になった。
▽教皇ベネディクト16世は聖座(バチカン)の国連常駐オブザーバーにインド・ケララ州出身のヨルダン・イラク駐在教皇庁使節、フランシス・アッシシ・チュリカット大司教を任命した。セレスティノ・ミグリオーレ現オブザーバーの駐ポーランド使節への転任に伴うもの。
▽ローマの北郊にあるバチカン放送局の電波塔が出す電磁波の影響で近隣住民の発がんリスクが高まっている。 
▽ルーテル世界連盟は7月20〜27日、「今日、私たちに毎日のパンを与えてください」を主題に、独シュトゥットガルトで第11回大会を開催する。
▽独ルーテル教会ハンブルグ教区のマリア・イェプセン監督が、性的問題の処理について批判され、信用が傷つけられた、として7月16日辞任した。
▽ナチス・ドイツが崩壊して、ポーランドに共産主義政権が設立される過程で、駐カナダ・ポーランド使節団が「極秘」文書の10%を大使館から盗み出し、オタワにあった教皇庁使節館に預けたことが明らかになった。
▽ベルギー・カトリック教会ロジェ・ファンゲルーエ司教の甥に対する性的虐待は8年に及んでいた。
▽ワールドカップ決勝戦の中継中にウガンダの首都カンパラで爆発事件があり、74人が犠牲になった中に、米国人の教会援助活動家も。
▽米大衆伝道者テッド・ハガード牧師が自宅で始めたセント・ジェームズ教会の礼拝は第1回が出席者160人だったが、急成長し、最近では245人に増加した。場所も移動する。 
▽米の著名なメガチャーチ『クリスタル・カテドラル』の創設者ロバート・H・シュラー牧師が引退との報道は誤り、と長女のシーラ・シュラー・コールマン氏。


《メディア展望》

  =カトリック新聞(7月18日)=https://www.cwjpn.com
★教派超え宣教考える=日本宣教学会全国研究会=岡田大司教が基調講演
★「聖母マリアへの祈り」=改訂に向け検討の準備
★和解と協働の道を=韓国併合100年=外キ協がシンポジウム
★WYDマドリード大会=教皇が参加登録一番乗り
★母国語のミサに集まって=長野・上田=12年続くブラジル人共同体

  =キリスト新聞(7月17日)=https://www.kirishin.com
★NCC飯島信総幹事が辞任=後任未定 代行は輿石議長が兼務
★教会襲撃は逆恨みが動機?=逮捕された容疑者は信仰熱心=牧師の渡米で「裏切られた」
★日本クリスチャンアカデミー 宗教対話プログラム=「穢れと浄め」めぐり仏教者と
★『公共福祉という試み』出版記念で稲垣久和氏=「友愛と連帯」考える出発点に
★「静岡」に続き「千葉」も=16番目の地方説教塾

  =クリスチャン新聞(7月18日)=https://jpnews.org
★キリスト戦士プロ野球に旋風=阪神好調の陰に協力助っ人=マット・マートン選手 ジェイソン・スタンリッジ選手
★青山学院院長に山北宣久氏=キリスト者条項を堅持=深町前院長辞任から2年=仕え合い一つに
★ハンセン病行政は終わっていない=国の責任「消滅」させない=「基本法成立後の今からが正念場」=藤崎陸安・入居者協事務局長
★登戸学寮に初の女子寮=50年の伝統変えてみたら...男子学生の態度良くなった
★ものみの塔内部告発=レイモンド・フランズ氏死去


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