世界キリスト教情報

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世界キリスト教情報 第1015信(2010.07.05)

  • 世界教会協議会総幹事がロシア正教会のキリル総主教と会談
  • キリスト教一致推進評議会議長にスイスのクルト・コッホ司教
  • キリスト教一致推進評のコッチ新議長就任をWCC総幹事歓迎
  • 教皇、『新福音評議会』の設置を発表
  • 『改革派教会世界共同体』は本部を南半球に?
  • ベルギー聖職者の性的虐待問題で捜査妨害行為
  • セブンスデー・アドベンチスト派総会参加者が一時行方不明
  • 《短信》
  • 《メディア展望》


◎世界教会協議会総幹事がロシア正教会のキリル総主教と会談

 【CJC=東京】世界教会協議会(WCC)のオラフ・フィクセ=トゥヴェイト総幹事は6月27日から30日までロシアを初訪問した。同総幹事は28日、モスクワでロシア正教会の最高指導者、モスクワと全ロシアのキリル総主教と会談した。
 トゥヴェイト総幹事は訪問最終日の30日、記者会見で、WCCとしては、同性間の結婚、女性聖職などの問題を正面から取り上げることは難しい、と語った。
 同性間の結婚、女性聖職に関するロシアのジャーナリストの質問に、トゥヴェイト総幹事は、WCC内部に様々な意見があり、合意に達するまでは特定の立場を表明出来ない、と答えた。
 「WCCは350教派・教会が加盟しており、合意成立に向けて活動している。議論されて来なかった、また合意に達するところまで議論していない問題については、WCCとしての意見は持たない。質問されたどちらの問題についても意見を持っていない」と語った。
 WCCは対話を奨励し、諸教会が様々な意見を持っている問題を討議する場を設ける役割がある、として、「これらの問題のどちらについても、WCCが近い将来に統一見解に達するとは思えない」と語った。
 同総幹事は、ロシア正教会がホストを務めたWCCの『一致の協働常置委員会』の開会に際してモスクワを訪問したもの。同委員会は、WCCの諸活動に対する正教会の参画について討議した。
 トゥヴェイト氏自身、この1月に総幹事に就任以来、正教会の参画を重視する姿勢を示して来た。WCCには349教派・教会が加盟しており、その中でロシア正教会は最大規模。
 2009年に、キリル総主教の後任として、ロシア正教会対外教会部門の責任者となったヒラリオン府主教は、同性愛や女性の役割などの問題でプロテスタント諸教会が自由化傾向を強めていることから、WCC内部で正教会とプロテスタント加盟教会の多くとの関係が危機に直面している、と発言している。
 ただ今回のトゥヴェイト氏の訪問は、ロシア正教会からは好意的に受け止められた。28日の会見の際、キリル総主教は、キリスト教をこの世界で守り、他の文明との対話でWCCの果たす可能性に言及した。


◎キリスト教一致推進評議会議長にスイスのクルト・コッホ司教

 【CJC=東京】教皇ベネディクト16世は6月30日、教皇庁司教省長官・ラテン・アメリカ委員会議長に、カナダ・ケベック教区大司教マルク・ウエレット枢機卿を任命した。ジョヴァンニ・バッティスタ・レ枢機卿の定年引退を認めた。
 教皇は7月1日、教皇庁キリスト教一致推進評議会議長ウォルター・カスパー枢機卿の定年による同職からの引退を認め、後任にスイス・バーゼル教区のクルト・コッホ司教を大司教として任命した。
 また、教皇は6月28日に創設を発表した新評議会『新福音化推進評議会』議長として、教皇庁立ラテラン大学学長サルヴァトーレ・フィジケッラ大司教を任命した。これに伴い、教皇はラテラン大学の新学長に、教皇庁立サレジオ大学教授、教皇庁神学アカデミー会員エンリコ・ダル・コヴォロ神父(サレジオ会)を任命した。
 さらに、教皇は教皇庁立生命アカデミー会長として、イグナシオ・カラスコ・デ・パウラ司祭を任命した。

※注=『新福音評議会(仮訳)』を、カトリック中央協議会の訳に合わせ、『新福音化推進評議会』とします。


◎キリスト教一致推進評のコッチ新議長就任をWCC総幹事歓迎

 【ジュネーブ=CJC】『世界教会協議会』(WCC)のオラフ・フィクセ=トゥヴェイト総幹事は、バチカン(ローマ教皇庁)のキリスト教一致推進評議会新議長にクルト・コッチ司教が就任したことを知って、歓迎の意向を表明した。
 「教会の目に見える一致に向けて共に前進したい。コッチ司教は、エキュメニカル(教会一致)問題に公明さを持ちつつ深く関わってきた。エキュメニカル運動での信頼出来るパートナーと思う。前任者のワルター・カスパー枢機卿が強調していた霊的なエキュメニズムを継承することになろう」と語った。
 コッチ氏は、スイス・バーゼル司教として、2002年以来、同評議会のメンバーだった。今回の議長就任と同時に大司教となった。


◎教皇、『新福音評議会』の設置を発表

 【CJC=東京】教皇ベネディクト16世は6月28日、『新福音評議会(仮称)』を設立する、と発表した。折から『聖ペテロと聖パウロ使徒祭』の前夜式がローマ城壁外の聖パウロ大聖堂(バジリカ・サン・パウロ)で行われるところから、そこでの発表となった。
 教皇は、厚いキリスト教基盤がありながら、今では「神の不在」が感じられ、世俗化が進んでいる国々に革新された福音を推進する作業を新評議会に与えたい、と語った。教皇は、前任者であるヨハネ・パウロ2世が、その昔に福音を受けた国々に新たな福音を宣べ伝えようとしていたことに言及した。
 新評議会は、福音が何世紀も前に告げられたものの、今では人々の日常生活には浸透していない諸国への宣教が課題となる。


◎『改革派教会世界共同体』は本部を南半球に?

 【CJC=東京】『改革派教会世界共同体』(WCRC)は発足したばかりだが、本部をこれまでならスイスのジュネーブに置くところを、余りの物価高から見直すべきだ、との声が出ている。
 米改革派教会(RCA)のウエスレー・グランバーグ=マイケルソン総幹事も6月24日の会議で、「経済的な特権」を享受している都市に本部を置きながら、全世界の正義について改革派が語ることの不自然さを指摘した。本部を南半球に移転すれば、それは今では急成長している「南」の教会との連帯を示すことにもなる、と言う。
 ジェリー・ピレイ初代会長も、24日の選出後、記者団に無駄な支出は削減する必要がある、と語った。


◎ベルギー聖職者の性的虐待問題で捜査妨害行為

 【CJC=東京】ベルギー・カトリック教会の聖職者による児童への性的虐待問題を、警察が捜査し始めたのは、昨今のことではない。ただ警察が捜査の一環として、司教会議が行われている現場を捜索し、コンピュータや書類を押収し、枢機卿の墓まで捜査対象としたことは、バチカン(ローマ教皇庁)の強い反発を呼んだ。
 一方で調査は予想しない展開を見せている。警察は、情報提供者や参考人、さらには検察当局者までが脅迫された、という点も捜査対象に加えているという。検察の広報担当は、その調査が進行中であることを確認した。
 6月24日の捜索は、教会が自主的に設置した虐待問題委員会の事務所に対して行われたもので、その際、高位聖職者を9時間拘束した。警察は、聖職者の携帯電話を押収したが、それはスタッフやバチカンと連絡させないためだった。
 メヘレン大聖堂では、証拠書類を求めて、前枢機卿の墓の内部まで捜索したという。当局はまた隠退大司教ゴッドフリード・ダンニールズ枢機卿の居宅も捜索、書類とコンピューターを押収した。
 自主調査委員会は、警察の捜査に抗議して活動を停止した。記録を押収されては調査が出来ない、としている。
 社会学者ヤン・ヘルトーゲン氏(63)は29日、聖職者の性的虐待の被害者として、調査委員会で秘密証言した内容が当局に伝わり、その結果が事務所の捜索につながったとして、プライバシー侵害と抗議した。
 バチカン(ローマ教皇庁)国務長官のタルジチオ・ベルトーネ枢機卿は27日、ベルギー法務省や警察の教会事務所などへの捜査は「共産党政権下にもなかった」やり方だ、と述べた。ただベルギー政府は、司教が会議中に、警察が捜査したことヘの批判を退けている。

※関連速報
▽米連邦最高裁は6月28日、カトリック教会聖職者による未成年者の性的虐待問題で、バチカン(ローマ教皇庁)を訴訟の対象から除外するように、との要請を却下した。理由は明らかにしていない。


◎セブンスデー・アドベンチスト派総会参加者が一時行方不明

 【CJC=東京】米ジョージア州アトランタで開催されたセブンスデー・アドベンチスト派総会に、南米ベネズエラ沖のオランダ領アルバから参加したイヴォンヌ・ラモナ・マルシャルさん(53)が6月27日に行方が分からなくなった。
 警察が捜査したところ、7月3日朝、発見された。警察は、「脱水症状があるものの、状況は良い。ただ自身は何があったか憶えていない」と発表したが、発見までの経緯を明らかにしていない。
 セブンスデー・アドベンチスト教会のジョージ・ジョンソン・ジュニア副会長は、「マーシャルさんが家族と再会出来るようになり、喜びをもって神を賛美している」と語った。


《短信》CJC通信Twitter速報『cjcpress』から。

▽マルコス政権下に、人権擁護に強力に発言していたフランシスコ・クレーバー神父が7月2日死去した。81歳。
▽インドネシアのイスラム教9組織が6月27日、ジャワ島西部地区開いた会合で、各地のモスク内に軍事組織を設置、人々をキリスト教に改宗させる運動に対抗するため『布教センター』を設置する、と発表した。
▽ロンドンのウエストミンスター大聖堂が献堂100周年を迎え、6月28日、記念式典を行った。
▽英メソジスト教会は、パレスチナ自治区内のイスラエル入植地の全産物をボイコットする方針を打ち出した。
▽英調査団体『イングリッシュ・ヘリテッジ』によると、イングランド地方の教会堂やシナゴーグで、建築的に優良・合格点が付けられるのは89%で、残り11%は危険な状態にある、という。
▽バチカン(ローマ教皇庁)は6月28日、ロシアのニコライ・サドチコフ大使が提出した信認状を接受した。ロシアとは1990年に外交関係を樹立したが、大使級に関係を上げたのは昨年12月。モスクワ駐在のアントニオ・メンニニ大司教も近く「教皇使節」としてセルゲイ・ラフロフ外相と会談の予定。
▽世界教会協議会(WCC)のオラフ・フィクセ=トゥヴェイト総幹事は、このほど発足した『改革派教会世界共同体』(WCRC)に歓迎の意を表明、福音派組織がWCCに参加するよう助力して欲しい、と語った。
▽映画『教皇ヨアン』がイタリアで人気上昇中。9世紀に男になりすまして女性がローマ教皇に選出されたという伝説に基づいたもの。カトリック教会の批判が逆に評判を呼んだと見られる。 
▽サッカー・ワールドカップ南アフリカ大会で話題になった民族楽器「ブブゼラ」は、『ナザレ・バプティスト・チャーチ』創始者イサイア・シャンベ牧師が約100年前に発明したことで、ブブゼラの製造メーカーの一つと合意したという。同教会はキリスト教とズールー教が混合したもので、信徒400万人。
▽米放送伝道団体『フェイス・カムズ・バイ・ヒアリング』によると、ポッドキャストを使って聖書を聞ける言語が400に達した。
▽米ギャラップ調査社によると、教会出席率は2009年は43・1%と前年比微増となった。
▽米カリフォルニア大学ヘイスティングス法学部が、キリスト教学生グループの公認団体を取り消したことで、連邦控訴裁は6月28日、同性愛者や非信仰者を入会させないのは、信教の自由に反するとして、大学側の公認団体取り消しを認めた。
▽米『ペアレンツ・テレビジョン評議会』(PTC)やキリスト教団体が、ポルノ関係のコムキャスト社とNBC・ユニバーサル社との合併に異議を唱えている。NBC社が放送事業者である所から、連邦通信委員会が「公共の利益」基準を適用すべきだ、と言うもの。
▽米最高裁は6月28日、自宅での銃所持を事実上禁じたシカゴ市などの法令は違憲だとする判決を下した。武器携帯の権利を認めた米憲法修正2条は、州や市の法令よりも優先するとの判断。
▽米司教協議会のヘレン・オスマン広報担当は、医療改革法案に関し行われたフランシス・ジョージ枢機卿の演説を、独立カトリック報道機関CNA通信が不正確に報道した、と非難した。


《メディア展望》

  =カトリック新聞(7月4日)=https://www.cwjpn.com
★「今日 沖縄と心一つに」="慰霊の日"に平和巡礼=那覇教区 押川司教、魂魄の塔で
★09教会教勢=総信者数0・5%減=成人洗礼は微増
★ローマ=地下墓地で画像発見=4世紀の使徒崇敬示す
★難民移住移動者委=中南米の人と働く司牧者ら=「課題」「前進」分かち合う
★バチカン高官=医薬品の平等供給促す=国際条約=最貧国は「実現遠い」

  =キリスト新聞(7月3日)=https://www.kirishin.com
★日基教団根津教会=地元劇団が教会舞台のサスペンスを上演=満員御礼 礼拝堂が劇場に
★大貫隆氏が連続講座=日本クリスチャンアカデミー=「いま、聖書を読むとは」=「経験」する歴史的主体への肉薄を
★改革派2大組織 WARC×REC=「世界共同体」の結成で合意
★日基教団西東京教区=弁護士招き「裁判員制度」考える=1年経てもなお賛否
★好善社「ハンセン病」講演会で藤崎陸安氏="司祭の言葉が人生訓"

  =クリスチャン新聞(7月4日)=https://jpnews.org
★首相交代=「なぜ励まさなかった」=与党クリスチャン議員=旧政権を回顧、新政権へ祈り要請
★貧しい子どもに助けの手を=韓国の民間援助団体「コンパッション」
★英エジンバラで世界宣教会議100年を記念=正教会〜ペンテコステ=多彩な背景から参集
★日本フォースクエア福音教団60周年=聖霊に励まされて前進
★草の根女性活動家を奨励=「やより賞」募集


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