世界キリスト教情報

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世界キリスト教情報 第1014信(2010.06.28)

  • 『世界共同体』は平等重視、性差縮小へ
  • 『世界共同体』初代会長に南アのジェリー・ピレイ氏
  • レバノンのキリスト教女性が新たなガザ援助船計画
  • ドイツ・カトリック教会の「紛争」が深刻化
  • ベルギー教会を警察が捜査、教皇が異例の非難
  • 米ミシガン州でキリスト教伝道者がアラブの祭典妨害で逮捕
  • ペテロやパウロの最古の肖像がローマで発見
  • 《短信》
  • 《メディア展望》


◎『世界共同体』は平等重視、性差縮小へ

 【CJC=東京】新たに結成された改革派教会の連合組織『世界共同体』は、プロテスタント8000万人を擁することになるが、意思決定機関『常議員会』の構成員の半数は女性に割り当てることにした。世界改革教会連盟(WARC)と改革派エキュメニカル協議会(REC)が合併設立した『世界共同体』には、108カ国の227教会団体が加盟。
 6月18〜26日に開かれた創立総会の冒頭、1時間半にわたる討議の後に、教憲草案の修正を決めたもの。今後、加盟教会は、常議員会に出席する議員を4人以上選出する場合、半数は女性とすることになる。
 草案委員会の原案は、「少なくとも3分の1」を女性にする必要がある、と決めていた。
 総会審議の席上、「私たちは、聖餐を共にする交わりの中で、男女が完全なパートナーシップになるように決意した。事実上、女性が代表の50%を割らないように、ということだ」と、米長老教会(PCUSA)のロビナ・ウインバッシュ牧師(同派エキュメニカル担当)は発言した。
 一方、草案作成に当たっていた、ピーター・ボーグドーフREC会長は、原案が、男女間のバランスなどの問題については、「加盟教会の自由を制限しないように」して決めたものだ、と語った。
 さらに執行機関である常置委員会の半数を女性にしようという提案も出されたが、3分の2の賛成を得られなかった。
 合併組織の一方のWARCは、人種や性に関する正義の実現に努めて来た。その姿勢は新組織でも維持したいとしている。
 「これまで私たちは、女性の役割と地位に関し多くの進歩を見て来た。私たちは引き下がるわけにはゆかない」と、キューバ長老改革派教会のドーラ・アルス・バレンティン牧師は、総会前の女性会議で語った。
 総会代議員に配布された同会議の声明は、新常置委員会が「共同体と加盟教会の意思決定機関と決定の過程で女性を平等に参加させるよう、要求している。


◎『世界共同体』初代会長に南アのジェリー・ピレイ氏

 【CJC=東京】『世界共同体』(WCRC)は6月26日、米ミシガン州グランラピッズで開催した創立総会を終えた。初代会長には南アのジェリー・ピレイ氏が選出された。ピレイ氏は閉会礼拝で「神のこの世界においての存在は私たちに、もうこれまで通りのビジネスは受け入れられないことを示している」と語った。
 創立総会で討議された諸課題と取り組むため、戦略計画委員会を設置する。
 「神の言葉」への応答として、WCRCは、ソマリア、スーダン、ミャンマー、北朝鮮、キューバなどの諸国の人権に触れた声明を多数発表した。また代議員など70人が入国ビザが出なかったことに抗議する声明を圧倒的多数で採択した。
 重要声明の一つは、WCRCが世界各地の先住民と「預言者的な連帯」を図り、神の憐れみに頼り、癒しを必要としている世界全ての人と手を取り合うよう求めている。


◎レバノンのキリスト教女性が新たなガザ援助船計画

 【CJC=東京】イスラエルに封鎖されているガザへ救援船「マリアム」号を送り出そう、とレバンのキリスト教女性が準備を進めている。乗り組むのは全員女性で、イスラエル軍も手を出せないだろう、というところからの動き。
 リマ・ファラー広報担当は、イスラエル当局がガザ封鎖措置を緩和すると発表しており、自分たちの祈りが聞かれたと思う、として「参加者は事態を進展させようとしているが、その武器は処女マリアとヒューマニティだけだ」と語った。
 参加者はキリスト教とイスラム教双方の女性で、2000年前に教えを説いていたイエスをマリアが待っていたと伝えられるマグドゥシェの町にある洞穴に集まり祈りを捧げた。
 欧州の活動家やジャーナリストと一緒に、女性たちは、医療品を積み込んだ援助船でガザに向かう予定という。イスラム教過激派ヒズボラや他の政治団体とは無関係としているが、出発の正確な日程は明らかにしていない。
 イスラエルのエフード・バラク国防相は、マリアム号に乗船した女性に危害があっても、それはレバノンの責任だ、と警告した。
 同船にカトリック修道女も数十人乗船する計画があることが分かり、イスラエル外務省は、バチカン(ローマ教皇庁)が修道女に思いとどまるよう説得することを求めている。また国連安全保障理事会にもガザへの入港を阻止する権利を行使する、と通告した。


◎ドイツ・カトリック教会の「紛争」が深刻化

 【CJC=東京】ドイツ・カトリック教会の「紛争」が深刻化している。アウグスブルク教区のヴァルター・ミクサ司教(69)は、未成年者へ暴力を振るった疑いと教会資金の不正使用などの批判を受けて、問題沈静化のため5月に辞意を表明したが、さらに未成年者へ性的虐待を犯していた疑いが明らかになった。「同司教がアイヒシュテット司教時代(1996〜2005年)、未成年者へ性的虐待を犯していた疑いが出てきた」と報じられたのだ。
 ミクサ司教が、辞表取り消しの意図を明らかにしていたことも問題を複雑にした。ドイツ司教会議会長のロベルト・ツォリッチ・フラアイブルグ大司教とラインハルト・マルクス・ミュンヘン大司教が辞任させよう、と教皇ベネディクト16世に不正確な情報を伝えた、と言う。教皇が異例の速さで辞表を受理したことの内幕を明らかにした形。
 ミクサ司教は、アウグスブルクの司教館に戻った。どこにも住む場所がないから、と語っている。
 ドイツのメディアは、教皇が、ミクサ司教のアルコール問題に関する『秘密ファイル』を受け取っている、と報じた。同司教は飲酒すると、現実が分からなくなる、と記されており、昔の性的違法行為についても触れられている、という。
 ミクサ司教は、教皇との会見を求めており、バチカンのフェデリコ・ロンバルディ報道担当は、会見設定は可能だが、それで辞任問題が取り上げられることはない、と語った。


◎ベルギー教会を警察が捜査、教皇が異例の非難

 【CJC=東京】教皇ベネディクト16世は6月27日、聖職者の性的虐待問題でベルギー警察が立ち入り捜査をしたことを「驚いており、残念」と批判した。個人的な発言自体が極めて稀なことであり、しかも国家を批判するのも異例。
 教皇は教会自身が捜査する「自治」を強調、ベルギー警察の「嘆かわしいやり方」を批判した。警察が司教を拘留、ファイルを押収、ブリュッセル北方のメヘレン=ブリュッセル大司教区の大聖堂では枢機卿の墓にまで立ち入ったことを非難して、ベルギーの聖職者と司教会議議長のアンドレ=ヨセフ・レオナール大司教との「親近さと連帯」を表明した。
 ベルギー・カトリック教会は、聖職者の性的虐待問題が相次いで明るみに出て、調査委員会を設置するまでになった。
 6月24日、ルーベン警察が委員会の調査を指導している精神科医のペーター・アドリエンセンス氏の事件関係ファイルやコンピューターも押収した。教会とバチカンは、被害者のプライバシーが侵害された、と抗議した。
 同日、メヘレンでも司教会議議長の前任者ゴッドフリード・ダンニール枢機卿が事務所としていた所を捜索、資料やパソコンを押収している。枢機卿自身が捜査の対象になっているか、は不明。
 26日、法務相は、捜査は「正当に」行われた、と教会側の主張を否定した。


◎米ミシガン州でキリスト教伝道者がアラブの祭典妨害で逮捕

 【CJC=東京】米ミシガン州ディアボーン警察は、郊外のアラブ人居住区で行われていた文化祭で妨害行為を行っていたキリスト教宣教師4人を6月18日逮捕した、と発表した。4人は保釈金を納め、釈放された。
 これらの宣教師は、数年にわたり、祭典の際にキリスト教への改宗を呼び掛け、紛争の種になっていた。文化祭には3日間で30万人以上が集まるという。


◎ペテロやパウロの最古の肖像がローマで発見

 【CJC=東京】バチカン(ローマ教皇庁)は、ローマの下町の8階建ての近代的なオフィスビルの地下にあるカタコンベで、使徒ペテロとパウロの肖像としては最古と見られるものを発見した、と発表した。
 4世紀後半のものと見られる肖像は、墓の修復の際に天井部で見つかったもので、ヨハネやアンデレのものと見られる肖像もあった。天井画を損なうことなく、上塗りされていた白色の炭酸カルシウム(石灰)を最新のレーザー技術で除去して発見したもの。
 バチカンの考古学参考者ファブリジオ・ビスコンティ氏は、昨年に発見された聖パウロの肖像が独立したものではなく、良き羊飼いキリストの肖像を取り巻くペテロ、ヨハネ、アンデレなどの肖像と共に方形の天井画の一部であったことが分かった、としている。「これらは使徒たちの肖像としては最初のものだ」と言う。
 修復作業にレーザーを利用したのは初めて。総費用は2年間で6万ユーロ(約750万円)。


《短信》CJC通信Twitter速報『cjcpress』から。

▽インドのバンガロールで、6月23日、アセンブリーズ・オブ・ゴッド派の牧師2人が、ヒンズー過激派に襲撃され、殴打された。
▽教皇ベネディクト16世は、教皇庁東方教会援助会議(ROACO)の関係者と会見した。同会議は、東方教会省に属する組織として1968年設立。今回開催した定例会議で、聖地の教会の状況や、諸宗教対話への取り組み、今秋開催の中東特別シノドスなどについて意見交換した。
▽イタリア・ナポリ大司教のクレセンジオ・セペ枢機卿が福音宣教省長官時代の2004年、ローマ市内の不動産処理で不正行為があったとしてイタリア警察の取り調べを受けた、と現地メディアが6月20日報じた。
▽クレセンジオ・セペ枢機卿は6月21日、不動産売買にからむ数十億ユーロもの収賄容疑を否定、警察の捜査を「十字架」として受け止める、と記者会見で語った。
▽バチカン外務局長のドミニク・マンベルティ大司教がキューバを訪問、6月20日、ラウル・カストロ大統領と会見した。帰国前、空港での記者会見で、同大司教は「とても前向きな会見だった」と語った。大統領は異例のスーツ姿だった。


《メディア展望》

  =カトリック新聞(6月27日)=https://www.cwjpn.com
★2010年度 定例司教総会=各委員会役員が交替=典礼関係の諸議題を検討
★仙台教区=教会委員長の集い 開く=問題や経験、分かち合い=連携の力を実感
★初のフォーラム開催=日本カトリック大学連盟
★上智大学キリスト教文化研究所・連続講演会=「平和に貢献する宗教」
★一般公開に220万人=「聖骸布」、日本の巡礼団も

  =キリスト新聞(6月26日)=https://www.kirishin.com
★アングリカン・コミュニオン="一元管理は植民地政策"=ショリ総裁主教が書簡で非難
★キリスト教学校教育同盟総会=「私学へ期待される教育とは?」=仏教系、非宗教系学校ともシンポで議論
★日本カトリック大学連盟 初のフォーラム=「教養とキャリア」再確認=小林陽太郎氏
★現代新宗教と精神文化における平和と癒し=芳賀学氏「正義と平和」調和も反発も=上智大学キリスト教文化研究所講演会
★『十九世紀のドイツ・プロテスタンティズム』=深井智朗氏が「奨励賞」受賞=日本ドイツ学会

  =クリスチャン新聞(6月27日)=https://jpnews.org
★幼子の目で描く戦争の記憶=オランダ人抑留体験者の手記『母への賛歌』邦訳出版
★未伝の地に福音を=日本CCCが茨城の教会未設置地域にトラクト配布
★エチオピア政治弾圧で難民化=国際人権NGOなどは強制送還を懸念
★フィンランド福音ルーテル教会初の女性監督誕生へ=イルヤ・アスコラ牧師9月1日就任式
★千葉県流山市の公立小中学校に「星野富弘文庫」設置


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