世界キリスト教情報

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世界キリスト教情報 第1012信(2010.06.14)

  • 米聖公会総裁主教がカンタベリー大主教を植民地政策的と非難
  • 世界聖公会の指導者がエキュメニカル対話で米聖公会を「停止」
  • 教皇が『司祭年』終了のミサ、1万5000人参加
  • 米改革派教会が『ベルハル告白』を採択
  • 行方不明の米「ボーンアゲイン」一家の少女、無事を確認
  • エンパイアステートビルがマザーテレサのライトアップ拒否
  • 《短信》
  • 《メディア展望》

◎米聖公会総裁主教がカンタベリー大主教を植民地政策的と非難

 【CJC=東京】米聖公会のキャサリン・ジェファート=ショリ総裁主教は、同派の同性愛者(ゲイとレズビアン)受け入れの姿勢を強く擁護、『聖公会共同体』(アングリカン・コミュニオン)の中に見られる権力集中的また強権的な均一化への動きを6月2日非難した。
 英国国教会(聖公会)は、強力な聖職者ではなく各国の共同体の方針に沿うべきだ、と同主教が、米聖公会の会員200万人に宛てた書簡で主張したもの。50年に及ぶ議論の後、米聖公会は、同性愛者が『神の良い創造』であり、『洗礼を受けた指導者、聖職に叙階された人のように、教会の中で、備えられたリーダーシップの良い健全な手本』と確信するに至った、と述べている。
 この5月、米聖公会ロサンゼルス教区は公然同性愛者のメアリー・グラスプール氏を補佐主教に選任した。2004年のジーン・ロビンソン氏のニューハンプシャー教区主教就任に続き、公然同性愛者の主教選任は2人目。同性愛を罪とみなしている構成者もいるアングリカン・コミュニオンの緊張を強めることになる、との警告を無視した形だ。
 英国国教会の霊的最高指導者カンタベリー大主教ローワン・ウイリアムズ氏は5月28日、アングリカン・コミュニオンに向けて厳しい姿勢の声明を発表、公然同性愛者の主教容認について、米聖公会に属する人たちは、アングリカンの交わりから外れており、エキュメニカルな対話や教義上の議論に参加しないように、と批判した。
 ウィリアムズ氏は、アングリカン・コミュニオンの霊的指導者ではあるが、その力は限られている。しかし同氏や他の英国国教会指導者は、近年、聖書が同性愛について語っていることをどう解釈するかについての不一致を克服するために権威の集中を図ってきた。
 RNS通信によると、米メリーランド州フレデリックのフッド大学で宗教史を講じているデビッド・ハイン教授は、アングリカン・コミュニオンは、世界の様々な地域で成長するに伴い、50年以上にわたり信仰と教義上の問題でより大きな一致に向かって進んできた、と言う。
 しかし独立志向の米聖公会は、その流れに常に沿おうというよりは、自らが許容出来る信仰と実践の「境界」の拡大に努めてきた。
 ジェファート=ショリ氏は、アングリカニズムが、さらには聖公会が、確立されたヒエラルキー(教会組織)の強力な支配を逃れようとしたキリスト者によって始められたのだとして、権力と規律の集中推進を拒否している。「一元的な管理はアングリカニズムの特徴ではない。むしろ交わりとコミュニオンの多様性にこそある」と言う。
 2日の書簡で同氏は、世界中の7700万人の聖公会信徒を一律に管理することは、大英帝国の支配の上に共同体を建設した植民地政策的な宣教の「精神的な暴力」と「文化的行き過ぎ」を繰り返す危険性を冒すもの、と指摘している。「私たちは、植民地政策的な態度が続いていることに重大な懸念を抱いている。特に、多彩なコンテキストや文化に単一の見解を課そうとしていることが問題だ」と言う。
 ジェファート=ショリ氏はまた、米聖公会に対する批判が、アングリカン・コミュニオンの中でも、女性司祭や主教を禁じているところから発せられている、として、他にも非公式な暗黙の同意の下に同性愛主教を認めている聖公会が存在している、と指摘した。
 革新派はジェファート=ショリ氏の書簡を、米聖公会の方針を全面的に守るものであるとして歓迎している。「これは控えめではあるが独立宣言だ」と『エピスコパル・カフェ』というブログの編集者ジム・ノートン氏は言う。「総裁主教は、もはや議論の枠組みの確定をカンタベリー大主教にゆだねてはいない」。
 ジェファート=ショリ主教の、聖公会の歴史再検証は、外部には当たり障りのないもののように見えるかもしれない、と、教会史専門家のダイアナ・バトラー=ベース氏。しかしその民主主義的アングリカニズムを強力に守ろうとしていることは「戦争への召集」だと指摘する。「彼女は、『これが自分たちの伝統であり、あなたはそれを破っている』と言っているが、それはウイリアム氏を帝国主義者と非難することだ」。
 ウィリアムズ氏とジェファート=ショリ氏は、各管区の自治と中央の権威の問題をめぐる、非常に古くからの議論を行なっているとも見られる。バトラー=ベース氏によると、両者はアングリカニズムの理解に関しては両極端で、一致の可能性は極めて低い。
 「ウィリアムズ氏は、アングリカンの一貫したアイデンティティを模索し、それをトップダウンで強制しようとする。ジェファート=ショリ氏は、自分たちは常に民主主義的であり、地域に根ざしている、と言う」が、その論争も限界点に近づいた、と見ている。


◎世界聖公会の指導者がエキュメニカル対話で米聖公会を「停止」

 【CJC=東京】聖公会共同体(アングリカン・コミュニオン)の指導者が、エキュメニカル対話に米聖公会が参加することを「停止」した。米聖公会ロサンゼルス教区が、カンタベリー大主教の要請を無視して、同性愛者を主教に任命したことを受けてのもの。
 アングリカン・コミュニオンのケネス・キアロン事務局長が、米聖公会指導者に宛てた書簡で、今後エキュメニカルな対話に参加するよう招待することはしない、と通告した。同事務局長は、カナダ聖公会の首座主教にも書簡を送り、公然同性愛者の主教叙階一時停止を求めた世界聖公会指導者の要請を受け入れるか否か問いただした。
 この5月にカンタベリー大主教ローワン・ウィリアムズ氏は、一時停止に応じない聖公会には対応措置を取る、と提示していた。


◎教皇が『司祭年』終了のミサ、1万5000人参加

 【CJC=東京】教皇ベネディクト16世は6月11日、カトリック教会が1年間にわたり記念してきた『司祭年』を、全世界97カ国から訪れた司祭約1万5000人と共にミサを捧げ、終了した。
 『司祭年』は、「司牧者の真の模範としてのアルスの聖なる主任司祭」ヨハネ・マリア・ビアンネ神父の帰天150年を機に、司祭職の重要性を認識し、司祭らの役務の実りと霊的向上を祈り励ますことを目的に、昨年6月19日から開催されていた。
 ミサの説教で教皇は、司祭職の偉大さとは、それぞれの弱さにも関わらず、神の力に助けられ、すべての時代のすべての人々に神の現存を知らせることにあると強調した。
 バチカン放送(日本語電子版)によると、この「喜びの年」に聖職者による未成年虐待が明るみに出たことで、教皇はこの司祭らの罪に対し、神とこの事件に苦しむ人々に改めて赦しを願うと共に、このようなことが二度と起きることのないよう最大の努力をすることを約束した。

《関連速報》
▽「女性を叙階せよ」とバナーを掲げたグループが6月8日、バチカンのサンピエトロ広場に向けて行進した。折からバチカンは『司祭年』閉幕を記念する式典を計画している所。広場への立ち入りは警察によって阻止された。


◎米改革派教会が『ベルハル告白』を採択

 【CJC=東京】米改革派教会(RCA=信徒数16万6000人)は、1982年に南アで改革派諸教会が制定した、一致、正義、和解に関する宣言『ベルハル告白』を受け入れることにした。創設以来約400年間、同派は使徒信条、ニカヤ信条、アタナシウス信条とベルギー告白、ハイデルベルク信仰問答、ドルト信仰基準を受け入れていた。
 同派は6月10日、協力関係にあるアイオワ州オレンジシティーのノースウェスタン大学で開催した総会で『ベルハル告白』を受け入れたもの。
 同大学のミッチ・キンシンガー教授(宗教学)は「これは歴史的なことで、告白に社会的側面を持つものを追加する必要があった。歴史的にオランダ系、白人系であった教派にとって、教会とは何か、どうあるべきかについて窓を開けたのだ」と語った。
 『ベルハル告白』は、アパルトヘイトという白人優位の人種隔離政策が行なわれていた時代の南アで1982年に起草され、86年に『南ア・オランダ改革派ミッション教会』(DRMC)で採択された。原文はアフリカーンス語で書かれている。「信仰の叫び」「誠実と悔い改めへの呼びかけ」として当時反対運動の指導者アラン・ブーサク氏が主導していた。
 これまでRCAは、朝鮮語系、スペイン語系の教会の存立を認めるなど1628年にオランダ語系の教会として結成された当時とは異なり、言語的・民族的差別や男女間差別などを克服して来た。


◎行方不明の米「ボーンアゲイン」一家の少女、無事を確認

 【CJC=東京】ヨットでの単独世界一周航海を目指している米カリフォルニア州の「ボーンアゲイン」一家のアビー・サンダーランドさん(16)は、インド洋上で6月10日行方不明となり、安否が気遣われていたが、同日深夜、無事が確認された。
  サンダーランドさんは今年1月、無寄港単独世界一周の最年少記録を目指してカリフォルニア州を出航したが、ヨットの故障で南アフリカのケープタウンに寄港し、記録更新を断念。その後も航行を続けることにしていた。5月21日、ケープタウンを出て豪州に向かったが、大波と突風に見舞われ、6月10日早朝にインド洋から衛星電話で家族と話した後に連絡が途絶え、行方不明となった。最後に確認されたのは陸地から数百キロの地点。
 その後ヨットから2度の遭難信号が発信されたため、オーストラリアと米国、フランスの当局が船や飛行機を使った大規模な捜索を行い、豪カンタス航空機の乗員がサンダーランドさんと無線で通信し、無事を確認した。
 両親はサンダーランドさんのブログに「ヨットは立っているが索具が外れた。ラジオ連絡でアビーは元気だと伝えてきた」と書き込んだ。


◎エンパイアステートビルがマザーテレサのライトアップ拒否

 【CJC=東京】ニューヨークのエンパイアステートビルは、祝日やさまざまなイベントの際、それにちなんだライトアップを行っている。
  ところが米カトリック団体『カトリック連盟』が、8月26日のマザーテレサの誕生日にあわせ、マザーのベールの色である白と青のライトアップを行うことを提案しところ、ビル側は拒否した。
 同ビルのオーナー『マルキン・ホールディングス』のアンソニー・マルキン氏は、「世界中のさまざまな文化やテーマ、イースターやハヌカ、クリスマスなどの宗教的記念日を祝して、ライトアップを行ってきた」と語ったものの、「いかなる宗教的人物のためのライトアップ、または宗教および宗教団体からのライトアップ要求については受け付けない方針だ」と述べた。
 『カトリック連盟』は、マルキン側に決定を覆すよう求めている。ニューヨーク市議会議員がオーナーに決定を取り消すよう求める決議を6月9日議会に提出した、とAFP通信が報じている。


《短信》CJC通信Twitter速報『cjcpress』から。

※Twitter速報をフォローされておられる方が200人を超えました。

▽韓国政府は、バチカン大使に、信徒使徒職評議会のトーマス・ハン・ホンスン氏(67、韓国外国語大学名誉教授)を任命した。
▽韓国のペンテコステ派大規模教会『ヨイド純福音教会』のリー・ヨンフン担任牧師は、2013年に釜山で開かれる世界教会協議会(WCC)第10回大会への支持を、同協議会のオラフ・フィクセ・トゥヴェイト総幹事と6月5日会見した際、再確認した。
▽中国・内モンゴル自治区オルドス市当局は6月7日、市内唯一のカトリック教会を、道路拡張のために閉鎖した。当局は司祭と信徒1人に手錠を掛けて拘束した。同教会は登録されており、同自治区の司教は中国政府とバチカン双方から認知されている。 
▽中国のキリスト者の人権擁護のために活動し、2008年にノーベル平和賞の受賞候補者にもなった高智晟弁護士を中国当局が拘束後、釈放していたが、4月末に新疆ウイグル自治区に親戚を訪問、帰途に北京行き飛行機に搭乗して以来また所在が分からなくなっている。
▽パキスタン治安当局は、ジャン、サルゴダ、ファイサラバード、ラホール、シェイクプラア各市で、キリスト教など少数派の礼拝所、居住地などを対象としたテロの可能性が強まっている、と警告を発した。
▽パキスタン・パンジャブ州カネワル地区の村長などが、キリスト者250世帯に村から出て行くよう命じたことが分かった。現地ではイスラム教徒の地主の下でキリスト者は労働しており、子女は召使いとして雇われているが、地主たちに性的虐待を受ける事件が多発、キリスト者側が抗議していた。
▽イラクで7日、キリスト者のハニ・サリム・ワディ氏(34)が殺害されたのを受けて、同国のキリスト者が脅えている、とアッシリア国際通信が報じた。
▽南アで開催されるサッカー・ワールドカップで優勝する、と教皇ベネディクト16世が予想しているのは、出身国のドイツではなく、スペイン、ブラジル、アルゼンチンとイギリスだ、とバチカン(ローマ教皇庁)機関紙『ロッセルバトレ・ロマノ』が10日報じた。
▽エジプト・コプト教会の最高指導者シェヌーダ2世教皇は、離婚・再婚を認めるように、とのエジプト高裁の決定に教会は拘束されない、との立場を再確認した。
▽キリスト教宣教も今では「南」から「北」に向かう時代だが、タンザニアのフィドン・R・ムォムベキ牧師は世界宣教会議で、「南」の宣教活動家は「北」の「閉鎖的な社会」に入るのが困難だ、と指摘した。
▽コンゴの人権擁護組織『ヴォア・デ・サン・ヴォア(声なき声)』のフロリベール・シェベヤ・バヒジレ会長が首都キンシャサ郊外で6月2日早朝、車の中で死体として発見された。国際アムネスティが「独自調査」を要求している。
▽南アの週刊紙『メール・アンド・ガーディアン』が預言者ムハンマドの似顔絵を掲載、冒涜だと反発を買ったことで、謝罪した。


《メディア展望》

  =カトリック新聞(6月13日)=https://www.cwjpn.com
★教皇、キプロス訪問=中東地域の紛争に=「公正な解決」訴える 
★ガザ支援船団拿捕=「悲劇的」事件と教皇=現地の生活条件向上求める
★NPT再検討会議=最終文書採択し閉幕=被爆国の教会として―長崎・広島の司教に聞く
★ブラジル人学校「ピンゴ・デ・ジェンチ」=元幼稚園で新たに開校=さいたま教区が協力=つくば市
★外国籍住民が多い地で=聖堂の建て替え考える=横浜の教会 連続セミナー

  =キリスト新聞(6月12日)=https://www.kirishin.com
★"ひとりを大切にする教育を"=NCC教育部 キリスト教教育研修会=学校、教会、教会学校の課題
★青山学院=院長に山北宣久氏
★世界巡礼から"帰国"=平和を祈る「被爆マリア像」
★バイブル・アンド・アートミニストリーズ15周年=日韓交流の美術展が実現
★東京・関東キリスト者平和の会発足=NPT再検討会議の活動を報告

  =クリスチャン新聞(6月13日)=https://jpnews.org
★軍政下政治犯の夫と獄中書簡=ソウル市長選で惜敗の韓国元首相 韓明淑氏
★聖書をテーマに=チアにっぽん=絵画コンクール
★W杯サッカー選手 信仰を語る=伝道用証しDVD発売
★平和と正義実現に行動=首都圏キリスト者ら新組織
★「主がお入り用」祈祷院で政界入り決断=牧師の息子、銀行員から転身=柴橋正直衆院議員


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