世界キリスト教情報

世界キリスト教情報

世界キリスト教情報 第1010信(2010.05.31)

  • カンタベリー大主教が米聖公会を手厳しく批判
  • ウィーゼンタール・センターがWCCを非難
  • 宗教と人種差別の矛盾の調査研究結果が米国で公表
  • 教皇、一般接見で司祭の統治の務めを考察
  • バチカンが第二次世界大戦当時の秘密資料を6年以内に公開
  • フランスの教区司祭も高齢化進む
  • BBCの宗教番組は「退屈」?
  • 《短信》
  • 《メディア展望》

◎カンタベリー大主教が米聖公会を手厳しく批判

 【CJC=東京】英国国教会(聖公会)の霊的最高指導者カンタベリー大主教ローワン・ウイリアムズ氏が5月28日、聖公会共同体に向けて厳しい姿勢の声明を発表、公然同性愛者の主教容認をめぐって米聖公会を公然、批判した。聖公会共同体内部の対立が深化することは必至だ。
 米聖公会では2004年のジーン・ロビンソン氏のニューハンプシャー教区主教就任に続き、5月初め、ロサンゼルス教区がメアリー・グラスプール氏を補佐主教に選任するなど、公然同性愛者の主教叙階に反対する動きを無視し続けた形。カンタベリー大主教は、グラスプール主教叙階が、信徒7700万人を擁する世界聖公会内の対立をさらに深めることになる、と言う。
 大主教は、「私たち聖公会の交わりが手痛い分裂を経験し続けており、最近の出来事が、完全な和解への道を遠くさせている」と指摘した。「米聖公会の正式機関が、他の教会から求められている道には行けない、と感じていることは、キャノン・メアリー・グラスプールの叙階が明確な徴だ」と言う。
 カンタベリー大主教には、ローマ教皇のような命令する権限はないものの、今回の声明が、米聖公会など、「合意」を破る場合は対話から降りるべきだ、と示唆したものと見られる。
 ロビンソン主教任命の際、聖公会共同体は、同性間の結合祝福を権威あるものとしない、同性間の関係を維持している人を主教に叙階しない、許可なくほかの主教区に介入しない、という3条件の順守で合意していた。
 今回叙階されたグラスプール氏が他の女性と同性関係を19年も続けていたことは、3条件順守に違反している。ロビンソン氏も叙階時には、同性間関係にあった。米聖公会の反応は今のところ明らかでない。


◎ウィーゼンタール・センターがWCCを非難

 【CJC=東京】米国に本拠を置くユダヤ人迫害監視団体『サイモン・ウィーゼンタール・センター』が、世界教会協議会(WCC)を非難した。5月29日から6月4日まで、ジュネーブで「パレスチナに平和を国際週間」を開催するが、それが露骨な「反イスラエル」だというもの。
 同センターのラビ・エイブラハム・クーパーは「国際週間のためのサイトのロゴが『パレスチナの時だ』とあるのが全てを語っている」として、「イスラエルとアラブ双方に平和と正義を求めるとしている中で、すでに62年にわたってユダヤ人国家が存在しているのに、WCCはイスラエルのために何もしてこなかった。イスラエルを殲滅し、ユダヤ人を海に追い落とし、自爆テロで祈祷に集まったユダヤ人を虐殺しようとするアラブ側の狙いに何の応答もしていない」と語った。


◎宗教と人種差別の矛盾の調査研究結果が米国で公表

 【ニューヨーク=ENI・CJC】米国の宗教と人種について半世紀にわたって調査分析した結果がこの2月発表された。「なぜ私たちは、説いていることを実践しないか=宗教的人種差別のメタ分析レビュー」と題された調査報告では、宗教信仰があると言って人種的偏見から自由ではないことを「宗教と差別のパラドックス」と名づけている。
 研究の結論の一つは、宗教的な人種差別は、集団間のダイナミクスを反映している所があること。、そのような人種差別は、宗教も社会的な集団であることから発生する、と研究者の1人、南カリフォルニア大学の社会心理学教授のウェンディ・ウッド氏は述べている。


◎教皇、一般接見で司祭の統治の務めを考察

 【CJC=東京】教皇ベネディクト16世は、バチカン(ローマ教皇庁)のサンピエトロ広場で5月26日、水曜恒例の一般接見を行った。
 「カテケーシス」(教会の教えの解説)で、教皇は間もなく終了する「司祭年」を念頭に、司祭職についての考察を行った。特にこの日は、司祭の3つの職務「教える務め」「聖化する務め」「統治の務め」の中から、「統治」をテーマに、自分の権威ではなくキリストの権威のもとに、託された人々を治め導く司祭の使命を強調した。
 バチカン放送(日本語電子版)によると、教皇は、キリストの命によって人々を司牧するという「権威」を今日の文化の中でどのように理解すべきかを問いながら、特に東西ヨーロッパの独裁政治によって、現代人が権力・権威という概念を用心深く扱うようになったことを指摘した。
 教皇は、恐怖と死をもたらしたあらゆる体制が神を除外し、人間を苦しめたことに対し、司祭の権威は、権力そのものが目的ではなく、神によって創られた尊厳ある人間を目的に、その真の善のために奉仕し、最高善である神を映し出すものである、と述べた。教会はこの「権威=奉仕」を、自分の名ではなく、イエス・キリストの名のもとに行使するのであり、キリストは教会の牧者を通して、ご自分の民を慈しまれ、牧され続ける、という。
 教皇は、兄弟たちをキリストに向けて導くことを恐れず、神の御旨に従うことならばすべての言葉と行いは実りをもたらすことを信じるようにと、司祭たちを激励した。


◎バチカンが第二次世界大戦当時の秘密資料を6年以内に公開

 【CJC=東京】第二次世界大戦当時にナチスのユダヤ人迫害に協力したのでは、と当時の教皇ピオ12世に疑念が絶えない中、バチカン(ローマ教皇庁)でユダヤ教関係を担当しているウォルター・カスパー枢機卿が、当時の秘密資料を学者の研究用に6年以内に公開すると語った。
 枢機卿は、ホロコースト(大虐殺)からユダヤ人を守った教皇の努力について長い間投げ掛けられた疑問を解くことに資料公開が役立つ、と指摘している。「私たちには隠すべきものはないし、真実を恐れる必要はないというのが信念だ」と言う。
 ただ枢機卿の発言は目新しいものではない。すでにバチカン資料担当のセルギオ・パガン司教が、問題の資料が5年以内に公開される、とイタリア紙に語っている。資料は1600万点あり、分類と目録作成に時間が予想以上に掛かっている「技術的な」問題だけだ、とか。


◎フランスの教区司祭も高齢化進む

 【CJC=東京】フランス・カトリック教会の教区司祭1万4000人の半数以上が定年とされている75歳以上で、なお多くが小教区で活動していることが、カトリック日刊紙『ラクロワ』の調査で分かった。バチカン(ローマ教皇庁)が定めた「司祭年」の終了を記念して調査したもの。
 司祭不足は深刻化する一方だが、地域的な偏りはある。地方では司祭1人の担当は数千人規模だが、パリ近郊など、2万人以上を司牧している所もある。


◎BBCの宗教番組は「退屈」?

 【CJC=東京】英ラジオ4のキャスター、ロジャー・ボルトン氏が、ラジオやテレビの優秀宗教番組を表彰する『スキャンフォード聖マーティン・トラスト』賞授賞式で、公営BBCテレビの宗教問題の扱いが、宗教番組は出来たらやりたくない退屈な義務と思っている「世俗的で懐疑的な」人に任されているようだ、と語った。
 ボルトン氏自身は読者応答番組の司会者として練達の宗教ジャーナリスト。BBCニュースには、ビジネスや経済担当のデスクがいるように宗教担当のデスクを任命すべきだ、と言う。


《短信》CJC通信Twitter速報『cjcpress』から。

▽カトリック教会の聖職者、修道者、神学生や信徒カテキストで2009年に殺害された人は37人と、この10年で最多に。
▽韓国海軍の哨戒艦が爆破沈没したのを契機に朝鮮半島の緊張が激化している中、韓国カトリック信徒使徒職評議会のチョイ・ホンジュン会長は「平和と和解のために祈るべきだ」と語った。
▽タイの観光地パタヤで10代の妊娠が増えている、とウイーラ・ファンラク神父がUCA通信に語った。
▽モスクワを訪問しているエキュメニカル総主教バルトロメオス1世はモスクワ総主教キリル1世と共にドミトリー・メドベージェフ大統領と5月25日会談した。
▽カトリックが圧倒的とされていたポーランドで、聖職者・修道者志願が急減したのに続き、教会への出席者数が近年初めて減少に転じた。
▽地動説を提唱した16世紀の天文学者ニコラウス・コペルニクスは異端として教会から、排斥されたが、名誉を回復、ポーランドの教会に埋葬し直された。
▽イタリアのカトリック教会は、児童への聖職者による性的虐待について約100例の報告があったことを初めて認めた。
▽『トリノの聖骸布』が4月10日から5月23日、公開されたが、参観者は延べ211万3128人だった。 
▽カンヌ映画祭で、1996年にアルジェリアでイスラム教過激派に誘拐、殺害された修道士7人を取り上げた『神と人について』(仮題、ハビエル・ボーボワ監督)が第2位の「グランプリ」を受賞した。
▽米下院は、軍の公式行事の際に、神父、牧師、ラビなど従軍聖職者に閉会祈祷することを認めよう、との提案を否決した。 


《メディア展望》

  =カトリック新聞(5月30日)=https://www.cwjpn.com
★タイ=暴力行為 各地に拡大=教会の支援活動中断
★教皇庁諸宗教対話評議会=仏教界にメッセージ=いのちと環境保護に協働を
★自死防止と遺族ケア=東京・麹町教会が取り組み開始
★カトリック東京教区正義と平和委員会=創立20周年を記念=故白柳枢機卿が創立
★デジタル時代の宣教=郡山・鹿児島司教=「ネットで信仰体験を発信」=東京

  =キリスト新聞(5月29日・休刊)=https://www.kirishin.com

  =クリスチャン新聞(5月30日)=https://jpnews.org
★「全国民を弟子に」 宣教運動の新局面に光=エジンバラ100周年記念世界宣教会議・東京大会開催
★エジンバラ東京会議[1]宣教のDNAの課題=宣教の「午後5時」で新しい運動
★基督兄弟団=成増教会転落死事件で遺族らと示談成立=「教会の回復に向かって」総会に報告
★富弘美術館が開館20周年=来館者も作者も「生きる力もらった」
★大阪で景教文書の原本を公開=「イエス・メシア経」「一神論」ほか

月別の記事一覧