世界キリスト教情報

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世界キリスト教情報 第1009信(2010.05.24)

  • エキュメニカル総主教がモスクワ訪問
  • 言語学者チョムスキー氏の西岸自治区入りをイスラエル拒否
  • チョムスキー氏がヒズボラ当局者とレバノンで会談
  • スコットランド教会はイースターなどでカトリックと共通典礼へ
  • ハイチの子ども連れ出し事件、バプテスト派の米国人に有罪判決
  • 『ユダヤ人をイエスへ』の創設者モイシェ・ローゼン氏死去
  • 《短信》
  • 《メディア展望》

◎エキュメニカル総主教がモスクワ訪問

 【モスクワ=ENI・CJC】コンスタンティノープルのエキュメニカル総主教バルトロメオス1世が5月22日、モスクワを訪問した。旧ソ連時代とソ連崩壊後の地政学的な混乱に基づく緊張が数十年続いた後で関係修復を促進するものと期待を集めている。
 バルトロメオス1世はペンテコステの23日、モスクワ近郊の『三位一体の聖セルギウス・ラヴラ教会』でキリル1世総主教と共に礼典を執行した。
 ロシア正教会は、世界最大の正教会。またエキュメニカル総主教は、正教会では最重要な象徴とみなされている。しかしモスクワ側は、エキュメニカル総主教をローマ・カトリック教会の教皇に相当するものとされることには抵抗している。
 ロシア外務省の大学MGIMOにある『教会と国際関係研究センター』の責任者である歴史学者のアンドレイ・ツボフ氏は21日、ロシア教会が継承したソヴィエトの遺産を克服するためにキリル総主教が働いている、と語った。
 「キリル総主教は、コンスタンティノープルとローマ双方との関係を徹底的に改善する構想を持って着座した。そしてこの二つの方向に積極的だ」と言う。
 総主教に2009年2月着座したキリル1世は、7月にはイスタンブールのエキュメニカル総主教にバルトロメオス1世を訪問した。そこで双方は、相違点を脇に置き、世俗的な悪に対する正教会の連合戦線結成を協議している。
 バルトロメオス1世のモスクワ訪問は、正教会のヒラリオン府主教のバチカン(ローマ教皇庁)訪問直後に行われた。ヒラリオン府主教は、モスクワ総主教座の対外教会関係部門の議長としてはキリル1世の後任であり、5月20日にバチカンで行った演奏会には教皇ベネディクト16世も出席した。ローマ滞在中に、ヒラリオン府主教は、自分の目的はキリル総主教と教皇との会談だ、と述べている。
 教皇ヨハネ・パウロ2世とアレクシー2世総主教との会談は結局実現しなかった。1990年代の双方の関係は、ウクライナでの問題とカトリック教会がロシアで改宗をすすめている、との正教会側の疑念から悪化していた。
 ソ連の崩壊以来、正教会内の裁知権をめぐる対立から、エストニア、ウクライナなどでは国家の独立に伴い、教会もモスクワ総主教座から離れ、自立を志向する動きに火がついた。他のヨーロッパ諸国では近年ロシア人の流入で教会分割や財産紛争を引き起こしている。またモスクワ総主教座の支配が強まるにつれ、それに反対する側がエキュメニカル総主教座を「避難所」とするようにもなっている。
 モスクワとコンスタンティノープルは、1970年以来、『アメリカ正教会』に独立自治を認める権威がモスクワ総主教座にあるかどうかについても、対立が続いた。
 「コンスタンティノープルやローマとの関係を悪くしておくことは、ソビエト体制の教会イデオロギーにとって必須条件だった」とツボフ氏。「モスクワ総主教座は、1943年に、ソビエト体制が監督出来ないバチカンやコンスタンティノープルに対抗するキリスト教の中心とするため、スターリンによって再建された」と言う。
 ツボフ氏は、ロシア教会は何十年もこのような考え方に影響されてきた、として「ロシアの主教とロシアの神学者の2世代は、この心理的な遺産と共に登場した」と述べた。「だから今起こっていることは、言ってみればソビエト体制、秘密警察KGBなどの遺産、教会に対するソヴィエト支配などを克服することだ。...これこそソヴィエト時代の不自然な関係が終わった後の諸教会の間の自然の関係だ」と言う。


◎言語学者チョムスキー氏の西岸自治区入りをイスラエル拒否

 【CJC=東京】イスラエル入管当局は5月16日、ヨルダンからイスラエル占領下にあるヨルダン川西岸のパレスチナ自治区へ向かおうとしたユダヤ系米国人で著名言語学者のノーム・チョムスキー氏(81)の入境を拒否した。同行していた令嬢も入境を拒否された。
 チョムスキー氏は、西岸を占領するイスラエル側のアルカマラ検問所で3時間にわたり尋問された上、入境を拒否されたもの。「イスラエルはあなたの発言を快く思っていない」と係官が用意された文書を読み上げ、パスポートに「入境拒否」の判を押されたという。同氏は、イスラエルによる占領地への入植などを厳しく批判してきた。
 同氏はヨルダン川西岸のビルゼイト大学の招きでラマラなどに4日間滞在し、米国の外交政策についての講演や、サラーム・ファイヤード・パレスチナ自治政府首相との面談を予定していた。イスラエル入りの予定はなかった。イスラエルの大学での講演予定がないことが入境拒否につながったようだと同氏は見ている。
 同氏は1997年にイスラエルと西岸を訪問したことがある。入国拒否の経験は、68年のソ連侵攻後にチェコスロバキアに入ろうとした一度だけだという。同氏は「私の言論を気に入っている政府なんか存在するだろうか」と語り、今回の入境拒否をアパルトヘイト時代の南アフリカに例えて非難した。
 AFP通信によると、イスラエル内務省報道官は、通行拒否を「何らかの誤解」によるもので、同氏は「何の(ブラック)リストにも載っていない」と説明した。


◎チョムスキー氏がヒズボラ当局者とレバノンで会談

 【CJC=東京】ヨルダン川西岸地区への入境をイスラエル政府に拒否されたユダヤ系米国人で著名言語学者のノーム・チョムスキー氏(81)が5月21日、レバノンに本拠を置く急進的シーア派イスラーム主義組織『ヒズボラ』の指導者ナビル・カオク氏と会談した。
 『アールル・バイト通信』によると、中東紛争、イスラエルと米国の政策などについて意見交換した。チョムスキー氏は、2006年のイスラエルによるレバノン攻勢は米国の決定によるものだ、と語った。
 『ヒズボーラ』は1982年結成。イラン型のイスラーム共和制をレバノンに建国し、反欧米の姿勢の下で、イスラエル排除を掲げている。


◎スコットランド教会はイースターなどでカトリックと共通典礼へ

 【CJC=東京】スコットランド教会(長老派)は、イースターやペンテコステなどでは、カトリックとの共通典礼を行う準備を進めている。
 教会間の結びつきへの大きな一歩として、洗礼の際の誓約は、秘跡についての共通の理解に基づくもの、と同教会の報告書は記している。典礼は、両教会の代表によって考察された。


◎ハイチの子ども連れ出し事件、バプテスト派の米国人に有罪判決

 【CJC=東京】ハイチで1月に起きた大地震の直後、ハイチ人の子ども33人を連れ出そうとした米バプテスト派の宣教団体『ニューライフ・チルドレンズ・レヒュジ』の活動家10人が逮捕された事件で、最後まで拘束されていた指導者のローラ・シルスビー氏(40)に5月17日、有罪判決が言い渡された。判決は禁固3カ月と8日だが、勾留期間が刑期を超えているため、首都ポルトープランスで即日釈放された。他の9人は司法手続きを途中で打ち切られてすでに釈放されている。
 シルスビー氏は米アイダホ州メリディアンの『セントラルバレー・バプテスト教会』に出席していた。教会仲間などバプテスト派の信徒と共に、地震被害にあった子どもたちを、隣国ドミニカで運営している孤児施設に収容しようと1月末、バスで連れ出したところ国境付近で警察に阻止された。ハイチでは、震災孤児の人身売買や違法な養子縁組への懸念が高まっており、警備が強化されていた。
 シルズビー氏は収監中に、「ドミニカ共和国政府から、わたしたちがドミニカで運営している孤児施設に子どもたちを連れてゆく許可を得ている。わたしたちは、ポルトープランスで孤児施設を運営しているバプテスト派の宣教師から、施設が今回の地震で壊滅したので、ドミニカの施設へ収容するよう依頼されたのだ。書類を整えるために戻ってくるつもりだった。幼児の人身売買の容疑がかかっているが、そんなつもりは全くない。何か悪事をしようとしたことなどなかった」と語っていた。
 公判で、シルスビー氏は、子どもたちは両親を失ったと思っていた、と述べた。しかし壊滅したカレバス村から連れて来られた子どもたちの家族はCBSニュース記者に、宣教者たちが子どもを教育し、訪問も認めると言うので渡した、と語っている。


◎『ユダヤ人をイエスへ』の創設者モイシェ・ローゼン氏死去

 【CJC=東京】ユダヤ人への伝道団体『ユダヤ人をイエスへ』(JFJ)の創設者モイシェ・ローゼン氏が5月19日、前立腺ガンのためサンフランシスコで死去した。78歳。
 1973年に設立したJFJは文字通りにユダヤ人の間にイエスをメシア(救世主)として受け入れる人を数千人規模で生み出すに至った。現在11国で宣教者200人が活動しており、「メシアニック・ジュー」と呼ばれるユダヤ人キリスト者の組織としては世界最大ともされている。
 コロラド州デンバーで、東欧からの移民で伝統派ユダヤ教徒の家庭にの子として生まれたローゼン氏は1953年、セシル夫人と共にキリストを受け入れた。両親の反対は強く、言葉を交わさなくなったという。
 ニュージャージー州にあるノースイースタン・バイブル・カレッジで学んだ後、67年にコロラド州ウイートリッジのトリニティ・バプテスト教会で牧師に按手された。その後の5年間、『アメリカン・ボード・オブ・ミッションズ・トゥ・ザ・ジューズ』というユダヤ人対象の伝道団体で活動、73年に『ユダヤ人をイエスへ』を設立した。
 JFJは大学、ショッピングセンターや繁華街の街頭などで、伝道文書を配布、道行く人に呼び掛けている。ローゼン氏は、ユダヤ人のゴスペル・ミュージック・グループや劇団なども結成し、育成に努めた。
 「今日のユダヤ教には、キリストの立つところがないので、救いもない」と、死去発表直後に同団体のサイトに掲出された記事でローゼン氏は語っている。
 キリスト教宣教者の努力はユダヤ教の伝統に沿ったものだというローゼン氏の考えは、ユダヤ人指導者との間で紛糾を呼んでもいる。「精神的な大虐殺を図っている」「ユダヤ教の完全破壊を狙っている」などの批判もある。

《連絡》Twitter速報で「ユダヤ人をキリストへ」と誤記したものを掲出、その後に訂正版を掲出しました。


《短信》CJC通信Twitter速報から。

▽パキスタンがSNSのフェイスブックを禁止した。あるコンペに参加すると、イスラム教の教祖ムハンマドの戯画につながるから、と。
▽ミュンヘンで5月12日から16日まで行われた第2回エキュメニカル教会大会にはドイツ内外から延べ13万人以上が参加した。
▽「トリノの聖骸布」展観は4月10日の開始以来、約200万人の「巡礼」を集め、5月23日終了した。
▽マラウィの長老教会は、同性愛者男性に禁固14年の判決が出たことを歓迎。
▽米カトリック教会シカゴ大司教区は、ガンで死去したジャニーヌ・デノンムさん(45)の葬儀を拒否した。「司祭」に女性でありながら叙階されたと主張していたため。
▽米国では大統領が就任式で祈り、「神よ助けたまえ」と祈るが、無神論者のマイケル・ニューダウ弁護士が、これを違憲だとして訴訟を起こす、と語った。 
▽キューバのラウル・カストロ大統領が、カトリック教会のハイメ・オルテガ枢機卿、ディオニシオ・ガルシア司教会議会長と会談。 
▽キューバ・カトリック教会のハイメ・オルテガ枢機卿は、ラウル・カストロ大統領との会談の後、「すばらしい出発」だったと語った。また政治犯200人の釈放を呼び掛けた。


《メディア展望》

  =カトリック新聞(5月23日)=https://www.cwjpn.com
★教皇、ポルトガル訪問=教会の宣教姿勢に変革求める
★高見大司教=欧米訪問を報告=参加者 教会外からも
★長崎大司教の訪問を準備=「発言する教会」知る契機に=国際連合日本政府代表部 角茂樹大使
★長崎・江袋教会=焼失後 全国から支援受け=鮮やかに復元
★子どもら神父に「恋は?」=大阪教区阪神地区=司祭年を祝う集い

  =キリスト新聞(5月22日)=https://www.kirishin.com
★「十字架背負い平和のために」=駐日オランダ大使ドゥ・ヘーア氏が教会で講演=拷問に立ち会った祖父
★日本エキュメニカル協会=「社会福祉学会」に功労賞
★憲法記念日に子どもも"パレード"=銀座で平和をアピール
★国際飢餓対策機構=一般財団法人に衣替え=公益法人化をめざす
★早稲田大=トルストイ没後100年でシンポ=辻孝明氏「生涯こそが最大遺物」

  =クリスチャン新聞(5月23日)=https://jpnews.org
★家族引き裂く戦争を知る=日本にゆかりある駐日オランダ大使語る
★ラブ・ソナタ=今年も旭川、新潟で開催
★限界集落に福音届け!=日本一の高齢村にトラクト配布
★「声なき者の友の輪」開始=砂漠を森に変える「神の国」の種まき 全市町村で=聖書的世界観へパラダイム転換
★「夢のある教団にしていこう」=メノナイトブレザレン教団=一致約して60周年


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