世界キリスト教情報

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世界キリスト教情報 第1007信(2010.05.10)

  • 英国国教会が女性聖職実現へさらに前進
  • 米南部バプテスト連盟が新伝道方策を打ち出す
  • やはりおかしい?『ノアの方舟』発見説
  • 『キリスト軍団』を教皇が直接掌握へ
  • ポーランド首座司教にコワルチック大司教
  • バチカンのサイトに『教会法』の中国語版
  • 《短信》
  • 《メディア展望》

◎英国国教会が女性聖職実現へさらに前進

 【CJC=東京】英国国教会が女性聖職実現への歩みを進めている。世界聖公会共同体(アングリカン・コミュニオン)の中で、聖職者は男性のみとする伝統派との「決別」に至る可能性を否定できなくなってきた。
 このほど明らかになった教規改定草案は、女性は男性と同じ基準で主教に叙階すべき、としている。保守派の『アングロ=カトリック』派を失望させることは決定的で、これまで国教会内で「部制」のような二重構造を望んでいた同派の動きが注目される。すでに一部には昨年10月、英国国教会からカトリックへの転向を容易にした教皇ベネディクト16世の提案を検討する可能性も出ている。
 同教会の改定委員会は、伝統派の教会に、男性司教に祝福と叙階の実行を委ねる権限などを認めるなどの提案を行った。しかし、新教区や特別主教設定などの要求には応じていない。
 改定案は、この7月にヨークで開催される教会総会に提案される。順調に進んでも、英国国教会に最初の女性主教が登場するのは2014年のことと見られている。
 女性の聖職叙階は、同性愛主教、同性間結婚と共に、7700万人が加わっている世界聖公会共同体内の深刻な対立課題になっている。現在、女性主教は米国、カナダ、ニュージーランドでは実現している。


◎米南部バプテスト連盟が新伝道方策を打ち出す

 【CJC=東京】米国プロテスタントでは最大教派の南部バプテスト連盟『大使命復活タスクフォース』が、受洗数減少傾向に対し5月3日、新伝道方策を打ち出した。信徒個人と翼下の伝道組織に奮起を訴えるもの。
 新方策は、信徒個人に財政支援を訴え、献金額を現在の年収の2・5%平均から少なくとも10%に増やすよう要請する。また伝道組織『国際宣教部会』には、これまでの海外での伝道に加えて米国内の在住外国人も対象にするよう求めている。
 「南部バプテスト連盟が創設された当時、世界を『内国伝道』と『外国伝道』とに分けて考えるのが普通だった。交通や人々の移動の革命により、"世界"が"北米"になった」とタスクフォースが5月3日発表した報告書は指摘している。
 報告書は、信徒の家庭は休日を伝道旅行に用いるよう勧め、また伝道活動強化のため、各教会や州大会から中央の伝道活動プログラムへの献金を増やすよう求めている。
 報告書は、6月にフロリダ州オーランドで開催される大会に提出される。


◎やはりおかしい?『ノアの方舟』発見説

 【CJC=東京】聖書に登場する『ノアの方舟(はこぶね)』を探す中国とトルコの探検家チームが香港で4月26日、方舟が漂着したといわれるトルコ東部のアララト山(標高5137メートル)で、方舟の木片を発見した、と発表した。
 この発見は、聖書の記述が史実に沿ったものだという主張を補強することになり、天地は比較的近年に、創世記の記述通りに7日間で創造されたと主張する人を勢いづけることにもなる。
 しかし、福音派キリスト者でかつてはチームの一員だったランダル・プライス博士は、今回の発見が綿密な検証には耐えられない可能性がある、と語った。
 「もしも世界が、これは驚くべき発見だと思いたいなら、それはそれで良い。問題は結局のところ、まっとうな分析の結果、これが偽物となると、キリスト者とはだまされ易いということで、それこそ問題が多過ぎる」と言う。
 プライス博士は、バージニア州リンチバーグのリバティ大学ユダヤ研究センター所長。明言はしなかったものの、現地のクルド族が資材を担ぎ上げて中国チームのために偽物を作り上げたと信じられる根拠を確認した、との報道もある。黒海地方の古建造物から採った木片を2009年夏までにアララト山に持ち込んで、洞穴の中に置いたという。
 プライス博士だけではない。テキサス州ダラスにある『創造調査研究所』のジョン・D・モリス所長も2005年以来、チームに協力していたが、香港で行われた今回の記者会見への参加を断わった。「私は科学者だ。明確な証拠が欲しいが、今のところはない」と言う。
 今回のチームは『国際ノア方舟宣教団』が派遣したもの。このような疑問が出るのを予想してか、チームに参加している香港のドキュメンタリー映像作家、楊永祥氏は、「方舟を見た人はいないのだし、どんな形なのか、誰も知らない。聖書や現地の信仰などを含め歴史的にみて、これがノアの方舟だということを99%確実だ、と言っているだけだ」と語っていた。
 進化論・創造説をめぐる議論には確たる証拠を求める動きがつきまとう。「現代科学は聖書物語に挑戦してきた。聖書を字句通りに受け取りたい人たちは、証拠を見つけることに熱心になる」とコネチカット州ニューへブンにあるエール大学の歴史・宗教学担当のカルロス・M・N・アイア教授。
 ノアの方舟を発見したからといって、それで何かが決まるというものではない、とモリス氏。キリスト教信仰は信仰によるもので、証拠によるものではない。「私の信仰はノアの方舟にはない。しかし方舟は、私が信じているものに基礎づけられた物質的な確認にはなるだろう」と言う。
 これまでにもアララト山に探検に出かけ、ノアの方舟のものだ、という「証拠」を持ち返った例はある。フランスの探検家フェルナンド・ナヴァラは5000年前のものと見られる方舟の一部を発見した、と報告したものの、後になってせいぜい500年から750年前のものだ、と判明した。「二度あることは三度ある」とアイア氏は語る。


◎『キリスト軍団』を教皇が直接掌握へ

 【CJC=東京】教皇ベネディクト16世は、修道会『キリスト軍団』(レギオナリ・ディ・クリスト)を管理する教皇代理を任命する。バチカン(ローマ教皇庁)報道事務所が5月1日発表した。
 『キリスト軍団』は、マルシャル・マヒエル神父が1941年、メキシコで創設した団体。マヒエル神父は、幼児性愛、神学生への性的虐待で告発されたものの、2004年まで軍団を支配した。08年に87歳で死去したが、さらに愛人と令嬢がいることも報じられた。
 1日の発表は、『キリスト軍団』を教皇の指示により司教5人が調査、報告書を提出したのを受けてのもの。
 強い表現の声明で、バチカンは司教5人が『キリスト軍団』の「深刻な再評価」の必要に関し意見が一致した、と指摘している。
 教皇代理は、『キリスト軍団』を管理し、現在の指導者はその指示に従うことになる。会則検討委員も任命される。また教皇は、『キリスト軍団』関連の信徒運動である『レグヌム・クリスティ』を指導するため、『訪問者』を任命する。
 物議を巻き起こして来た『キリスト軍団』にバチカンが介入することは、会員が正常化への道を踏み出すことを助けるためだ、と声明は指摘している。
 声明は創始者、故マルシャル・マヒエル神父の重大な不正行為が、『キリスト軍団』に厳しい問題を引き起こした、と認めている。
 声明は、創設者メシエル神父が問題を隠蔽する仕組みを作り上げていた、と指摘した。信頼、秘密、沈黙によって、カリスマ性のある創始者としての自らの役割を強化し、巧妙にその行動を隠蔽したため、会員の多くが実態に気がつかなかった、と言う。
 『キリスト軍団』は世界22カ国にいる約800人の司祭と2500人以上の神学生が会員。信徒運動である『レグヌム・クリスティ』の会員は約7万人と見られる。
 教育に力を入れ、小神学校、神学校を含め学校、大学をメキシコ、ベネズエラ、コロンビア、チリ、ブラジル、アイルランド、仏、独、カナダ、米国、フィリピンなどで運営している。
 総資産は250億ユーロ(約3兆円)とイタリアのニュース週刊誌『レスプレッソ』は評価している。


◎ポーランド首座司教にコワルチック大司教

 【CJC=東京】教皇ベネディクト16世がポーランドのヘンリエク・ムスジンスキー首座司教(77)の高齢による辞任申し出を認め、後任に、現教皇庁使節のヨーゼフ・コワルチック大司教(71)を任命した。同氏は同時に中西部グニェズノ大司教に任命された。


◎バチカンのサイトに『教会法』の中国語版

 【CJC=東京】バチカン(ローマ教皇庁)が『教会法』の中国語版をインターネットのサイトに掲出した。同サイトは1年前に聖書や第二バチカン公会議文書などを掲出していた。この3月には『カトリック教会のカテキズム』も掲出した。繁体語と簡体語の双方がある。
 バチカンのサイトはイタリア語、英語、仏語、スペイン語、独語、ポルトガル語、ラテン語でも提供されている。


《短信》CJC通信Twitter速報から。

▽ハノイ協働司教に任命されたペトロ・グエン・ヴァン・ノン氏の就任式典が5月7日、ハノイの聖ヨセフ大聖堂で行われた。反対派信徒が多数、プラカードなどを持って集まった。
▽イラク・モスル大学のキリスト者学生が乗っていたバス3台が5月2日襲撃され4人が死亡、171人が負傷。
▽教皇ベネディクト16世は5月9日、子どもをはたいたと非難され辞表を提出した独南部アウグスブルグ教区のワルテル・ミクサ司教(69)の辞任を認めた。
▽トリノの聖骸布、参観希望者は180万人を超えた。23日の閉幕までに200万人突破は確実。
▽カトリックの反体制神学者として著名なハンス・キュンク神父が4月27日、オンライン・ニュースサービス『ユーロピアン』とのインタビューで、性的虐待問題で教会と聖職者を全体として非難することに、警告した。
▽ベルギー司教団は5月3日、バチカンで性的虐待問題処理の協議を開始。
▽英国国教会の主教3人がバチカン教理省との会談で、カトリック教会に加入の意向を示した。サンデー・テレグラフ紙が報じた。
▽スコットランド長老教会は、教勢退潮と献金減少への対策として、教会生活を大改革する新モデルを検討、2011年の総会に提案する。
▽タンザニアの福音ルーテル教会は、同性間の結婚の合法化を認め、支持する団体からは金銭や支援を受けない、と決定。 
▽米週刊誌ニューズウイークの元宗教担当編集者ケネス・ウーダル氏が、教皇と教会の性的虐待問題を結びつけようとしている、とニューヨーク・タイムズ紙を批判した。「何か新しい事件かのようにスキャンダルをでっち上げている、と言う。
▽米教会協議会のマイケル・キナモン総幹事は5月2日、ニューヨークのタイムズスクエアで開催された集会で演説、同協議会総会と『カトリック世界奉仕』の決議を引用して、「私たち全てを絶滅させる前に、核兵器を廃絶する時が来た」と語った。
▽米ニュージャージー州シートン・ホール大学理事会は、今秋から開設予定の同性間の結婚に関する講座を中止するか検討している。ニューアーク教区のジョン・J・マイヤーズ大司教が、教義に反すると述べたのを受けてのこと。
▽米福音キリスト教出版協会(ECPA)が2010年度の「キリスト教書賞」の6部門の受賞を発表した。年間総合賞にはリチャード・スターン著『ザ・ホール・イン・アワ・ゴスペル』(トーマス・ネルソン社)が選ばれた。
▽カトリック救援団体『カリタス・カナダ』がタイで支援している,NGO『フォーカス・オン・ザ・グローバル・サウス』は開発途上国で妊娠中絶や避妊を推進しているので不適当だ、と批判されている。
▽米聖公会の元アルバニー主教ダニエル・ハーゾグ氏は2007年に離脱してカトリックに加入していたが、聖公会に復帰した。


《メディア展望》

  =カトリック新聞(5月9日・休刊)=https://www.cwjpn.com

  =キリスト新聞(5月8日)=https://www.kirishin.com
★普天間基地・県内移設反対「県民大会」に9万人 "基地0沖縄"へ思い熱く
★青山学院=元教職員らに危機感="建学の精神を守れ"
★カリタスジャパン=カトリック教会の意識調査 結果を発表=根深い「自死は罪」31%=「身近に経験」が約半数
★『新改訳聖書』改訂へ=聖書学の進展など受け2016年に刊行
★カトリック教会 性的虐待事件=欧米で司教辞任相次ぐ

  =クリスチャン新聞(5月9日)=https://jpnews.org
★再発見?! キリスト教の世界=雑誌が相次ぎ特集=創刊以来の売れ行き
★"子どもたちを救いたい"=ワールドビジョンジャパン=2737人の「手」差し伸べ
★「地上は悲惨でも希望は上に」=被災地ハイチにはげまされた=緊急医療支援から帰国の看護師根本律子さん
★若者にイエスの情熱を=パッション東京=5千人期待
★中国青海省地震=NCCも緊急支援募金


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