世界キリスト教情報

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世界キリスト教情報 第1005信(2010.04.26)

  • 教皇、聖職者の性的虐待へ対応する、と公開接見で言明
  • カトリック教会、司教辞任相次ぐ
  • 中国・青海省地震にキリスト教団体も支援に協力
  • アジアのキリスト教指導者はエキュメニカル組織の刷新求める
  • 米国防総省が全国祈祷日の奨励者にグラハム氏招待を断念
  • あのスーザン・ボイルさんが教皇の面前で歌う?
  • 《短信》
  • 《メディア展望》

◎教皇、聖職者の性的虐待へ対応する、と公開接見で言明

 【CJC=東京】教皇ベネディクト16世は4月21日、サンピエトロ広場で行われた水曜日恒例の公開接見で、マルタ訪問の際に性的虐待の被害者と会い、「その苦しみを分かち合い、教会が行動すると約束した」と語った。
 教皇の発言は、すでに遺憾の意を表明してはいるが、性的虐待に関する初めての公式態度表明とメディアは受け取って、大きく報じている。


◎カトリック教会、司教辞任相次ぐ

 【CJC=東京】世界のカトリック教会で聖職者による児童の性的虐待事件が相次いで明らかにされている。また問題を引き起こした聖職者に対し、上長である司教の対応も、実態を明らかにせず、別の理由で人事異動を行い、さらに新任地で被害者を増やす結果になるなど、隠蔽体質への批判も高まっている。さらには現教皇ベネディクト16世も教皇着座前に、問題聖職者への配慮を優先させたのではないか、と火の手は一向に衰えない。
 チリのカトリック教会は4月20日、聖職者による児童の性的虐待が未確認を含め、20件あったとして、被害者に許しを求めた。
 世界各地での問題報道に、バチカン(ローマ教皇庁)はメディア報道を風評によるもの、と無視する姿勢をとっていたが、マルタを訪問した際、教皇は被害者と接見、深刻な思いと許しを求めるまでに至った。
 ただ教皇が述べた言葉があいまいだ、という被害者グループの批判を受けてか、21日、水曜恒例のサンピエトロ広場での一般接見の際には、教会は「行動」を取る、と語った。
 イングランドとウエールズの教会首座であるウエストミンスター教区のヴィンセント・ニコルズ大司教は、教会の「虐待を受けた人たち、無視され、信頼を失った、裏切られたと感じている人たちに対する心からの謝罪と深い悲しみ」を司教会議で表明した、大司教は、聖職者の犯罪を「教会全体を深刻な恥をもたらした」「深刻なスキャンダル」としている。
 ドイツではアウグスブルグ教区のヨゼフ・ミクサ司教が性的虐待ではないものの、身体的虐待、財務上の不祥事に関する疑惑が絶えず辞任を教皇に提出した、と報じられた。教皇が辞任を認めたかは、まだ明らかになってはいない。
 教皇は22日、アイルランド・カトリック教会キルデアとリーフリン教区のジェームズ・モリアーティ司教の辞任を承認した。聖職者の児童虐待疑惑問題の処理を誤ったという非難の中で辞任を迫られていたもの。
 ベルギーでは、ブリュッヘ教区のロジャー・ファンゲルーウェ司教(73)が司祭時代から少年に対する性的虐待を認め、辞表を提出していたが、教皇は23日、辞任を認めた。
 聖職者による少年への性的虐待問題で、米国の被害者の男性が、バチカンと教皇ベネディクト16世が虐待の事実を知りながら隠蔽していたとして、関係書類の公開などを求める訴訟を米ウィスコンシン州の裁判所に起こした。
 バチカンは23日、この訴訟に「バチカンは原告の被害に関与しておらず、虐待の事実を知ったのも発生から数十年後だった」という声明を発表している。


◎中国・青海省地震にキリスト教団体も支援に協力

 【CJC=東京】中国国営新華社通信は、青海省玉樹チベット族自治州玉樹県で4月14日発生したマグニチュード7・1の地震による死者が2220人になったと明らかにした。被災者は10万人以上と推定されている。
 中国政府の救援活動が進む中、教会系団体も被害者支援に動き出している。ただ被災地は海抜3700メートル。過酷な自然が救援スタッフを悩ましている。特に高山病対策を立てずに緊急に現地入りした人の中に重症化が増え、死者も出るなど、現場から撤収を余儀なくされた例も見られる。
 国際社会の関心は高く、外交部の姜瑜報道官は定例会見で、中国政府・国民に慰問の意を表した国や国際・地域機構を紹介している。支援金も総額400万ドル(約3億7000万円)超えたと見られるが、政府は現地での直接救援活動を認めない方針とも伝えられる。
 教会系団体も、カトリックは華北省に本拠を置く『進徳公益』、プロテスタントは南京の『愛徳基金』を通じるか、香港の救援組織を通じるしか手段が見つからない現状。
 国際カリタスや翼下の各国カリタスは、救援に中国の信者と協力したい意向を進徳公益に伝えている。
 被災地に「進徳」のマーク入りのテントが張られているが、これは『進徳公益』の活動が現地住民に認知されていることを意味する。すでに医療チームの診療は行われている。孤児たちへのカウンセラーも派遣された。ただ降雪が激しく、遠隔地への移動はままならない。カリタス・ドイツからアドバイザーとして派遣されていたオリヴィア・シモンズは反省会に参加するため現地を離れた。
 『愛徳基金』は青海省の地震被害地救済へ米約45トン、小麦粉約2・5トン、インスタントラーメン850箱、飲用水350カートン、ブランケット480枚、敷布300枚を送った。
 『愛徳基金』は、これまでも現地で調理・照明用にバイオガスや太陽熱利用設備を供給して来ており、これからは救援から復興協力に向かうものと見られる。


◎アジアのキリスト教指導者はエキュメニカル組織の刷新求める

 【クアラルンプール=ENI・CJC】アジアのキリスト教指導者は、地球規模と地域のエキュメニカル(教会一致の)組織が制度的な固定化を避け、時代の関心により効果的に応答出来るよう変革することを訴えている。
 4月14〜21日に開かれたアジア・キリスト教協議会(CCA)総会の際に、インドのマランカラ正統シリア教会のヤコブ・マル・イレナイオス主教は、CCAが地域連合体として加盟している世界教会協議会(WCC)について、「私はWCCが単なる国際組織であるよりは運動となれないか、と夢見ている」と語った。「これはWCCをいかに刷新するかという挑戦であり、それが出来れば世界規模で様々な教会の預言的な声を強めることになる」と言う。この発言は16日、アジアのキリスト教指導者とWCCのオラフ・フィクセ・トゥヴェイト総幹事との会談で行われたもの。
 トゥヴェイト総幹事は、WCCとアジアのキリスト教指導者との関係強化のために対話を求めた。
 イレナイオス主教は、WCCとCCAが神学や宣教について多くの研究を行い発表しているが、「その多くは紙の上だけのものだ」と言う。
 バングラデシュ合同教会議長のポール・シシル・サルカル監督も、WCCとCCAとの間の神学的対話は「ほとんど知識人向けのもの」と言い、「エキュメニズムに関する神学的思索をどのようにして草の根レベルにまで持ってゆくか」に取り組むことが課題だ、と語った。そしてWCCとCCAが、活動内容やスタッフを「非集中化」するよう提案した。
 キリスト教団体の財政問題への懸念も、他の参加者から表明された。
 インドネシアの『開発文化センター』のヨセフ・プルナマ・ウィジャットマジャ代表幹事はCCAの基金の7〜8割が欧州の教会関係の献金だ、と指摘した。「私たちは、CCA憲章が想定しているように自立を目指し、時代の要請に応えるエキュメニズムのあり方について再検討する必要がある」と言う。「私には答えがないが、私たちの使命と理想を掘り直す時だ」と言う。
 トゥヴェイト総幹事は、「責任と力を担う」方法を探そう、と語った。「紙を作ることだけにがんばるつもりはない。私たちは単純な方法でエキュメニズムを果たす方法を見つけなければならない。組織構成より結果を重視したい」と言い「私たちの関係を打ちたてはぐくむ道を見つける」ことが重要だ、と指摘した。
 16日、ENI通信とのインタビューでネパール教会協議会のカリ・バハドゥル・ロカヤ総幹事は、CCAの改革は、NGO(非政府組織)間の開発プログラムの重複を避けることになる、と示唆した。その代わりにCCAは主張を強力にし、「政府の施策に影響力」と持つようにすべきだ、と言う。「CCAは、憲章を修正し、組織を再編、貧困、人権侵害、軍事主義、非民主政権、宗教的過激主義、政情不安などに反対する預言者的な声を挙げることに力を入れるようになる」と語った。


◎米国防総省が全国祈祷日の奨励者にグラハム氏招待を断念

 【CJC=東京】米国の反キリスト教監視団体『軍事宗教の自由財団』(MRFF)のマイキー・ワインスタイン会長がが4月20日、ペンタゴン(米国防総省)で行われる5月6日の全国祈祷日の奨励者に大衆伝道者フランクリン・グラハム氏を招くことに反対する、とロバート・ゲイツ国防長官に書簡を送った。同氏がかつてイスラムを『悪魔』としたことがあり、それが国防省に勤務しているイスラム教徒を中傷するものだから、招待を取り消すべきだ、というもの。
 同氏を招くことは、キリスト教を激しく侮辱する人を招いた時のことを考えればわかるとして、イスラム教過激派を刺激し、米軍部隊を危地に陥れることにもなりかねない、と指摘している。
 政教分離原則上にも配慮してか、国防総省はグラハム氏招待を断念した。グラハム氏は22日、国防総省の断念決定を遺憾とし、軍隊のために祈り続ける、という声明を発表した。
 グラハム氏は、著名な大衆伝道者ビリー・グラハム氏の子息で、父親の創設した『ビリー・グラハム伝道協会』や国際救援組織『サマリタン・パース』の会長兼CEO。
 2001年の同時多発テロ事件の際、グラハム氏はイスラムは「非常に悪であり邪悪な宗教」と語ったが、今もなお撤回していない。
 ウィスコンシン州の連邦地裁判事は、全国祈祷日が、宗教的な行動を求めるのに等しいとして違憲判決を下している。


◎あのスーザン・ボイルさんが教皇の面前で歌う?

 【CJC=東京】スコットランド・カトリック教会は、突如有名になった美声の持ち主スーザン・ボイルさん(49)に、教皇ベネディクト16世がこの9月に英国を訪問する際に、面前で歌ってほしい、と願っている。グラスゴーで行われる公開ミサで歌ってもらえれば、と教会の報道担当が明らかにした。ただ正式な申し込みはまだしていないという。
ボイルさんは東部ブラックバーン出身。
 教皇は9月16〜19日に、グラスゴーのほか、ロンドン、コヴェントリーを訪問する。19世紀の神学者ジョン・ヘンリー・ニューマン枢機卿の列福も行う予定。


《短信》CJC通信Twitter速報から。

▽教皇ベネディクト16世は4月18日、グラナリ広場で屋外ミサを行い、性的虐待の被害者と接見、マルタの青年と会談した後、訪問を終え、ローマに空路帰着、バチカンに戻った。
▽「被爆マリア像」を携えた高見三明・カトリック長崎大司教ら平和を祈る巡礼団が21日、バチカンのサンピエトロ広場で行われた定例の一般接見に参列、教皇ベネディクト16世に核兵器廃絶に対する長崎の思いを伝えた。
▽米国の著名なクリスチャン・ミュージック・シンガー、ジェニファー・ナップは2001年に「ウエイ・アイ・アム」以来、活動を休止していたが、このほど復帰を発表、同時に同性愛であることを明らかにした。


《メディア展望》

  =カトリック新聞(4月25日)=https://www.cwjpn.com
★中国・青海地震=教皇、被災者のため祈る
★教皇 マルタ訪問=キリスト教信仰の固持促す
★高見大司教、国連へ=5月3日、事務総長と会談
★取り壊しまでを撮影=写真集完成=被爆した旧・浦上天主堂
★バチカン、非難報道に対応=手続き公開=性的虐待の調査手順・審理方法・罰則など

  =キリスト新聞(4月24日)=https://www.kirishin.com
★新潮社の雑誌「考える人」が特集="はじめて読む聖書"
★「反戦・平和」で積極的に行動 カトリック・井上ひさしさん死去
★椎名麟三の「たねの会」50年=記念礼拝で三枝禮三氏が説教
★日本カトリック映画賞に『風のかたち』 小児がんの子どもと家族描く
★「トリノの聖骸布」公開=150万人が参観予約

  =クリスチャン新聞(4月25日)=https://jpnews.org
★「新改訳聖書」2016年に全面改定=ロードマップ、翻訳理念、編集委員15人を公表
★ANRC10=海外から日本の教会へ=キーワードは「人」
★舟喜順一氏逝く=「新改訳聖書」編集を主導=聖書同盟、聖書神学舎を設立
★同盟基督総会=女性教職に門戸広く=新理事長に安藤能成氏
★東京基督教大学=新体制で初の入学式=3年次編入の「教会教職課程」に16人


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