世界キリスト教情報

世界キリスト教情報

世界キリスト教情報 第1004信(2010.04.19)

  • 米ソが新核軍縮条約に調印、キリスト教界は歓迎
  • アジア・キリスト教協議会、クアラルンプールで総会
  • アジア・キリスト教協議会次期総幹事にフタバラト=レバン氏
  • エジプトでキリスト者少女にも迫害の火
  • 教皇、マルタを司牧訪問
  • 教皇、マルタで性的虐待の被害者を接見
  • ノルウェーの司教辞任も性的虐待が原因とバチカン確認
  • 解散から40年、バチカン機関紙がビートルズを称賛
  • リオデジャネイロのキリスト像に落書き
  • 《短信》
  • 《メディア展望》

◎米ソが新核軍縮条約に調印、キリスト教界は歓迎

 【CJC=東京】バラク・オバマ米大統領とロシアのドミトリー・メドベージェフ大統領はチェコの首都プラハで4月8日、戦略核兵器の配備数を初めて制限した第1次戦略兵器削減条約(START1、昨年12月失効)に代わる核軍縮条約「新START」に調印した。
 両国議会での批准を経て発効すると、7年以内に配備戦略核弾頭数をそれぞれ1550に制限することになる。
 キリスト教界は調印に早速歓迎の意向を表明している。
 バチカン(ローマ教皇庁)の機関紙『ロッセルバトレ・ロマノ』も条約は「冷戦の論理を覆すもの」と称賛した。
 世界教会協議会(WCC)のオラフ・フィクセ・トゥヴェイト総幹事は、調印は長く待ち望んでいたニュースだと語った。


◎アジア・キリスト教協議会、クアラルンプールで総会

 【クアラルンプール=ENI・CJC】アジア・キリスト教協議会(CCA)第13回総会が4月14〜21日、マレーシアの首都クアラルンプールで開催された。「預言、和解、癒しへ召されて」をテーマに開かれた総会にはアジアの教会指導者や来賓380人以上が参加した。
 プラワテ・キダルン総幹事は今回総会のテーマを、「政治・経済、民族、性、宗教、信仰、文化伝統などをめぐる根の深い違いが運命共同体を形成するのを妨げている」ことを意識して決めた、と語った。このテーマが、アジアの人たちの「正義、平和、持続可能な社会を求める叫び」について総会議員たちが語ることへの助けになるよう期待し祈る、と言う。
 同協議会はアジア各国100教派、各地域の16教会協議会で構成されている。総会では討議のほか、聖書研究、礼拝、証し、講演なども行われる。
 マレーシアが今回総会の会場に選ばれたことに、同国教会協議会のトーマス・フィリップス牧師とヘルマン・シャストリ牧師は「マレーシアはアジアのミクロコスモス(小宇宙)だから」と共同声明で述べている。マレーシアの歴史はアジアの偉大な文明・文化の影響を受けている。またマレーシアが「西と東アジアの出会う所」であったとし、またマレーシアが「本当にアジア」であることを示す文化的宗教的遺産が豊かにあることを両氏は挙げている。


◎アジア・キリスト教協議会次期総幹事にフタバラト=レバン氏

 【クアラルンプール=ENI・CJC】アジア・キリスト教協議会(CCA)総会は4月15日、次期総幹事にインドネシア・スラウェシのヘンリエッテ・タビタ・フタバラト=レバン牧師を選出した。同協議会総幹事としては初めての女性。
 同氏は、世界で最も人口の多いアジアで「社会においてだけでなく、私たちの教会の中でも」傷を癒す手助けをしたい、として「今のような時に兄弟姉妹として、私たちは『預言、和解、癒しへ召されて』いる、と総会のテーマを引用して語った。
 フタバラト=レバン氏は、牧師の家庭に生まれ、1992年、聖職につき、以後は、世界改革教会連盟副議長、世界教会協議会とローマ・カトリック教会の合同作業グループのメンバーなど指導的立場についている。
 来賓として参加した世界教会協議会のオラフ・フィクセ・トゥベイト総幹事は、CCA総会は「アジア諸教会の共通の道のりの中の道しるべ」であったとして、フタバラト=レバン氏の選出はエキュメニカル(教会一致の)運動で、新たな重要な節目であり、「あなたとその仲間と協力し同僚の関係をきづきたい、そしてそれぞれの仕事と役割について相互に支援する道を探りたい」と語った。
 世界改革教会連盟のセトリ・ニョミ総幹事は「フタバラト=レバン氏の指導力と地球規模のエキュメニズムへの深い関わりによって大いに助けられている。彼女の新たな役割に歓迎の意を表したい」と語った。
 フタバラト=レバン氏は、プラワテ・キダルン総幹事が10月に退任するのを受けて、11月にタイ北部チェンマイにあるCCA事務所に着任する。


◎エジプトでキリスト者少女にも迫害の火

 【CJC=東京】『アッシリア国際通信』によると、エジプトでイスラム教からコプト教(キリスト教)に改宗した人たちへの迫害が続いている。
 3月末、隠れ家から水を求めて出て来た15歳の少女ディナ・エルゴーハリさんが強酸性の物質を掛けられ上着が燃えた。父親のマヘル・エルゴーハリ氏は35年前にキリスト教に改宗している。
 イスラム教では背教者に「血を流す」ことを求めており、それは死を意味しているという。そのため一家は頻繁に居所を変え、友人が食糧を提供して来た。
 ディナさんは、ホスニー・ムバラク大統領に宛て、最近生まれの孫娘に対する大統領の愛情に触れて、「あなたの孫娘が私のような状態で暮らすことを受け入れますか。私は教会に行く時、通りに出るだけでも、いつも恐れています。私には友だちもいませんし、教育も受けられないのです」と書き送った。
 米国のバラク・オバマ大統領にも訴えた。ムバラク大統領からは返事がまだ来ていないが、オバマ大統領は反応した。一家は、エジプトで米国の国際宗教自由委員会の関係者と接触、米国への亡命を要請した。
 エジプトの裁判所は、身分証明書の宗教欄の変更とピーター・アタナシウスという洗礼名の記載要請を拒否した。
 『アッシリア国際通信』によると、裁判所は、イスラム教徒の改宗はイスラム・シャリア法に違反し、エジプトでは「公共の秩序」を危うくする、と判示している。


◎教皇、マルタを司牧訪問

 【CJC=東京】教皇ベネディクト16世は83歳の誕生日を迎えた翌4月17日、マルタ共和国を司牧訪問した。教皇は、同日夕、ルクア国際空港に到着、ジョージ・アベーラ大統領らが出迎えた。
 2日間のマルタ共和国滞在で、教皇は首都ヴァレッタでの大統領との会見、ラバトの聖パウロ教会訪問、フロリアーナで市民参加のミサ、ヴァレッタでの若者たちとの出会いを行う。
 空港で行われた歓迎式で、教皇は使徒パウロのマルタ島での難破・上陸から1950年を記念する今回の巡礼を通し、人々の信仰を強め、共に祈りたいと語った。
 使徒パウロが逮捕されローマに護送される途中、船が暴風に襲われ、マルタに漂着、乗船していた人々が同島で手厚い歓迎を受けたエピソードは新約聖書・使徒言行録28章に記されている。
 教皇は東西南北の架け橋となるマルタの地理的・文化的役割を強調。移民問題をはじめ様々な重要問題において、寛容・相互理解の精神を役立てて欲しいと希望を表明した。
 教皇は19日で選出5周年を迎えた。


◎教皇、マルタで性的虐待の被害者を接見

 【バレッタ(マルタ)=ZENIT・CJC】教皇ベネディクト16世は4月18日、訪問先のマルタで、聖職者による性的虐待の被害者を接見した。バチカン(ローマ教皇庁)広報事務所が明らかにした。
 接見後に発表された声明は、接見が駐マルタ教皇庁使節館で行われ、教皇は「被害者とその家族が受けたことを聞いて深く感動し、自ら恥ずかしく思い、また悲しんでいることを表明した」と明らかにしている。「教皇は一緒に祈り、教会がやっていることを今後も続け、全力をあげて調査し、虐待の責任者に正義の下に置き、将来的に若い人たちを保護するように努める」という。
 13日には、マルタのパウル・クレモナ大司教が1980年代に虐待を受けた男性のグループと会見した。大司教は、被害者が事態を公表したことを称賛し、正義が行われなければならない、と確言した。現地紙『タイムズ・オブ・マルタ』が報じている。
 大司教はまた、事実を伝えるよりも教会への反対を人々に掻き立てている国際的なメディアの一部を非難した。


◎ノルウェーの司教辞任も性的虐待が原因とバチカン確認

 【バチカン市=ZENIT・CJC】バチカン(ローマ教皇庁)のフェデリコ・ロンバルディ神父(報道担当)は4月7日、ノルウェー・トロンハイムのゲオルグ・ミュラー司教が2009年1月に辞表を提出、6月に辞任した件について、当初理由が明らかにされていなかったが、「1990年代初め、児童に性的虐待を加えており、それを1月に教会当局が把握した」ためであることを確認した。
 問題が明らかになると、教理省の指示で敏速に調査が行われ、2009年5月、司教が辞表を提出、受け入れられたので6月辞任、教区を離れた。自身で治療を受け、その後は司牧活動は行っていない。被害者は今では成人しているが、氏名の公表は望んでいない、と言う。


◎解散から40年、バチカン機関紙がビートルズを称賛

 【CJC=東京】全世界で最も知られたロック・バンド『ビートルズ』を、バチカン機関紙『ロッセルバトレ・ロマノ』が「美しい」音楽、と称賛した。
 薬物使用や豪勢な生活ぶりには目をつぶった形。ジョン・レノンが1966年に、ビートルズは「キリストより人気がある」と言い、キリスト教は死に掛かっていると示唆してカトリック教会を怒らせてから40年以上が経過した。
 同紙は1面トップに、「ビートルズのメンバーは麻薬に手を出し、自分たちはキリストより偉大だと言い、悪魔的ともいえる不可解なメッセージを生み出しもした。決して、若者の最高のお手本ではなかった」としながらも、「しかし、彼らの美しいメロディは音楽に大きな影響を与え、今も人々を楽しませている」と指摘した。「ビートルズがなかったら、ポップ・ミュージックの歴史も変わっていただろう」と前向きの評価。
 今なぜビートルズなのか、アイルランド教会聖職者による性的虐待スキャンダル以来、バチカン(ローマ教皇庁)の対応に批判が強まる中でのビートルズ称賛には、「虐待問題より先にビートルズが出てくるのはおかしい」と、不審の声も上がっている。
 同紙は2008年にも、ジョン・レノンの発言について、「英国の労働者階級出身の若者がエルヴィス・プレスリーの時代に成長し、予想外の成功を手にしただけ」と、事実上容認する記事を掲載している。
 一方、ドラムスのリンゴ・スターは「バチカンは悪魔的だと言ったじゃないか。それでも許すと言うのかい。バチカンはビートルズよりおしゃべりだと思うよ」とそっけない。


◎リオデジャネイロのキリスト像に落書き

 【CJC=東京】ブラジル・リオデジャネイロのコルコバードの丘にある巨大なキリスト像に、暴力行為や未解決犯罪が多いことについて批判する内容が黒いスプレーで落書きされているのが見つかった。
 ほかにも「鬼の居ぬ間に洗濯」の意味の「ネコがいなくなるとネズミたちが遊び出す」との落書きもあった。
 コルコバードの丘は、ブラジルを襲った集中豪雨で異例の全面閉鎖となっていたため、その間に落書きされたようだ。4月16日、落書きを消す清掃作業が行われた。
 キリスト像は1931年にブラジル独立100周年を記念して建てられた。高さ30メートル、左右28メートル。日没後はライトアップされて、リオデジャネイロの名物になっており、2007年7月には新・世界七不思議の一つに選ばれている。


《短信》CJC通信Twitter速報から。

▽フィリピン司教団が、ヘルスワーカー43人が2月に逮捕されたままになっていることに、違法で人権と市民の自由侵害、と批判した。
▽インド・ルーテル教会指導者の神学者クンチャラ・ラジャラトナム氏(89)が4月7日、チェンナイで死去した。 
▽バグダッドで4月3日、キリスト者がオーナーの酒販店で爆破事件があり、店主ら3人が死んだ。
▽カトリックが優勢なドイツ南部で教会を離れる人が急増している、と現地紙報道。
▽スウェーデン教会(ルーテル派)が女性を聖職に初めて叙階してから50周年を記念している。
▽米国の民権運動指導者ベンジャミン・ローソン・フックス牧師(85)が4月15日死去。


《メディア展望》

  =カトリック新聞(4月18日)=https://www.cwjpn.com
★東京教区=幼稚園連盟が発足=園同士のつながり深めるため=新入教職員研修会開く
★バチカン紙が称賛=米ロ新核軍縮条約
★宣教に向けた共同体へ=活性化目指し続く=鹿児島教区の試み
★サッカー通じて現地学習=信徒宣教者会=上智大生などカンボジアで
★日本カトリック女性団体連盟=「いのちを守る運動基金」10年目

  =キリスト新聞(4月17日)=https://www.kirishin.com
★都教委=新たに4人を懲戒処分=卒業式の「君が代」不起立・伴奏拒否で
★"沖縄をまただますな"=普天間基地=県外移設求め国会前で座り込み
★東京・町田=「しゅろの葉パレード」に130人="イースター知ってほしい"
★英語なら無料で読める=リバイバル・ジャパン=購読者がサイト開設
★中国の国家宗教事務局長が香港訪問=「家の教会」登録の必要強調

  =クリスチャン新聞(4月18日)=https://jpnews.org
★祈祷課題は「日本代表」=サッカースクール・エスペランサからプロ誕生か=古川頌久さん
★米ゾンダーバン社=キリスト教書千点を「iPad」に
★聖職者の性虐待で揺れるバチカン=隠蔽疑惑=教皇にも火の粉=アイルランド・ドイツ・アメリカ
★日本の礼拝には日本語で=作曲家、オルガニストらが定例創作の集い=「賛美歌工房」発足
★裁判員制度、キリスト教会だからできること=NCC・カトリック対話集会で討議


           ●世界キリスト教情報●ご案内
 ☆速報をTwitterで発信しています ............ https://twitter.com/cjcpress/
 ☆活動紹介・購読(無料)お申し込みは
        ........................... https://homepage3.nifty.com/cjc-skj/
 ☆既刊号をご覧頂くには ..............................
             (閲覧用) https://blog.livedoor.jp/skjweekly/ 
             (転載用、非整形) https://cjcskj.exblog.jp/
 ☆記事検索は『教会と神学』(小原克博氏制作)をご利用ください
            ........................... https://www.kohara.ac/church/

月別の記事一覧