世界キリスト教情報

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世界キリスト教情報 第997信(2010.03.01)

  • チリ大地震で被害拡大、活動急き立てられる国際援助機関
  • ドイツ福音教会のマルゴット・ケースマン議長、飲酒運転で辞任
  • オーストラリア聖公会内に、教皇の呼びかけに呼応する動き
  • カンタベリー大主教がヨルダン訪問、教会建設に礎石置く
  • ヨルダン国王、カンタベリー大主教にイスラエルへの懸念示す
  • アフリカでは教会成長に携帯電話を活用
  • ソロモン王の城壁跡を発掘、とイスラエルの考古学者
  • インドの教科書にタバコと缶ビール持つキリストの絵
  • エルトン・ジョンが「イエスはゲイだった」と発言
  • 《短信》
  • 《メディア展望》

◎チリ大地震で被害拡大、活動急き立てられる国際援助機関

 【CJC=東京】南米チリを2月27日襲ったマグニチュード(M)8・8の大地震で、同国のバチェレ大統領は28日、死者が708人に達したと述べた。チリ政府は、地震で影響を受けた人は200万人に上るとしているが、死者や倒壊家屋など被害の全容把握にはさらに時間がかかる可能性がある。地震発生後24時間で、M5以上の余震が90回以上発生している。
 ハイチに次ぐ大地震被害に、救援団体も対応に追われている。赤十字国際委員会のような大組織は、今でも多数の現場で救援活動を行っており、対応を進めている。ハイチでも活躍している『国境なき医師団』(MSF)は、既に緊急チームをチリに派遣した。
 世界教会協議会(WCC)系の援助組織連合『ACT』(教会一致行動)は加盟団体の『教会世界奉仕』(CWS)が緊急援助と復興作業に取り組んでいる。CWSはこれまでもチリで緊急準備訓練などを行って来た。現地組織『フンダシオン・デ・アユダ・ソシアル・デス・ラス・イグレシア・クリスチアナス』やチリ・メソジスト教会と協力して、食料、飲用水、シェルターなどを提供している。
 カトリック教会系の救援組織『国際カリタス』は、調査・救援チームをハイチからチリへ派遣した。バチカンにある本部は、現地の『カリタス・チリ』との接触を試みているが、電話網が破壊されて、連絡がつかない。
 人道援助担当のアリステア・ダットン氏は、ハイチのポルトープランスからメキシコのカンクンに向かい、メキシコの調査・救援チームと共にリマで『カリタス・ペルー』のスタッフと合流、陸路チリに向かうことにした。


◎ドイツ福音教会のマルゴット・ケースマン議長、飲酒運転で辞任

 【CJC=東京】ドイツ福音教会(EKD、信徒2400万人)議長のマルゴット・ケースマン監督(51)が2月24日、ハノーバーで記者会見し、辞任を発表した。「私は重大な過ちを犯したことを深く後悔する」と語る姿が全国にテレビ中継された。
 同氏は昨年10月、福音教会の指導者に選ばれた初の女性。新年礼拝の説教で、アフガニスタンからの撤兵を主張するなど、その率直な発言も含めて大きな期待を寄せられていた。ところが20日、ハノーバーで信号無視して警察の取り調べを受けたが、その際、基準0・05%の3倍もの0・154%のアルコールが血液から検出され、飲酒運転と判断された。
 0・11%を超える血中アルコール濃度は、ドイツでは犯罪と見なされるところから、ハノーバー検察が取り調べている。報酬1カ月分もの罰金と1年未満の運転免許取り消しが課せられることになろう。
 「私は重大な過ちを犯したことを深く後悔する。私の心は非常に明確に、必要な権威を維持して職に留まることは出来ない、とわたしの心がはっきり語っている。これから以後、倫理的、政治的課題で自由に発言出来なくなった」と、ケースマン氏は記者会見で語った。
 ケースマン氏は福音教会議長とルーテル教会ハノーバー監督を共に辞任するが、聖職には留まる意向。
 アンゲラ・メルケル首相は、ケースマン氏の決定を、「敬意と遺憾」と共に受け止めた、と語った。そしてこれまで監督として評価される活動をして来た、と付け加えた。


◎オーストラリア聖公会内に、教皇の呼びかけに呼応する動き

 【CJC=東京】オーストラリア聖公会内の保守派グループ『フォワード・イン・フェイス』がメルボルンで2月13日、聖公会に属しているままでカトリック教会と完全相互聖餐に入れる、という教皇ベネディクト16世の招きを受け入れることを決めた。今後、活動推進のため作業グループを設置することにした。
 『フォワード・イン・フェイス』は『伝統的アングリカン・コミュニオン』と呼ばれる国際的なアングロ・カトリック集団のメンバーが主体。
 教皇の招請に、誰が応じるが注目されていた中で、最初に名乗りを上げたもの。


◎カンタベリー大主教がヨルダン訪問、教会建設に礎石置く

 【CJC=東京】カンタベリー大主教ローワン・ウイリアムズ氏がヨルダンを訪問。2月20日、ヨルダン渓谷の、イエスが洗礼受けたとされる場所でミサを執行した。
 大主教は、『洗礼者ヨハネ聖公会』教会建設の礎石を置いたが、その際「聖地でのキリスト者の存在が薄くなっている」ことに懸念を表明した。
 教会敷地はヨルダンのアブドゥラ国王から寄進された。


◎ヨルダン国王、カンタベリー大主教にイスラエルへの懸念示す

 【CJC=東京】ヨルダンのアブドラ国王は2月17日、カンタベリー大主教に、イスラエルが東エルサレムから、イスラム教徒とキリスト者を退去させようとしている、と警告した。
 国王はまた、パレスチナ自治政府の領域内にあるユダヤ教以外の聖地を保護するために動く、と語った。ヨルダンは、1967年のいわゆる「6日戦争」でヨルダン川西岸地区がイスラエルに占領される前に、イスラム教以外の聖地を閉鎖している。
 アブドラ国王はさらに、西側の教会は、中東の和平努力支持に重要な役割を果たせる、と語った。ヨルダン渓谷のイエスが洗礼を受けたとされる場所の一部が聖公会のために提供された。


◎アフリカでは教会成長に携帯電話を活用

 【CJC=東京】10年ほど前、携帯電話が急速に普及し始めたアフリカで、教会関係者は「物質中心主義の象徴」として否定的だったが、あまりの普及ぶりに、教会成長に活用出来ないかと考えるようになった、とENI通信が報じている。 「あたかも携帯電話が何でも、キリスト教さえも革命的に変えてしまうようだ」とケニア聖公会ニャフルル教区のチャールス・ガイタ主教。教会にとって、聖書研究や集会などの活動を伝えるのに、手軽で安くなった、と言う。


◎ソロモン王の城壁跡を発掘、とイスラエルの考古学者

 【CJC=東京】イスラエルの考古学者エイラート・マザル氏が、エルサレムで3000年前、ソロモン王によって建設された可能性のある城壁跡を発掘した、と発表した。出土した陶器の破片が、城壁を紀元前10世紀のものと結論付けたと言う。
 同氏の主張が正しければ、発掘結果はエルサレムに強力な中央政権が存立していたことを示唆する。城壁建設には莫大な資材と、それを実施出来るだけの組織が必要だ。
 マザル氏は、ダビデ王やソロモン王を当時の統治者として存在したと見るが、ダビデ王朝は神話だとする学者もいる。マザル氏は、今回の出土は、ダビデとソロモンがエルサレム支配したという聖書の記述を裏付けるもの、としている。


◎インドの教科書にタバコと缶ビール持つキリストの絵

 【CJC=東京】キリスト者が多いインド北東部メガラヤ州の小学校が使用している教科書の中に、タバコを吸い、缶ビールを飲むイエス・キリストのイラストが使われていたことが分かり、反発の声があがっている。
 問題の教科書は、教会運営の小学校で、書写の授業に使われていた。AFP通信によると、このタバコとビールのイエス像のほか、アルファベットの「I(アイ)」を教える箇所では「アイドル(偶像)のアイ」と教えている。
 版元『スカイライン・パブリケーションズ』のインデル・モハン・ジャ社長は、本のレイアウトと内容を担当したデザイン事務所によるミスだったと述べ、「彼らがインターネットからこの画像を取ってきたとみられる」と語った。
 裁判所は、宗教的感情を侵害したとしてジャ氏の逮捕状を発行した。カトリック教会は同社の教科書すべての使用を禁じ、またプロテスタントの指導者たちは公式謝罪を要求している。
 ジャ社長によれば、問題の教科書200冊は昨年12月に配布された。スカイライン社は4カ月前に設立されたばかり。同社は問題の教科書すべての無料回収を行っているという。


◎エルトン・ジョンが「イエスはゲイだった」と発言

 【CJC=東京】英国のピアニスト、シンガーソングライターのエルトン・ジョンが米誌『パレード』とのインタビューで「イエス・キリストはゲイだった」と発言したというので、話題になっている。
 エルトンは、「イエスは人類の問題を理解していた、慈悲深く、ものすごく頭のいいゲイだったと思う」と語ったが、これには教会やキリスト教団体から抗議の声が上がっている。
 エルトンはその後、「何を信じるかは人それぞれだ。僕はイエスを信じている。なぜ怒りを買うのかわからない。『彼が絶対そうだった』と言ったわけではなく、個人的にそう考えているだけだ」と釈明した。
 エルトンは、全世界で2億枚以上のレコード売り上げを記録、世界で最も成功した男性ソロ・アーティストの1人とされている。


《短信》CJC通信Twitter速報から。

▽庭野平和財団は、2010年の庭野平和賞を、インドで女性自立のために活動しているエラ・ラメシュ・バット氏に授賞する、と24日発表した。
▽韓国憲法裁は26日、死刑を合憲と判示した。カトリック司教会議死刑廃止委員会の金亨泰委員長(弁護士)は、今回の判示を時代遅れで世界の動向に逆行している、と語った。
▽独カトリック教会司教会議は25日、司祭などの性的虐待問題に、具体的な対策4点を示した。
▽英紙デイリー・テレグラフによると、教皇ベネディクト16世は、空港での乗客検査に全身スキャナーを使うことに反対、「人間の尊厳は守られなければならない」と語った。
▽南ア最大の改革派教会が、スタッフの作成した「つぶやき教会」に問題があるとして調査することにした。


《メディア展望》

  =カトリック新聞(2月28日)=https://www.cwjpn.com
★2009年度臨時司教総会=高山右近、列福申請へ=新会長に池長大司教
★マザー・テレサ映画祭=一般客の人気衰えず=アンコール上映も決定=深い信念、行動する姿に感銘
★横浜=信仰生活、詩編で豊かに=教区典礼委が春期研修会
★FABC福音宣教局=信徒宣教団体集う=タイ・パタヤ=アジア初の会議開催
★イラク北部で続く殺害=信徒ら「パニック状態」=現地の大司教語る
★上智、泰星 協定結ぶ=提携強化 校名変更も

  =キリスト新聞(2月27日)=https://www.kirishin.com
★2・11=「信教の自由」どう守る? 今後に課題も=上原・前国立市長「まきこまれる側」の責任問う
★「日の丸・君が代」強制に反対する"祈りの会"=「超教派キリスト者の会」として始動
★日基教団=未受洗者配餐で北村慈郎牧師へ=史上初の「免職」戒規適用
★雑誌「pen」が特集="キリスト教とは何か。"=「初心者にもわかる言葉で」
★教会と国家学会=民主党 土肥・今野両議員が出席="進まない改革"にもどかしさも
★院内集会でNGO団体関係者=「ガザ紛争」めぐり意見交換

  =クリスチャン新聞(2月28日)=https://jpnews.org
★教育基本法に大幅修正可能=「教会と国家学会」で新政権の方向語る
★南ア癒した「許しと和解」=マンデラの信念描く映画「インビクタス」
★2・11各地で「信教の自由を守る」集会
★日本バプテスト教会連合=教会ネットワーク築く=地域ごとの主体性重視
★米国家朝餐祈祷会でオバマ大統領スピーチ=「民主主義には信仰と隣人愛が必要」
★準強姦罪で立件=卞容疑者を起訴


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