世界キリスト教情報

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世界キリスト教情報 第996信(2010.02.22)

  • キャスパー枢機卿が『エキュメニカル・カテキズム』構想語る
  • カンタベリー大主教がアングリカン世界の混乱認める
  • カトリック信徒は11億6600万人、教皇庁年鑑
  • メキシコで最初の悪魔ばらい教会が完成
  • 「世界最高」の礼拝堂がスペインで献堂
  • モロッコ当局が聖書研究の現場に手入れ、18人拘束
  • シンガポールで牧師が仏教侮辱容疑で治安局に呼ばれる
  • メノナイト派の米ゴシェン・カレッジが国歌への姿勢転換
  • 中国地下カトリック教会の指導者ワン・チョンリン司教死去
  • 《短信》
  • 《メディア展望》

◎キャスパー枢機卿が『エキュメニカル・カテキズム』構想語る

 【CJC=東京】バチカン(ローマ教皇庁)のキリスト教一致評議会議長のワルター・キャスパー枢機卿は、英国国教会、ルター派、メソジスト、改革派などとの40年に及ぶ対話から生み出せる「果実」の一つとして、『エキュメニカル・カテキズム』を作れないかという構想を明らかにした。
 2月8日から3日間行われたエキュメニズムに関するシンポジウムの開会に当たり語ったもの。「わたしたちは、共通の信条と最初の公会議で示された教義で明らかにされたイエス・キリストと三位一体を共通の基盤である、と確信して来た」と言う。
 枢機卿は、「エキュメニカル・カテキズムは討議しながら仕上げることになろうが、どのような構成になるか、など何かアイデアがあるわけではない」と語った。確かなことは、キリストへの帰依と諸信条への信仰の「共通の基盤を明確にし、強め、深める基礎的なエキュメニズム」が必要だ、と言う。
 各教会が支持を明らかにしても、その教会員がキリスト教信仰の基盤に固く立たなければ、対話は前進出来ない、と枢機卿は述べた。
 枢機卿はさらにエキュメニカルな対話が、専門家の問題になり、草の根から離れてしまっている、と指摘、神学的対話を支持し、新たなエネルギーを与える「人間中心のエキュメニズム」を呼び掛けている。
 今回のシンポジウムは、40年にわたる聖公会共同体、ルーテル世界連盟、世界メソジスト評議会、世界改革教会連盟などとカトリック教会との公式対話の結果を同枢機卿らがまとめ、昨年10月に刊行した『果物の収穫』に続くものとして開催された。


◎カンタベリー大主教がアングリカン世界の混乱認める

 【CJC=東京】アングリカン・コミュニオン(聖公会共同体)の現状は「カオス=地域で分裂、外部で介入」と、カンタベリー大主教ローワン・ウィリアムズ氏は、同性愛行為、自殺ほう助、女性司教叙階などについての教義上の違いがあるただ中で一致を要請した。
 「教会でのLGBT(女性同性愛者、男性同性愛者、両性愛者、トランスジェンダーの人々の総称)の位置や召命に関する議論で、ゲイやレズビアン指向のある礼拝者、またそのような指向を持つ犠牲的、模範的な聖職者もいるという既定事実を否定しては意味がない」と言う。
 「これら人間の現実を無視するか過小評価するような問題についての言い方で批判されているが、そのような印象を与えかねなかった不注意は申し訳なかった。同様に、自殺ほう助をめぐる議論もさまざまで、それを支持する人を優生学や強制的安楽死の熱烈な支持者とするような、また反対する人を理念的な純粋さのために普通の人間の同情を犠牲にする、冷酷なサディストとするような、言い方があるのだ」と大主教は述べている。
 「このことを通じて、さまざまな自由のバランス感覚を回復する必要がある」と言う。
 大主教は呼び掛けを「3次元性」と結論づけている。3次元で何かを見ることは、一度に全部は見られないものを見ることとし、眼前にあるものだけが、この特別な瞬間に見る表面ではない、と指摘している。


◎カトリック信徒は11億6600万人、教皇庁年鑑

 【CJC=東京】カトリック教徒の数は2007年から08年に掛けて世界中で1900万人増加した。『教皇庁年鑑』10年版が報じた。同年鑑は2月20日、タルチジオ・ベルトーネ国務長官から教皇ベネディクト16世に献呈された。
 08年、洗礼を受けたカトリック信徒は11億6600万人で、全人口の17・4%を占めている。
 全世界の司教は5002人で1・13増。司祭は2000年の40万5178人から08年には40万9166人に。内訳は47%強が欧州、米大陸30%、アジア13・2%、アフリカ8・7%、大洋州1・2%。2000年には欧州の司祭は51・5%を占めていた。
 神学生は07年の11万5919人から08年は11万7024人に増加した。アフリカ、アジア、太平洋で増加、欧州は4・3%減、アメリカは横ばい。


◎メキシコで最初の悪魔ばらい教会が完成

 【CJC=東京】メキシコ・カトリック教会が首都メキシコ市西北方のケレタロで初めて悪魔ばらいを行う教会『ラ・カピラ・デ・ラス・ベンディータス・アニマス・デル・プルガトリオ』を2月7日発足させた。
 悪魔払いは、16世紀にスペイン人が到来する前からメキシコでは行われていた。現在、メキシコ全土でどの程度行われているのか、は分からないが、メキシコ市だけで月に10件ほど行われ、増加傾向にあるという。
 地元のロゲリオ・カノ神父は、悪魔祓いを行うのは、精神科医などによる治療を受けている人にだけだ、と語った。


◎「世界最高」の礼拝堂がスペインで献堂

 【CJC=東京】スペイン司教会議のアントニオ・マリア・ルーコ・バレラ会長(枢機卿)がマドリッドのビジネス街に建つ57階高層ビルの33階に献堂された教会を2月8日祝福した。同枢機卿は、建設会社ヴィラミール社の関係者と、ビルの従業員と一緒にミサを行った。
 礼拝堂は、工事中のロザリオの祈りのために集まった建設作業者の要請に基づいて設立された。マドリッド大司教区は、礼拝堂建設の間の指針を定め、永続することを条件に、聖体拝領を行うことを認めた。さらに毎日礼拝堂を訪れる人たちの霊的な要請に応える司祭を任命した。
 礼拝堂から眺めるマドリッドの情景もすばらしいという。


◎モロッコ当局が聖書研究の現場に手入れ、18人拘束

 【CJC=東京】モロッコ第3の都市マラケシュ南東のアミズミズのキリスト者宅で2月4日、聖書研究の現場に保安部隊約60人が、手入れを行ない、18人を14時間にわたって拘束、米国籍の1人を国外退去処分とした。
 聖書研究には、モロッコ西部と南部からキリスト者が参加していた、とコンパス・ダイレクト・ニュースが報じている。
 拘束された中の2人は生後6カ月以内、他にも4歳以下の幼児がいたという。また国外退去処分を受けたのは参加者の甥で16歳だという。


◎シンガポールで牧師が仏教侮辱容疑で治安局に呼ばれる

 【CJC=東京】シンガポールの情報をネットなどで提供している『アジアエックス』によると、信徒数1万2000人の単立キリスト教会『ライトハウス・エバンジェリズム』が、仏教に対し無神経な発言を含んだビデオをホームページに掲載したとの苦情を受け、国内治安局(ISD)が同教会のロニー・タン牧師を呼び出した。
 発言は不適切との指摘を受け、タン牧師はホームページに「仏教、道教に対する無神経な発言を謝罪する。ほかの信仰をばかにするようなことは二度とない」との声明を掲載した。
 宗教調和維持法では、自分が信仰する以外の宗教に対する無神経な発言を禁止している。


◎メノナイト派の米ゴシェン・カレッジが国歌への姿勢転換

 【CJC=東京】米インジアナ州のゴシェン・カレッジが、学校の歴史の中では初めて、国歌「星条旗よ永遠なれ」の演奏を認めることにした。
 学生が1000人規模の大学で国歌演奏禁止を転換する決定は、メノナイト以外の学生や訪問者に歓迎されているという感じを持たせる目的があるが、一方で国歌は教会の平和主義というメッセージを損ない、国への愛を神への愛より上に置くものだと感じさせる混乱も生じている。
 ジム・ブレネマン学長がこの1月に姿勢転換を発表以来、反対の声が巻き起こり、ネット上のフェイスブック・グループ「ゴシェン大学国歌演奏反対」には約900人が参加、電子請願にも数役人が署名、理事会にも抗議が寄せられている。大学新聞も転換反対の投書が圧倒的。
 同大学の歴史学教授ジョン・ロース氏は、歌詞が国を守るために戦争や軍隊を用いるとしているため、メノナイトは歴史的に国歌を回避して来た、として「国歌と国家の軍事的アイデンティティの間のつながりは非常に明確だ」と言う。
 ただ米メノナイト派では最大の『メノナイト教会USA』は国歌を具体的に禁止してはいない。
 AP通信によると、同大学関係者は、2008年9月に競技部門が学校の立場再考をブレネマン学長に求めたことから議論が始まった、と言う。ブレネマン学長は、スポーツ大会での国歌演奏はアメリカ文化の一部となっているのに、国歌を避けるということでチームは批判の矢面に立たされることが多いのだ、と語っている。


◎中国地下カトリック教会の指導者ワン・チョンリン司教死去

 【CJC=東京】中国地下カトリック教会の指導者、河北省石家荘市趙県のレイモンド・ワン・チョンリン司教が2月2日脳内出血で死去した。88歳。教皇への忠誠を理由に21年間、獄中にあった。1983年司教叙階、88年に中国政府から司教職を認められた。
 天津の司教座聖堂で8日行われた葬儀ミサには、司祭70人、信徒約1万人が参列した。埋葬にまで参加した信徒は2万人に上ったと見られる。


《短信》CJC通信Twitter速報から。

▽イラクでキリスト教会指導者協議会が設立。
▽教皇ベネディクト16世が4月17、18日にマルタを訪問する。バチカンが発表した。使徒パウロが難破して上陸してから1950周年に合わせた。
▽バチカンの生命アカデミー第16回総会が2月11日始まった。主題は「バイオエシックスと自然法」
▽米援助団体『クリスチャン・エイド・ミッション』がラオス政府に抑圧されているカチン族キリスト者のために緊急避難所を提供するための募金を開始した。
▽米テレビ伝道『ベニー・ヒン・ミニストリーズの主宰者ベニー・ヒン氏を相手取ってスザンヌ夫人が離婚を2月1日に申し立てた。
▽ハイチ再建に際し国連救援関係者は、ブードゥー教聖職者の協力を求めている。その実態が国外には知られていないものの、協力なしには救援が進まない、と判断した模様。
▽キューバのハバナで行われた国際ブックフェアに高さ1センチの聖書が「世界一小さな本」として出品された。


《メディア展望》

  =カトリック新聞(2月21日)=https://www.cwjpn.com
★教会と社会・正義=聖書と公文書から考える=正義と平和全国会議
★被爆マリア像「平和巡礼」へ=原爆65周年で4月に=スペイン ゲルニカ訪問=バチカン 教皇謁見も
★小さなことに無限の愛を=マザー・テレサの精神=共に働いた修道士が語る
★教育の充実図り 高校と大学が連携=京都ノートルダム女子大学・聖マリア女学院高等学校
★安らかに=白柳枢機卿=東京・府中墓地に
★巡礼ウォーク ついにゴール=高松教区・桜町教会の信徒ら、京都から長崎まで9年

  =キリスト新聞(2月20日)=https://www.kirishin.com
★"教会は癒しや慰め与えているか"=キリスト教カウンセリングセンターで窪寺氏講演=「スピリチュアリティ」の本質は...
★砂川政教分離訴訟 報告集会=支える会、弁護団が声明
★公開学習会=佐藤優氏「死刑制度」、「新政権」を語る="人道面での戦いが重要"
★チャイルド・ファンド・ジャパン=ネパールで4月から支援プログラム開始
★北朝鮮で拘束の米国人 ロバート・パク氏が釈放
★ドイツの実践神学者『説教学』など著作多数=R・ボーレン教授が死去

  =クリスチャン新聞(2月21日)=https://jpnews.org
★宣教課題は「心の不安」=教会の経験生かし企業メンタルケア
★TV伝道番組「ハーベスト・タイム」3月放送終了=再臨運動を展開へ=地デジ化で見切り、余力をリバイバルに
★全日本宣教祈祷運動が休止
★米南部キリスト教指導者会議にスキャンダル
★礼拝に持参するのは携帯端末=聖書でも賛美歌でもない...=韓国の信者が進化?★ハイチの対外負債免除を=WCC声明


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