世界キリスト教情報

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世界キリスト教情報 第995信(2010.02.15)

  • ハイチ救援の責任は誰が負う?
  • キリル総主教、カトリック教会への親近感示す
  • 英国国教会の保守派がカトリックとの一致へ動く
  • 陳日君氏、「自分を出し過ぎ」との伊誌批判に反論
  • ホロコーストのユダヤ人発明説は完全な誤解、とポーランドの司教
  • 英上院の主教議員をイエスは疑問視、と評論家
  • 米の左派ラジオ局が右派に太刀打ちできず閉鎖へ
  • 米誌がポルノ見られないホテルリスト掲載
  • 世界最古の修道院、エジプトで修復
  • 《短信》
  • 《メディア展望》

◎ハイチ救援の責任は誰が負う?

 【CJC=東京】ハイチ大地震の救援で、カトリック教会関係は調整役として『コルウヌム』(教皇庁開発援助促進評議会)が登場した。ただ本当にその権限があるのか、については疑問がないわけでなく、意外や援助の核心に触れ兼ねない問題をはらんでいる。
 1月12日の地震発生直後は、協力・調整なしに援助が行われ、混乱に拍車を掛ける結果になった。
 『コルウヌム』は14日、米国に本拠を置く『カトリック・リリーフ・サービス』(CRS)を、緊急事態へ応答するコーディネーターに指定した。「300人以上が長期間にわたりハイチで活躍しており、これまでの経験、専門知識や資材が役に立つ」と言う。
 この発表は、非常に多くの命が失われ、さらに多数の生命が危機にさらされている際に行われた。ただその意味は、カトリック教会の世界規模での救援や開発援助の核心に触れるものと見られる。
 CRSは国際カリタス(CI)の一枠を形成している。国際カリタスの援助・開発活動は、国際赤十字に次ぐ規模だ。
 カリタス・ハイチ、カリタス・スイスやフランスの同様組織『セクール・カトリック』などと共にCRSはハイチで永続的な支援活動を展開して来た。
 しかし『コルウヌム』のCRS「指名」は、国際カリタスとバチカン(ローマ教皇庁)との関係を取りざたされることとなった。そして何十年にわたってわだかまっていた傷を開いたと言える。
 各カリタスは延べ162人を投入しており、『コルウヌム』がなぜ『国際カリタス』を指名しなかったのか疑問を抱いている。『コルウヌム』は、2004年の津波被害救援ではこのような介入を行っていない。
 カリタス側の関係者は驚き、いらだちを隠さない人もいる。今回の決定になぜ事前にカリタス側と協議しなかったのか、疑問を抱いている。
 バチカンのフェデリコ・ロンバルディ報道担当は、英専門週刊誌『タブレット』に『コルウヌム』がCRSを選定したのは「他のカトリック援助団体も介入したいと考えており、国際カリタスに加盟していない所もあるからだ」と語っている。その意図は、救援活動を混乱させたくない、という所にあるのは確かではある。


◎キリル総主教、カトリック教会への親近感示す

 【CJC=東京】ロシア正教会のキリル総主教は2月2日、ロシア正教会とカトリック教会は、最近の社会問題について多くの場合、同じ立場に立っている、と語った。
 インターファクス通信によると、キリル総主教は、モスクワの救世主キリスト大聖堂で行われた主教会議の際に述べたもの。「わたしたちは、現代世界でキリスト者が直面する多くの問題で、同様な立場に立っている。攻撃的な世俗化、グローバリゼーション、伝統的な道徳原理の衰退などがそれだ。これらの問題で教皇ベネディクト16世が正教会に近い立場に立っていることを覚えなければならない」と言う。
 一方で総主教は、「プロテスタント各派との差は拡大している」と指摘した。最近、総主教は「ロシア教会は、キリスト教的遺産の保全についてプロテスタント側との協力が減っていると見る」がそれは「プロテスタント世界の自由化が激しい」からだ、と指摘する。
 総主教は、ドイツ福音教会のトップにマルゴット・ケスマン監督という女性を選出したことを特に取り上げている。


◎英国国教会の保守派がカトリックとの一致へ動く

 【CJC=東京】オーストラリアの英国国教会保守派で結成している『トラディショナル・アングリカン・コミュニオン』(TAC)首座ジョン・ヘツプワース大主教は、バチカン(ローマ教皇庁)との聖餐関係に入ることを目標に実質的に進展している、と1月27日語った。近くバチカン教理省関係者と会談するとし、その際カトリック教会への受け入れを要請する、と言う。
 「これはアングリカン・カトリックになることであって、ローマ・カトリックになることではない」。
 ヘツプワース大主教は、バチカンが聖公会の職制を認めないので、TACの主教、司祭は全員、カトリックの基準に照らして再叙階するとしている点に反対があることを認めた。「ただその壁は乗り越えなければならない。秘跡の有効性を保証するために、私たちは聖公会共同体を超えようとしていることを認識する必要がある。ローマも今同じ保証を求めているのだ」と述べている。


◎陳日君氏、「自分を出し過ぎ」との伊誌批判に反論

 【CJC=東京】イタリアのカトリック誌『30ジオルニ』が香港のジョセフ陳日君枢機卿を、教皇ベネディクト16世の2007年に中国本土のカトリック者に宛てた手紙の「通訳」であり「保証人」と自らを規定したとして非難した。
 また同誌は、保定の地下教会フランシス・アン・シュシン協働司教を強く擁護した。同司教は、公認教会とその並立組織『天主教愛国会』にも加入している。
 中国本土のカトリック者に宛てた教皇書簡は「燃え上がっている司牧上の問題」に関するものであることは明らかで、アン司教の決断に対する批判は、教皇書簡の幾つかの側面に対する「広範な抵抗」の象徴だと同誌は主張する。
 これに対し陳氏は、教皇書簡の通訳者としての役割への批判は「不公正」であり「根拠がない」と反論している。特に教皇書簡は明確さを欠いていると陳氏が語った、と同誌が指摘していることに「私はそんなことを決して言っていない」と強く反論した。
 陳氏が、『30ジオルニ』誌を不公正だとするのは、地下教会と公認教会との間の和解について教皇が述べたことに陳氏が反対した、と非難した点。「私は和解を完全に支持する。しかし中国政府の施策が変わったわけではないので、教皇が敷いた原則に従うことなしに急いで組織を統一することを懸念するのだ。私は個人的にはアン司教に深い敬意を持っている。彼はその信仰のために大きな苦難を背負ってきた」と陳氏は言う。
 ただ「彼に敬意を持つからと言っても、彼の判断を全部受け入れなければならないという意味ではない。それは問題が別だ」とアン司教の愛国会加入について語っている。


◎ホロコーストのユダヤ人発明説は完全な誤解、とポーランドの司教

 【CJC=東京】カトリック系CNA通信によると、ポーランド・ソスノヴィエツのタデウス・ピエロネク前補佐司教(75)は、ホロコースト(ユダヤ人大虐殺)を『ユダヤ人の発明』としたことを「完全な誤解だ」と否定した。イタリア語のウェブサイト『教皇』に掲出された内容は、意味を取り違えている、と釈明した。
 ジャーナリストが自分の発言を、あたかもそう言ったように解釈したのだ、と言う。


◎英上院の主教議員をイエスは疑問視、と評論家

 【CJC=東京】もしもイエスが今日いらっしゃったら、なぜ英国国教会は上院議員に主教を26人も任命しているのか、問うだろう、とキリスト教事情の評論家ジョナサン・バートリー氏が、労働党のヒューマニスト・グループが議会内で開催した討論会に出席して述べた。討論会自体が主教議員の排除を意図したもの。
 イングランド中部ライスターのティム・スティーブンス主教はENI通信に、上院は「議会のごまかし」に対する「とりで」なのだとして、主教議員は500年間にわたって英国の議会制度に貢献してきた、と語った。


◎米の左派ラジオ局が右派に太刀打ちできず閉鎖へ

 【CJC=東京】米国で保守的なラジオ局に対抗しようと6年前に設立された『エア・アメリカ』局が収入を確保出来ず閉鎖することになった。理事会は近く破産申請する、と発表した。
 メディア関係の専門家は、内容の問題というより、進歩的左派的なラジオ局を支える市場がないからだ、と見ている。


米誌がポルノ見られないホテルリスト掲載

 【CJC=東京】米誌ナショナル・ジオグラフィック・トラベラー1・2月号が、宿泊客にポルノ画像を提供しないホテルリストをネット上で提供している『クリーン・ホテルズ』を取り上げた。
 『クリーン・ホテルズ』を創設したフィル・バレス氏は、家族旅行やビジネスでの宿泊では、必要のないポルノを見なくてすむことは、自分を守ることになる、と言う。
 有料のポルノ番組は、米国のホテル業界に年間約5億ドル(約450億円)の収入をもたらしてはいるが、「子どもが部屋でボタンを2回押したら、見ることが出来る」危険を冒さなくてすむ、と、同誌は紹介している。


◎世界最古の修道院、エジプトで修復

 【CJC=東京】エジプト・スエズで、現存するものでは世界最古のキリスト教修道院『聖アントニウス』の修復が完了した。同修道院は1600年前に建設された、と推定されている。古代からの壁、塔、教会2カ所と修道士の宿舎などを修復した。
 英BBC放送によると、政府出資による修復計画では事業費約1400万ドル(約12億6000万円)、工事期間8年以上を掛けて完成した。
 修復計画は、10年前のクリスマスイブに、キリスト者6人が射殺される、宗派間抗争としては最悪の事件発生直後に打ち出された。
 エジプトでは著名な考古学者ザヒ・ハワス氏は、修道院の修復作業がイスラム教徒によって行われたことを強調した。エジプトでは大多数のイスラム教徒と少数派コプト教徒との共存の象徴になれば、との期待もかかっている。
 3世紀末、聖アントニウスは、孤独に生活するため、紅海近くの山岳地帯にある洞穴にこもった。その死後、弟子たちは、修道院を建設し、彼の名を付けた。


《短信》CJC通信Twitter速報から

▽イランでは昨年来キリスト者への抑圧が進んでおり、米CDN通信によると、14人以上が数週間も取り調べのないまま拘留されている。
▽第二次大戦下、教皇ピオ12世治下のバチカン関係の文書1600万点を整理して学者などに公開するには5年必要だ、とセルジオ・パガン司教が伊メッサジェロ紙に語った。(CNA)
▽バチカンが、世界有数の規模の太陽光発電所建設を計画している。ローマ郊外に出力100メガワットの発電所を建設し、2014年前後の稼働を目指す。
▽同性愛者をカトリック教会の聖職者として受け入れなければならなくなる、として教皇ベネディクト16世が英国の新法案を批判したことに、英国で議論が巻き起こっている。英国とウェールズのカトリック司教35人がバチカンを訪問、教皇と接見した際に教皇が述べたもの。(CNN)
▽教皇ヨハネ・パウロ二世に関する新著作が1月27日、イタリアで発行されたが、1981年の射殺未遂事件の直前に過激派『赤い旅団』が教皇誘拐を計画していたことが記載されている。(ENI)
▽仏カトリック教会は2月1日、イスラム教徒の女性が顔全面を覆うベールの使用を禁止する政策に反対を表明した。イスラム教が優勢な国で少数派のキリスト者への権利擁護と同格の問題だ、としている。宗教間対話問題を担当するミシェル・サンティエ司教が語った。
▽北アイルランドの第1党、民主統一党(プロテスタント系)と第2党のシン・フェイン党(カトリック系)が、警察・司法権を英政府から北アイルランドへ移譲することで合意した。ゴードン・ブラウン英首相は「紛争という長く困難な物語の最終章を閉じ、北アイルランドの新しい章を開く」と述べた。
▽独ケルンのフランツ・ミューラー神父は、国内最大のイスラム教寺院(モスク)建設のための献金を教会で呼び掛けている。
▽米カリフォルニア州では有名なロバート・シュラ-牧師のクリスタル・カテドラルでは、収入が前年比約800万ドル減の2200万ドルになったことから、人員削減、不動産売却、テレビ番組「力の時」撤退などを計画している。(AP)
▽コロンバス騎士団は2003年以来、カトリック教会の祈祷書を米軍兵士に贈呈して来たが、今年分10万冊を1月30日、ワシントンの『軍人大司教区』に献呈した。戦闘服のポケットに入れられる大きさ。(ZENIT)
▽発生から12日で1カ月がたつハイチ大地震は、いまだに犠牲者数が確定しない。ラセグ文化情報相は10日、「プレバル大統領が死者27万人が埋葬されたと述べた」とする声明を発表したが直後に文化情報省は「17万人の間違い」と訂正するなど。死者数さえ混乱している。


《メディア展望》

  =カトリック新聞(2月14日)=https://www.cwjpn.com
★回心が正義への力与える=四旬節=教皇メッセージ=灰の水曜日2月17日
★カリタスジャパン=「愛の献金」呼び掛け=小冊子『つなぐ』も発行
★日本26聖人の祝日=創設130年も祝う 東京・本所教会=外国から巡礼者も 長崎・西坂公園
★大阪=教会学校で子どもにどうかかわる?=松浦司教中心にリーダー懇談会
★司祭・修道者の老後支える=専門家ら生活改善に動く=支援運動「稔りの会」発足
★宣教は牧師・司祭の近所付き合いから=東京・小金井市=超教派11教会の取り組み

  =キリスト新聞(2月13日)=https://www.kirishin.com
★国際福音キリスト教会=準強姦容疑 卞氏逮捕で新たな局面="まだ苦しむ人がいる"
★ラインホールド・ニーバー"「世界史の神学」目指す"=大木英夫氏、聖学院大総合研究所で講演
★"教会は真に門を開いているか"=「Ministry」創刊1周年=企画会議で八木谷さんが提起
★日本の思想的伝統とキリスト教=黒住眞氏講演
★ハイチ=子ども33人を無許可で外国へ連れ出そうとした米国人拘束

  =クリスチャン新聞(2月14日)=https://jpnews.org
★偏見が塞ぐ遺族の声=12年連続自殺者3万人超=当事者の立場に立った自殺予防・遺族支援を
★エジンバラ100周年記念世界宣教東京大会=なぜ東京か? チョー準備委員長語る
★「変革期における使命」訴え=断食祈祷聖会で伝道会議委員ら
★韓国基督実業人会(CBMC)東京支会発足=世の中を変えるのは信徒だ
★朝祷会年頭集会=高齢化、後継者難が課題
★駐留米軍武器に聖書の刻印で物議


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