世界キリスト教情報

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世界キリスト教情報 第994信(2010.02.08)

  • ハイチ援助、救援から再建段階へ
  • 大司教も失いハイチのカトリック教会、苦難の中の救援
  • 教皇、多くの部分から成る一つの体としての教会を強調
  • マザー・ミレアがバチカン調査への協力を米女子修道会に要請
  • カトリックと福音派がアルゼンチンで「結婚」擁護へ団結
  • 北朝鮮で拘束の米国人ロバート・パク氏が釈放される
  • 米南部キリスト教指導者会議にスキャンダル
  • ボーンアゲイン・キリスト者が生命救うための中絶医師殺害、と語る
  • コプト教キリスト者殺害の衝撃広がる
  • バチカン紙はシャーロック・ホームズに失望
  • 《短信》
  • 《メディア展望》

◎ハイチ援助、救援から再建段階へ

 【CJC=東京】1月12日のマグニチュード7・0地震による被害はハイチを壊滅状態に追い込み、世界各国政府や諸機関、民間組織からの緊急救援が相次いだが、ここへ来て徐々に再建段階への動きも出ている。ただ一応の復旧までにも場合によっては数十年必要と見られている。
 死者数はすでに22万人を超すと推定され、さらに家屋が倒壊したため難民状況に追い込まれた人も100万人と見られている。
 最貧国ハイチでは「復旧」と言っても、他国とは比較にならない。旧状に戻すのではなく、新たな「再建」が求められているのだ。
 ただその構想策定にも数カ月は必要だ。現在、現地の病院は包帯や抗生物質など基本的な医療品がない。落下物の破片から頭部に負傷したり、骨折した人が多い。
 福音派系のEP通信によると、キリスト教関係の救援も、混乱の中で多彩な展開を見せている。
 米国に本拠を置く『ミッション航空フェローシップ』(MAF)は、すでに23年間ハイチで援助活動を行っていたが、今回の災害には省エネ型の飛行機4機を投入、ポルトープランス国際空港に空輸されて来た援助物資の配布に活用するほか、援助団体16以上に携帯通信機を提供している。
 『ビリー・グラハム伝道協会』のラピッドレスポンス・チームは、緊急救援の専門家で組織されているが、すでに調査チームが被害者のニーズへの対応法を探っている。
 ジャック・マンディ担当は、悲惨な状況にある人たちに情緒面のまた精神的なケアを提供する必要も検討している、と語った。ビリー・グラハム氏の子息フランクリン氏が率いる救援組織『サマリタンズ・パース』も協力している。
 米国ほか17国で活動を展開している『住居のためのフラー・センター』は、長期援助の一環として低収入者向けの住宅を建設・修復するため、各教会に募金を呼び掛けている。
 米カリフォルニア州に本拠を置く非営利組織『ラザリアン・ワールド・ホームズ』と提携して、耐火、耐震、ハリケーンも防御出来るワンルームの住宅を1戸3000米ドル(約27万円)で建設する計画。教会側の協力も進んでおり、『コオペラティブ・バプテスト・フェローシップ』、アセンブリーズ・オブ・ゴッド、メノナイト、ナザレン教会などから援助を受けている。
 救援団体『ワールド・ビジョン』はハイチでは30年以上活動している。今回は緊急援助に加えて翼下の『30時間飢餓基金』が、ハイチの子どもや母親、HIV陽性者への食糧配給や、果樹、小規模の灌漑装置、ホロホロ鳥や豚、5万5000人を対象にした診療所8カ所建設、薬局、予防接種などを予定している。
 ルーテル教会系の『ルサラン世界救済』もでハイチへ最低3〜5年の長期援助を計画している。特に首都ポルトープランス以外の救援の遅れている農村部に焦点を絞っている。首都から脱出して来る人への対応も緊急課題となっているが、資源も限られ、諸施設も不十分な中での対応だ。


◎大司教も失いハイチのカトリック教会、苦難の中の救援

 【CJC=東京】ハイチ大地震は、救援に立ち上がろうとした教会自身にも打撃を与えた。カトリック教会はジョセフ・セルゲ・ミオット大司教始めカルロス・ベノア司教総代理以下、多数の信徒がノートルダム・デ・ラソンプション大聖堂崩壊の下敷きとなった。教会、神学校や教会が運営する病院などもほとんど倒壊した。
 大司教らの葬儀は1月23日、大聖堂の廃墟前で行われた。大司教はブードゥー教側との対立緩和に努めるなど敬愛され、この危機の際にこと必要とされる存在だけに、カトリック教会に与えた衝撃は図りしれない。


◎教皇、多くの部分から成る一つの体としての教会を強調

 【CJC=東京】教皇ベネディクト16世は1月24日、日曜正午の祈りを信者と共に唱えた。集いの説教で、教皇はこの日のミサで朗読した使徒パウロの「コリントの信徒への手紙1」中の、教会を多くの部分から成り立つ一つの体としてたとえている箇所(12・12〜30)を取り上げた。
 教皇は、教会はキリストを頭とした一つの体であり、キリストと共にすべてが一つにまとめられ、そこでは聖霊の賜物として様々なカリスマが一致していると強調した。
 バチカン放送(日本語電子版)によると、翌25日が「キリスト教一致祈祷週間」の最終日に当たる所から、ローマの城壁外の聖パウロ大聖堂で、カトリック以外のキリスト教教会・共同体の代表者と共に夕べの祈りをとり行われることを告げた教皇は、キリストの弟子たちの完全な一致という賜物を神に祈り求めようと呼びかけた。


◎マザー・ミレアがバチカン調査への協力を米女子修道会に要請

 【CJC=東京】バチカン(ローマ教皇庁)によって米女子修道会・宣教会などへの使徒的訪問実施を委託されたマザー・ミレアが、各組織に1月12日付けで書簡を送り、調査への協力を要請した。
 書簡は、11月20日までに返却を求めた最前の要請には多くの団体が応答しなかったことを暗示したものとなっている。バチカンへの協力を拒否する団体は連携しているものと見られる。


◎カトリックと福音派がアルゼンチンで「結婚」擁護へ団結

 【CJC=東京】アルゼンチン・カトリック教会の司教が、同性間の「結婚」に反対することで、福音派の指導者と足並みを揃えている。南部ティエラ・デル・フエゴのキリスト者は、「1人の男性と1人の女性によって構成される家庭の価値」を信じていることを強調する声明「共同宣言」を発表した。"
 声明の中でリオ・ガイェゴスのフアン・カルロス・ロマニン司教とティエラ・デル・フエゴ福音教会指導者は、神の言においては異なる信条の指導者として、「結婚に等しい同性間の結合」を認めることには反対する、と述べている。
 声明はまた、結婚という真実は、1人の男性と1人の女性の間の結合と理解され、それは"地上の生命の始まりから"存在している真理だから、交渉ごとではない、と表明している。


◎北朝鮮で拘束の米国人ロバート・パク氏が釈放される

 【CJC=東京】北朝鮮は2月5日、昨年12月25日に朝中間の国境を越えて無断で北朝鮮に入国した対北朝鮮人権活動家ロバート・パク氏(28=韓国系米国人)を釈放すると明らかにした。
 パク氏は6日午前、平壌から空路、経由地の北京に到着した。パク氏は報道陣の問いかけには答えず、終始うつむいたままで、出迎えに来た北京の米国大使館員の乗用車に乗り込んだ。パク氏は同日、民間航空機でロサンゼルスに到着した。
 朝鮮中央通信は5日、「違法入国した米国公民ロバート・パクを抑留し、調査を行った。(パク氏が)自分が犯した行為を認めて悔いている点を考慮し、該当機関は寛大に許し釈放することにした」と伝えた。北朝鮮のパク氏解放決定報道はパク氏が北朝鮮入国してから42日目。中央通信は、パク氏が記者会見で「西側の悪い宣伝にだまされて犯した罪科を深く反省している。朝鮮政府に心から謝罪する」と述べた、と主張した。
 北朝鮮の釈放決定には、今回の北朝鮮入国事件を朝米関係進展の潤滑油にしようという狙いがあったとみられる。北朝鮮はパク氏釈放決定を発表すると共に、パク氏と朝鮮中央通信とのインタビュー内容を公開した。
 パク氏は政治犯収容所の閉鎖など、北朝鮮の人権状況改善を訴えるために豆満江を渡ったが、この日北朝鮮が公開したパク氏とのインタビューは、一言で「北朝鮮は人権を守る国」という内容だった。
 朝鮮中央通信によると、パク氏は北朝鮮入りした動機について、「西欧のおかしな宣伝の影響を受け、朝鮮に対する誤った認識を持つようになった」と説明した。また平壌にあるポンス教会での礼拝に参加したときには、「宗教の自由が保障されていることを知った」と述べた。最終的にパク氏は、「わたしは恥ずかしさを感じている。(北朝鮮には)心から謝罪したい」と結論づけた。
 北朝鮮はパク氏とのインタビューについて、「本人が求めてきたため行った」と説明しているが、パク氏を支援してきた「すべての北側同胞のための自由と生命」のチョ・ソンレ代表は韓国紙『中央日報』との電話で、「パク氏が強圧のため偽りの記者会見をしたようだ」と述べた。


◎米南部キリスト教指導者会議にスキャンダル

 【CJC=東京】公民権運動の指導者マーティン・ルーサー・キング・ジュニア牧師によって設立された米南部キリスト教指導者会議のアトランタにある本部が1月25日、理事2人の辞任を要求して南部各地から集まったデモ隊に襲われた。
 ローリー・トランメル理事長とスピーバー・ゴードン会計の2人が56万9000ドル(約5000万円)を横領したという。トランメル理事長には女性従業員に性的虐待を行ったという容疑もある。
 12月に憤慨した理事会は2人を解任した。しかし1月17日、アトランタ地裁判事は、解任決定が電話で行われ、理事44人全員の参加なしでの決定は、同会議の規則に違反している、と判示した。2人が復職したことが、全国のメンバーの不満を招き、解任へ再度の議決を呼び掛ける声が高まったもの。


◎ボーンアゲイン・キリスト者が生命救うための中絶医師殺害、と語る

 【CJC=東京】AFP通信によると、米国の妊娠中絶手術で知られていたジョージ・ティラー博士を殺害した、ボーンアゲインのキリスト者スコット・ローダー被告(51)が1月28日、カンザス州ウイチタの裁判所で、胎児の命を救いたいからだった、と語った。
 ローダー被告は、2009年5月、カンザス州の教会の玄関でティラー博士を殺害したとして、第一級殺人の罪で起訴されたが、より大きな危害から人々を救うのだと信じたからこそ、殺害したのだとして、意図的故殺により無罪を陪審員に主張している。
 ローダー被告は、検察が提出した証拠については争わないと述べた。彼は銃と弾薬を購入し、事前に試射したことも認めている。


◎コプト教キリスト者殺害の衝撃広がる

 【CJC=東京】エジプトでコプト教キリスト者がクリスマスを祝う1月6日、南部ナグハマディの教会で6人が射殺され、負傷者も9人出たことは、世界規模で衝撃が広がり、バチカン(ローマ教皇庁)や欧州、中東、オーストラリアの教会指導者が懸念を表明している。
 エジプト総人口8300万人のうち、コプト教キリスト者は約9%に留まり、9割はイスラム教徒。
 エジプト当局は、昨年11月に12歳のイスラム教女性がキリスト者に強姦されたことへの報復襲撃したとして容疑者3人を逮捕したが、3人は容疑を否認している。
 折からベイルートで中東福音派教会連合総会が行われおり、出席していた福音ルーテル教会ヨルダンと聖地監督のムニブ・ヨウナン氏は1月11日、キリスト者6人とイスラム教徒警備員の殺害を非難、コプト正教会アレクサンドリア総主教への支援を申し出た。
 教皇ベネディクト16世は、クリスマスを祝っている最中に襲撃された、エジプトのコプト教社会が最近見舞われている『嘆かわしい攻撃』を非難した。"
 世界改革教会連盟のセトリ・ニョミ総幹事もエジプト政府に、エジプト全市民の安全を守るようい呼び掛けた。エジプト福音教会ナイル会議は、最近の暴力沙汰の前から長年にわたって差別を経験して来た。
 ニョミ総幹事は、中東でキリスト者が安全が脅かされ、雇用機会も失われて、出国を余儀なくされている人が増加していることに懸念を表明した。
 コプト教徒は世界各地に移住して共同体を形成している。オーストラリアには2万人が居住している。メルボルンでは、記念礼拝が行われ、エジプト領事館や外務省へのデモも計画された。
 ナグハマディは古都ルクソール北方約60キロにあり、「トマスによる福音書」などが発見された所。


◎バチカン紙はシャーロック・ホームズに失望

 【CJC=東京】ガイ・リッチー監督の新作「シャーロック・ホームズ」は評判作となっているものの、バチカン(ローマ教皇庁)機関紙『ロッセルバトレ・ロマノ』は「近代化」が過ぎる、と辛口の評価。
 シャーロック・ホームズと言えば、アーサー・コナン・ドイルが1886年に発表以来、世界中の人気を拍した探偵で、映画化も繰り返されているが、今回はロバート・ダウニー・ジュニアが演じている。バチカン機関紙は、映画が楽しめ、各場面の描写にもワクワクさせられるが、ホームズの描写に納得が行かない様子だ。
 製作会社ワーナー・ブラザースはクリスマスの公開日で2490万ドル(約22億円)の興行収入をあげている。


《短信》CJC通信Twitter速報から。

▽フィリピンのマニラで1月27日、カトリック教会の司祭数千人が一堂に会し、互いにざんげし合う機会が設けられた。カトリック司教協議会の広報担当、ペドロ・キトリオ司祭は、司祭たちも人間であり、罪が無いわけではないと語った。AFP通信が報じた。
▽米ミシガン州グランラピッズにあるカルヴァン神学校の教授や卒業生が『宗教改革後デジタル図書館』(PRDL)を開設した。これまでは散逸したとされていた文書も見ることが出来る。


《メディア展望》

  =カトリック新聞(2月7日)=https://www.cwjpn.com
★ハイチ地震=教会の活動は続く=教皇庁大使が現地報告 
★「苦しむすべての人にキリストの愛と癒やしを」=世界病者の日2月11日=教皇メッセージ
★名古屋=キリスト教一致祈祷週間に=青年ら 教派超え 交流
★カリタスジャパン=HIV/AIDSデスク=第2回「先生のための勉強会」=「性」の重要性を若者に="使える教材"を体験 
★ダミアン思い起こす=教皇=世界ハンセン病デーに
★日本・フィリピン間の交流進む=東京の葛西教会など=多文化青少年の教育活動

  =キリスト新聞(2月6日)=https://www.kirishin.com
★『平和学事典』出版でスティーブン・リーパー氏講演="この4カ月が未来決める"
★米軍=ライフル照準器に聖書の刻印=関係機関が使用中止を要請
★クリスチャンアカデミー=新年のつどいで木俣参院議員="「幻」持って国際貢献を"
★AERA「日本の聖域」で卞氏続報="韓国への弱さ"指摘
★立教大 小河陽氏最終講義=「神の国」理解の変遷たどる
★ハイチ地震=救援進まず 募る不安=WCCは負債免除を呼びかけ

  =クリスチャン新聞(2月7日)=https://jpnews.org
★日本生まれ名曲ゴスペルで伝道プロジェクト=50万人に神の祝福を
★卞牧師を逮捕=準強姦容疑=「絶対服従」信じさせる権威主義 温床に=事件解明し 同種被害者救出を
★ハイチ震災=衛生支援が柱=子どもの保護施設を開設=WVJ現地派遣スタッフ報告
★ハイチ大地震は悪魔と協定した国の責任=米テレビ伝道者
★交通事故で逮捕の牧師 不起訴に=停職6か月戒規を満了=日本ホーリネス教団


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