世界キリスト教情報

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世界キリスト教情報 第992信(2010.01.25)

  • オバマ大統領、ワシントン市内のアフリカ系教会訪問
  • 余震にも脅える絶望のハイチ、救援も進まず
  • シャープトン牧師がパット・ロバートソン氏の発言を非難
  • セルビア正教会が新総主教にガブリロビカ氏を選出
  • ベネズエラのチャベス大統領が教皇使節に『悪魔祓い』要請
  • 韓国の教会に、聖書や賛美歌の代わりに携帯電話端末
  • 米軍のライフル照準器に聖書の刻印
  • マザー・テレサの同志のマルクス主義政治家死去
  • 《短信》
  • 《メディア展望》

◎オバマ大統領、ワシントン市内のアフリカ系教会訪問

 【CJC=東京】バラク・オバマ米大統領は1月17日、ワシントン市内のバーモントアベニュー・バプテスト教会の礼拝にミシェル夫人と令嬢2人と出席した。不意の訪問に興奮した約300人の会衆から拍手を受けた。
 同教会は1866年に解放奴隷によって設立された。17日は連邦休日「マーティン・ルーサー・キング、ジュニア・デー」の前日に当たる。大統領は演説で、同教会にキング牧師自身が繰り返し説教に来ていたことを指摘した。
 就任1年目の厳しい評価にさらされている大統領は、初のアフリカ系市民として大統領選に出馬した際の公約が完全に実現されてはいないことと、ワシントンで行われている派閥政治の役割を認めた。またマサチューセッツ州上院議員選挙の争点にもなっている医療改革施行への意欲を示した。会衆は歓迎の声を上げた。


◎余震にも脅える絶望のハイチ、救援も進まず

 【CJC=東京】マグニチュード7・0の巨大地震に見舞われたハイチ、死者20万人以上という被害の実態も把握出来ない中、マグニチュード6・1などの余震で屋外で暮らさざるを得ない生存者も150万人に上り、絶望的な状況に打ちのめされている。
 キリスト教関係の救援組織も相次ぎ現地入りしているが、余震でさらに建物崩壊が予想されることから、睡眠も住民と同様屋外でとっている。
 被害者の緊急シェルターでの生活での難題は飲料水の供給。援助団体『オクスファム』の代表は英BBC放送に、住民の不安が高まっている、と伝えて来た。
 ただ国際赤十字社・赤新月社の救援活動は本格化して来た、と国際赤十字委員会(ICRC)のシモン・ショルノ報道担当が明らかにしている。「仮設キャンプでの暮らしている数万人の悩みは飲料水とゴミだ。生鮮野菜やパンの価格は急騰しており、買い入れるカネも底をつき、隣人と助け合って日々をすごしている。多数の人が仕事を求めて国際機関の窓口に並んでいる」と言う。
 首都ポルトープランス南西70キロにある港町プチゴアーブに赤十字国際委員会の医療チームが到着、ハイチ赤十字社のボランティア・スタッフによって応急処置所を設置、患者500人分の救急キットを配布した。
 首都西南方のレヨガーヌ市に派遣された赤十字国際委員会チームは「首都同様に多数の被害者が出ているが、市内の病院には何もなく、処置が出来ない」と言う。赤十字社は同市には近日中に医療物資を供給する。ただポルトープランスでは、デラペ病院やスラム街に置かれたハイチ赤十字救護所に相次ぎ医薬品が供給されている。


◎シャープトン牧師がパット・ロバートソン氏の発言を非難

 【CJC=東京】米国の著名な伝道者アル・シャープトン牧師は1月17日、シカゴの『クライスト・ユニバーサル・テンプル』でハイチの被災者救済のため献金を教会を諸教会に呼び掛けた。またテレビ伝道者パット・ロバートソン牧師のハイチ災害は、自分たちの自由を得るために悪魔と契約したために受けた神罰との発言を非難した。不快でキリスト教的なものでない、と言う。
 しかし、シャープトン牧師は謝罪を呼び掛けてはいない。
 「私はパット・ロバートソン氏に何かして欲しいとは言わない。泥だらけのグラスには、その横にきれいなグラスを置くのが最良の方法だ」と述べた。「公正で人道的な考えの宗教指導者であることが、比較されるべききれいなグラスになるよう願う」と言う。
 同教会のカールトン・ピアソン牧師は、この1日でハイチ救援のため2万5000ドル(約230万円)の寄付をするよう呼び掛けた。


◎セルビア正教会が新総主教にガブリロビカ氏を選出

 【CJC=東京】セルビア正教会は1月16日、『聖教会会議』を開催、秘密投票で3人の候補者の中からパブレ総主教の後任にニス司教イリネイ・ガブリロビカ氏(80)を選出した。第45代総主教へ同氏の選出は、教会が改革路線を進める意思を示したものと言える。
 同教会ではパヴレ総主教が昨年11月に闘病生活の後に死去している。
 新総主教はカトリック教会との和解に進む、と見られており、教皇ベネディクト15世が、将来セルビアを訪問する際には会談が実現しそうだ。


◎ベネズエラのチャベス大統領が教皇使節に『悪魔祓い』要請

 【CJC=東京】ベネズエラのウーゴ・チャベス大統領は新任のピエトロ・パロリン教皇使節に、前任者の離任に伴ない、使節館の『悪魔祓い』を実施するよう要請した。前任者を大統領は「サディストで婦女暴行犯」と決め付けていた。
 ただチャベス大統領は1月15日、政治指導者や外交官との公式会合で、教皇使節を歓迎した。
チャベス大統領は「カトリック」と自認しているが、バチカン大使館が大統領の政敵ニクソン・モレノ氏(34)を2007年3月から09年3月まで、館内に政治亡命させていたことを「非常に遺憾だ」としている。
 モレノ氏は殺人や性的暴行の容疑を否定しており、現在ペルーに避難している。


◎韓国の教会に、聖書や賛美歌の代わりに携帯電話端末

 【CJC=東京】韓国の教会に、聖書や賛美歌の代わりに米アップル社の携帯電話端末『iPhone』を持参する信者たちが登場した、と朝鮮日報(日本語電子版)が報じている。韓国に上陸したばかりのスマートフォン(携帯情報端末機能付き携帯電話)だ。
 信者たちはスマートフォンで聖書をダウンロードし、牧師の説教のフレーズを探している。また、有料でダウンロードした賛美歌には、伴奏付きのものもある。
 高麗大言語学科のキム・ソンド教授は、モバイルメディア時代を生きる人間を「ホモモビリクス」と規定した。同教授は「知恵を持つ人間、ホモサピエンスが携帯電話を掛けるホモモビリクスに進化しつつある」と説明した。モバイルとメディアの融合が発展するにつれ、人間の間に「永続的な接触」という新たな感覚が生まれるという。


◎米軍のライフル照準器に聖書の刻印

 【CJC=東京】イラクとアフガニスタンに駐留する米軍が、ケースにキリスト教の聖書の箇所を示す刻印が入ったライフル照準器を使用している、とABC放送が報じた。米国内のイスラム教徒団体などが1月20日、強い怒りを表明した。
 照準器の製造会社『トリジコン』が、米陸軍と海兵隊に、80万個以上の納入契約を結んでいるという。
 米国のイスラム教徒の権利擁護を推進する機関『ムスリム公共問題審議会』(MPAC)は、ロバート・ゲーツ国防長官に対し、聖書を示唆する文字と数字が記された武器の使用を中止するよう要請した。
 『トリジコン』社は20年以上前から、「国のために従軍することに対するわが社の信条、信念の表れ」として、照準器のメタルケースに新約聖書の1か所の章と節を示す刻印を入れている。
 2003年のイラク侵攻後に米中央軍が発した「いかなる宗教、信仰に改宗させる行為」も厳しく禁じている命令に違反した、ということが問題になった。
 英国防省も同社に照準器400個を発注したことを明らかにした。オーストラリア、ニュージーランドにも納入されている。
 問題の刻印はヨハネによる福音書8章12節「イエスは再び言われた。「わたしは世の光である。わたしに従う者は暗闇の中を歩かず、命の光を持つ。」を意味する「JN8:12」と刻まれている。


◎マザー・テレサの同志のマルクス主義政治家死去

 【CJC=東京】「コルカタ(カルカッタ)の聖女」福者マザー・テレサと特に深い信頼関係にあった西ベンガル州元首相ジョティ・バス氏が1月17日、多臓器不全のため市内の病院で死去した。95歳。葬儀は19日行われた。
 1914年7月8日生まれ、フェビアン協会系のマルクス主義者。インド共産党で活躍、1977年から2000年まで西ベンガル州首相を務めた。インドの州首相としては最長記録。
 マザー・テレサとは信条の違いを超えて、深い共感、信頼の関係を築いた。マザーの活動を常に支援し、葬儀の際にも、個人として采配をふるった。
 度々マザーと会っていることについて聞かれた際に、「彼女はわたしに神を敬うようにして、わたしを悪いマルキストにする」と語ったことがある。マザーが緊急に会いたいと言って来た時に、閣議を中断した、とも伝えられている。


《短信》CJC通信Twitter速報から。

▽教皇ベネディクト16世は1月17日、ローマ市内のシナゴーグ(ユダヤ教礼拝堂)を訪問した。ナチスによるユダヤ人大量虐殺時のカトリック教会の対応などをめぐるユダヤ人社会との対立和解を図ったとされるが、ユダヤ人側の反応は冷ややかだった。
▽米上院マサチューセッツ州補選で共和党勝利。医療保険制度改革などオバマ政権の政策後退必至。
▽ナイジェリアのジョスで、イスラム教徒の若者約200人がカトリック教会を襲撃、死傷者40人以上を出した。


《メディア展望》

  =カトリック新聞(1月24日)=https://www.cwjpn.com
★ハイチ大地震=教皇、被災者支援訴える=首都の大司教 遺体で発見
★大阪教区=阪神淡路大震災から15年=「教区新生の日」に祈る
★マレーシア司教団=教会襲撃激化に「憂慮」
★教皇、ユダヤ教の会堂訪問=積極的な対話への姿勢再確認
★中央協議会出版部が2月1日発行=『カトリック教会のカテキズム要約』
★女性の被害5人に1人=デート中の暴力でアンケート=民間グループ調査=高校生などを対象

  =キリスト新聞(1月23日)=https://www.kirishin.com
★日本で4人目=白柳誠一枢機卿が死去=世界の平和と和解に尽力=教皇ベネディクト16世も哀悼の意
★昨年末も各地で越冬支援=「教会だけでは力不足」
★「自死遺族支えよう」=シンポジウム未遂者・家族への理解も=東京
★オリエンス宗教研究所50周年シンポ=宣教者の養成が課題
★第2回9条アジア宗教者会議=指導者80人が平和への誓い=ソウル
★マレーシア=「アラー」使用認める判決にイスラム教徒反発=教会への襲撃相次ぐ

  =クリスチャン新聞(1月24日)=https://jpnews.org
★『ウガンダに咲く花』出版=「ずっと友達でいようね」=ウガンダ エイズ孤児と文通 本に
★東アジア10か国の青年ら互いに祈る=第22回アーバナ宣教大会
★平和宣教大賞に故田内千鶴子氏=日韓キリスト教議員連盟10周年 東京記念式=「真の問題解決はイエスを通じて」
★世界平和を和解に足跡=白柳枢機卿逝く
★マレーシアで教会攻撃=神に「アラー」キリスト者も使える=高裁判決にイスラム教徒反発
★卞氏らをパワハラでも提訴=絶対服従 強いられ障害


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