世界キリスト教情報

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世界キリスト教情報 第991信(2010.01.18)

  • ハイチでM7・0の強い地震、世界から早くも救援の手
  • 壊滅的地震の責任はハイチ自身にある、とロバートソン氏
  • ハイチの地震被害は神罰発言にホワイトハウスは「驚き」
  • 教皇、離脱聖公会の受け入れ策を確認
  • マレーシアの教会襲撃が11件に
  • 中国の人権擁護派・高智晟弁護士の所在不明を当局も認める
  • スコットランド聖公会、初の女性主教選出に至らず
  • ジェームズ・ドブソン氏が独自にラジオ番組始める
  • 《短信》
  • 《メディア展望》

◎ハイチでM7・0の強い地震、世界から早くも救援の手

 【CJC=東京】政情不安と貧困にあえぐ中米カリブ海の島国ハイチで1月12日午後4時53分、マグニチュード(M)7・0の強い地震が起きた。その後もM4以上の余震が20回以上観測されている。首都ポルトープランスでは多くの建造物が倒壊、大統領宮殿や財務省など政府庁舎、駐留する国連部隊の施設も被害を受けた。
 地震による揺れは1分以上続き、パニック状態の市民が屋外に逃げ出した。多くの被災者ががれきの下に埋まっており、救出活動が続けられている。ポルトープランスでは地上の固定電話、携帯電話ともかかりにくくなっているほか、電力線が寸断され一部地域では停電も起きており、被害の全容の解明が大幅に遅れている。
 国連高官は、ハイチ駐在の国連関係者多数が行方不明になっていることを明らかにした。ヨルダンの国営ペトラ通信は、国連平和維持活動(PKO)の国連ハイチ安定化派遣団(MINUSTAH)に参加する同国軍兵士3人が死亡、21人が軽傷を負ったと報じた。同派遣団の本部は地震で甚大な被害を受けており、がれきの下に埋もれている可能性も出ている。5階建て同本部には総数で約9000人が詰めている。
 バラク・オバマ米大統領は声明を発表、政府として人道支援を実施する考えを示した。米国際開発庁(USAID)は、災害対応チーム(DART)派遣に着手した。ブラジルのルイス・イナシオ・ルラ・ダ・シルヴァ大統領は憂慮の念を表明、状況の把握を急ぐとともに、支援の検討を指示した。ベネズエラ、ニカラグアなど周辺国も相次いで支援を表明している。米州開発銀行は20万ドル(約1800万円)の緊急支援を実施する方針。ドイツ外務省は、100万ユーロ(約1億3000万円)を拠出することを明らかにした。
 日本政府は「早急にどんな支援ができるか検討するよう(事務方に)要請した」と平野博文官房長官が記者会見で述べた。日本赤十字社は救援チームの派遣準備を進めるとともに13日、白田尚道・監査室参事をポルトープランスに派遣した。
 民間救援団体も活動を開始した中で、キリスト教関係も、世界教会協議会系の『アクション・オブ・チャーチ・ツゲザー』(ACT)や英国の『ディザスター・エマージェンシーズ委員会』(DEC)が緊急援助を検討している。
 カトリック援助団体『国際カリタス』も被害者への緊急援助を決め、救援チームを派遣した。ただポルトープランスの大聖堂も被害を受けており、『カリタス・ハイチ』との連絡はまだ取れていないという。米国の『カトリック救援サービス』は現地スタッフと連絡を取り、事務所が倒壊していないことを確認している。


◎壊滅的地震の責任はハイチ自身にある、とロバートソン氏

 【CJC=東京】扇動的な言動で知られる米国の著名な福音派の説教者パット・ロバートソン氏が1月13日、ハイチで1月12日発生した壊滅的な地震の責任は、ハイチが建国の時に悪魔と協定を結んだからで、ハイチ自身にある、と発言した。
 ロバートソン氏は、自ら運営する『キリスト教放送ネットワーク』(CBN)の番組『700クラブ』で語ったもの。
 ロバートソン氏はしばしば災害や攻撃の予測を行って問題を引き起こしている。2006年には当時のイスラエル首相アリエル・シャロン氏が重い脳卒中で倒れたのは、ガザ地区撤退で「神の地を分断」、パレスチナ人に土地を譲ったことで神に報復された、と語ったことがある。

◎ハイチの地震被害は神罰発言にホワイトハウスは「驚き」

 【CJC=東京】過激な発言で知られる米テレビ伝道者パット・ロバートソン氏が、ハイチで1月12日起きた大地震について、「悪魔と契約したことに対する神罰だ」と発言したことが、米国内外で論議を呼んでいる。
 ロバート・ギブス米大統領報道官は14日、ホワイトハウスの定例記者会見で、「恐ろしい災害が起きた時にこんなことを言い出す人がいるとは、驚きを禁じ得ない」とコメントした。
 問題の発言は、ロバートソン氏が13日、自ら運営する『キリスト教放送ネットワーク』(CBN)の番組『700クラブ』で語ったもの。「ハイチはかつて、フランスに支配されていた。そこで人びとは悪魔と契約したのだ」「だから、それ以来ハイチは呪われ、次々と災難に見舞われている」と述べた。
 ただロバートソン氏は、「ハイチの人々、そしてわれわれは、神がこの悲劇をくつがえして下さるよう祈らねばならない。私は事態が好転するとの楽観的な見通しを持っている」とは語っている。
 ハイチは、数世紀にわたりスペイン、フランスの植民地支配を受け、先住民やアフリカから連行されて来た奴隷が酷使された後、1804年に反乱により独立したが、今日まで混乱が続いている。


◎教皇、離脱聖公会の受け入れ策を確認

 【CJC=東京】教皇ベネディクト16世は1月14日、聖公会共同体の方針に不満な人たちを集団でカトリック教会に受け入れるという決定を確認、エキュメニズム(教会一致)の「究極の目的」だ、と語った。
 教皇が、教理省のスタッフに語ったもので、カトリック教会への招きは、他のキリスト者との再一致への努力を破壊するものではなく、「十分で目に見えるコミュニオン(聖体)」に至ることを助けるためだ、と言う。


◎マレーシアの教会襲撃が11件に

 【CJC=東京】マレーシアでキリスト教会への襲撃が続き、1月16日にはネゲリ・センビラン州セマバルナのグレース・グローバル・プレヤー・バプテスト教会が投石され、窓ガラスが破損した。イスラム教徒以外でも「アラー」という言葉を神を表現するために使用して良い、との裁判所の決定に反発した過激派の襲撃は11件となった。キリスト教会以外に、ボルネオ島のサラワク州ではモスクにビン3本が投げ込まれている。
 マレーシア、シンガポール、ブルネイのカトリック司教会議議長のマーフィー・パキアム大司教(クアラルンプール教区)は、「対話と平和のために働き続ける。アラーの名に掛けて紛争解決の道を政府と探り、国の共通の利益を考える」と語った。
 司教会議のオーガスティン・ジュリアン事務局長は、「これまでも言われていたように、恐怖と緊張を創りだそうとする無責任や過激な行動の結果であり、小さな別々の事件なのだ。何も変わったことはない。カトリック教会と全キリスト教共同体は冷静を維持し公然とした紛争に関与はしない」と言う。


◎中国の人権擁護派・高智晟弁護士の所在不明を当局も認める

 【CJC=東京】中国のキリスト者の人権擁護のために活動し、2008年にはノーベル平和賞の受賞候補者にもなった高智晟弁護士について、中国当局が初めて同氏の所在を把握していないことを認めた。高氏の弟が1月14日、AP通信に電話で、警察が高氏は9月25日に所在が分からなくなった、と伝えてきた、と語った。
 高氏は解散させられた集団『法輪功』のために弁護活動を行い、また改憲運動にも参加するなどで国際的にも注目される存在。2009年2月、公安当局者に連行される所を見られており、安否が懸念されていた。激しい殴打、性器に電気ショック、目にタバコなどの拷問の末に死亡したとの未確認の情報もある。
 米国に本拠を置くキリスト教抑圧監視団体『対華援助協会』(CAA)が同氏の一家を保護している。同協会は、当局からの今回の通知が同氏の死亡を暗示したのでは、と懸念している。高氏の夫人はコメントを拒否したが、ニュースに動揺しているという。 
 対華援助協会の傅希秋会長は「中国政府が自ら拘束した囚人の所在を把握していないとは容認出きない」と語った。「彼が自宅から2009年2月に強制的に連行されたことははっきりしている。約1年経って、中国政府は現在では彼を把握していないと言うのだ」と傅会長は指摘する。
 中国側の行方不明確認は、『中国家庭教会連合』(CHCA)の指導者30人が、河北省邯鄲で逮捕された直後のこと。拘束された牧師の中の1人が携帯電話で外部への連絡を試み、邯鄲市公安局と宗教事務局が、1月8日、指導者30人が聖書研究をしている所を襲った、と伝えた。逮捕された人たちは市内の尋問センターに強制連行された。中には15日間拘留する、と言われた人もいる。


◎スコットランド聖公会、初の女性主教選出に至らず

 【CJC=東京】スコットランド聖公会は1月16日、主教選出会議を開催した。グラスゴーとギャロウェイの首席司祭グレゴル・ダンカン氏(59)が選出された。最終候補3人の中に女性のアリソン・ピーデン氏(57)が残ったが至らず、英国初の女性主教の誕生はならなかった。司祭、信徒の双方とも、より経験豊富な男性候補を選択したもの。
 議長を務めた首座主教デビッド・チリングワース氏は、選挙では「性」は問題ではなく、ピーデン氏が最終候補にまで残ったことは、教会の中での女性の役割変化を助けることになる、と語った。


◎ジェームズ・ドブソン氏が独自にラジオ番組始める

 【CJC=東京】宣教団体『フォーカス・オン・ザ・ファミリー』を設立した保守派の大衆伝道者ジェームズ・ドブソン氏(73)が同団体から離れ、3月から新たにラジオ番組始めることになった。サーファー、スケートボーダーとして知られる子息のライアン氏(39)も協力する。
 「わが国は、存在そのものを脅かす危機に直面している」とドブソン氏は12月29日、インターネットのフェースブックで、新番組について発表した。「わたしたちは衝撃的なモラル低下のただ中にいる。わたしは過ぎ行く世界に手助けしようともせずに座視出来るか自問自答してきた。それが、この時点での動機だ」と言う。
 ドブソン氏は2月に『フォーカス・オン・ザ・ファミリー』が毎日放送する番組のホストを終える。番組は約1000局で放送され、聴取者は150万人。2003年以来、『フォーカス・オン・ザ・ファミリー』の指導から身を引きつつあるが、新しい団体を立ち上げ、新番組を作成する理由は明らかにされていない。ただ『ジェームス・ドブソン・オン・ザ・ファミリー』という名称になることはたしか。
 『フォーカス・オン・ザ・ファミリー』を才能のある後継者に委ねたい、とドブソン氏は声明で述べているが、撤退の理由は、子息ライアン氏の離婚にありそうだ。結婚と育児について助言する番組の主宰者にはふさわしくない、というのが理事会の意向と見られる。ライアン氏はその後再婚した。
 理由はどうあれ、両団体の目的がほぼ同一であり、番組もまた類似のものとなるのは確か。競争も激しくなりそうだ。


《短信》CJC通信Twitter速報から。

▽教皇ベネディクト16世は13日、昨年末のミサで自身に飛びかかった女性(25)と面会し、女性の謝罪を受け入れて罪を許した。女性は「自らの行いを後悔しています」と謝罪した。 
▽米教会音楽家キャロリン・ウインフリー・ジレット氏は、大地震に見舞われたハイチの人々のために讃美歌「イン・ハイチ、ゼア・イズ・アンギッシュ」(ハイチの苦痛」を作詞した。「ベネス・ザ・クロス・オブ・ジーザス」(イエスの十字架のもとで)に合わせて歌う。
▽ハイチの牧師のためにソーラー発電の「オーディオ聖書」100台。『フェイス・カムズ・バイ・ヒアリング』が贈る。
▽ウガンダ・カトリック教会の既婚司祭や結婚を予定している20人が『カトリック・アポストリック・ナショナル・チャーチ』を結成した。バチカン(ローマ教皇庁)筋は、破門同然の措置に出る模様。


《メディア展望》

  =カトリック新聞(1月16日)=https://www.cwjpn.com
★白柳誠一枢機卿 逝去=人々の和解願い続け 貫いた神への奉仕
★全国召命推進チーム発足=直面する諸問題も考えながら=司教団が要請
★第24回東京弁護士会人権賞=「山友会」が受賞
★焼失、復元中の長崎・江袋教会 3月に完成
★各地で炊き出し=不況下の越冬支える=仙台 甲府 神戸
★管理者代理を任命=札幌教区管理者の菊地司教

  =キリスト新聞(年始休刊)=https://www.kirishin.com

  =クリスチャン新聞(年始休刊)=https://jpnews.org


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