世界キリスト教情報

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世界キリスト教情報 第988信(2009.12.28)

  • ベツレヘムへのクリスマス巡礼は昨年並み
  • 教皇、苦難の下にある人に希望と喜びを、と祈る
  • イラクでは不安の中にクリスマス迎える
  • 悲喜こもごも、イタリアのクリスマス
  • 「北朝鮮で50万人が秘密裏にクリスマス」と米・自由アジア放送
  • 韓国系米国人の人権活動家が北朝鮮入り
  • ロシア正教会が同性愛に寛容姿勢
  • ポーランドの首座司教にヘンリク・ムスジンスキー大司教
  • 《メディア展望》

◎ベツレヘムへのクリスマス巡礼は昨年並み

 【CJC=東京】イエス・キリストの降誕地として知られるパレスチナ自治区ベツレヘムには12月24日、世界各地から訪れた"巡礼"がクリスマスを祝った。バタルセ市長は、クリスマス期間中に海外からベツレヘムを訪れる人は昨年並みの1万〜1万5千人と見込んでおり、5000室近いホテルは満室だと語った。
 生誕教会前の飼い葉桶広場にはクリスマス・ツリーと共にパレスチナ自治区の国旗が飾られた。広場の樹木に装飾が施され、バンド演奏などで盛り上がった。パレスチナ警察が銃を持って街路をパトロールしているものの、大規模な衝突もなかった。
 祝典はパレスチナ市民のボーイスカウト、ガールスカウトによる行進で始まった。生誕教会は、キリストが生まれたと伝承される洞穴を中心として、その上に立てられており、ローマ・カトリック、東方正教会、アルメニア使徒教会が区分所有している。
 カトリック教会の聖地での代表、ラテン典礼総司教が生誕教会でミサを行うのを巡礼たちが見守った。隣接する聖カテリナ教会で行われた恒例の深夜ミサには、世界各地からの"巡礼"と共に次期パレスチナ自治政府議長選への不出馬を表明したイスラム教徒のアッバス議長も参列した。
 イスラエル政府がパレスチナ自治区との間に『分離壁』を設け、パレスチナ市民の通行を規制していることに、パレスチナ側の不満は高まっている。イスラム原理主義組織ハマスが支配する自治区ガザからはキリスト者約3000人のうち約300人がベツレヘムのある西岸訪問をイスラエル軍に許可された。ガザではイスラエルが境界封鎖を2年超継続。通常は自由に出入り出来ない。


◎教皇、苦難の下にある人に希望と喜びを、と祈る

 【CJC=東京】クリスマスを控え、バチカン(ローマ教皇庁)のサンピエトロ広場にはバチカン職員が製作した大型プレゼピオ(イエスの降誕を再現した馬小屋の模型)が飾られ、その隣には金銀の飾り玉で覆われた大きなツリーが立てられた。教皇ヨハネ・パウロ2世の希望により、1982年から、サンピエトロ広場にも大きなプレゼピオともみの木が設置されるようになった。
 教皇ベネディクト16世は24日午後10時からサンピエトロ大聖堂で主の降誕の夜半のミサを司式した。教皇が30人の枢機卿を率い金の十字架を掲げて祭壇まで行進する入堂行列の際、精神不安定な女性スザンナ・マヨロさん(25、イタリアとスイス国籍)が警護柵を乗り越え、警備員の制止にもかかわらず、教皇に近づくと、教皇のパリウムをつかんでバランスを失わせ、教皇を床に引き倒した。教皇はすぐに立ち上がり、行列を再開し、ミサを最後までささげられた。バチカンによると、この女性は情緒不安定で、昨年も同様の行為をしようとして制止されていたという。
 教皇に怪我はなかったが、一緒に行列を行っていたロジェ・エチェガレイ枢機卿(87)が転倒し、大腿骨の頚部を骨折した。枢機卿はジェメッリ病院に入院し、手術を受けることになった。
 教皇を引倒した女性も、必要な治療を受けるために医療施設に入院した。女性はバチカン警察の取り調べに対し、「教皇を抱きしめたかっただけ」と話しているという。
 教皇は25日正午、サンピエトロ大聖堂の中央バルコニーに立たれ、ローマと全世界に向けた祝福とメッセージ「ウルビ・エト・オルビ」を送った。教皇は日本語を含む世界の65言語で主の降誕のお祝いの言葉を述べた。
 教皇はメッセージで、世界金融危機や戦争、紛争の影響を受けている人々の心が、希望と喜びで満たされるよう祈った。教皇はまた、自然災害や貧困に苦しむ人々、特に自宅からの避難を余儀なくされた人々の受け入れを、カトリックが呼びかける姿勢にあることを強調した。
 「今日、深刻な経済危機はもとより、倫理的危機に瀕し、さらに戦争や紛争の傷にまみれた人類家族のために、人間に対する真理と分かち合いの精神をもって、教会はあの羊飼いたちと一緒に『ベツレヘムへ行こう』 (ルカ2・15)、そこに私たちの希望を見出すことができるだろうと繰り返す」と教皇は指摘した。
 バチカン放送(日本語電子版)によると、教皇はさらに、「『私たち』教会は、中東の国々にも存在する。特に苦難の中にあるイラクをはじめ、この地域に生きるキリスト教徒たちの小さな群れのことを案ぜざるを得ない」「教会としての『私たち』は、スリランカでも、朝鮮半島、フィリピン、他のアジアの国々でも平和と和解のパン種として活動している。アフリカ大陸において教会は、コンゴ民主共和国における様々な形の権力濫用の追放、ギニアやニジェールでの人権蹂躙や対話拒否からの開放、マダガスカルでの内部分裂の克服と相互受け入れの実現など、神への祈りの声を上げ、たとえ悲劇や試練や困難にあっても人々が希望に召されていることを伝え続けている。ヨーロッパや北アメリカにおいても、『私たち』教会は、利己的なメンタリティーや技術至上主義の克服、まだ生まれ出ていない子供たちをはじめとするすべての貧しく弱い人々の尊重、共通善の促進のために働きかけている。また教会は、中央、南アメリカの国々においても、いかなるイデオロギーも代わることの出来ない真理と愛を実現し、決して取り去ることのできない各自の人権尊重、全人格発展の必要性を叫び続け、一致の源である兄弟愛と正義を告げ知らせている」と述べた。
 「教会はその創立者キリストの命に忠実に従い、自然災害に苦しむ人々、社会の貧富に関わらず困窮している人々にいつも連帯を示す」として、教皇は、多くの人々が飢えや民族闘争、環境悪化から逃れ、故郷を捨て外国に移住せざるを得なくなっている、と指摘し、教会は迫害や差別や攻撃や無関心、時には敵意にもかかわらず、主であり師でもあるキリストと同じ運命を共有し、どこにおいてもその福音を告げ知らせる、と語った。


◎イラクでは不安の中にクリスマス迎える

 【CJC=東京】イラク北部モスルではクリスマス目前の23日、、シリア正教会の教会が攻撃を受け、2人が死亡、5人が負傷する事件があった。教会の道を挟んだ向こう側に置かれていた、小麦粉を運ぶための手押し車が爆発したという。病院関係者によると、身分証を確認したところ、死亡した2人はいずれもイスラム教徒だった。
 モスルではこの1カ月ほどで、多数暮らしているキリスト者を標的にした攻撃が、今回のものも含め6件発生している。また、イラク軍当局は、キリスト者への攻撃が発生する可能性があるとの情報を得たとして、また1月のイスラム教シーア派最大の宗教行事「アシュラ」を前にモスル周辺の警戒を強めていた。


◎悲喜こもごも、イタリアのクリスマス

 【CJC=東京】イタリアでは「水の都」ベネチアが高潮に風雨が重なり、街の約56%が冠水した中でクリスマスを迎えた。ローマではイブの街をサンタクロースたちが、ごう音を響かせて駆けめぐった。行き先は市内の病院で、治療の難しい病気の子どもたちにクリスマスプレゼントを届けた。サンタに扮したのは警察官約50人。
 サンタの訪問に、子どもたちは大喜びで、病院側も、退屈な入院生活が続く子どもたちにとって「最高のプレゼントになった」と言う。
 北部トリノでは地下倉庫に隠してあったプレゼントが盗まれる事件があり、取り乱した被害者の母親に、玩具店がクリスマスの早朝4時に店を開いて助け舟を出した。
 母親が24時間営業のガソリンスタンドを回り、代わりになるプレゼントを必死に探していたことから、警察が窃盗事件のことを知り、玩具店に連絡を取って店を開けるよう依頼したという。


◎「北朝鮮で50万人が秘密裏にクリスマス」と米・自由アジア放送

 【CJC=東京】朝鮮日報(日本語電子版)によると、米国の自由アジア放送(RFA)が12月25日、国際的キリスト教団体「オープン・ドアーズ」の関係者の話として、北朝鮮では当局の監視を避け、家庭や地下教会でキリスト教を信仰している信者の数は約40万から50万人に達しており、これらの信者が秘密裏にクリスマスを祝った、と報じた。
 北朝鮮は、憲法上宗教の自由を認め、平壌に教会や聖堂を建て、1万2000人のキリスト教信者がいるとしている。


◎韓国系米国人の人権活動家が北朝鮮入り

 【ソウル=箱田哲也】韓国で北朝鮮人権問題に取り組む団体関係者によると、韓国系米国人の人権活動家ロバート・パク氏(28)がアリゾナ州ツーソンから中国に渡り、12月25日夕、北朝鮮の人権改善を求め、凍結している中朝国境の豆満江を「神の愛を伝えるために来た」と叫びながら歩いて渡り、北朝鮮内に入った。
 北朝鮮を開放し救済を、という幻を神から与えられた、として政治犯収容所の閉鎖などを促す金正日総書記あての手紙を携えているという。パク氏は拘束された、と見られる。
 パク氏の同僚でソウル在住のチョー・スンラエ氏が12月27日、パク氏と米国に住んでいる両親との間に交わされた電子メールを公開した。北朝鮮に入国する直前のものという。
 韓国の統一省関係者は、活動家の北朝鮮入りについて「確認できない。活動家の所属団体も聞いたことがない団体だ」と語った。ソウルの米国大使館はコメントを出していない。


◎ロシア正教会が同性愛に寛容姿勢

 【CJC=東京】ロシア正教会の最高指導者、キリル・モスクワ総主教は、教会としては同性愛を罪と見なし反対しているものの、同性愛は個人の問題だ、と声明で明らかにした。総主教は、ゲイとレズビアンが迫害されたり差別されることがあってはならない、と言う。
 総主教は、欧州会議(欧州評議会)のソルビョルン・ジャグランド事務総長が12月21日からロシアを訪問した際、23日に会見した。声明はその際に示された。
 ロシアでは同性愛が非犯罪化されたのは1993年のことで、今日でもその権利への反対は根強い。
 政治家や政府高官の中にも同性愛反対を公言する人がいる。モスクワのユーリ・ルシュコフ市長は、同性愛を「悪魔的」とし、エイズ(後天性免疫不全症候群)を広める、と非難している。


◎ポーランドの首座司教にヘンリク・ムスジンスキー大司教

 【CJC=東京】教皇ベネディクト16世は12月20日、ポーランドの首座司教に就任したヘンリク・ムスジンスキー大司教を祝福した。
 現首座司教のヨーゼフ・グレンプ枢機卿が80歳になったのを機会に交代した。


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