世界キリスト教情報

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世界キリスト教情報 第986信(2009.12.14)

  • イスラエルの占領は「神への罪」とパレスチナのキリスト教指導者
  • 入植地の建設凍結に抗議してエルサレムで大規模デモ
  • キリスト者侮辱事件で米ユダヤ委員会がイスラエル当局に懸念表明
  • ホテル経営に宗教持ち込むのは......英リバプールで裁判
  • 2人目の同性愛主教誕生にカンタベリー大主教が懸念表明
  • 米国で信頼されるのは医師がトップ、議員は最低
  • イタリアが経口中絶薬の販売を正式認可
  • エストニアの牧師が資産家の息子と判明、大金を相続
  • 《メディア展望》

◎イスラエルの占領は「神への罪」とパレスチナのキリスト教指導者

 【CJC=東京】ENI通信によると、パレスチナのキリスト教指導者が、パレスチナ自治区へのイスラエル占領を終結させる呼び掛ける声明を発表した。占領は「神と人類に対する罪」だとして、世界の教会に支援を訴えたもの。
 「イスラエルの占領というパレスチナ市民に対する不正行為は、抵抗しなければならない悪だ」と指導者は声明で指摘した。「抵抗はキリスト者にとって権利であり義務である。しかしそれは論理だけでなく愛を伴った抵抗だ。だから創造的な抵抗である。敵の人間性を引き込む人間的な道を見つけなければならないからだ」と言う。
 ベツレヘムで12月11日行われた会合で公表された声明を、提唱者は、「カイロス・パレスチナ」文書と名付けた。カイロスは聖書で、神から与えられた挑戦、恵み、機会の時を示すギリシャ語。
 関係者は、南アの教会が1980年代半ばに発表したカイロス文書に今回の声明を関連付けている。カイロス文書は、教会とそれより広範な市民を、アパルトヘイト(人種隔離政策)の終息に導くために協力するよう手助けしたもの。
 「声明は全世界の国際的な共同体に、パレスチナ市民の窮状を直視し、国際法を順守するようイスラエルに圧力を掛けることを呼び掛けるものだ」と広報担当のリファト・カシス氏がENI通信に語った。
 「平和とその道筋についての議論が17年にわたって続けられたにも関わらず、何事も起こらず、事態は悪化する一方だ。紛争についてより倫理的な展望を行うべき時であり、それは宗教指導者から発せられるべきだ」とカシス氏は言う。
 声明の正式標題は「真実の時パレスチナ市民の苦難の核心からの信仰、希望、愛の言葉」。
 声明にはカトリック教会指導者、前ラテン典礼ミケル・サバ総主教、ルーテル教会エルサレム監督のムニブ・ヨウナン氏、ギリシャ正教会エルサレム総主教座のテオドシオス・アタラ・ハンナ大主教らが署名している。
 イスラエルの、自衛のためだとする正当化論を否定して、パレスチナのキリスト教指導者は、もしも占領がなかったら「抵抗もなく、恐怖も、不安もなかった」と述べている。
 今回の動きはパレスチナに存在するキリスト教各派のほとんどの指導者と著名な神学者をまとめたものとなった、とカシス氏は言う。
 世界教会協議会も文書作成を円滑に進めることに援助している。またイスラエル・パレスチナ紛争について立場の異なる加盟教会を含めて全世界の教会に呼び掛けを行っている。
 署名者は、声明がキリスト者に対してだけでなくイスラム教徒やユダヤ教徒にとっても「重大かつ重要」なものだ、と言う。隣人であるイスラム教徒に対して、「愛と共存のメッセージ」を送り、狂信と極論を拒否するよう促した。また全世界に、イスラム教に対して無知からくる「敵だとか誇張されたテロリスト」といった見方を拒否するよう呼びかけた。同じくユダヤ教徒に向かっては、過去の闘争にも関わらず共存の可能性があることを確認した。
 キリスト教指導者は、反ユダヤ主義やイスラム嫌いなどの差別を全て非難した。キリスト教世界に広く、「イスラエルのパレスチナ占領について真理を語り、真理の立場を取る」よう呼び掛けている。そして「今苦しんでいる不義と、占領が私たちに課した罪を、神学で取り繕わないよう」世界の教会に促している。


◎入植地の建設凍結に抗議してエルサレムで大規模デモ

 【CJC=東京】イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相が11月パレスチナ自治区ヨルダン川西岸でのユダヤ人入植地建設を10ヵ月間凍結すると発表したことに対し、入植者や右派団体ら数千人が12月9日、エルサレムで大規模な抗議デモを行った。
 凍結決定を、欧米諸国は和平交渉の再開に向けた第一歩と歓迎姿勢を示したが、パレスチナ側やユダヤ人入植者は反対している。


◎キリスト者侮辱事件で米ユダヤ委員会がイスラエル当局に懸念表明

 【CJC=東京】米ユダヤ委員会(AJC)が12月4日、デービッド・A・ハリス代表名でイスラエルの公安当局に書簡を送り、エルサレムの旧市街で信仰厚いユダヤ教徒がキリスト教聖職者や信徒にツバを掛ける事件の続発に深刻な懸念を表明した。
 AJCは、「共存と互恵の価値に関わって来ており、イスラエル国の友であり、支持者である」として、これらの行動は他宗教に対する重大な非礼であり、全市民の権利を保護するという基本的なイスラエルの関わり方とは対照的なものだ、と述べている。さらに事件によってイスラエルの国際的イメージを損ない、世界の信仰共同体との重要な関係を危うくする、として法の厳格な適用を求めた。


◎ホテル経営に宗教持ち込むのは......英リバプールで裁判

 【CJC=東京】英リバプールのバウンティ・ハウス・ホテルは敬虔なキリスト者のベンジャミン・ヴォゲレンザン氏とシャロン夫人のカップルが経営している。そこに1ヵ月滞在していたイスラム教徒のエリッカ・タジ氏(女性)から、夫妻は執拗に非難の声を浴びせられたとして訴えられた。
 夫妻は宗教的に問題になる、脅したり、罵ったり、侮辱するような言葉は使っていない、と主張、地裁のリチャード・クランシー判事は12月9日、タジ氏の訴えを却下した。
 約1年半前イスラム教に改宗した同氏は病院での授業に出席するため、ヴォゲレンザン夫妻の経営するホテルに1ヵ月滞在した。授業の最終日にヒジャーブ(イスラム教徒の女性の顔を隠すベール)を被ったところ、夫妻が激怒し、ヴォゲレンザン氏から殺人者とかテロリストだと言われた、と裁判で主張した。
 さらにヴォゲレンザン氏が、預言者ムハンマドを殺人者とか将軍と呼び、サダム・フセインやヒットラーにたとえた、と語った。
 一方、夫妻は一切を否定し、タジ氏がイエスは力の弱い預言者であり、聖書は真理ではない、と語った、と主張した。ただ夫人がヒジャブを奴隷がかぶるものだ、と言ったことは認め、ヒットラーやネロ、毛沢東と言った歴史上の人物の名を挙げたのは軽率だった、と語った。
 夫妻が訴えられてからというもの、ホテルの客数は激減した、タジ氏は商売をダメにしようとしている、とヴォゲレンザン氏。クランシー判事は夫妻に、宗教と政治は、どちらも譲らないのだから「全体を燃えつくす発火点」になる、と諭した。


◎2人目の同性愛主教誕生にカンタベリー大主教が懸念表明

 【CJC=東京】米国聖公会ロサンゼルス教区がメアリー・グラスプール氏(55)を補佐主教に選任したことに、英国国教会(聖公会)の霊的最高指導者カンタベリー大主教ジョージ・ウイリアムズ氏は世界約7700万信徒の間に分裂を招く事態を恐れ、再考を促した。アングリカン・コミュニオン(世界聖公会共同体)内にある根強い抵抗を考慮したものと見られる。
 大主教は声明を発表、「米聖公会だけでなく、国教会全体に極めて深刻な問題が生じる」として「手続きは完了しておらず、他の教区主教や常任委員会の承認ないし否認が必要だ。この判断は非常に重要な意味合いを持つ」と指摘した。AFP通信が報じた。


◎米国で信頼されるのは医師がトップ、議員は最低

 【CJC=東京】米ギャラップ調査が12月9日、米国で信頼されるプロフェッショナル(専門家)ランキングを発表した。
 22のプロフェッションの中で最も信頼出来るとされたのは医師、看護士らヘルスケア・ワーカーで回答者の83%が「高度」「最高度」にランク付けした。
 聖職者は8位。5割が「高度」「最高度」にランク付けした。
 一方で議員への信頼は低く、55%が「低度」か「最低度」としている。党派による差はない。
 18歳以上の成人1017人に11月電話インタビューしたもの。


◎イタリアが経口中絶薬の販売を正式認可

 【CJC=東京】イタリア医薬品庁は12月9日、バチカン(ローマ教皇庁)や政府閣僚などが反発していた経口中絶薬「RU486」の発売を正式に認可した。ただし病院内で中絶手術の代わりとしてのみ使用される見込みという。AFP通信が報じた。
 医薬品庁は当初、7月31日にRU486の販売を認可したが、カトリック信者が大多数を占めるイタリア国内で反対の声が高まり、議会上院委員会が同庁に再検討を要請していた。
 バチカン生命アカデミー元委員長のエリオ・スグレッチア司教は、RU486を「極めて有害な毒」として「使用した医師や女性、推進者は破門する」と語っていた。


◎エストニアの牧師が資産家の息子と判明、大金を相続

 【CJC=東京】AFP通信によると、エストニアのリホ・ポルス牧師がDNA検査の結果、同国有数の資産家の息子だったことが判明し、大金を手にしたと、週刊紙『エースティ・エクスプレス』が12月10日報じた。
 地方裁判所がポルス牧師を資産家の故アードゥ・ルーカス氏の相続人であることを正式に認めた。 2006年に67歳で死去したルーカス氏は運送業で資産を築き、数億クローン(数十億円)を残したとされる。


《メディア展望》

  =カトリック新聞(12月13日)=https://www.cwjpn.com
★AYD(アジアン・ユース・デー)=23カ国の青年ら集う=フィリピン=芽生えた「導き手」の意識
★バチカンとロシア=全面的外交関係樹立へ
★世界エイズデー=12月1日=教皇、祈りと具体的支援促す
★カトリック教会と聖公会=神学的対話 第3段階へ
★新型インフル対策で「声明」=部落差別人権委
★とりくみ拝見=宣教、「内向き」にも力=神奈川・雪ノ下教会

  =キリスト新聞(12月12日)=https://www.kirishin.com
★"殉教"と"殉国"を問う=カトリック横浜教区正平協シンポ=学者(高橋哲哉氏)・僧侶(菱木政晴氏)・司教(森一弘氏)が提起
★聖職者らが児童虐待=アイルランド=教会と政府が"隠匿"謝る
★"史的イエス研究の射程と限界"=上智大学聖書講座=「逆さ映しの顕現」を・佐藤氏=「史的キリスト」研究・岩島氏
★劇団青年座=椎名麟三「第三の証言」上演
★聖公会京都教区 性的虐待事件=元牧師に「終身停職」=審判廷は事実認定避ける
★「宗教と社会」学会=事業仕分けに異議

  =クリスチャン新聞(12月13日)=https://jpnews.org
★日韓で「すっとEZRA」=出て行って福音を=青年宣教大会でアウトリーチ
★気候変動枠組み条約国会議へ=国際カリタスなどアピール
★「いま連帯・団結しなければ」=「日の丸・君が代」強制中止を求めての祈り会
★日本バプテスト連盟=宣教120年で感謝・悔い改め・前進=初の教会合同の加盟を承認
★日本基督長老教会=教師養成研修プログラム作成へ
★アイルランド=聖職者が児童虐待=25年に及ぶ看過をカトリック教会・政府が謝罪


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