世界キリスト教情報

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世界キリスト教情報 第981信(2009.11.09)

  • 米で「同性愛者保護」法が成立
  • 「同性愛者保護」法成立、米合同キリスト教会は歓迎
  • 医療保険改革法案、米下院で可決
  • 信仰と愛における真理に貢献する神学、教皇一般謁見
  • キング牧師の令嬢が米南部キリスト教指導会議の会長に
  • 気候変動枠組み条約国会議へ国際カリタスなどがアピール
  • 中国地下教会の司教に公認教会加入をバチカン勧告?
  • ブラジルの「イエス行進」に福音派150万人以上参加
  • ロンドンの青年集会で騒動、ボランテア襲われる
  • 悪霊退散に頭蓋骨使わぬよう、ボリビア・カトリック教会が要請
  • 《メディア展望》

◎米で「同性愛者保護」法が成立

 【CJC=東京】バラク・オバマ米大統領は10月28日、人種や宗教に関する偏見が理由の「ヘイト・クライム(憎悪による犯罪)」を禁じた連邦法の対象を同性愛者らにも拡大する法案に署名した。「憎悪犯罪」は、人種や宗教などを理由に危害を加えるもので、連邦犯罪として厳しく処罰される。
 主要連邦法に同性愛者の権利保護が盛り込まれたのは初めて。1998年に同性愛を理由に殺害された白人マシュー・シェパードさんや黒人ジェームズ・バードさんの事件が、法整備の契機となった。
 法案をめぐっては、妊娠中絶や同性愛に反対する保守派の言論封じ込めに利用されるのではないかと、一部キリスト教団体から懸念も表明されていた。ジョージ・ブッシュ前大統領は同性愛に批判的な保守系団体などに配慮、拒否権行使も示唆していた。
 憎悪犯罪を禁じる連邦法は1968年に成立している。エリック・ホルダー司法長官は6月、「法案は(言葉ではなく)あくまでも暴力的行動を禁じるもの」と強調。上院司法委員会で、「米国ではここ10年、1時間に1件の割合で憎悪犯罪が起きている」と述べ、法案に批判的な共和党の理解を求めた。


◎「同性愛者保護」法成立、米合同キリスト教会は歓迎

 【CJC=東京】バラク・オバマ米大統領が10月28日、人種や宗教に関する偏見が理由の「ヘイト・クライム(憎悪による犯罪)」を禁じた連邦法の対象を同性愛者らにも拡大する法案に署名したことに、合同キリスト教会(UCC)のジョフリー・ブラック議長は歓迎の意向を示している。
 同議長は、UCC総会が「1989年以来、『ヘイト・クライム』立法を支持、暴力の被害者への連帯と支援を表明、社会全体が暴力を減らすことで利益を得ることを認識して、全教会規模で暴力根絶のために活動するよう呼び掛けてきた」と指摘した。


◎医療保険改革法案、米下院で可決

 【CJC=東京】米下院本会議は11月7日、賛成220、反対215と過半数の218をわずか2票だけ上回るという僅差で、医療保険改革法案を可決した。法案には、国民皆保険を目指すため、バラク・オバマ大統領が主張してきた政府が関与する公的保険の創設が盛り込まれている。
 法案は、新たな公的保険の導入で保険市場の競争を活発化させ保険料高騰を防ぐ、低所得層向けの公的保険「メディケイド」の拡大などにより保険加入率を拡大する―などが柱になっている。
 4600万人以上ともいわれる無保険者を抱えた米医療制度がやがて行き詰まるのは明白。ただ法案に盛り込まれ公的医療保険の財政支出は、史上最大の財政赤字をさらに膨らませる要因でもある。一方、保険業界は、保険料が下がり利益が減ることを恐れ、議員への働きかけを強めており、先行きは不透明。
 また無保険者の中にいる不法移民も対象にすることへの市民の反感や、妊娠中絶にも保険を適用することに反対の声も出ている。


◎信仰と愛における真理に貢献する神学、教皇一般謁見

 【CJC=東京】教皇ベネディクト十六世は、バチカンで11月4日、水曜恒例の一般謁見を行い、カテケーシス(教会の教えの解説)で、教皇は中世のキリスト教著作家・思想家をテーマとしながら、修道院神学とスコラ神学を考察した。
 12世紀の神学の主要な流れである修道院神学とスコラ神学を対比して、教皇は前者をある意味で「心の神学」、後者を「理性の神学」と呼ぶことができると語った。
 教皇は当時この両派の間に生まれた議論を象徴するものとして、神学者クレルヴォーの聖ベルナルドとアベラールの間の論争を取り上げた。修道院神学を代表する聖ベルナルドは神学で「信仰」に重きを置き、一方、アベラールは「理性」をもとに理解しようと努めた。
 バチカン放送(日本語電子版)によると、教皇は、1140年のサンス公会議で、アベラールの教説のいくつかの誤りを指摘したのはベルナルドであったが、それは哲学の過剰な導入がアベラールの神学の教えを脆弱なものにする危険があったゆえ、と指摘した。一方で、教皇は後の成熟したスコラ神学の発展に対するアベラールの偉大な貢献にも言及された。
 教皇は、両者の神学的比較に、教会の健全な神学論議の有用性と必要を見出すと共に、教会の権威への謙遜な従順の大切さも指摘し、これらの神学研究が、教会の信仰を守り、愛における真理を勝利させるという目的は、今日も変わっていないと語った。


◎キング牧師の令嬢が米南部キリスト教指導会議の会長に

 【CJC=東京】米南部キリスト教指導会議(SCLC)理事会は10月30日、バーニス・キング氏(46)を第7代会長に選出した。同氏は故マーチン・ルーサー・キング・ジュニア牧師の令嬢。対抗馬のウエンデル・グリッフェン氏(アーカンサス州控訴裁判事)に投票の結果、23票対15票で決定した。
 同会議はこの2月、在任5年にわたったチャールス・スティール会長が辞任して以来、バイロン・クレイ氏が暫定会長に就任していた。
 1957年に、故キング牧師やラルフ・デービッド・アバナシー氏、ジョセフ・ロワリー氏らが設立したSCLCは、一時は米国で最も強力な市民権運動団体と目されていたが、財政問題や内部紛争で影響力は低下している。
 バーニス・キング氏は迫力のある講演で知られ、著作もある。現在ジョージア州リソニアのニューバース・ミッショナリー教会牧師。故キング牧師、兄のキング・サード氏に次いでキング家からは3人目、女性としては最初の会長。


◎気候変動枠組み条約国会議へ国際カリタスなどがアピール

 【CJC=東京】京都議定書に続く2013年以後の温室効果ガス削減の国際的枠組みを協議するため、国連気候変動枠組み条約国会議(COP15)が12月7日からコペンハーゲンで開かれる。英、仏、ブラジルなど約40か国の首脳が出席する意向。
 国際カリタスやワールドビジョン、国際赤十字など10団体が、12月7日からコペンハーゲンで開かれる国連気候変動会議に向けアピール「気候変動、食糧不安、飢餓」と題するアピールを発表した。
 援助団体は「気候変動は、飢餓にさらされている10億人以上の苦難を救おうとする努力を無にしてしまい、食糧不安は貧困国の児童中心に毎年350万人を死に追いやる病気という地球規模の重荷の唯一最大の要因」としている。


◎中国地下教会の司教に公認教会加入をバチカン勧告?

 【CJC=東京】中国河北省保定のカトリック地下教会のフランシス・アンシュシン司教は、共産主義政権への反発を理由に10年間も獄中にあったが、意図に反して公認の天主教(カトリック)愛国会に加入した、とカトリック系アジア・ニュースが報じた。
 バチカン(ローマ教皇庁)側が、同司教に「地下から出る」よう勧告したという。中国政府が同司教が公認教会の一員となれば司教として認める意向という。


◎ブラジルの「イエス行進」に福音派150万人以上参加

 【CJC=東京】ブラジルのサンパウロで11月2日行われた「イエス行進」に福音派キリスト者150万人以上が参加した。今年が17回目になる行進、『キリストによる再生教会』が開催したもの。教会側はサンパウロ市中央にある広場に500万人が集まると予測していた。
 同教会は、5万6000米ドル(約500万円)を不正持ち込みしたとの容疑で5カ月間収監されていた米国からブラジルに8月帰国したエステヴァン・エルナンデス・フィルホ牧師夫妻が主宰している。
 ブラジルは最大のカトリック国とされているが、このところ福音派が増大している。2000年の調査では、74%がカトリックだったが、1990年は84%だった。一方で福音派は9%から15%。


◎ロンドンの青年集会で騒動、ボランテア襲われる

 【CJC=東京】英セブンスデー・アドベンチスト教会のボランテア、サイモン・サマビル氏(41)が10月28日、ロンドン南東部で3日間行われた青年集会に協力活動していた際、発生した騒ぎに巻き込まれた。午後9時過ぎに暴徒に襲われ、一時は生命も危ぶまれるところだったが、その後に持ち直した。
 青年集会は同派の南部イングランド会議と宣教団体『イエスと宣教』が共催し、毎晩100人を越す青年が参加していたが、最終日になって現地の不良青年約30人の邪魔が入った。
 サマビル氏は参加した青年たちを暴力から守ろうとして自分が襲撃の的になってしまい、ナイフ様のもので9回も刺されたという。
 警察は殺人容疑で16歳の少年をいったん逮捕したものの、捜査継続を条件に釈放した。


◎悪霊退散に頭蓋骨使わぬよう、ボリビア・カトリック教会が要請

 【CJC=東京】ボリビアのカトリック教会司教会議は10月30日、死者の霊を弔う「ナティタス」と呼ばれる宗教的な伝統行事で人間の頭蓋骨を祭ることをやめるよう訴えた。
 AFP通信によると、ボリビアでは11月8日がナティタス(「頭蓋骨の日」とも呼ばれる)にあたる。コロンブスの新大陸発見以前から行われていたとされ、頭蓋骨を花で飾り、帽子をかぶせ、ろうそくをともしてタバコやコカや飲み物を供え、家族を悪運から守ってくれるよう祈る。使用する頭蓋骨は、先祖のものであることも多い。
 だが、首都ラパスのエドモンド・アバストフロル大司教は、使われる頭蓋骨の多くは墓から盗掘され売買されたもので、先祖とは関係のない他人のものだとして、「死者を平和に眠らせるように」と呼びかけている。


《メディア展望》

  =カトリック新聞(11月8日)=https://www.cwjpn.com
★移住者と「痛み」も分かち合い=難民委=福岡で全国研修会開催 
★ボランティア活動で学んだこと=カトリック高校の生徒が発表=仙台
★米国の教会=耳の不自由な信者のため=ゆるしの秘跡DVD制作
★中央協出版部から新刊2冊=『カトリック教会の諸宗教対話の手引き』=『キリシタン時代の司祭像に学ぶ』
★アフリカシノドス=回心と社会改革訴え閉幕=教皇も評価、参加者に謝意
★グロリア少年合唱団=音楽通して若者育成=鎌倉・雪ノ下教会発足50年、海外でも公演

  =キリスト新聞(11月7日)=https://www.kirishin.com
★「カルトの共通項は人権侵害」=紀藤正樹弁護士らシンポジウムで指摘="救い"と"暴力"の関係問う=恵泉女学園大
★被害者が「小牧者訓練会」など提訴=裁判支援「モルデカイの会」発足
★教皇=聖公会からの加入認める=「使徒憲章」は後日発表
★日本キリスト教文化協会=キリスト教功労者を顕彰=第40回=赤星、高野、布能、一色の4氏
★簡単操作で低価格=聖書検索ソフト「こんなときにバイブル」 高齢者や未信徒でもOK
★教会に消火器 被害相次ぐ 兵庫 いずれもプロテスタント教会

  =クリスチャン新聞(11月8日)=https://jpnews.org
★日韓教会連合宣教=霊的復興到来に期待=クリスチャン新聞韓国支局開設記念セミナー
★「天皇制強化の一環」懸念=天皇在位20年記念式典 中止を要請
★第6回首都圏キリスト教大会=宣教150周年を記念=3実行委員長が福音語る
★牧師不祥事に第三者機関対応=香川地域牧師ら「人権問題相談所」設置
★聖学院大総合研究所が牧会支援策=悩める牧師に応える牧会相談電話を開設
★聖公会の礼典保ちカトリックへの加入可に=教皇「使徒憲章」を承認


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