世界キリスト教情報

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世界キリスト教情報 第980信(2009.11.02)

  • 第2回アフリカ特別シノドス、最終提案書を採択し終了
  • バチカン正義と平和評議会新議長にタークソン枢機卿
  • 教皇の聖公会受け入れ姿勢をキュンク神父が批判
  • 米国務省が信教の自由に関する年次報告書、中国「一部改善」の評価も
  • マレーシアで神を「アラー」と訳した聖書1万5000冊押収
  • ルーテル世界連盟次期総幹事にチリのマルチン・フンヘ氏
  • ドイツ福音教会指導者に初の女性ケースマン監督
  • 仏、サイエントロジー教会に組織的詐欺罪で罰金刑
  • 16世紀の写本など65点をスミソニアン博物館展示
  • 《メディア展望》

◎第2回アフリカ特別シノドス、最終提案書を採択し終了

 【CJC=東京】教皇ベネディクト十六世が招集した第2回『アフリカのための特別シノドス』(代表司教会議)は10月24日に最終提案書を採択し、25日、教皇司式のミサによって閉会した。シノドスでは『和解・正義・平和に奉仕するアフリカの教会"あなたがたは地の塩...世の光である(マタイ5・13〜14)"』をテーマに、4日から、全体会議や分科会を通して発表や討議を行った。23日には、シノドス参加司教からの全教会へのメッセージとして『神の民へのメッセージ』を発表している。
 最終提案書は教皇に提出され、通常公表されないが、教皇は今回内容の公表を許可した。
 バチカン放送(日本語電子版)によると、57項目からなる提案は第一に、「教会的交わり」の大切さを強調。第1回アフリカ特別シノドスが「復活と希望のシノドス」であったのに対し、今回のシノドスを「新たな聖霊降臨のシノドス」と位置づけながら、教会という神の家族において協力し合い、使徒的貢献を通して、アフリカの和解と正義と平和、全人類のために働き、アフリカを苦しめている諸問題が繰り返されることのないように努力したいとしている。
 次に「和解」「正義」「平和」を、アフリカの発展に欠かせない要素として示している。
 さらに、シノドスは、水や土地をはじめ、環境や天然資源を保護し、搾取から守ることを訴えている他、武器取引、共通善のための責任ある政治、収賄との戦い、公正な選挙、移民・難民問題、民族間の尊重などのテーマにも言及している。
 司牧上の推進事項として、司教たちは第一に教会のアイデンティティーである「福音宣教」を挙げ、生活の中で行いと言葉を通して福音の価値を人々に証しすることで、アフリカの教会が「地の塩」「世の光」として「和解」「正義」「平和」に奉仕していくことを願っている。
 さらに、提案書は、聖体の秘跡と赦しの秘跡、み言葉の持つ力の重要性に触れると共に、アフリカの女性が家庭と社会の中で果たす大切な役割とその権利の保護、青少年教育に留意し、若者や子供たちを搾取や暴力・麻薬から守る必要、障害者への支援、エイズやマラリアとの闘い、麻薬とアルコール問題、受刑者への関心、死刑制度の廃止、人間育成と福音宣教に役立つメディアの使用などを課題として示している。
 バチカン放送によると、23日発表された『神の民へのメッセージ』は7部分42章から成り立っている。
 メッセージに含まれる多くのアピールには、司祭の独身性・貞潔・物質的財産から離脱、「神の外交官」としての信徒の役割、信徒の恒久的育成、学校教育の重要性などのテーマが取り上げられている。また政界に向けたアピールもあり、収賄と闘い、共通善のために働く聖なる政治家をアフリカは必要としていると、強調している。さらに、カトリックの家庭に対し、近代的な風潮が家庭を破壊することがないよう、また貧困と闘うよう政府に働きかけていかなければならないと述べている。
 家庭と関連して、シノドス参加司教たちは、カトリックの男性と女性の役割を確認し、特に男性の夫・父親としての責任ある役割を強調。命を受胎の瞬間から擁護し、子どもの教育に留意するよう呼びかけている。
 メッセージは国際社会に対して、アフリカを尊重と尊厳をもって見守り、経済システムや債務問題を見直し、同大陸の自然と資源を破壊、搾取することがないよう訴えている。
 司教たちはエイズ問題や、諸宗教間の対話、信仰の自由、民族間の和解、移民の受け入れなどの重要問題にも言及している。


◎バチカン正義と平和評議会新議長にタークソン枢機卿

 【CJC=東京】教皇ベネディクト十六世は10月24日、バチカン(ローマ教皇庁)正義と平和評議会議長レナート・ラファエレ・マルティーノ枢機卿の定年引退を承認、後任にピーター・コドゥオ・アピアー・タークソン枢機卿(ケープ・コースト大司教)を任命した。
 タークソン枢機卿は、1948年、ガーナ生まれ。
 教皇はまた、22日付で、同評議会の局長にマリオ・トーソ神父(サレジオ会)を任命した。同神父は、1950年、イタリア生まれ。同評議会顧問。
 なお同日付で、教皇は家庭評議会の局長に、教皇庁生命アカデミー副会長、モンシニョーレ・ジャン・ラフィッテを任命した。同師は、1952年生まれ、フランス出身。


◎教皇の聖公会受け入れ姿勢をキュンク神父が批判

 【CJC=東京】カトリックの反体制神学者ハンス・キュンク教授が、教皇ベネディクト十六世を批判した。教皇がこのほど、英国国教会(聖公会)の反主流派を受け入れる意向を示したことに、同教授はローマ紙レプブリカの10月28日付け論説で「釣り上げ」は、両派の一致を目指した長年の働きにそぐわず、「教会の一致に背く、聖職者の略奪だ」と主張している。
 バチカン(ローマ教皇庁)は聖職者独身制の重要性を強調しているが、聖公会司祭の受け入れに際しては適用しない、としている。ただ司教にはなれない。しかしキュンク氏は、既婚司祭の受け入れは、独身聖職者の間に憤まんを呼ぶ、と警告している。
 バチカン機関紙ロッセルバトレ・ロマノは10月28日、第1面で編集者がキュンク神父は「またも、ベネディクト十六世を根拠なしに厳しく批判した」と指摘した。


◎米国務省が信教の自由に関する年次報告書、中国「一部改善」の評価も

 【CJC=東京】米国務省は10月26日、世界各国の信教の自由に関する年次報告書2009年版を発表した。中国について、昨年に続き宗教弾圧などが「特に懸念される国」としたものの、一部宗教団体の活動規制が緩和されるなど一定の前進が見られる、と評価した。バラク・オバマ大統領の訪中を意識したものとも推測される。
 中国について報告書は「政府が脅威ではないと見なした宗教団体」の活動の自由が拡大したと評価、中国政府が4月に発表した「国家人権行動計画」にも言及している。一方で「宗教的信条や政治的意見の表明を分離独立運動と同一視」し、新疆ウイグル自治区やチベット自治区で「宗教活動を厳しく制限している」と指摘した。
 マイケル・ポズナー国務次官補(民主・人権・労働担当)は、この問題が「引き続き米中間での課題となる」としたものの、「有望な事例」としてキリスト教の活動が広がっていることを挙げた。
 米政府は今年1月、中国と北朝鮮、ミャンマー、イラン、サウジアラビアなど8カ国を昨年に続き「特に懸念される国」に指定している。
 報告書は、北朝鮮について「信教の自由への尊重を著しく欠く状況に変わりはない」と非難、またイランで「イスラム教シーア派以外の者は差別され、宗教的信条に基づく投獄や脅迫が報告されている」と言う。


◎マレーシアで神を「アラー」と訳した聖書1万5000冊押収

 【CJC=東京】インドネシアから輸入した聖書1万冊が、神が「アラー」と翻訳されているのを理由にマレーシア当局に押収されたと、教会関係者が10月29日語った。この3月にも5100冊がマレーシア聖書協会から押収されている。イスラム教徒が人口の6割以上を占めるマレーシアでは、イスラム教徒以外が「アラー」の語を使用することは禁止されている。
 マレーシア教会協議会総幹事のハーマン・シャストリ牧師によると、9月11日、ボルネオ島サラワク州の空港で、神を「アラー」と訳したインドネシア語版の聖書1万冊が押収された。
 同牧師は「聖書は信者の生活の一部。押収されなければならない理由はなにもない」と語った。「イスラム教徒を改宗させる目的で使用するのではないか」とのイスラム教関係者らの疑念については、「聖書は教会で使用されるものだ」と言う。
 「『アラー』は隣国インドネシアでは問題になっていないし、中東ではキリスト者も使用している。ほかの意図、例えば、イスラム教徒が人口の過半数を占めていることを強く印象付けたかったのではないか」と同牧師。AFP通信が報じた。
 カトリック教会は、マレーシアで発行するカトリック系新聞における「アラー」の使用をめぐり、政府と約2年間法廷で争った歴史がある。


◎ルーテル世界連盟次期総幹事にチリのマルチン・フンヘ氏

 【CJC=東京】ルーテル世界連盟(LWF)次期総幹事にチリのマルチン・フンヘ牧師(48)を10月26日選出した。
 LWFは22日から27日までジュネーブ郊外で常議員会を開催した。アフリカから初めて総幹事にイシュマエル・ノコ牧師が1994年選出された。後任となるフンヘ氏はLWF指導者としては、中南米から初選出。
 フンヘ氏は1980年から86年まで独ゲッチンゲンのゲオルグ・アウグスト大学でプロテスタント神学を学んだ。89年、チリ福音ルーテル教会(IELC)牧師に叙階、2000年までサンチアゴの2教会に奉仕した。1996年から2000年までIELC議長。同年9月からLWF宣教開発部門の中南米地域担当。不当な負債問題解消に取り組む地域教会の活動に貢献した。


◎ドイツ福音教会指導者に初の女性ケースマン監督

 【CJC=東京】ドイツ福音教会(EKD、信徒2400万人)はウルムで開催した総会で10月28日、マルゴット・ケースマン氏(51=ハノーバー教区監督)をヴォルフガング・フーバー常議員会議長の後任に選出した。同派議長としては女性で最初、またこれまでの最年少。
 ケースマン氏は142票中の132票の支持を得た。2007年に、26年間連れ添った夫に離婚を要求、話題となったが今回の選出には影響しなかったと見られる。
 同氏は、もっと多くの人を信仰に導く教会の長となりたい、と語った。
 総会では常議員14人定数のうち13人も選出された。残り1人は3分の2の信任を得られなかった。全員が選出されなかったのは、同派史上初めて。


◎仏、サイエントロジー教会に組織的詐欺罪で罰金刑

 【CJC=東京】仏裁判所は10月27日、1990年代に弱い立場にある信者から金銭をだまし取ったとして、新興宗教団体サイエントロジー教会の支部に、組織的詐欺罪で60万ユーロ(約8200万円)の罰金を言い渡した。AFP通信が報じた。仏では5月に改正された法律により、同宗教団体を即座に解散させることは出来ない。
 罰金を言い渡されたのは、パリにあるサイエントロジー・セレブリティーセンターと同センターの書店。同団体のフランス人指導者アラン・ローゼンベール被告にも、同罪で執行猶予2年、3万ユーロ(約410万円)の罰金を言い渡した。同教会側は控訴する意向。
 今回の裁判は、女性2人の訴えによるもの。1998年に人間の精神エネルギーを計測できるとする「エレクトロメーター」など、同教会の高価な製品を買わされて2万ユーロをだまし取られたとする人と、同年に、同教会の信者だった雇用主にテストを受けさせられ、プログラムに参加するよう強要されたが、拒否すると解雇された人。
 サイエントロジー教会は、トム・クルーズやジョン・トラボルタなどハリウッド・スターも入信している。


◎16世紀の写本など65点をスミソニアン博物館展示

 【CJC=東京】米ワシントンのスミソニアン博物館で、16世紀のペルシャやトルコのシャーやスルタン、一般のイスラム教徒らの手による貴重な書籍の展示会が開催されている。
 会場では、旧約聖書やコーランなどの写本、星座に登場する人物を描いた占星術書など65点が展示されている写本には、イスラム教の預言者からアダムとイブや聖母マリアなど聖書の登場人物までさまざまな人物が描かれているほか、星座や天体を象徴するシンボルなども含まれている。
 展示会は来年1月24日まで開催される。


《メディア展望》

  =カトリック新聞(11月1日)=https://www.cwjpn.com
★日本カトリック医療団体協議会 第1回大会=信仰と医療 多角的に=長崎
★教皇=特別な管轄区設立へ=転籍希望の聖公会信者受け入れるため
★宣教と学校の宗教教育めぐり 教皇庁教育省が書簡
★まず「傾聴」に徹する=統合失調症=教会の対応学ぶ=東京教区「こころのセミナー」
★友として寄り添う=孤独な悩みに顔の見える相談=東京自殺防止センター
★大阪教会管区部落差別人権活動センター=見えない女性差別=京都・河原町教会=対話集会で考える

  =キリスト新聞(10月31日・休刊)=https://www.kirishin.com

  =クリスチャン新聞(11月1日)=https://jpnews.org
★クリスチャントゥデイは「異端言論」=韓国主要2教団が総会決議=寄稿など規制、警戒呼びかけ=張氏を「再臨主」と教育
★ウィロークリーク教会ビル・ハイベル牧師=コーチングに初来日
★体力勝負の教会訪問=日基教団東京教区「北支区五十三次」
★聖化大会=「きよめの危機」問題提起=若返り模索 疑問も率直に
★朝祷会関東ブロック大会が第25回=新旧両教の記念年を覚え
★張氏を韓基総再調査=CBSテレビが報道


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            ........................... https://www.kohara.ac/church/

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