世界キリスト教情報 第965信(2009.07.20)
- 米聖公会は同性愛主教叙階停止を解除
- 2010年を移住者との連帯の年に、と欧州教会会議
- 「キリスト教中世欧州」へ抵抗を、とルーマニア正教会指導者
- 教皇、北伊ヴァレ・ダオスタでの夏期休暇に
- 教皇が静養先で転倒、右手首を骨折
- 「修道女」は研究サンプルに最良、とドイツの科学者
- 100言語の手書き聖書作成、イスラエル外務省も支援
- 宗教右派を批判したキャスターのウォルター・クロンカイト氏死去
- 《メディア展望》
◎米聖公会は同性愛主教叙階停止を解除
【CJC=東京】米聖公会は7月8日から17日まで、カリフォルニア州アナハイムで開催した総会で14日、同性愛主教の叙階を3年前から停止していた措置を解除することを、圧倒的多数の賛成で決定した。世界聖公会共同体に属する各聖公会からは、一致のためには叙階禁止が必要だという警告を押し切ってのこと。
3年に1回開かれる総会では、「聖公会内のいかなる聖職にも」同性愛者がその生涯を捧げるよう「神は召し出されまたこれからも召される」と、出席した主教、司祭、信徒代表の大多数が主張した。
総会の信徒と司祭で構成される部会では7割以上が停止撤回を採択、主教部会では2対1の割合だった。
ニューハンプシャー教区の公然同性愛者ジーン・ロビンソン主教は、「これは、教会のために喜ぶべき日だ。いやもっと具体的には、全てを完全に包括することを再度支持した聖公会にとって喜ぶべき日だ」と自らのブログに書き込んだ。
また最終日の17日、各州で民間人同士の結合を合法的に認知している所では、司祭が同性間の結合を祝福することを認めた。世界聖公会共同体内部での抗争がさらに深刻化することは必至だ。
総会は、同性間の結合を祝福する典礼制定を検討し、2012年の次回総会に報告することを決めた。これが進めば米聖公会では結婚の定義を変更することになろう。現在は、結婚の正式定義は1人の男性と1人の女性との一つの結合、とされている。
米国では現在、主流派の中では合同キリスト教会(UCC)が同性愛者間の結婚を認めている。福音ルーテル教会も8月の総会で認める可能性がある。一方、福音派やモルモン教会などは同性愛関係を罪とし聖書で禁止されている、という立場。
ロビンソン氏が2003年に主教に叙階されたことは、全世界7700万人を擁する聖公会共同体に激論を呼ぶことになった。特に信徒が急増している南半球では同性愛は罪深く、聖書の教えに反するという見方が多い。
霊的最高指導者カンタベリー大主教ローワン・ウィリアムズ氏は、2008年夏、世界から主教600人が集まったランベス会議で、同性愛主教停止が解除されたら、それは共同体にとって「重大な危機」を迎える、と警告していた。
今回総会で、ウィリアムズ氏は「共同体の中の多数と共に、分裂へ向かわせるような決定をしないことを望み、祈る」と述べていた。
2003年のロビンソン主教選出以来、世界聖公会では指導的な大主教や国際組織の多くがこれ以上同性愛主教を選出したり、叙階しないよう警告を発していた。
すでに、南半球の大主教を初めとした何人かが、同性愛に親和的な方策に反対して米聖公会との関係を断ち切っている。米国内でも、4教区が同性愛方策に反対、数十の教区が離脱して6月22日、並行組織『北米アングリカン教会』を設立した。
シンクタンク『アングリカン・コミュニオン研究所』は、「米聖公会はすでに世界聖公会の大多数との交わりから外れている」と言い、さらに多くの教区が聖公会を離脱する、と予測した。
米聖公会の公式メディア『エピスコパル・ライフ』によると、アラバマ教区のヘンリー・パーリー主教は、停止措置解除に反対、「包括的な教会であることを私たちのために切望しているが、分裂した教会を望むものではない」と語った。「この問題に取り組むには、より大きな聖公会共同体の一部であることが必要だ」と言う。
同性愛主教に関する決定はまた米聖公会の会員に、聖公会共同体に「可能な最大限まで参加する」思いを起こさせ、一方で世界の聖公会には米聖公会が2007年をとって見ると世界共同体予算の3分の1にあたる66万ドル(約6億5000万円)を負担していることを気づかせることになった。
カサリン・ジェファート=ショリ総裁監督が選出されて以来、同性愛者が主教候補とされた教区もあるが、実際には選出されていない。ジェファート=ショリ氏は7月13日に停止解除に賛成投票した。
同性愛に親和的なグループ『インテグリティ・USA』回答のスーザン・ラッセル司祭は、今回の決定が「米聖公会の"カミングアウト"(公然化)過程に1歩を進めたものであり、神の包括的な愛が、公然化されていないまま実施されている信仰の共同体を求めている人たちに『来て見てください』と強く訴えるものになる」と指摘した。
◎2010年を移住者との連帯の年に、と欧州教会会議
【CJC=東京】欧州教会会議(CEC)は7月15日から7日間の日程で、6年に1回の大会をフランスのリヨンで開催した。ジャン=アルノール・ドクレルモン会長は、「移住者について考える時、欧州は他の地域なしでもやって行けると思い込むべきではない」と開会に際し、記者団に語った。
2010年を移住者、難民、少数民族などとの連帯を強化する年と定め、共同体をより包容的なものとするよう努力し、より安全な社会を作り出すのを助ける、という『2010計画』を今回大会では協議することになっている。「この問題で危機に瀕しているのは私たちの安全ばかりではなく、自らの国で耐えられない状況から逃れるのを余儀なくされている人たちをきちんと受け入れるということだ」とドクレルモン氏は述べた。
大会にはCEC加盟120教会の代表300人のほか500人が参加した。開会演説でクレルモン氏は、移住問題は、個人の自由、移動の自由と人権にからむ問題を引き起こす、と語った。「私たちの隣人であるその人たちは、暴力や飢餓のために国を離れなければならなくなった人たちだ」と言う。
2010計画は、CECと『欧州における移住者に関する教会会議』との統合決定に伴って出された。
◎「キリスト教中世欧州」へ抵抗を、とルーマニア正教会指導者
【CJC=東京】ルーマニア正教会の指導者ダニエル総主教は、フランス・リヨンで開催されている欧州教会会議で7月16日、宗教的多様性が増えることへの応答として「キリスト教中世欧州」を再建しようとの試みがある、と警告した。「私たちは、他者に対する尊敬を持ち、教義的、倫理的な相対主義に陥ることなく、宗教的多様性にもっと慣れる必要がある」と述べた。
ダニエル総主教は、人々の移住で欧州の宗教地図が急変した、と指摘した。「教会への、確実に変わり続ける大きな挑戦という、この非常に複雑な文脈の中で、私たちはキリスト教中世欧州を再建するという試みによって回顧的になる余裕はない。新しい問題に対する新しい解決を諸教会は共に見出すべき、という新しい挑戦をもたらす。これが新しい現実だ」と言う。
◎教皇、北伊ヴァレ・ダオスタでの夏期休暇に
【CJC=東京】教皇ベネディクト十六世は7月13日、夏期休暇のため北イタリアのヴァレ・ダオスタ州に向かった。同日正午過ぎ、イントロ市レ・コンブの山荘に到着した。
ベネディクト十六世がレ・コンブで夏を過ごされるのは、2005年と06年に続いて今年で3回目。
教皇は29日まで同地に滞在する。この間、。水曜の一般謁見は行なわれない。
◎教皇が静養先で転倒、右手首を骨折
【CJC=東京】教皇ベネディクト十六世(82)が7月16日夜、静養先のイタリア北部ヴァレ・ダオスタ州イントロ市レ・コンブの山荘の浴室で転倒した。
教皇は17日午前、近くのウンベルト・パリニ病院で治療を受けた。右手首が骨折していたという。
バチカン(ローマ教皇庁)報道事務所が同日発表した声明で、主治医のパトリチオ・ポリスカ氏が明らかにした。
◎「修道女」は研究サンプルに最良、とドイツの科学者
【CJC=東京】独カトリック通信KNA報道としてAFP通信が伝えるところでは、心理学者・疫学者のホルスト・ビッケル教授らの研究チームは、調査対象に南部バイエルン州の修道女442人を選んだ。
修道女は何十年にもわたり同じ修道院に暮らしてほぼ同じような毎日を過ごしているという同質なグループであり、結果を歪曲する可能性のある外部の影響を排除できるからだという。
442人のうち、認知症の兆候が現れていたのは104人で、うち92人は学歴が低かった。若いころの教育レベルとその後の認知症との明らかな相関性を示している。また、責任ある地位についている修道女は、そうでない人よりも認知症リスクが低いこともわかった。
ビッケル教授は、調査に協力してくれた修道女たちに感謝している。一方、修道女の代表は、「科学、ひいては人の助けになりたかったのです」と話している。
◎100言語の手書き聖書作成、イスラエル外務省も支援
【CJC=東京】『エルサレム国際キリスト教大使館』(ICEJ)という宣教団体が伝えるところでは、イスラエル外務省が「世界の人々が聖書を手書きする」計画を支援することになった。 100の異なった言語による聖書100冊を手書きで作成するという計画はイスラエルのNGO『聖書の谷協会』が主導して進められている。
すでに中国語(北京官話と台湾語)、英語、タミル語、フィンランド語が完成、へブル語が進行中だが、それらはエルサレムの『聖書の地博物館』に展示される。100冊全部を5年以内に完成させたいと言う。
◎宗教右派を批判したキャスターのウォルター・クロンカイト氏死去
【CJC=東京】米国を代表するジャーナリストで、CBSテレビのニュースキャスターとして活躍したウォルター・クロンカイト氏(92)が7月17日、ニューヨークの自宅で、脳疾患のため長期闘病の後、家族に見守られながら死去した。
1916年11月4日、ミズーリ州セントジョセフ生まれ。高校時代からジャーナリズムに関心を持ち、学校新聞に執筆した。62年から81年までCBSのニュース番組「CBSイブニング・ニュース」のアンカーマンとして活躍した。
ジョン・F・ケネディ大統領暗殺事件やマーチン・ルーサー・キング・ジュニア牧師の暗殺事件などを、冷静な視点から報道、68年には米政府のベトナム戦争政策を非難、リンドン・ベインズ・ジョンソン大統領に大きな影響を与えたと言われる。81年3月に番組降板後も、CBSやCNNなどの特派員や執筆活動を通じてジャーナリストとしての活動を継続した。またジャーナリスト養成学校で、後進の育成にあたった。
バラク・オバマ米大統領は17日、「クロンカイト氏はその日の最も大事な問題に我々を導いてくれる信頼できる人物だった。この国は大切な友を失った」との声明を発表した。「CBSニュース、ジャーナリズム、本当のところアメリカをクロンカイトなしにイメージ出来ない」とCBSニュースのショーン・マクナマス会長は語っている。
米国の宗教右派、特にその有力指導者に対しては厳しい意見を持っていた。信仰と自由の擁護団体『インターフェイス・アライアンス』(IA)に寄せた書簡で、個人的な意見を言わない時は過ぎ去ったとして「パット・ロバートソンやジェームズ・ドブソンのような人の、国の政治指導者に対する危険で増しつつある影響力に私は非常に不安なので、発言しなければならないと思う」と述べていた。
ただ、著名な大衆伝道者ビリー・グラハム氏はクロンカイト氏を「ジャーナリズムの世界で得た親友の1人。彼はある種の偶像だった。アメリカ人の心と魂の中で、彼に代わりえる人がいるだろうか、と思う。多くの問題について、私は彼の見方に敬意を払った」と声明で述べている。
クロンカイト氏は、IAに宛てた書簡でさらに「私は、発言の自由が私たちの国の基本原則であることは理解しており、自分の思いを発言する勇気のある人を尊敬する。しかし信仰に関わりを持つ1人として、宗教右派のグループが、自分たちの不寛容な政治課題を推進するために宗教を利用することを、警戒しながら見つめてきた。長年にわたって、彼らは政府の全てのレベルで相当の影響力を獲得してきた。地域の学校理事会、行政機関、裁判所、そして議会でだ。彼らは宗教が伝統的に果たしてきた癒しの役を、不寛容に政治的な綱領に、抜け目なく作り変えた」と述べている。
《メディア展望》
=カトリック新聞(7月19日)=https://www.cwjpn.com
★教皇ベネディクト16世=新回勅で指摘=経済危機克服と真の発展に=道徳的価値観が必要
★教皇=麻生首相と意見交換=アフリカ開発援助、使徒座との関係など話題に
★教皇=オバマ米大統領と会談=生命倫理で教会の立場強調
★出入国関連3法成立で関係NGOが抗議声明
★日本プロテスタント宣教150周年=横浜で記念大会開催=「主にあってひとつ」=延べ16000人が祝う
★カトリック精神どう伝える?=保育施設協会=全国の施設長らが研修
=キリスト新聞(7月18日)=https://www.kirishin.com
★「同労者」としての歩み偲ぶ="水牛の神学"の小山晃佑氏追悼=岩橋常久氏が説教=「戦後キリスト教のカイロス」
★太平洋教会協議会(PCC)総幹事、会見で日本を非難="自国で温室ガス削減しなければ"
★カトリック司教協議会=G8向け声明=首相、教皇と会議
★上智大学=小林陽太郎氏に名誉博士号=次代担う"人間力を"
★『平和を実現する力』を出版=四竈揚氏=山形学院高で講演
★北京=「零八憲章」呼び掛け人劉暁波氏を逮捕=香港正平協が釈放を要請
=クリスチャン新聞(7月19日)=https://jpnews.org
★ローザンヌ運動ダグ・バーゼル総裁=日本宣教学会で講演=21世紀 宣教の優先課題=世界の痛みに応え「真理」伝える
★米南部バプテスト連盟=教勢減退への対応が焦点
★カナン・キリスト教会=みんなで建てたベツレヘム祈祷院=廃材で手作り=総工費20万=ラザロのように甦った古家
★「日本の温暖化被害500億円支援など無意味」と太平洋教会協議会総幹事
★霊感商法社長ら起訴
★パウロの遺骨発見?
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