世界キリスト教情報 第964信(2009.07.13)
- 7月10日、ジュネーブでカルヴァン生誕500年記念礼拝
- 教皇が新回勅「カリタス・イン・ヴェリターテ」発表
- 教皇、一般謁見で回勅「カリタス・イン・ヴェリターテ」を紹介
- 教皇、オバマ米大統領と個人会談
- 教皇、麻生首相と会見、経済危機やアフリカへの支援など話題に
- バグダッドで6教会が相次ぎ襲撃される
- 現存する最古の聖書シナイ写本、大英図書館がネット公開
- 《メディア展望》
◎7月10日、ジュネーブでカルヴァン生誕500年記念礼拝
【CJC=東京】プロテスタント・キリスト者を生み出すことになった、いわゆる宗教改革の創始者の1人ジャン・カルヴァンの生誕500周年記念礼拝が7月10日、ジュネーブで行われた。
カルヴァンは北フランス・ノワイヨンで1509年7月10日に誕生し。独立都市ジュネーブで果たした、宗教改革における役割がその後のプロテスタント教会に与えた影響は今日にも及んでいる。
カルヴァンが説教していた教会として知られるサンピエール大聖堂には、宗教界や政治指導者が集まり、社会問題に関する現代の応答の基盤とも言えるカルヴァンの思想を振り返った。
ENI通信によると、「私たちは、神が配慮されたもの、すべてのための、すべての人間のための、そしてすべての創造物のための正義に関心を集中すべきた」と、世界改革教会連盟のセトリ・ニョミ総幹事は語った。同氏はガーナ出身、長老派。ジュネーブのローレンス・モッティエ牧師との対話の中で「私たちが創造物の全体性に、より配慮することで変革について神の代理となること」についてカルヴァンから示唆を得るよう、奨励した。モッティエ氏は、カルヴァンが「『富める者も神に仕えられる』ことが真実ならば、『富める者が心を支配している所では、神の権威は失われる』こともまた真実であることに気づく」と指摘した。
マダガスカル、韓国、と現地の聖歌隊が礼拝を際立たせた。ミシュリン・カルミ=レ外相、デービド・ヒラー市長らに加えカトリック教会のピエール・ファリーヌ補佐司教も出席した。
記念礼拝は、昨年11月から世界各地で行われた一連の記念行事のハイライトとでも言うべきもの。
この日、ベルリンでも記念式典が行われた。フランク=ヴァルター・シュタインマイヤー外相が、民主主義の展開に果たしたカルヴァン主義の重要性と、それがヨーロッパに与えた影響を評価する演説を行った。同氏は社会民主党の首相候補と目されている。
◎教皇が新回勅「カリタス・イン・ヴェリターテ」発表
【CJC=東京】教皇ベネディクト十六世が7月7日、回勅「カリタス・イン・ヴェリターテ(仮訳:真理における愛徳)」を発表した。同教皇の回勅としては第3作目。
教皇はこの回勅の中で、「愛徳(カリタス)」を教会の社会教説の中核として示しつつ、その愛徳が真理の光に照らされている必要を強調している。
バチカン放送(日本語電子版)によると、回勅は、社会的テーマを持つもので、序文、本論6章、結びを合わせ全79節。教皇パウロ6世の回勅「ポプロールム・プログレッシオ」のメッセージに触れながら(第1章)、「現代における人間的発展」(第2章)、「兄弟愛、経済発展、市民社会」(第3章)、「人々の発展、権利と義務、環境」(第4章)、「人類家族の協力」(第5章)、「人々の発展と技術」(第6章)のテーマを展開。神の愛に心を開き、『真理における愛徳』のうちに、勇気をもって正義と共通善を追求し、人類の真の発展に寄与するよう招いている。
◎教皇、一般謁見で回勅「カリタス・イン・ヴェリターテ」を紹介
【CJC=東京】教皇ベネディクト十六世は、7月8日、水曜恒例の一般謁見を行なった際の講話で、前日発表した新回勅「カリタス・イン・ヴェリターテ」を紹介した。
バチカン放送(日本語電子版)によると、真理に基づく愛(カリタス)はすべての人の真の発展のための中心力であると述べ、理性と信仰の光に照らされた愛によってのみ、人間的価値と高度な人間性をそなえた発展を達成することができる、と教皇は強調した。
教皇はイタリアのラクイラで始まった主要国首脳会議にも言及。この会議が貧しい人々をはじめ、すべての人民に真の発展をもたらす有効な決定と指針を見出せるよう要望した。
◎教皇、オバマ米大統領と個人会談
【CJC=東京】教皇ベネディクト十六世は7月10日午後、米国のバラク・オバマ大統領と会見した。
ラクイラ・サミット終了後、ローマに到着したオバマ大統領は、バチカン(ローマ教皇庁)を訪れ、まず国務長官タルチジオ・ベルトーネ枢機卿および外務局長ドミニク・マンベルティ大司教と会談。続いて、教皇との初めての個人会談に入った。
バチカン放送(日本語電子版)によると、会談では、すべての国々の未来と人類の発展を担う共通課題として、特に人間のいのちの擁護と推進、良心上の反論の権利などがテーマとなった。また、移民問題では、家族の呼び寄せについて話し合われた。
またサミットの成果、中東平和、文化・宗教間対話、世界経済危機とそれに関連する倫理問題、食糧問題、アフリカおよびラテンアメリカの発展支援、麻薬問題、寛容を教える教育の重要性など、テーマは多岐にわたった模様。
オバマ大統領はこのたびの訪問の記念に、聖ヨハネ・ノイマンの聖遺物(ストラ)を教皇に贈った。聖ヨハネ・ノイマン(1811〜1860、レデンプトール会士)は、ボヘミアから独立後のアメリカに渡り、同地で司祭としてカトリック信者の司牧に尽力、1852年、フィラデルフィア教区の司教となった。教育事業にも多大な貢献をした。
オバマ大統領は、バチカンを訪問した米国大統領としては、1919年のウィルソン大統領以来、12人目。
◎教皇、麻生首相と会見、経済危機やアフリカへの支援など話題に
【ローマ=CJC】教皇ベネディクト十六世は7月7日、日本の麻生太郎首相と会談した。主要国首脳会議のため7日にイタリア入りした麻生首相は、同日正午過ぎバチカン宮殿を訪れ、教皇と個人会談を行った。
バチカン(ローマ教皇庁)の発表によると、両者の会談は和やかな雰囲気のもとに行なわれ、国際情勢について意見が交換される中で、特に経済危機問題や、日本と教皇庁のアフリカへの支援などが話題となった。
上野景文駐バチカン大使はカトリック通信ZENITに、アフリカの最貧国が、自らには責任がない最近の経済危機の犠牲になってはならない、との点で両国は同じ見方だ、と語った。会談では、日本と教皇庁の友好関係や、教会と国家の協力についても言及された。
日本最初のカトリック宰相である麻生首相は、この後、バチカン国務長官タルチジオ・ベルトーネ枢機卿と外務局長ドミニク・マンベルティ大司教とも会見した。
日本とバチカンは1942年に国交を樹立しており、この3月、マンベルティ大司教はバチカン高官として初めて日本を訪問している。
◎バグダッドで6教会が相次ぎ襲撃される
【CJC=東京】イラクの首都バグダッドで7月11日夜から12日夜にかけて、キリスト教会6カ所が相次いで襲撃され、少なくとも4人が殺害され、32人が負傷した。米CNNテレビが報じた。
市内西部にある聖ヨセフ教会が11日午後10時ごろ爆破された。会堂内に置かれていた爆弾2発が爆発したという。
12日午後、中心部アルカラダ地区の2教会が連続爆破、さらに東部アルガディーア地区の教会でも爆破した。同日夕には市内東部のパレスチナ街の教会付近で自動車爆弾が破裂、4人が死亡、21人が負傷した。南部のドラ地区でも教会付近で爆破事件があり3人が負傷した。
イラクには推定100万人のキリスト者がいるとされたが、その多くが過激派の襲撃を逃れるため出国している。
◎現存する最古の聖書シナイ写本、大英図書館がネット公開
【ロンドン=CJC】現存する最古の聖書ギリシャ語写本の一つとされる『シナイ写本』が7月6日、ロンドンの大英図書館によってインターネット上に初めて公開された。同図書館では記念展示を9月7日まで開催する。
写本は19世紀半ばにエジプト・シナイ半島の聖カタリナ修道院で発見以来、150年以上も大英図書館、独ライプチヒ大学図書館、エジプト・シナイ山の聖カタリナ修道院、ロシア・サンクトペテルスブルグの国立図書館の4カ所に分散、所有されてきた。同修道院では1975年に新たなページが多数発見され、エジプト政府がこれを保管している。
大英図書館が、英国の『芸術・人間性調査委員会』(AHRC)などの資金によりデジタル化を提唱、共同事業として進めた。バーミンガム大学神学部のデービッド・パーカー教授の指導の下、4年がかりで65万語相当を解読、電子化、仮想的にイメージ約800ページにまとめ、対照テキストと共に閲覧出来る。
写本は約40センチ×36センチの大判で、4世紀ごろ、複数の人物により羊皮紙に手書きされた。元来1460ページ以上あったと見られる。その後に修正や訂正が加えられている。
※画像参考
※参考
芸術・人間性調査委員会=(AHRC、Arts and Humanities Research Council)
大英図書館のサイト=https://www.bl.uk/
《メディア展望》
=カトリック新聞(7月12日)=https://www.cwjpn.com
★188福者初の記念日祝う=各地で記念ミサ=長崎=青年が分かち合い
★教皇、パウロ年閉幕で=「使徒の墓」調査結果を公表=石棺内部から骨の破片
★難民申請者の「今」知ろう=名古屋教区=NGO「共の会」などが集い
★臓器移植法改正案=日宗連が意見書=慎重な審議要望
★超教派の第4回宣教学会=福音宣教の課題 共に模索
★海外に医療従事者派遣=超教派 アジア・アフリカへ=日本キリスト教海外医療協力会
=キリスト新聞(7月11日)=https://www.kirishin.com
★「同労者」としての歩み偲ぶ="水牛の神学"の小山晃佑氏追悼=岩橋常久氏が説教=「戦後キリスト教のカイロス」
★上智大学=小林陽太郎氏に名誉博士号=次代担う"人間力を"
★太平洋教会協議会フェイロアキタウ・カホ・テヴィ総幹事、会見で日本を非難="自国で温室ガス削減しなければ"
★『平和を実現する力』を出版=四竈揚氏山形学院高で講演
★北京=「零八憲章」呼び掛け人劉暁波氏を逮捕=香港正平協が釈放を要請
★リーバート修道女=学生部長に就任=サンフランシスコ神学校
=クリスチャン新聞(7月12日)=https://jpnews.org
★ローザンヌ運動ダグ・バーザル総裁=日本宣教学会で講演=21世紀 宣教の優先課題=世界の痛みに応え「真理」伝える
★米南部バプテスト連盟=教勢減退への対応が焦点
★単立カナン・キリスト教会=みんなで建てたベツレヘム祈祷院=廃材で手作り総工費20万=ラザロのように甦った古家
★「日本の温暖化被害500億円支援など無意味」と太平洋教会協議会フェイロアキタウ・テヴィ総幹事
★福岡C・C・C福音センターに憩いの「サランバン」=日本宣教の一粒の麦=ニューライフ活動中に事故死の李恩植さん記念
★霊感商法社長ら起訴
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