世界キリスト教情報

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世界キリスト教情報 第957信(2009.05.25)

  • スコットランド教会は公然同性愛聖職任命に同意
  • 教皇、聖地訪問は「信仰の本場への優れた巡礼」と評価
  • 妊娠中絶支持のオバマ大統領にノートルダム大学が名誉学位
  • 教皇使節がウイッテンベルグを初訪問
  • カルヴァンの熱意に帰れ、と改革教会連盟議長
  • 米国の調査で、信心深い人の方が良い市民と判明
  • バチカンが聖書を描いた切手発行
  • 「メナヘム」という名入りの古代の遺物を発掘
  • ネパールでカトリック教会が爆破され死者2人
  • キング牧師の伝記映画、スピルバーグ監督らが製作へ
  • カンヌ映画祭でケン・ローチ監督作品がエキュメニカル審査員賞
  • 《メディア展望》

◎スコットランド教会は公然同性愛聖職任命に同意

 【CJC=東京】スコットランド教会(長老派)はエジンバラで開いた総会で5月23日、公然同性愛聖職の任命を阻止する提案を否定、スコット・レニー氏(37)の任命を326票対267票で承認した。同氏はかつて女性と結婚したものの、現在は男性1人と関係を維持している。
 10年前に聖職に任命されていたが、昨年スコットランドのアバーディンにある教会に異動する際、反対の声が上がった。その1人、グラスゴーのザイオン・バプテスト教会のジャック・ベル牧師は「聖書で神が同性愛について語っていることに従って完全に反対だ」と語った。


◎教皇、聖地訪問は「信仰の本場への優れた巡礼」と評価

 【CJC=東京】教皇ベネディクト十六世は5月20日、恒例の一般接見の際、サンピエトロ広場に集まった2万人を前に、8日から15日までの聖地訪問について「信仰の本場への優れた巡礼」だったとし、地域の人々と会見する機会ともなったことを評価した。
 今回の訪問を「巡礼」とする理解は、ヨルダンでネボ山を訪れた際にも示された。モーセが約束の地を最後に見渡した場所に立って、教皇は「巡礼としてという立場」に衝撃を覚えたとして、山上のモーセと同様、大きく美しい約束と、私たちを超える現実との間を巡礼しているのだ、と語った。
 イスラエルに移動するに当たって、教皇は「信仰の巡礼」と「平和の巡礼」の双方として訪れたことを強調した。
 エルサレムのホロコースト(ユダヤ人虐殺)記念館を訪れた恐慌は「犠牲者の苦しみ」に触れ、追悼の意も示したが、ユダヤ教側からは「ホロコーストを防げなかったことへの謝罪がなかった」ことへの反発が出ている。
 キリスト者、ユダヤ教徒、イスラム教徒、ドルーズ派、サマリア派などの代表と、教皇が会談した際にも、私たちを分けているもの全てに敬意を払い、私たちを祝福された被造物として結び付けることを全て推進し、私たちの共同体と世界に希望をもたらす願いと共に勇気を持って前進するよう勧めたが、教皇の演説が終わると、エルサレムのイスラム法廷の最高判事シェイク・タイシル・タミミ氏が、アラビア語でイスラエルを非難する発言をした。ユダヤ教徒2人が退席した。
 教皇の外国訪問は「巡礼として」という例が多い。しかし教皇は同時にバチカン市国の元首でもある。ホロコースト問題、そしてイスラエルとパレスチナの抗争にしても、教皇の意向と現地側の意向にズレが生じるのは自然の成り行きと見られる。
 さらに今回の訪問で、ユダヤ教徒、イスラム教徒に向かってキリスト教側から「同じようにアブラハムを始祖とする」と指摘しても、肝心の相手方がどう反応しているのか、直接伝わって来ない。そこに今回の訪問の成否を判断するカギがありそうだ。
 パレスチナ自治区を訪れた教皇には、弱者の味方をアピールする姿勢が目立った。バチカン内には「言うべきことは言った」とする声もある、とも報じられているが、理想と現実の間をさまよう巡礼のあり方の難しさを、教皇自身は感じていると見られる。


◎妊娠中絶支持のオバマ大統領にノートルダム大学が名誉学位

 【CJC=東京】バラク・オバマ米大統領は5月17日、米インジアナ州サウスベンドにあるカトリック系の名門校、ノートルダム大学の卒業式に招待され、名誉学位(法学)を授与された。大統領は1万2000人の聴衆を前に、妊娠中絶の議論に触れ「共存の道を探るべきだ」と語った。大統領は中絶の権利を支持しているため、名誉学位授与をめぐって中絶反対派やカトリック教会の指導者などから教義に反するとして批判が集まっていた。
 大統領は「中絶支持派と反対派は対立している」と認め、「米国の原則に立ち返り、相手の意見を悪と決めつけることなく議論を戦わせ、正しい道を見出さねばならない」と強調した。
 中絶に反対する活動家数百人が大学前に集まり、中絶された胎児の写真などを掲げて大統領に抗議した。
 地元メディアによると、校外では少なくとも活動家19人が逮捕された。


◎教皇使節がウイッテンベルグを初訪問

 【CJC=東京】バチカン(ローマ教皇庁)のドイツ駐在使節ジャン=クロード・ペリセット大司教が5月13日、宗教改革の火の手が上がったウイッテンベルグを訪問した。1521年に教皇レオ十世によってマルチン・ルターが破門されて以来のこと、と英カトリック週刊誌『タブレット』が5月21日報じた。
 2017年の宗教改革記念に備えた「ルターの10年」シンポジウムで、大司教はルターのカトリック時代について講演、ルターは信仰を「より良い社会を築く力」と見ていた、と語った。


◎カルヴァンの熱意に帰れ、と改革教会連盟議長

 【CJC=東京】16世紀の「宗教改革者」ジャン・カルヴァンの教えは、平和で結合した共同体を追究することを世界に直接呼び掛けたものだ、と世界改革教会連盟(WARC)のクリフトン・カークパトリック議長が語った。ENI通信が報じた。
 カルヴァン生誕500周年とフランス改革派教会創立450周年を記念する催しがパリのソルボンヌ大学で5月22日行われた際に述べたもの。「最大の抗争が宗教的な違いによって発生する、この引き裂かれた世界、引き裂かれた教会のなかで、カルヴァンの関わりはこれまでになく強い」と言う。
 カークパトリック氏は、カルヴァンが信仰のために迫害されたフランスの改革派キリスト者に、同じやり方で答えることをしないようしばしば勧めていた、と指摘する。「平和を生み出すものとなれ、というこの呼びかけが今ほど必要とされる時はない......改革派キリスト者として、私たちは異なった方向へ進むよう、私たちの共同体を思いやり、正義、助け合いを示すように生きることを呼び掛けられている」と言う。
 「カルヴァンの遺産として、教会、中でも改革派キリスト者の間にも生み出された分裂があるが、彼の深い熱意は一致と共同体を目指していた」とするカークパトリック氏は、カルヴァンがキリスト者の間の一致と共通の証のために働いていた、と指摘した。


◎米国の調査で、信心深い人の方が良い市民と判明

 【CJC=東京】米国では信心深い人の方が良い市民であり良い隣人であり、他の国よりも「驚くほど」宗教的だ、とハーバード大学の政治学者ロバート・パトナム教授。ただ若者は「はるかに現世的」なことは注目すべきだ、と言う。宗教専門RNS通信によると「若者は未来。中には宗教に目を向ける場合もあろうが、ほとんどはそうならない」と著書『独りでボウリング=アメリカのコミュニティの崩壊と復活』で指摘している。
 PTAの会員が減少するなど、市民社会を結びつけるものが消えてゆくものの、宗教的な人間は、公民関係への神の贈り物だ、とパトナム氏とノートルダム大学のデービッド・キャンベル教授は調査結果を共著『アメリカの愛=いかに宗教がわれわれの市民生活・政治生活を再構築するか』で論じている。同書は年内に刊行予定。
 『宗教と公共生活に関するプー・フォーラム』がフロリダ州キーウエストでこのほど開いた会議で、両氏は調査の一部を明らかにした。宗教的な人が自ら属す共同体への関与度は一般に比べ3〜4倍に達するという。共同体での活動に参加、ボランテア団体に加入、公開の集会に出席、地方選挙で投票、抗議デモや政治行進への参加や、宗教的、世俗的を問わずさまざまな運動のために時間とカネを捧げる、といったことでは非宗教的な人よりはるかに熱心だ。
 宗教的な人は正に「善人」なのだ。他人の荷物を持ってやり、並んでいる列に割り込みがあっても怒らず、物乞いにはカネを与える。
 市民活動への参画が増えるという調査結果は宗教指導者にとっては驚きかもしれない。
 神の裁きという考え方とか、天国に座を得ようといったこととは関係がなく、人々を地域社会の行動へ駆り立てるものは、教会、モスク、シナゴーグ、寺院で作った関係なのだ。それは「感情に厚い友」であり、信仰が増せば市民活動に参画する度合いも増す、とパトナム教授は言う。
 もしも「倫理的共同体」の誰から、大義名分を立ててボランテア活動を行うように求められたら、実際のところ「ノー」とは言いにくい。「教会の誰かから何かするように言われることは、ボウリング仲間から何か、と言われるのとは異なる」とパトナム教授。
 礼拝などにいつも出席しても、教会で親しくしている人がいない場合には、その傾向は教会に行かない人に近い。市民活動に参加するという点では、信仰自体よりは信仰共同体の比重が重い、と教授は見ている。
 しかしこれら信仰共同体は減少しつつある。さらに若者が集まらない。1950年代が米国史上で最も宗教的な時代だった。当時は市民の55%が定期的に教会などに通っていた。60年代に、性、麻薬、ロック音楽などの流行と共に、教会離れが始まった。宗教、特に福音主義信仰は70年代と80年代に勢いを盛り返したものの、90年代に入って宗教右派が政治力を付けるようになると、また下降ぎみになった、とパトナム、キャンベル両氏。「宗教の政治化とでも言われるものが、宗教に対する敵視を掻き立て、それが「非宗教主義と宗教団体と関係を持たない『無宗教』層を劇的に増加させた」と言う。
 若者層の4分の1は、今も教会に来ており、神を信じているものの、アメリカの宗教が政治的になったことにはうんざりしている。とパトナム氏。
 しかし誰もがそれを悪いと考えているわけでも、宗教的な人がより良い市民だとする説に賛成しているわけでもない。アメリカン・ヒューマニスト協会のロン・ミラー氏は、有神論者でなくても、有意義なもののためにはボランテアになるのは信仰者と変わりない、と言う。『世俗派学生連合』(SSA)がハリケーン被害を受けたニューオーリンズに行って住宅建設活動に協力している。「そこに行ったのは、良いことをするためで、神を信じていないから、そうしたのだなどと言ってはいない」とミラー氏は指摘している。


◎バチカンが聖書を描いた切手発行

 【CJC=東京】4月23日の『世界図書・著作権デー』に協賛してバチカン(ローマ教皇庁)出版室が5月20日に記念切手を発行、また消印も使用された。
 切手は0・6ユーロ(約80円)で、聖書バチカン写本の表紙と本文見開きが描かれている。


◎「メナヘム」という名入りの古代の遺物を発掘

 【CJC=東京】イスラエル考古局は、約3000年前、第一神殿時代の陶製の水がめの取っ手を発掘したが、それにはヘブル文字で「メナヘム」という名が記されていた、と現地紙『ハアレッツ』が報じた。
 メナヘムは今もイスラエルでは多く使われる名ではあるが、古代イスラエルにメナヘム・ベン・ガディ王がいた。考古学者はこの取っ手を紀元前900年ごろ、第一神殿時代のものと見ている。
 「この重要な発見は、古代東方、特にイスラエルの地で発掘されたものに見られる同様な名前を結びつける重要なことだ」と発掘主任のロン・ベエリ博士。「メナヘム」という名のついた工芸品がエルサレムで発掘されたのは初めて、と言う。


◎ネパールでカトリック教会が爆破され死者2人

 【CJC=東京】ネパールの首都カトマンズの南郊ラリットブルにあるカトリック教会が5月23日爆破され、死者2人、負傷者少なくとも12人が出た、と英公営BBC放送が報じた。ネパールは新首相選出をめぐって緊張が高まっている最中のこと。
 警察は周辺を封鎖し、捜査している。今のところ犯行を名乗り出た集団はないが、警察はヒンズー教過激派『ネパール防衛軍』の仕業と見ている。


◎キング牧師の伝記映画、スピルバーグ監督らが製作へ

 【CJC=東京】米公民権運動の指導者マーチン・ルーサー・キング・ジュニア牧師の伝記映画を製作する構想を映画製作会社『ドリームワークス』が5月19日発表した。同社を設立した1人であるスティーブン・スピルバーグ監督らがプロデューサーになるという。
 1968年に暗殺されたキング牧師が残した演説集や書籍などの権利を管理するため遺族が設立した団体『キング・エステート』から、同牧師の人生を映画化する権利を取得した。実現すれば、遺族が公認する初めての劇場映画になるとしている。
 スピルバーグ氏は「映画の創造力とキング牧師の人生のインパクトを合体させて力強い物語にしたい」と言う。
 キング牧師はアフリカ系市民に対する人種差別を終わらせるために非暴力抵抗を唱えた公民権運動指導者。1964年に史上最年少でノーベル平和賞を受賞したが、68年4月4日、テネシー州メンフィスで演説中に白人男性に暗殺された。「アイ・ハヴ・ア・ドリーム(私には夢がある)」の名演説で有名。バプテスト派牧師。
 米国では現在、キング牧師の誕生日1月15日に近い1月第3月曜日が「マーチン・ルーサー・キング・ジュニア・デー」として祝日になっている。
 スピルバーグ氏は監督として現在、リーアム・ニーソン主演のエイブラハム・リンカーン米大統領の伝記映画(2011年全米公開)を準備中だが、リンカーンの誕生日もアメリカの祝日になっている。
 『キング・エステート』の社長兼CEOは、キング牧師の息子デクスター・キング氏。現在、母コレッタ・スコット・キングさんが執筆した手紙の権利などをめぐり、兄弟のバーニス・キング、マーティン・ルーサー・キング三世両氏と法廷で争っていることから、『ドリームワークス』が、キング牧師の子どもたちの紛争に巻き込まれる可能性が出てきた。
 ニュースが報じられるとすぐに、長女バーニス・キングさんはAP通信に「スピルバーグ氏たちは『キング・エステート』からの承認を得たようだ。しかし私たちの承認は得ていない」と語った。それを受け、デクスター氏は19日、父の知的財産を所有しているのは自分、と声明を発表した。


◎カンヌ映画祭でケン・ローチ監督作品がエキュメニカル審査員賞

 【CJC=東京】第62回カンヌ国際映画祭のコンペ部門で最高賞を狙っている英ケン・ローチ監督のサッカー映画「ルッキング・フォー・エリック」がひと足先に、独立賞「エキュメニカル審査員賞」を受賞した。AFP通信が報じた。


《メディア展望》

  =カトリック新聞(5月24日)=https://www.cwjpn.com
★教皇 聖地を巡礼=平和と希望のメッセージ訴える=「流血、テロ、戦争はたくさん!」
★司教団=福音宣教の今後 話し合う会合6月に
★神戸などでミサ中止=新型インフル国内感染受け
★大分教区=殉教地で「福者ペトロ岐部と187殉教者」=列福記念ミサささげる
★キリスト教各派=入管法改定に反対声明=宣教師活動にも制限の恐れ
★上智、聖母合併へ=2学校法人で協議進む

  =キリスト新聞(5月23日)=https://www.kirishin.com
★エキュメニカル功労賞=釜ヶ崎キリスト教協友会が受賞="日本宣教に大きな問い"
★新型インフルエンザ 各国で猛威=教会も対応に苦慮
★豚処分でコプト教徒ら反発=エジプト政府、WHOの批判無視
★米誌タイム=「影響ある100人」=スカリオン修道女も
★鈴木留蔵氏 追悼記念宣教大会=宣教のヴィジョン継いで
★教皇="巡礼訪問"でイスラエル入り=ユダヤ人虐殺の記憶を心に

  =クリスチャン新聞(5月24日)=https://jpnews.org
★メキシコ=新型インフルエンザで礼拝中止命令=阿部和子宣教師=「疫病から救い出す」聖句で励まし
★創造的ダンスで主を礼拝=シャカ・ミニストリーズ・インターナショナル(SIM)の創始者ヤップ夫妻指導
★賀川豊彦献身100年シンポ=時代先駆けた贖罪愛の実践=EU、共生、NPO...今や主役に
★「不況も宣教に生かせる」=鈴木留蔵氏のスピリット継承を=追悼宣教大会
★首相の靖国神社真榊奉納に抗議=「違憲行為 解さぬ態度」
★臓器移植法改正に宗教者「待った」=日本宗教連盟が国会議員に意見書送る


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            ........................... https://www.kohara.ac/church/

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