世界キリスト教情報

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世界キリスト教情報 第955信(2009.05.11)

  • 教皇、"聖地巡礼"でまずヨルダンへ
  • 教皇、ヨルダンでイスラム指導者らとの出会い
  • 教皇、イエスが洗礼受けた場所を訪問
  • 教皇イラク訪問説をバチカンは否定
  • エジプト、豚の全頭処分開始 WHOの批判無視
  • 独福音教会指導者に『緑の党』のゲーリング=エッカルト氏
  • カルヴァン主義の度合いをオランダ紙がテスト
  • 「影響力ある100人」にスカリオン修道女も=米誌タイム
  • 『天使と悪魔』は宗教的に"無害"とバチカン機関紙
  • バチカンに将来は女性の衛兵も?
  • 《メディア展望》

◎教皇、"聖地巡礼"でまずヨルダンへ

 【CJC=東京】教皇ベネディクト十六世は5月8日午前、ヨルダン、イスラエル、パレスチナ自治区など"聖地巡礼"訪問にローマを出発、同日午後、最初の訪問地ヨルダンの首都アンマンに到着した。
 今回の訪問は、ベネディクト十六世にとって12回目の海外訪問。教皇の聖地訪問としては、パウロ六世(1964年)、ヨハネ・パウロ二世(2000年)に続くもの。
 バチカン放送(日本語電子版)によると、アンマン国際空港では、国王夫妻が教皇を出迎えた。空港での歓迎式で教皇は、豊かな歴史と文明、ユダヤ教・キリスト教・イスラム教にとって深い宗教的意味を持つ国、ヨルダンを訪れた喜びを表明した。
 「私は1人の巡礼者としてヨルダンにやって来た」と述べた教皇は、ヨルダンのイスラム共同体が推進する文化・宗教対話の姿勢に深い敬意を表明した。中東・世界平和の推進、諸宗教間対話、イスラエル・パレスチナ闘争解決支援、イラク難民の受け入れなどで、ヨルダンが第一線で果たしてきた役割を称賛した教皇は、同国がこれからも中東全体の恒久平和と真の正義の追求を続けることを要望した。
 教皇は、初日の公式行事として、アンマン市内の障害者リハビリテーション施設『レジナ・パーチス(平和の元后)センター』を訪問した。同センターは、障害者のリハビリテーションと社会参加を目的に、ヨルダンのカトリック教会ラテン典礼総大司教区が創立した施設。
 同センター付属の教会で行なわれた集いで、教皇は今回の巡礼でご自分が携えてきたものは「祈り」であり、「祈りとは希望を行為にしたもの」と述べた。教皇はこの後、王宮に、アブドラー2世国王とラーニア王妃を表敬訪問された。
 聖地巡礼2日目の9日午前、教皇は、アンマン南西約40キロにあるネボ山を訪問した。ネボ山は、標高806メートル、モーゼが最後に約束の地を見下ろした場所として知られる。ヨルダン渓谷、死海、エルサレム、ベトレヘムなど、聖地とヨルダン南部を一望出来る。
教皇はネボ山のモーゼ記念教会を訪れた後、展望台からの眺めに時を過ごした。
 続いて、教皇はマダバを訪問、カトリック・ラテン典礼総大司教区の大学建設のための礎石を祝別した。


◎教皇、ヨルダンでイスラム指導者らとの出会い

 【CJC=東京】"聖地巡礼"訪問でヨルダン滞在中の教皇ベネディクト十六世は、5月9日早朝にネボ山とマダバを訪れた後、アンマン市内のヨルダン博物館とアル・フセイン・モスクを訪問した。
 バチカン放送(日本語電子版)によると、モスク前で行なわれたイスラム指導者、ヨルダン駐在外交団、同国の大学総長らとの出会いで、教皇は神と隣人への愛と人間的理性に基づいた宗教の社会的貢献を強調した。
 イスラム教とキリスト教間には特に歴史の影響から来る多くの無理解があったと教皇は指摘。今こそ、祈りの中に憐れみ深い神の御旨に従って生きる者として互いを認め合い、正義と善を証ししながら、すべての人の尊厳を心に留めていかなければならないと話され、相互の理解と尊重のもと、調和ある世界のために共に人類に奉仕することを要望した。
 集いには、バグダッド総大司教の姿も見られた。教皇はヨルダンのイラク難民に対する受け入れに感謝を表明されると共に、これからもイラクの平和と和解のための支援が欠けることのないよう、地域のリーダーと国際社会に呼びかけた。


◎教皇、イエスが洗礼受けた場所を訪問

 【CJC=東京】教皇ベネディクト十六世は5月10日午前、首都アンマンのサッカー競技場で約3万人の信徒らを前にミサを行った後、ヨルダン川東岸のベサニ(ベタニア)を訪れた。教皇には、ヨルダンのアブドゥッラー・ビン・フセイン国王とラニア王妃、ガジ王子が同行した。
 イエス・キリストが洗礼者ヨハネから洗礼を受けた場所とされるワディ・ハラールでは、ヨルダン、レバノン、シリアなどの旗を手にした約5000人が、教皇を出迎えた。教皇は、教会建設予定地2カ所に教会の礎石を置いた。


◎教皇イラク訪問説をバチカンは否定

 【CJC=東京】バチカン(ローマ教皇庁)報道事務所長のフェデリコ・ロンバルディ神父は5月5日、教皇ベネディクト十六世が中東を"巡礼訪問"する際に、予定にはないイラクを訪問するのではないか、とのうわさを否定した。
 イラクの国会議員が予測したものだが、ロンバルディ所長は記者団に、日程は確定しており、バグダッドからの報道はまともに取り扱う種類のものではない、と語った。


◎エジプト、豚の全頭処分開始 WHOの批判無視

 【CJC=東京】エジプト政府は新型インフルエンザ対策のため4月29日、国内で飼育されている豚30万〜40万頭の全頭処分にすることにし、作業を始めたと発表した。養豚業者に対して豚の移動を禁止した。処分に対しては1頭あたり50〜250エジプトポンド(約880〜4400円)の補償金を支払う。
 世界保健機関(WHO)は豚が人への感染を媒介しているとの証拠はないとして、エジプト政府の「間違った判断」を批判しているが、カイロ全体で約6万3000頭のうち、すでに1万頭を処分したという。5月2日には北部アレクサンドリアで作業を開始した。
 政府によると、鳥インフルエンザの人への感染例は68件報告され、26人が死亡しているが、豚インフルエンザの感染は確認されていない。
 豚肉食を禁じるイスラム教徒が約90%を占めるエジプトでは、約10%に当たる少数派のキリスト教系のコプト教徒が豚を所有。ごみ処理業者がごみを飼料にするなどして飼育している事例も多い。カイロには「ザバリーン」(ゴミの人)と呼ばれる、主にコプト教徒の住民が約5万人いる。民家から回収した生ゴミで飼育した豚を売り生計を立てている。全頭処分は収入の大幅減につながる。
 カイロのマンシヤト・ナスル地区ではキリスト者住民約300〜400人が3日、豚の押収に反対して路上を封鎖、警官隊に投石した。警察は、ゴム弾と催涙ガスを使用、8人が負傷、内2人は警察に拘留された。
 政府は「飼育環境が不衛生で、野放しにできない」と指摘しているが、新型インフルエンザの世界的な拡大が政府に、不衛生な豚飼育を駆逐する絶好の口実を提供したとの見方も広がっている。


◎独福音教会指導者に『緑の党』のゲーリング=エッカルト氏

 【CJC=東京】かつて東ドイツで人権擁護活動を行い、現在では『緑の党』の有力政治家として知られるカトリン・ゲーリング=エッカルト(43)氏が、独プロテスタント最大教派『福音教会』(EKD)議長に就任した。
 バイエルン州ヴュルツブルクで開催された大会で5月2日選出された。同氏は、経済正義と創造の保護に関して声を上げる、と語った。「経済危機を乗り切ったとしても、気候の危機には取り組まなければならない」と言う同氏は連邦議会副議長でもある。
 これまでEKD議長は一般信徒が就任するのが恒例で、さらに最近では社会民主党員が選ばれおり、『緑の党』員が選ばれたのは初めて。
 キリスト教専門EPD通信とのインタビューで、ゲーリング=エッカルト氏は、プロテスタント教会がもっと公の場に出て行くべきだ、と述べた。「プロテスタント教会で一般信徒が指導的な役割を果たすことを明確に出来るのは良いことだし、もちろん、その人がすでに著名な人なら結構だ」と言う。
 ゲーリング=エッカルト氏は、東独の共産主義政権反対運動が行われた1989年にはライプチヒで神学を学んでいた。当時、市民運動として結成された『今ぞ民主主義』に加入した。同組織は1990年の両独統一後に『緑の党』と連合を結成した。
 同氏はその後、政治活動に専念するため神学研究を断念、98年に連邦議員に当選した。2003年から教会大会議員を務めているが、牧師と結婚し各個教会レベルの教会生活にも通じている、とEPD通信は報じた。


◎カルヴァン主義の度合いをオランダ紙がテスト

 【CJC=東京】宗教改革者ジャン・カルヴァン生誕500年の今年、その流れをくむ改革派教会が主流のオランダで、市民のカルヴァン主義の程度を測定するテスト25題をアムステルダムの新聞トゥロウが1月にインターネット上に掲載した。
 5月現在、英語とドイツ語版も登場した。英語版は次のサイトで。
 www.trouw.nl/nieuws/religie-filosofie/article2050113.ece


◎「影響力ある100人」にスカリオン修道女も=米誌タイム

 【CJC=東京】米週刊誌タイムは「世界で最も影響力のある100人」を毎年選定、発表しているが、4月30日、2009年度の中に『慈悲修道女会』(シスターズ・オブ・マーシー=RSM)のメアリー・スカリオン修道女(55)を選定した。
 100人は、毎年政治家や科学者、芸術家、経済人などから独自に選出。「政治家」部門ではバラク・オバマ米大統領やジェームズ・ゴードン・ブラウン英首相、アンゲラ・メルケル独首相など大物が名を連ねた。アジアからは中国の習近平国家副主席と王岐山副首相、インドネシアのスシロ・バンバン・ユドヨノ大統領らが選ばれた。日本人としては08年のノーベル物理学賞を受賞した南部陽一郎・米シカゴ大名誉教授が選ばれた。南部氏は東京出身だが、1970年に米国籍を取得した。100人のリストは5月1日発売号に掲載される。
 同修道女は米東部フィラデルフィアでホームレスの人たちに住まいを提供する非営利団体『H・O・M・E』創設者の1人で現在責任者。ホームレスの減少に貢献、他都市での活動のモデルともなっている。
 「この名誉に深く感謝しているが、まだ路上にそして私たちが提供しているシェルターにいる男女、子どもたちに緊急に対応することが大事だ。全ての人に家庭というものが存在しない限り、誰にも家庭は存在しないのだ」と言う。
 同修道女は『慈悲修道女会』に1972年入会した。同会は1831年、アイルランドのダブリンでキャサリン・マコーリーによって創設された。質素、貞潔、服従、貧者・病者・非知識者への奉仕を誓う。その中で同修道女は貧者たちへの奉仕に献身し、『H・O・M・E』創設に至った。


◎『天使と悪魔』は宗教的に"無害"とバチカン機関紙

 【CJC=東京】世界中で大ヒットとなった『ダ・ヴィンチ・コード』の続編『天使と悪魔』について、バチカン(ローマ教皇庁)の機関紙『ロッセルバトレ・ロマノ』は、5月6日付の映画評論及び論説で、「非常に商業的で歴史的事実は不正確」だが、「教会にとって危険ではない無害なエンタテインメント」と評価した。
 バチカンは第1作『ダ・ヴィンチ・コード』のキリストをめぐるナゾや、宣教団体『オプス・デイ』に関する描写に問題があるとして、強く反発していた。
 「原作は両方とも、教会とある派閥の対立を描くというテーマは共通しているが、善と悪のパートが違う」と同紙は述べている。
 『天使と悪魔』は『ダ・ヴィンチ・コード』と同じダン・ブラウン原作小説をロン・ハワード監督、トム・ハンクス主演で映画化。続編ではあるが、時間的には『ダ・ヴィンチ・コード』よりも前の設定で、ローマを舞台にアメリカ人の学者ロバート・ラングドンがバチカンにまつわるナゾを解いていくというスリラー。
 製作の米ソニー・ピクチャーズは、昨年、重要なシーンに登場する歴史的建造物サンタ・マリア・デル・ポポロ教会とサンタ・マリア・デラ・ヴィットリア教会での撮影許可を、イタリア当局に申し込んでいた。ただ教会の使用許可はバチカンからも取得しなければならず、この映画に関してバチカンは許可を出さなかった。


◎バチカンに将来は女性の衛兵も?

 【CJC=東京】バチカン(ローマ教皇庁)で5月6日、新任のスイス衛兵32人が宣誓を行った。総勢110人という世界最小の『軍隊』には、ドイツ語圏から19人、フランス語圏から10人、そしてイタリア語圏から3人が新たに加わり、教皇の護衛に当たる。
 隊長も交代、ダニエル・アンリク新隊長は「将来はスイス衛兵に女性が投入される可能性もある」と語った。
 スイス衛兵は1506年から教皇の護衛に従事している。これまで衛兵は、独身のカトリック教徒で、スイス軍の兵役に就いている男性だけ。歴代の隊長は全員、女性の受け入れを拒否してきたという。


《メディア展望》

  =カトリック新聞(5月10日・休刊)=https://www.cwjpn.com

  =キリスト新聞(5月9日)=https://www.kirishin.com
★自由求め終わらぬ闘い=「ピースリボン」裁判=支える会が「記録集」を発行
★カルヴァン生誕500年=ドイツ福音教会監督、フォーラムで指摘=「"労働倫理"は行き過ぎ」
★ユーラシア研20周年シンポ="ドストエフスキーと黙過"=亀山郁夫氏=「信じる」を重視
★ウガンダ聖公会=ギデオン参事司祭が来日=エイズ啓発で庭野平和賞
★ドイツ福音教会=「危険な暴力の防止が義務」=武器輸出産業を非難
★パキスタン=カラチYMCAの運営めぐり対立=不法占拠にキリスト者抗議

  =クリスチャン新聞(5月10日)=https://jpnews.org
★宣教150年記念講演会=初期の宣教師 憲法草案 起草も=「お雇い外国人」信教の自由獲得に奮闘
★身売り保護支援 タイ少女ら招待=横浜YMCA創立125周年記念
★「若者よ、イエスに帰れ」=自分、国、神への情熱促す=2009 J+Passion Tokyo 
★ウエスレアン・ホーリネス教団=信仰告白を可決=日基教団の告白を継承=新委員長に小寺徹氏
★アジア祈祷日5月24日=焦点は内戦のスリランカ=「平和」目指すキリスト者覚えて
★伝道福音教団=若手教職へのサポート強化


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            ........................... https://www.kohara.ac/church/

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