世界キリスト教情報

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世界キリスト教情報 第954信(2009.05.04)

  • 新型インフルに世界の教会も対応に苦慮
  • 教皇、8日から聖地へ"巡礼"
  • 世界最小の聖書をイスラエル工科大学が教皇に贈呈
  • 教皇、イタリア中部地震被災地を訪問
  • ワールド・ビジョンの救援船襲撃される=ソマリア沖
  • ノートルダム大学の大統領招待にカトリック者の意見分裂
  • 米国人の半数は宗教を変える
  • ライトの『ユニティ・テンプル』が存亡の危機に
  • 《メディア展望》

◎新型インフルに世界の教会も対応に苦慮

 【CJC=東京】新型インフルエンザの感染が世界各国に拡大する中で、多くの人が集まるキリスト教会も対応に苦慮している。感染者が地域で出ている場合、教会に行くことを制限すべき、との声もある一方で、力の源になるから行った方が良い、ただ感染したら家に止まれという動きもある。
 メキシコでは公的施設の閉鎖命令が出され、カトリック教会もミサを中止している。グアダラハラのフアン・サンドヴァル・イニグエズ枢機卿は、健康に不安があるなら日曜のミサへの出席は義務とはならない、と信徒に語っている。
 カトリック救援団体『カリタス・メキシコ』は、予防法と共に敬愛されているグアダルーペの聖母への祈りも盛り込んだパンフレットを作成した。マスクや消毒薬も配布したいが品不足に頭を痛めている。「とにかく絶対数が足りない」と救援担当のエンリケ・マルドナド・ガルシア神父。
 救援団体『ワールド・ビジョン』はメキシコ市事務所を一時閉鎖、スタッフ全員にマスクを配布した。『ワールド・リリーフ』は航空機を利用するスタッフに、咳をする時には口を覆うとか、常に手を洗うとか、改めて警告を出している。
 メキシコに隣接する米テキサス州内の聖公会教区では、全信徒にインフルエンザに注意するよう具体的な情報を提供している。
 米合同メソジスト教会でも、テキサス州サンアントニオ近郊の教会で5月3日の礼拝で歓迎の挨拶、握手と抱擁を止めたり、聖餐式のパンも1人ずつにしたりぶどう酒も使い捨てのグラスで配るなどの措置を取った。サンアントニオのユニバーシティ合同メソジスト教会では、聖餐式で個別包装したパンとパック入りぶどう酒を使うことにした。同派救援委員会は、メキシコの会員5万人を対象に、マスク供与を検討している。
 米福音ルーテル教会(ELCA)は「公衆衛生に関心を示すべき時の礼拝」指針を出し、個人、家族のインフルエンザ対策を示した。それによると、礼拝を止める必要はないが、牧師は地域の事情をよく調べて、会衆に不安を与えないように、と指示している。
 米カトリック教会ではバルチモア、カリフォルニア州フレスノ、メーン州ポートランドなどの教区で、入り口にあった聖水が取り除かれ、ホスチア(聖別された無発酵パン)を口に与えたのを手に渡すだけにしたり、聖杯からぶどう酒を飲むことを止めた。取り成しの徴として信徒と握手することを控える例も出ている。
 英ランカスター教区では、司祭が家庭訪問する際には、マスクや手袋を着用、1軒ごとに手を洗うこと、終油の秘跡を授けたり、病者に手を置く時にもマスクや手袋を着用を指示している。人々を励ますことと病気を広めることの双方への配慮が必要だ、という。
 ニュージーランドのカトリック教会も、ミサのホスチアを受け手の舌に載せないよう、また同じ聖杯からぶどう酒を飲まないように、司祭に指示している。


◎教皇、8日から聖地へ"巡礼"

 【CJC=東京】教皇ベネディクト十六世は5月8日から15日までヨルダン、イスラエル、パレスチナ自治区を訪問する。聖地の住民全てに、一致と平和という賜物をもって祝福を与えるよう、神に求める。
 日曜恒例の祈りの後で「男と女が初めて良い羊飼いの声を聞いた聖地へ巡礼のためこの金曜日に出かける」と教皇は語った。
 キリスト者だけでなくユダヤ教徒、イスラム教徒も聖地としている場所を教皇として訪れるのは、1964年のパウロ六世、2000年のヨハネ・パウロ二世に次いで3人目。


◎世界最小の聖書をイスラエル工科大学が教皇に贈呈

 【CJC=東京】テクニオン・イスラエル工科大学は、イスラエルを訪問予定の教皇ベネディクト十六世に、同大学制作の聖書(旧約)全編が入ったシリコンチップを贈呈する。同国のヘブライ語日刊紙イディオト・アハロノト4月27日報道としてAFP通信が伝えた。
 金でコーティングされたこのチップの大きさは、ピン先より小さい0・5ミリ。世界で最も小さい旧約聖書という。


◎教皇、イタリア中部地震被災地を訪問

 【CJC=東京】教皇ベネディクト十六世は4月28日、中部イタリア地震の被災地アブルッツォ州を訪問した。バチカン放送(日本語電子版)が報じた。
 6日に中部イタリアで発生した地震は、アブルッツォ州都ラクィラと周辺市町村を中心に300人近い犠牲者を出し、3万人以上が家屋を失う深刻な惨事となった。
 被災地訪問の朝、イタリアは強風を伴う悪天候に見舞われ、教皇は予定されていたヘリコプターではなく、車で現地に向かった。
 教皇が最初に訪れたオンナ村は、今回の地震で最も大きい被害を受けた地区の一つ。家屋の大半が崩壊、住民約400人の同村で、39人が犠牲となった。
 続いて教皇は、ラクィラ市内に向かった。同市のコレマッジョ聖堂は、このたびの地震で、本廊と翼廊の交差部が崩壊・落下し、内陣も大きく損傷した。ただし、同聖堂の創立者、教皇聖チェレスティーノ(ケレスティヌス)五世の聖遺物は無事だった。
 教皇は今回の災害の救援本部が置かれたラクィラ郊外コッピトの税務警察署で、市民をはじめ、被災市町村の行政責任者、司祭や修道者、救助隊員やボランティアらと会見した。
 教皇は、キリストの死と復活を記念した私たちは、神の御言葉に新しい光を見出しながら、この悲しい出来事にも人々が神への信頼と希望を失わないようにと祈ったと教皇は話され、この希望と共に、社会がそれぞれの責任を明確にすることで、「ラクィラ(鷲の意)は、再び飛ぶことができる」と励ました。


◎ワールド・ビジョンの救援船襲撃される=ソマリア沖

 【CJC=東京】キリスト教宣教専門のANS通信によると、救援団体『ワールド・ビジョン』がルワンダに向けて救援物資を輸送していたリバティ・サン号が4月半ば、ソマリア沖で「海賊」の襲撃を受けていたことが明らかになった。襲撃は成功せず、乗組員にも被害がなく、同船はケニアのモンバサ港に入港した。
 ワールド・ビジョンの援助船は4月初めにもルワンダ向けの食料油320トンを積んだマルスク・アラバマ号が襲撃されているという。
 ワールド・ビジョンは全世界100近くの国で1億人を対象に救援活動を展開している。スタッフは3万人を超えている。


◎ノートルダム大学の大統領招待にカトリック者の意見分裂

 【CJC=東京】米国のカトリック系ノートルダム大学が5月17日の卒業式にバラク・オバマ大統領を招き講演を依頼、さらに名誉学位を贈るという構想に、カトリック信徒の反応は複雑だ。カトリック教会が反対する妊娠中絶や胚幹細胞研究を大統領が支持していることが根底にある。
 調査団体『プー・リサーチ・センター』によると、賛否はほぼ半々だが、ミサへの出席の頻度によって意見が分かれるという。
 招待論議が起きていることを知っていた人は僅か48%。詳細を知っていたのは19%に止まっている。
 カトリック者の約半数は、大統領の姿勢にも関わらず招待に賛成している。反対は28%、意見なしが22%だった。一般的にはそれぞれ48%、25%、27%だった。ただヒスパニックでない白人のカトリック者で、いつもミサに通う人で見ると、反対が45%になるが、熱心でない人では、招待を正しいとする人が56%に達している。


◎米国人の半数は宗教を変える

 【CJC=東京】米宗教調査団体『プー・リサーチ・センター』の調べでは、米国で成人の半数は少なくとも1回は宗教を変えていることが分かった。3万5000人を対象に昨年行ったもの。USAトゥデー紙が報じた。
 改宗したカトリック者の71%、プロテスタントの60%は、霊的に満たされなかった、単に好ましかった、信念を持って変えた、と言う。
 カトリックでは止めた人が10%、入った人が2・6%。止めた人の3分の2、プロテスタントになった人の半数は「教えを信じることを止めた」としており、聖職者の性的スキャンダルを理由に挙げた人は3割に止まっている。
 教義上の違いではなく生活環境の変化が、プロテスタント各派間で変わる理由になっている。転居理由が4割近く、他派会員との結婚も理由になっているが、制度や信仰実践、人間関係などへの感情を理由にする人も36%。


◎ライトの『ユニティ・テンプル』が存亡の危機に

 【CJC=東京】米イリノイ州オーク・パークにあるユニテリアン・ユニバーサリスト教会の『ユニティ・テンプル』は著名な建築家フランク・ロイド・ライトが設計、名建築として知られているが、米歴史建造物保存トラストによると、緊急に修復、保存が必要な危険建築11カ所の一つに上げられた。現地紙シカゴ・トリビューンが報じた。ライト自身ユニテリアンだったという。
 同紙によると、『ユニティ・テンプル保存財団』のエミリー・ロス代表は、世界の宝なのだから、この指定で緊急修復が必要なことへの意識が高まる、と期待している。修復費用は2000万〜2500万ドル(約20億〜25億円)と算出されているが、これまでのところ約300万ドル(約3億円)が集まっただけ。
 ユニティ・テンプルは1908年に完成、90年に献堂された。コンクリート打ち放しの公共建築としては最古のものの一つ。ただ完成後数年で補修の必要が出て来たという。


《メディア展望》

  =カトリック新聞(5月3日)=https://www.cwjpn.com
★那覇教区=国際司牧センター開設=多国籍の信徒と一つの教会を
★世界召命祈願の日=教皇メッセージ=神への信頼によって召命に応答を
★福岡教区=「司祭召命の育成」=ことしの優先課題に
★フィリピンの姉妹教区から高校生招くため=チャリティーコンサートを準備=広島教区
★「地球単位」目指して=ボランティア連絡協議会=災害時の支援網考える
★イラン大統領の差別発言=バチカン高官が非難

  =キリスト新聞(5月2日)=https://www.kirishin.com
★日本プロテスタント宣教150年="宣教師の情熱"を明日へ=岩崎謙氏・澤正幸氏が記念講演=日本キリスト教会・日本キリスト改革派教会が共催
★「Ministry」創刊=18日に記念シンポジウム=「教会の課題と出版の役割」=FEBCで編集主幹インタビューも放送
★"戦争を拡大させるな"=キリスト者平和ネットなど 外務省に申し入れ
★ウエスレアン・ホーリネス教団=信仰告白原案を可決=新委員長に小寺徹氏
★桃山学院=創立125周年で2施設完成=9月にカンタベリー大主教迎える
★自殺防止に尽力=西原明さん死去

  =クリスチャン新聞(5月3日)=https://jpnews.org
★国内開拓伝道会(KDK)50周年=「色づく畑」開拓300教会=宣教師の挫折が生んだ日米支援の輪
★意味が届く詞で伝統的な66曲=国分友里恵さんが「現代賛美歌」制作=「君が代」のメロディーも
★首都圏イースターの集いに800人=宣教150年で相乗効果期待
★千葉県でひき逃げ容疑の牧師を逮捕
★同盟基督:2013年目途に機構改革進める
★ラブ・ソナタ神戸=大入り満員=人気女優ハン・ヘジンさんら信仰を証言


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