世界キリスト教情報

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世界キリスト教情報 第948信(2009.03.23)

  • 教皇、就任後初のアフリカ訪問
  • コンドームで問題克服...教皇発言に波紋広がる
  • ユダヤ人のキリスト教観は複雑、と調査
  • 日曜日を特別の日に、EUへ欧州教会会議が要請
  • フランスの物理学者デスパーニア氏にテンプルトン賞
  • バチカンのホームページに中国語版
  • バチカン外務長官来日、中曽根外相と会談
  • 《メディア展望》

◎教皇、就任後初のアフリカ訪問

 【CJC=東京】教皇ベネディクト十六世は3月17日、第11回の海外司牧訪問として23日までの予定で、カメルーンとアンゴラに向け出発した。
 教皇は機中で記者団に「エイズは資金だけで解決できない悲劇。コンドームの配布は問題をむしろ悪化させる」と述べた。そのうえで解決策は「宗教的、人間的な目覚めと苦しんでいる人への友情」にあるとした。「禁欲」を説くカトリック教会の方針を改めて強調した形。教皇はこれまでも「避妊具」の使用に反対の立場を強調してきたが、「コンドーム」という言葉を使ったのは初めてという。
 教皇は同日午後、最初の訪問先であるカメルーンの首都ヤウンデのンシマレン空港に到着した。空港では、ポール・ビヤ大統領ら政府要人やヤウンデ大司教ら教会関係者らが教皇を迎えた。
 教皇は18日、大統領を官邸に表敬訪問、個人会談を行ない、その後市内のクリスト・ロワ教会で、カメルーン司教団と会見した。教皇は席上、福音宣教の重要性を再発見するよう司教たちに呼びかけると共に、生誕2000年を記念する使徒聖パウロの姿を、宣教者の模範としてカメルーンの教会に示した。そして宣教を活性化させるために、司教の司祭たちとの一致、神学生らの育成の必要性を挙げた。さらに教皇は、マリ・レーヌ・デザポートル教会で、同国の司教、司祭、助祭、修道者、教会運動関係者ら出席のもと、夕べの祈りを行った。
 教皇は19日、バチカン大使館でイスラム教指導者22人と会見した。同国でイスラム教徒の占める割合は22%程度。カトリック信者は約27%。
 教皇は、イスラム教とキリスト教の対話と協力が、アフリカ大陸に平和と正義、共通善を推進する取り組みを力強く照らすかがり火となることを希望した。
 続いて、教皇は市内の競技場でミサを行った。アフリカ特有の鮮やかな色彩と豊かな音楽があふれるミサの中で、教皇は集ったおよそ5万人の信者たちに福音のメッセージを呼びかけた。
 教皇はミサを共同司式したアフリカの司教らに、今年10月バチカンで開かれる第2回アフリカ特別シノドスの討議要綱を渡し、アフリカの大きなダイナミズム、そして挑戦をシノドスで活かせるよう要望した。
 教皇は20日、カメルーンからアンゴラにアリタリア航空機で向かった。カメルーン出発直前に、大使館で狩猟専門のバカピグミー集団と会見したが、その際、贈り物として約30センチの亀を受け取られた。亀は機内に持ち込まれたが、バチカンまで持ち帰るのかは未定。


◎コンドームで問題克服...教皇発言に波紋広がる

 【CJC=東京】教皇ベネディクト十六世は3月17日、カメルーンとアンゴラに第11回の海外司牧訪問に出発したが、機中で記者団に対し「コンドームの配布で問題を克服することは出来ない」と語った。エイズを引き起こすHIVの感染予防対策としての避妊具普及を認めず、「禁欲」を説くカトリック教会の方針を改めて強調したもの。
 教皇がコンドームという言葉を使ったのは2005年の就任以来初めて。教皇はこれまで「避妊具」という言葉を使っていたが、世界で最多のHIV感染者がいるアフリカ歴訪に際し、問題を明確にするため使ったとみられる。
 アフリカは世界のエイズウイルス(HIV)感染者の67%が集中し、国連やNGOが有効なエイズ対策としてコンドームの無料配布を続けているだけに、カトリック信者が急増している地域での教皇発言に、エイズ対策に取り組む国際機関や各国政府、一部カトリック教会から「非科学的」「人命軽視」との批判が相次いでいる。
 世界保健機関(WHO)のエイズ問題責任者は「不特定多数との性交渉に結び付くとの科学的証拠はない」と反論した。国連合同エイズ計画(UNAIDS)は「HIV感染予防にコンドームは欠かせない」との声明を発表。スペイン政府も、アフリカ諸国に対する「コンドーム100万個」支援を突然発表し、教皇に対する"不服"を示した。
 仏外務省は「ベネディクト十六世の発言がもたらす結果に重大な関心を持っている」とし、公衆衛生施策と人命保護の義務に対する脅威だ、と指摘した。
 教皇の出身国ドイツのウラ・シュミット保健相は「貧困層の家族計画にコンドーム使用も認めるべきであり、それ以外の方法は無責任だ」と声明で述べている。
 カメルーンで医療問題の改善を提言する団体MOCPATの広報担当アラン・フォーグ氏はヤウンデで、81歳の教皇は現代世界からかい離しているとして「教皇は本当に21世紀に生きているのだろうか」と疑問を呈し、「100人のうち99人のカトリック教徒はコンドームを使用している。『肉体は弱し』ということを知るべきだ」と語った。
 ドイツのカトリック教会からも、コンドーム使用を認めるべきだとの意見が出ている。
 バチカン(ローマ教皇庁)が、教皇の機上発言を後で修正していたことが分かり、それも問題を複雑にした。
 エイズに関して教皇は「コンドームの配布で問題を克服することは出来ない。反対に問題を増やすだけだ」としていたのを「コンドームの配布で問題を解決は出来ない。反対に問題を増やす危険がある」となったのだ。他にも、援助計画には『魂』や霊的援助が必要だということを説明して、教皇がエイズ問題はカネだけでは解決出来ないだろう、と発言したのが、バチカンの公式資料では『カネ』が『広告スローガン』に変えられている。
 バチカンのフェデリコ・ロンバルディ報道事務所長は、これらの修正は国務省が行ったとしている。録音テープは正常に文書化され、イタリア語として意味が通じるように少々編集された、と言う。しかし教皇発言の意味を修正はされたとは思わない、と語った。同所長は実態を調査し、必要なら訂正する、と述べている。


◎ユダヤ人のキリスト教観は複雑、と調査

 【エルサレム=ENI・CJC】エルサレムのイスラエル研究所(JIIS)の調査では、信仰にあまり関心のない「世俗的な」市民の方が、キリスト教に寛容なことが分かった。同研究所のアムノン・ラモン氏は、矛盾の多い複雑な状況にあることを調査が示した、と3月16日語った。「信仰深いか否かが、回答を大きく支配する」と言う。
 調査は市民500人が、キリスト教信者への対応について電話質問に回答する形で行われた。
 調査では、若者層のキリスト者への寛容度が30歳以上に比べて低いことが分かった。教育レベルが高く、高収入で、アシュケナジー系であるとか、西欧の背景を持っている人の方がキリスト者への寛容度が高い。
 「調査は、全てのキリスト者がユダヤ人の敵ではないことを若者層に納得させるため、さらに努める必要があることを示している」とメルキト典礼カトリック教会のエリアス・シャクール大主教は語った。
 回答者の約52%がイスラエル国内外にキリスト者の友人がいない、と言う。イスラエルにはキリスト者15万人が居住しており、その内12万人はアラブ系市民だ。
 「世俗的な」市民の91%が、十字架を身に着けている人を見ても気にならない、と答えているが、宗教的とか超正統派と自認している人では6割が不快だと言う。
 前者の8割は、ユダヤ教徒が教会堂に入ることは許されていると考え、国外では実際に教会を訪れているが、後者の83%は、教会を訪れることは禁止、と信じている。
 キリスト教は「偶像礼拝」だと宗教的なユダヤ人では78%が信じているが、世俗的な人の66%は、そう考えていない。
 ラモン氏は、調査からは全体に前向きな姿勢が見られる、と言う。回答者の74%は、キリスト者は皆ユダヤ人への伝道者、ということには同意しないし、十字架を身に着けた人を見ても不愉快とは感じていない。さらに「世俗的なユダヤ人」の56%は、イスラエル国防軍に従軍しているキリスト者兵士が誓約する際に新約聖書を用いることが許されるべきだ、と考えているが、宗教的なユダヤ人の62%は「トーラー」だけを用いるべきだ、としている。
 キリスト教に関する教育については、「世俗的ユダヤ人」の68%が学校で教えるべきだとし、新約聖書も教えるべきとする人も52%いる。ただ正統派の73%、超正統派では9割が、どんな形であれ、学校でキリスト教を教えることには反対だ。
 キリスト教団体が新会堂建設のためエルサレムで土地を購入することを国家は阻止すべきだ、という意見は世俗派で64%、宗教的とする人では95%に達している。またエルサレムがキリスト教にとっても中心だということに同意する人は全回答者の半数だけだった。
 「今回の調査で前向きと評価できるところは、エルサレムの重要性で反目を招いたにもかかわらず、イスラエル人に寛容が見られたことだ。ただほとんどのユダヤ人にとって、エルサレムを他の人々と分かち合うことが困難なことは分かった」とラモン氏は指摘している。


◎日曜日を特別の日に、EUへ欧州教会会議が要請

 【CJC=東京】欧州教会会議教会と社会委員会がEU(欧州連合)に、日曜日を休息の日として保護するよう訴えた。EUは現在、労働時間の規制を検討中。
 デンマークのニューボアで会合した同委が「科学的調査では、日曜日が週の他の曜日よりも労働者の健康に密接に結びついていることが分かった」と3月16日、声明で明らかにした。
 同委は、労働者の健康保護と、労働と家庭生活のバランスを向上させるために日曜日を毎週の休息日とすることを期待、欧州議会とEU加盟27国が、このほど被雇用者が働ける時間を規定する新指針を締結したことを指摘して、「EUの法令によれば、日曜日は子どもや若者の休日として保護された。それで、週の他の曜日よりも自由な日曜日が家族や友人と過ごす日となり得る」と述べている。
 『生活・労働条件改善のための欧州ファンデーション』の最近の調査では、土日にスタッフが就業している団体の病欠など長期欠勤は、土日休業の団体の1・3倍であることが分かった。


◎フランスの物理学者デスパーニア氏にテンプルトン賞

 【CJC=東京】ジョン・テンプルトン財団が宗教の進展に貢献した人に贈る『テンプルトン賞』の2009年の受賞者がフランスの物理学者・哲学者のベルナール・デスパーニア氏に決まった。カトリック信徒、パリ大学(南)理論物理学名誉教授で、「現代物理学にとって実在とは何か」「量子力学における観測の理論」などの著書で知られる。
 「量子物理学の限界を量る代わりに、新たな科学的発展が、純粋な知識として、また私たちの存在と人間性の核心にまで行き着く問題に与える『無限』と『展開』を探った」と、同財団のジョン・M・テンプルトン・ジュニア代表が3月16日、ユネスコのパリ本部で授賞の理由を述べた。
 テンプルトン賞の発表は毎年ニューヨークで行われるが、デスパーニア氏が87歳と高齢で,夫人とも長く離れ難いところから、パリでの発表となった。
 賞金は100万英ポンド(約1億3500万円)と、個人に与えられる賞金としてはノーベル賞を超えているが、1973年に創設者の投資家サー・ジョン・M・テンプルトンもそれを意図していたと言われる。
 同賞は当初、マザー・テレサや米国の大衆伝道者ビリー・グラハム氏などに与えられていたが、最近では科学と宗教の関係を追究する科学者や神学者に授与されている。
 授賞は5月5日、ロンドンのバッキンガム宮殿でエディンバラ公が行う。


◎バチカンのホームページに中国語版

 【CJC=東京】バチカン(ローマ教皇庁)の公式ホームページ『聖座』に3月19日から中国語版が加わることになった。バチカン報道事務所が16日発表した。バチカンと中国は国交がなく、中国政府の対応が注目される。
 バチカンの公式サイトでは教皇ベネディクト十六世の発言や声明、バチカン関連の情報を読むことが可能。現在のイタリア語、英語、フランス語、スペイン語、ドイツ語、ポルトガル語、ラテン語の7言語に新たに中国語が加わる。
 現在、中国政府が公用としている簡体字と、香港、台湾などで使用されている繁体字の両方が使用される。
※参考=ホームページは https://www.vatican.va/


◎バチカン外務長官来日、中曽根外相と会談

 【CJC=東京】バチカン(ローマ教皇庁)国務省の外務局長のドミニク・マンベルティ大司教が3月15日から6日間の日程で来日し、同日、長崎市を訪問、原爆落下中心碑に献花した。局長は「原爆によって失われた多くの命と愛する人を失った方々の悲しみに思いを重ねる。私たちは平和に向けて努力することを誓う」と訴えた。
 局長はさらに長崎原爆資料館も訪問。16日には大浦天主堂、出津教会など教会群を訪れた。世界文化遺産を目指す教会群については「バチカンも多いに関心を持っている」と述べた。
 局長は17日に中曽根弘文外相と外務省飯倉公館で会談、東アジア情勢や世界的な金融危機などについて意見交換した。日本政府がバチカンから賓客として日本に招へいするのはマンベルティ局長が初めて。


《メディア展望》

  =カトリック新聞(3月22日)=https://www.cwjpn.com
★教皇=遺憾を表明=全世界の司教に書簡で=4司教の破門赦免で起きた混乱に対応
★第1回「交流プログラム」=教派超え、神学生集う=「出会い、気付き、励まされた」
★教皇、5月に聖地訪問=「平和祈る巡礼の旅に」
★「人身取引」テーマに=修道女のための外国人司牧セミナー
★日本キリスト教連合会定例会=教勢から「伝道」見直す
★正平協=ソマリア沖 自衛隊派遣に抗議

  =キリスト新聞(3月21日)=https://www.kirishin.com
★キリスト教学校教育懇談会=キリスト教教育の「成果」検証=卒業生・保護者も初めて発題
★教皇=イスラエル、パレスチナ訪問へ=ユダヤ教との和解進める狙いも?
★WCCコビア総幹事退任へ=次期候補出そろう
★VIP関西が10周年=20カ所以上で活動=「感謝の集い」
★広島・長崎の宗教者「劣化ウラン」被害学ぶ="核と共存できない"
★ゴスペル音楽院=入学予定1人=「今までにない危機」

  =クリスチャン新聞(3月22日)=https://jpnews.org
★賀川豊彦献身100年=「神は貧者のため奮闘している」=記念礼拝=神が召した目的を確認
★ここが聖書和訳の原点=横浜開港資料館で「開港と宣教師」展
★第5回日本伝道会議 参加登録開始=「危機の時代」の課題を反映
★賛美でたどる宣教150年=名古屋で記念フェスティバル
★子どもの叫びを受け止めた=坪井節子弁護士の番組に反響=FEBC「ひとりじゃないよ」
★聖公会司祭児童虐待事件=管区小審判廷が京都教区審判廷に差し戻し=「十分審理尽くすべき」=争点は和解目指したか


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