世界キリスト教情報

世界キリスト教情報

世界キリスト教情報 第947信(2009.03.16)

  • 「免償」が今や一致に貢献、とバチカンのカスパー枢機卿
  • ルーテル派教勢伸びる、欧米は微減
  • 教皇、ルフェーブル派司教の破門解消について説明
  • 米カトリック・クリーブランド教区は教会を大幅削減へ
  • 「マッチョ・オブ・ザ・イヤー」大賞はパリの大司教に
  • リバプール大聖堂の鐘楼から「イマジン」が...
  • 《ですくめも》
  • 《メディア展望》

◎「免償」が今や一致に貢献、とバチカンのカスパー枢機卿

 【ローマ=ENI・CJC】500年前、「免償」はマルティン・ルターと教皇の対立の根本にあったが、今では教会一致に貢献するとして、バチカン(ローマ教皇庁)キリスト教一致推進評議会議長のヴァルター・カスパー枢機卿が3月7日、機関紙ロッセルバトレ・ロマノで、正しく理解すれば「免償」はもはや信仰の障害にはならない、と指摘した。
 カトリックの教義では、教会が与える「免償」は、通常個人の善行や特別な敬虔に対して、煉獄の時を免除するというもの。これがプロテスタント側からすれば、カトリック信仰の最も問題な一つと考えられて来た。それに対し枢機卿は、むしろ悔い改めた罪人に教会を通して示される神の憐れみなのだ、と言う。
 「カトリック教会が今も免償を行っていることにプロテスタント側がいらだっていることは理解できる」と枢機卿。しかし「今日カトリックの歴史学者は、中世に免償の乱用があったことは認めている」と指摘した。
 カスパー枢機卿の発言は、2008年6月からの1年間と定められた「パウロ年」の間、ローマのサン・パオロ・フオリ・レ・ムーラ大聖堂に巡礼する信者に、有限の罰の全免償を与えられるとの教令を内赦院を通じ教皇ベネディクト十六世が発表したことに関連している。
 枢機卿は、16世紀には「免償」が現金引き換えで与えられるという乱用ぶりで、それが教会改革を図るマルティン・ルターの主要な理由であった、と指摘した。ルターは教会改革を求めた95カ条の提題を1517年10月31日、ウィッテンベルク城教会の扉に貼り出し、論議を呼び掛けたが、それが「宗教改革」にまでつながることになった。
 しかし枢機卿は、カトリック教会がトリエント公会議(1545〜1563)で「根本的に免償の実施を改革し、誤解を取り除いた」と言う。
 枢機卿は、自ら議長を務める「キリスト教一致推進評議会」が、ルーテル派、改革派の神学者と2001年にシンポジウムを開催した際に、免償についての現代のカトリック教会の理解を説明したことを指摘、「今日、免償はもう実際には16世紀にあったものではない」と主張した。
 1967年には、当時の教皇パウロ六世が免償の真実の意義を説明しており、これらは、すべての人間が救済(イエス・キリストを通してのみもたらされる)を必要としていることを示すものだ、と枢機卿は述べている。


◎ルーテル派教勢伸びる、欧米は微減

 【CJC=東京】ルーテル世界連盟(LWF、本部ジュネーブ)に加盟している教会の信徒総数は昨年6846万4091人で前年より0・21%、14万1792人増加した。
 アフリカ、アジア、ラテンアメリカ、カリブ海地域で伸びた一方、欧州と北米ではなお微減している。同連盟コミュニケーション事務所の年度調査によるもので、79国・地域の加盟140教会、準加盟10教会、1認可評議会を対象にしたもの。
 概算では06年6670万人、07年6830万人、08年6850万人という推移をたどった。
 同連盟非加盟の教勢が8355人(0・24%)増え350万9479人となり、それも含め、ルーテル派全体で見ると15万147人(0・21%)増の7197万3570人とほぼ7200万人。これも06年7020万人、07年7180万人から見て純増傾向にある。LWF非加盟教会の教勢は8355人(0・24%)増え350万9479人となった。
 アフリカでは15万8047人(0・9%)増の1728万7277人。最大教派の『エチオピア福音教会ミケーネイエスス』は14万3329人(2・9%)増え501万2486人だった。年間で最高の伸びを示したのはケニアの『福音ルーテル教会』で1万5000人(17・6%)増の10万人に、ルワンダの『ルーテル教会』も4276人(12%)増え4万人になった。
 アジアでは27万61人(3・26%)増の854万5479人。ただ非加盟教会も小規模ながら4万2563人(30・3%)増え18万2921人になっている。地域最大の『プロテスタント・クリスチャン・バタク教会』(インドネシア)は25万人(6・7%)増の400万人。最大の伸びはインドの『グッド・サマリタン福音ルーテル教会』で4万331人増え5万168人とほぼ5倍増加。ただこれは非加盟の翼下教会を登録した結果という。
 欧州全体で見ると、22万3252人(0・6%)減り3695万4216人。そのほとんどが加盟各教会の傾向と並行している。スウェーデン、フィンランド、デンマーク、ノルウェーの教会がいずれも停滞している中で、小規模ながらロシアの教会は5000人(6・7%)増え8万人になった。一方フランスの教会は1万400人減って2万9600人。ドイツの教会はルーテル派では世界最大だが、8万4567人(0・67%)減り1254万3179人になった。
 ラテンアメリカとカリブ海地域の教会は1万9076人(1・7%)増の112万3270人。その内加盟教会は1万5816人(1・9%)増え83万7890人だった。大きな伸びを示したのは地域最大のブラジルの『ルーテル信条福音教会』で1万4000人(2%)増の71万7000人。
 北米の全教会を見ると、11万4494人(1・44%)減の782万6192人。福音ルーテル教会(470万9954人)、非加盟の『ルーテル教会ミズーリ・シノッド』(238万3084人)もほぼ1・4%減だった。


◎教皇、ルフェーブル派司教の破門解消について説明

 【CJC=東京】教皇ベネディクト十六世は、「ルフェーブル大司教に叙階された4司教の破門解消について」と題した書簡を、司教らに宛て送った。書簡は3月10日付で、バチカン(ローマ教皇庁)広報局を通じ12日発表された。
 教皇は、故マルセル・ルフェーブル神父によって、教皇庁の承認なしに1988年叙階された司教4人の破門を解消した。
 今回の教皇書簡は、破門解消の目的を説明し、教会内の一致を強調するもの。教皇は書簡の冒頭で、今回の破門解消が教会の内外に大きな議論をもたらしたことを認めた。
 バチカン放送(日本語電子版)によると、司教たちの間で、この破門解消を今日の教会の課題の中でどのように位置づけるべきかという疑問や、和解に向けた今回の処置を良いものと捉えながらも、現代の教会の中でそれは急務の問題なのかという思いや、第二バチカン公会議以前に後戻りするものだという批判などが起きたことに対し、教皇は、決断の意図を理解し、教会内の平和に貢献するための助けとなるようにとの願いを表明している。
 教皇は、特にホロコースト(ユダヤ人虐殺)を否定したリチャード・ウイリアムソン司教を破門解消に含めたことを「思いがけず不幸なこと」と述べ、4司教に対する慈悲の行為が、これで全く違うものとして捉えられ、第二バチカン公会議で明確にされたキリスト教とユダヤ教の和解が全否定されたかのように見なされたことを、ただ深く遺憾なこと、と述べた。
 教皇は、今回の破門解消について、破門は人に及ぶもので組織に及ぶものではないこと、教会は破門という重い罰をもって、教皇との一致から離れた人々を悔悛と一致へと呼び戻すが、叙階からの20年、残念ながらこの目標にはまだ到達していない、と述べている。
 『聖ピオ十世会』は、教会法上の認可を受けておらず、教会の罰から解放されても、教義上の問題が解決しない限り、その聖職者たちは正当な方法で教会内の役務を果たすことができない、と教皇は明示した。


◎米カトリック・クリーブランド教区は教会を大幅削減へ

 【CJC=東京】教会員が少なくなれば、教会閉鎖もやむを得ない。少なくとも合併は必至。それぞれの事情が異なるとは言え、米カトリック教会オハイオ州クリーブランド教区は、人口の郊外流出の影響をもろに受けた上、移民国家米国ならではの事情を抱えたもの。
 同教区は信徒76万6000人。227教会(小教区)で構成されているが、閉鎖、合併を検討されている所は50箇所近くに上る。近くリチャード・レノン司教が対象教会に通知する予定。
 同教区の特徴として、ポーランド系やアイルランド系など移住元により形成された教会が51あり、有力な存在となっていたものが、郊外への人口流出が進み、会員数減少が止まらない。


◎「マッチョ・オブ・ザ・イヤー」大賞はパリの大司教に

 【CJC=東京】「女性にはスカートだけではなく、両耳の間の中身(脳・知性)が必要」との発言をしたパリ大司教アンドレ・ヴァントロワ枢機卿が「マッチョ・オブ・ザ・イヤー」大賞に選ばれた。
 AFP通信によると、仏女性人権団体『レシエンヌ・ド・ギャルド』(雌の番犬)が「国際女性の日」を2日後に控えた3月6日、女性に対して最悪のコメントを述べた個人に贈る賞として発表した。
 ヴァントロワ枢機卿は昨年11月、ラジオ番組で、カトリック教会での女性の雇用がなかなか進まない理由について「苦労するのは十分な職業訓練を受けた女性を見つけることだ」として問題の発言をした。
 批判にさらされた枢機卿は、発言について謝罪した上で、「教会は性別に関係なく個人的な能力を評価して(職員を)受け入れる」との意味だったと釈明していた。


◎リバプール大聖堂の鐘楼から「イマジン」が...

 【CJC=東京】英リヴァプールで結成され、世界的な人気を博したザ・ビートルズのジョン・レノンは宗教とは緊張関係にあった。1966年、ジョンがあまりの人気ぶりに「ビートルズはキリストよりも人気がある」と発言したことにより、キリスト教国では排斥運動が起きたほどだ。デモが行われたり、レコードやポスターが焼かれ、彼等の楽曲の放送を控えるラジオ局も出た。その後ジョンが発言を撤回したが、事態はすぐには収拾しなかった。
 それにも関わらず、英国国教会リバプール大聖堂の鐘楼がレノンの名曲「イマジン」を奏でることになった。レノンとキリスト教との関係だけでなく、この曲で「想像してごらん。天国は存在しない」などと歌われていることからしても、奇妙と思う向きも少なくなさそうだ。
 ただ同教会の広報担当は、「イマジン」の演奏で、教会とジョンの共通した願いである、平和運動の普及・促進に役立てれば、と語っている。
 「イマジン」のメロディーは「フューチャーソニック・フェスティバル」期間中の5月に、同教会の100・89メートルと「世界一背の高い」鐘楼から響きわたることになっている。


《ですくめも》

★長らくお休みしていた「情報レムナント」を再開します。ただタイトルの落ち着きが悪いと感じまして、その昔の「ですくめも」に戻します。
★日本経済新聞3月15日付け「中外時評」は塩谷喜雄・論説委員の執筆。「危機には世界知の科学を=前ローマ法王に学ぶ寛容」の表題通りの内容。進化論の容認、「聖骸布」の年代測定も認め、十字軍の行き過ぎを謝罪するなどにも的確に触れている。


《メディア展望》

  =カトリック新聞(3月15日)=https://www.cwjpn.com
★高松・溝部脩司教=教書で神学院閉鎖通知=教区のあるべき姿を提起
★日本駐在90年と列福を記念し新聖堂が完成=東京・教皇庁大使館
★大阪教区=共同宣教司牧について合宿=成果と課題分かち合う=会議減らす取り組みも
★教皇庁発表の統計=アジアで司祭と信者増える
★難民委=東京教会管区セミナー=フィリピン人司牧を考える=事例研究通し意見交換
★修道会の活動支える=半数は非信者=「手を貸す運動」の25年 

  =キリスト新聞(3月14日)=https://www.kirishin.com
★日本聖公会 初の管区審判廷=元牧師の性的虐待事件=不服申立の主張 全面的に認める=教区に"差し戻し"
★マレーシア・カトリック紙=「アラー」使用やはり禁止か
★「原則課税」の影響学ぶ=日宗連=「宗教と税制」でシンポ
★イラク派兵差止訴訟の会が解散="目的は達成された"
★カトリック、南部バプの教勢停滞=『米加教会年鑑』2009年版
★枢機卿会議議長=キュンク神父に反論=「具体的でない批判は不要」

  =クリスチャン新聞(3月15日)=https://jpnews.org
★「塩狩峠」から100年=メモリアルフェスタ=三浦文学ファン全国から結集
★パキスタン=高裁判事にキリスト者弁護士を任命=進むイスラム化に「前向きの兆候」
★神の「愛こそすべて」=日本ケズィックに英スプリングハーベストの風
★「君が代」斉唱などを強制しないで=卒業式前「取り組む会」が都教委に申し入れ
★「ピースリボン」裁判=4月にまとめの集会=裁判記録を刊行へ
★卞在昌氏、本紙編集長に抗議、謝罪要求


           ●世界キリスト教情報●ご案内
 ☆活動をご紹介 ........................... https://homepage3.nifty.com/cjc-skj/
 ☆既刊号をご覧頂くには .............................. https://cjcskj.exblog.jp/
 ☆記事検索は『教会と神学』(小原克博氏制作)をご利用願います。
            ........................... https://www.kohara.ac/church/

月別の記事一覧