世界キリスト教情報 第945信(2009.03.02)
- 米カトリックと南部バプテストの教勢が一転停滞
- ビリー・グラハム伝道協会が従業員55人レイオフ
- 中国「少数民族に厳しい文化、宗教の抑圧」=米国務省
- マレーシア、カトリック紙の「アラー」使用やはり禁止か
- パキスタンのラホール高裁判事にキリスト者任命
- 枢機卿会議議長がキュンク神父を批判
- 南アのブーサク氏が反ANC派から州知事選に出馬
- ベトナムのファム・ディン・トゥン枢機卿死去
- 《メディア展望》
◎米カトリックと南部バプテストの教勢が一転停滞
【CJC=東京】米教会協議会(NCC)編集でアビンドン社から発行した『米加教会年鑑』2009年度版によると、教会員の規模で第1位のカトリック教会と同2位の南部バプテスト連盟で教勢が僅かながら低下している。
カトリック教会の信徒数は6711万7016人、前年度版の数字より39万8000人(0・59%)減少、南部バプテスト連盟は1626万6920人で約4万人(0・24%)減少している。
09年度版には、編集者アイリーン・W・リンドナー牧師が、各教派の教勢算方法がまちまちなことについて触れている。
しかし今回の減少は、両派がこの所、着実に教勢を伸ばして来ただけに、教勢退潮を取り沙汰される主流派の仲間入りをするのか注目される。
09年版は、信徒数の多い25教派をリストアップしているが、その中で成長しているのは末日聖徒イエス・キリスト教会(モルモン教会=1・63%)、アッセンブリーズ・オブ・ゴッド(0・96%)、エホバの証人(2・12%)、クリーブランド神の教会(2・04%)の4派。
教勢の増減を神学的、社会学的に明確には出来ない、とリンドナー編集長。「教会に来る若者のライフスタイルに衝撃を受けている所が多い。礼拝に出席し、奉仕もするが、教会員になろうとはしない」と言う。
会員数の減少が最も激しかったのは合同キリスト教会(6・01%)。続いてアフリカン・メソジスト・エピスコパル・ザイオン教会(3・01%)、長老教会(PCUSA=2・79%)、ルーテル教会ミズーリ・シノッド(1・44%)、米福音ルーテル教会(1・35%)。アメリカン・バプテスト・チャーチーズ・USAは前回の1・82%から0・94%と減少幅を縮小している。
規模別の上位10派の順位は次の通り、前回と変わっていない。中には前回の数字のままのものもある。(括弧内は前回比、○は比較なし)。
(1)カトリック教会=6711万7016人(▲0・59%)
(2)南部バプテスト会議=1626万6920人(▲0・24%)
(3)合同メソジスト教会=793万1733人(▲0・80%
(4)末日聖徒イエス・キリスト教会=587万3408人(△1・63%)
(5)チャーチ・オブ・ゴッド・イン・クライスト=549万9875人(○)
(6)ナショナル・バプテスト・コンベンション=500万人(○)
(7)福音ルーテル教会=470万9956人(▲1・35%)
(8)ナショナル・バプテスト・コンベンション・オブ・アメリカ=350万人(○)
(9)長老教会(PCUSA)=294万1412人(▲2・79%)
(10)アセンブリーズ・オブ・ゴッド=286万3265人(△0・96%)
以下、14位・ルーテル教会ミズーリ・シノッド=238万3084人(▲1・44%)、15位・聖公会=211万6749人(▲1・76%)、16位・キリストの教会=163万9495人(○)、17・ギリシャ正教会アメリカ大主教区=150万人(○)、22位・合同キリスト教会=114万5281人(▲6・01%)などが続いている。
◎ビリー・グラハム伝道協会が従業員55人レイオフ
【CJC=東京】米宣教専門ANS通信によると、著名な大衆伝道者ビリー・グラハム氏が創設した『伝道協会』がスタッフの1割に相当する55人をレイオフする。
「経済情勢がこのままなら、出来る限りの緊縮財政が必要だ」と同協会のケン・ベイラン広報担当が語った。「寄付者が支えてくれた資金の良い管理者でありたい」として、レイオフなど支出削減で予算を15%減の8400万ドル(約82億円)に抑える、と言う。
地元紙『シャーロット・オブザーバー』によると、1年半も前に現会長のフランクリン・フラハム氏は、宣教活動を縮小しないためにも、コスト削減と効率化が必要だ、とスタッフに訴えていた。米経済の混迷は緊縮策の理由のごく一部だとしている。
◎中国「少数民族に厳しい文化、宗教の抑圧」=米国務省
【CJC=東京】米国務省は2月25日、世界各国の人権状況に関する2008年版の年次報告書を公表した。
報告書は、中国で人権状況が悪化した例として、新疆ウイグル自治区、チベットでの「少数民族に対する厳しい文化、宗教の抑圧」を挙げている。
◎マレーシア、カトリック紙の「アラー」使用やはり禁止か
【CJC=東京】イスラム教徒が国民の多数派を占めるマレーシアで、政府は、(2007年)イスラム教関係以外のメディアが「アラー」という言葉の使用を禁じていた。その後、制限事項を撤廃するなど出版規制が改定された。
カトリック教会の英字紙『ヘラルド』紙のローレンス・アンドリュー編集長は、発行許可更新の際に制限が付けられなかった、として使用したことが問題となった。アブドゥラ・ジン首相府相(宗教問題担当)は2008年1月4日、イスラム教徒以外が「アラー」という言葉を使用することは、許可更新後も引き続き禁止であり編集長の発言は誤解に過ぎない、と語った。さらに国内治安省(内務省)が2月、「イスラム関係者のみ使用できる表現」とし、禁止を命令した。アンドリュー編集長は「イスラム関係者以外の者にも使用が認められる」と主張。撤回を求めて裁判で争う方針を表明した。
政府側は、「アラーという表現を使用する権利の問題は裁判になじまない」と主張したが、ラオ・ビーラン判事は、裁判で争われるべき権利として同年5月5日、クアラルンプールで政府側の請求を退け、提訴を認めると判示した。
『ヘラルド』紙はこの1年以上、イスラム教関係組織やメディアの批判キャンペーンの対象になって来た。原理主義の影響が強まっていることにもよるが、政教分離型の憲法の下で、実際の司法レベルではイスラム教の影響が強いことも影響している。
政府は積極的に問題解決に当たるというよりも、穏やかな解決法を探ろうとしていた模様。
保安相が2月16日、「アラー」の使用を禁止を命令、裁判に訴える、と官報に掲載した後で、内務省は、キリスト教出版物は奥付または表紙に「キリスト教徒のみの出版物」と表記すれば、「アラー」の表記が許される、との指示を発した。
『ヘラルド』紙とクアラルンプール大司教区の提訴に対する第1回審理が27日に行われる直前の措置だった。同紙側は不十分ながら前進だ、と評価していた。
しかしシェド・ハミド・アルバル内相は28日、「官報掲載までに誤りがあったと思う。事態を徹底調査しなければならない」とメディアに語った。使用禁止は裁判所の最終判断が出るまでは有効だ、と述べている。
◎パキスタンのラホール高裁判事にキリスト者任命
【CJC=東京】米宣教専門ANS通信によると、パキスタンでキリスト者弁護士ジャムシャイド・レーマトゥラ氏がラホール高裁判事に任命された。連邦政府のシャーベズ・バッティ少数派担当相が、キリスト者であるところから、同氏の働きかけの結果と見られる。
ジア・ウル・ハク将軍の独裁政権下で1970年代末からパキスタンではイスラム化が急速に進められており、キリスト者が判事に任命されることは予想されていなかった。
レーマトゥラ氏は、今回の任命はパキスタンのキリスト者にとっても、またその他の少数派宗教者にとっても「前向きの兆候」だ、としている。
◎枢機卿会議議長がキュンク神父を批判
【CJC=東京】カトリック教会枢機卿会議議長のアンジェロ・ソダノ氏は2月25日、教会においては兄弟愛から出た批判は可能だが、具体的でない酷いものは何の役にも立たない、とバチカン放送で語った。チュービンゲン大学教授のハンス・キュンク神父が行ったインタビューを仏伊のメディアが報じたことに言及したもの。
キュンク神父は聖座(教皇庁)によって1979年、その授業内容がカトリック信仰と相容れないとして、カトリック神学の授業を差し止められた。今回、ルフェーブル派『聖ピオ十世会』の会員4人の破門を教皇ベネディクト十六世が解除するとの決定を批判したことにソダノ枢機卿が反論したもの。
キュンク神父は、聖職独身制や人工妊娠中絶などに関する教義や制裁をも非難している。これらの教義は教会を「少数派」の地位に置くことになる、と言う。
しかしソダノ枢機卿は、ルフェーブル派破門の解消に関して教皇は「神の聖なる教会を統治するため聖霊によってその座に置かれたものとして、歴史のこの重要な時に、一致に向かって大変な努力をされている」と言う。
同枢機卿は、キュンク神父のインタビューを読んで「困惑」した、と言う。「兄弟愛から出た批判は、聖ペテロ、聖パウロの時以来、教会では常になされるべきものだ。他方、酷い批判は、さらにそれが具体的でないなら教会のためにならない」と枢機卿は断言する。
枢機卿はさらに「教皇の働きについて詳細を報じて来たイタリア紙が、キュンク神父のインタビューに力をいれるのか理解できない」と感想を述べている。
◎南アのブーサク氏が反ANC派から州知事選に出馬
【CJC=東京】南アのアパルトヘイト(人種隔離政策)反対運動の闘士として知られたアラン・ブーサク氏(世界改革教会連盟元会長)が2月27日、西ケープ州知事選に『国民会議』(COPE)から出馬すると発表した。
ターボ・ムベキ氏(66)がジェイコブ・ズマ『アフリカ民族会議』(ANC)議長(66)との党内抗争に敗北、大統領辞任を余儀なくされた。ムベキ派議員がANCを離党し2008年12月に『国民会議』を結成した。
南アでは総選挙と地方選挙が4月22日に行われる。
ブーサク氏は出馬に当初消極的だったが、「国が必要としている変革をもたらすべき時であることを認めなければならない、と州内に熱望がある」ことを理由にあげた。
◎ベトナムのファム・ディン・トゥン枢機卿死去
【CJC=東京】ハノイ名誉大司教のファム・ディン・トゥン枢機卿が2月21日、死去した。89歳。1919年、ベトナムのビンホア生まれ。49年、司祭叙階。63年、バクリュー司教。94年、ハノイ大司教、教皇ヨハネ・パウロ二世により、枢機卿に任命された。2005年引退。
バクリュー司教時代に約30年にわたる自宅監禁生活を強いられた。バチカン放送(日本語電子版)によると、各小教区に信徒評議会を設け、共同体の信仰生活の管理を託したほか、結婚講座や青少年のためのカテキスタ養成学校などを設立するなど困難な状況下での福音宣教に尽くした。
《メディア展望》
=カトリック新聞(3月1日)=https://www.cwjpn.com
★2008年度臨時司教総会=列福式、シノドスなど報告=裁判員制度について勉強会
★聖職者は裁判員になれるか?=「刑を決める」ことに疑問も=司教ら、活発に意見交換
★"手作り"で列福感謝=広島教区が記念行事とミサ
★シグニス・ジャパン=菊地功司教を講師に=インターネットセミナー開催=横浜・鶴見
★名古屋教区=「あなたたちは福音」=障害者連絡会と社会福祉委員会=障がい者黙想会開く
=キリスト新聞(2月28日)=https://www.kirishin.com
★"死に場所求めてさまよう"=エホバの証人・元長老=「魂の叫び」を吐露=カルト救出全国セミナー
★カルヴァン生誕500年=改革神学研究所=東京で5月に記念講座
★混迷するテレビ伝道=H・シュラー氏 伝道番組の継続に危機=米
★"自由の原点に清教徒"=KGK主催「2・11集会」=岸本大樹氏が講演
★70人訳聖書ドイツ語版が刊行
=クリスチャン新聞(3月2日)=https://jpnews.org
★目指すは「みんなの居場所」=都会の隠れ家「Art Cafe Decision」
★第25回ペンライト賞=奨励賞に玉田耕治さん、峰岸敏美さん
★広がる在日ブラジル人支援の輪=聖書キリスト教会=NPOと連携=「ピース・プラン」の一環に
★在日フィリピン人も派遣切り=NGO「マハリカミッション」=住居確保に奔走
★召天後も開拓伝道=ダビデ・マーチン氏=遺言で伝道礼拝
●世界キリスト教情報●ご案内
☆活動をご紹介 ........................... https://homepage3.nifty.com/cjc-skj/
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