世界キリスト教情報 第931信(2008.11.17)
- ドイツ教会、ユダヤ人迫害反対出来ず、と反省
- 米聖公会イリノイ州クインシー教区が離脱3番目
- 『家の教会』指導者一家釈放される
- 教皇、中華民国の新大使と会見
- 教皇、ブラジル大統領と会談、協定に署名も
- ロシア正教会側は教皇と総主教のバクー会談を否定
- 《メディア展望》
◎ドイツ教会、ユダヤ人迫害反対出来ず、と反省
【フランクフルト=ENI・CJC】ドイツの教会は、ユダヤ系ドイツ人に対する1938年のナチスによる組織的攻撃70周年記念日の11月9日、当時多くのキリスト者が声を上げるという義務を怠ったと指摘した。
「1938年11月の組織的虐殺で、無防備な人々が辱められ、虐待され、殺された。礼拝の家は冒涜され、破壊された」と、プロテスタントとカトリック指導者は共同声明で語った。
「ユダヤ教会堂を燃やすというひどいイメージは私たちの記憶に焼き付いている」と、ドイツ福音教会(EKD)のウォルフガング・ユベール監督と独司教会議議長のロベルト・ツォリッシュ大司教は「11月の組織的虐殺はホロコースト(大虐殺)という、想像できない破壊と破滅の時への序曲だった。その結果をヨーロッパ、世界、特にユダヤ人コミュニティはなお耐えなければならないのだ」と述べた。「組織的虐殺は慎重に計画されただけでなく、何年にもわたる宣伝の、そして政治的な準備、公然の反ユダヤ主義扇動、法律による組織的な排除、冷酷な差別待遇、および迫害に続くものだった」と言う。
ユダヤ系ドイツ人とその財産に対するナチスによる一連の攻撃は「クリスタルナハト(水晶の夜)」とか「割られたガラスの夜」と呼ばれた。
ただユダヤ人中央評議会のシャルロッテ・クノブロッホ議長は、南ドイツ新聞(電子版)とのインタビューで「水晶の夜」という表現を避けるべきだ言う。極右の全国民主党の禁止を呼び掛けるインタビューの際に「クリスタルは何か美しいものを意味しているけれども、攻撃は組織的虐殺の一部だった」と語ったもの。
ベルリンでは、ゲオルク・ステルジンスキー枢機卿が、ユダヤ人迫害に対して示したカトリック教会の態度に遺憾の意を表明した。カトリック者の大半は黙っていた、と大司教は指摘した。
ニーダーザクセン州ブラウンシュヴァイクのルター派フリードリヒ・ウェーバー監督は、教会が、それらの声なき人のたために声を上げる務めに失敗した、と牧会書簡で語った。
各教会で読み上げられた書簡の中で、キリスト者が国家社会主義の反ユダヤ主義に共同責任があった、と認めている。ナチス時代の絶滅政策に対する態度を通して、キリスト者は「重い罪」を自身に科したと言う。
ユベール監督とツォリッシュ大司教は、人々「特にキリスト教会では、暴力には反対だが、恐怖と無力感に捕らわれた」と指摘した。またユダヤ人を支援したキリスト者の例としてベルンハルト・リヒテンベルク司祭とヘルムート・ゴルヴィツァー牧師の名を挙げたが、「2人の、さらに他のキリスト者や教会指導者の証しで、他のものの臆病なり失敗を相殺は出来ない」と述べている。
◎米聖公会イリノイ州クインシー教区が離脱3番目
【CJC=東京】米聖公会イリノイ州クインシー教区が11月8日の年次総会で同派離脱を決議した。聖書や同性愛などについて神学上保守的な教区の離脱が、カリフォルニア州フレスノのサンウォーキン教区とピッツバーグ教区に続きこれで3教区になった。さらにテキサス州フォートワース教区も続くものと見られる。キャサリン・ジェファート=ショリ総裁主教は8日「離脱を嘆き悲しむ」
との声明を発表した。
離脱を決めた3教区は、アルゼンチンに本拠を置く『サザンコーン(南半球)管区』の管下に入り、世界聖公会共同体(信徒7700万人)との交わりは維持することを図っている。
米聖公会側は、残留を望む教区民と教区の再編成を進めているが、数百万ドル(約数億円)に上る教区の資産をめぐって複雑な法廷闘争がサンウォーキン教区ではすでに始まっている。
米聖公会220万人の多くは、神学的な違いでの離脱を考えてはいないが、保守派指導者の中には、もう留まることができず、他国の同じ主張の共同体と関係を築くまでに進んだもの。
AP通信によると、ナイジェリア聖公会は米バージニア州に『北米アングリカン集会』と言う分離教区の連合体を結成した。離脱したピッツバーグ教区のロバート・ダンカン主教は、米聖公会とは別に、保守派による北米管区の結成に動いている。
◎『家の教会』指導者一家釈放される
【CJC=東京】中国の非公認地下教会『家の教会』指導者の1人、「バイク」ザン・ミンスアン牧師一家が10月所在不明となり、行方が懸念されていたが、11月8日になって中国当局から釈放されていたことが確認された。
米国に本拠を置く人権監視団体『対華援助協会』によると、牧師と夫人、その姉妹の3人は10月27日、河南省南陽の収容所から釈放された。10月20日に北京で開かれた家の教会連合の3周年記念式典に参列しようとした所を拘束された、という。
◎教皇、中華民国の新大使と会見
【CJC=東京】教皇ベネディクト十六世は11月8日、中華民国の新しい大使と会見した。
バチカン放送(日本語電子版)によると、ワン・ラリー・ユーユアン新大使は信任状提出のため、この日バチカン宮殿に教皇を公式訪問した。
教皇は、台湾においてカトリック信者は少数派ではあるが、人間性、正義、連帯のある社会のために、特に教育や医療、福祉の分野で活躍していることに言及されつつ、同国が信教の自由を保証していることを評価した。
教皇は、台湾と中国大陸間の最近の関係発展をバチカンは前向きに歓迎し、カトリック教会はあらゆる議論の平和的解決を推進し、どのような対話、和解の意志をも励ます所存であることを明らかにした。
◎教皇、ブラジル大統領と会談、協定に署名も
【CJC=東京】教皇ベネディクト十六世は11月13日、バチカン(ローマ教皇庁)を訪問したブラジルのルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルヴァ大統領と会談した。
バチカン放送(日本語電子版)によると、会談では、ブラジル国内状況について、いまだ貧困や疎外に苦しむ多くの人々への支援と、暴力や社会的荒廃と闘うために家族の基本的役割を擁護する社会政策が話題となった。また特にアフリカなど世界の倫理価値と共通善の推進に向けたカトリック教会と同国の協力が強調された。
会談後、教皇庁とブラジル間の協定の署名式が行なわれた。ブラジルにおけるカトリック教会の法的立場を明確にし、伝統的な相互の友好・協力関係を強化するもの。
◎ロシア正教会側は教皇と総主教のバクー会談を否定
【モスクワ=ENI・CJC】ロシア正教会バクーと近カスピ海教区のアレキサンデル主教が、来年9月アゼルバイジャンの首都バクーで宗教間対話が行われる際に教皇ベネディクト十六世とアレクセイ二世総主教が会見する準備が進行中、と語ったことが物議をかもしている。
RIAノーボスチ通信などが11月10日報じたところでは、「アレクセイ二世総主教と教皇ベネディクト十六世の歴史的な会談実現へ向けて、重要問題が議論されている」とアレキサンデル主教が語った。
世界宗教指導者のサミットは、2009年10月30日から11月2日にバクーで開催の予定。ベネディクト十六世とアレクセイ総主教双方とも招待されている、と各通信社は報じている。
RIAノーボスチ通信によると、アゼルバイジャン・カトリック教会の指導者ヤン・チャプラ氏は「そのような会談がバクーで行われることを望む」とは言うものの、実現するには相当な準備が必要だと強調した。
11日になってアレキサンデル主教は、発言が文脈を無視して引用されたり、誤訳された、と語った。理論上、教皇と総主教の会談が可能だと言っただけで、一度も、それがバクーで行われると断言してはいないと言う。
モスクワ総主教座の高位聖職者も、憶測を抑えようと懸命だ。「そのような会談の準備はまだ何もされていない」と対外教会関係事務局のイゴール・ヴィジャノフ局長は10日にインターファクス通信に語った。
総主教座対外関係部門のフセフォロード・シャップリン代表は、ロシア正教会は宗教間の対話を支持すると語ったものの、具体的に宗教指導者への招待はまだされていないと語った。
教皇と総主教が会談するためには、カトリック教会とロシア正教会の関係改善のための合意がなければならない、と同代表は言う。
「それが達成されれば、会談の時と場所を見つけることは非常に簡単だ。すでに各国から多数の提案が出されている」とインターファクス通信に語った。
モスクワ総大主教座は、カトリック側が否定しているものの、ロシア正教会の領域とみなしているところでカトリック教会が「改宗」を行っている、との不満を繰り返している。
《メディア展望》
=カトリック新聞(11月16日)=https://www.cwjpn.com
★みことばを読み 分かち合い 祈る=全国に広がる「聖書100週間」
★かかわりに変化も=11年前から実践=神奈川・片瀬教会
★パックス・クリスティ会長ガビノ・サバラ補佐司教=「九条アジア宗教者会議」出席で来日=米国の現状 講演で語る
★青年がつないだ「証(あか)し灯(び)」=いよいよ列福式へ
★臨床パストラル教育研究センター=「霊的(スピリチュアル)な痛み」テーマに=総会・全国大会を開催
=キリスト新聞(11月15日)=https://www.kirishin.com
★「ペトロ岐部と187殉教者」列福迫る=「証し人」覚えるための道案内="歴史顧みてこそ正当に評価"=信仰に生きた人の存在知らせる好機
★米大統領選=民主党・オバマ上院議員が勝利=建国以来初の黒人大統領誕生
★津田梅子記念会で木村利人氏が説教="光の子として歩もう"
★ブラジル移民100年で記念礼拝=「わたしたちは全世界の家族の一部」
★カトリック「世界司教会議」が示唆="女性も説教できる"
=クリスチャン新聞(11月16日)=https://jpnews.org
★大阪で記念大会=在日大韓基督教会100年=日韓両民族の和解の道具として
★タンバリンと踊りで主を賛美する祭典=セレブレイト・ジーザス2008
★日本福音功労賞=岡村又男氏、平山正実氏、H・スコーグランド氏らに=精神医療、世界宣教、各分野で福音宣教に功績
★WVJ=チャイルド・スポンサー募集キャンペーン=クリスマスまでに6千人
★美濃ミッション創立90周年で警戒=愛国運動「こころの日」推進=戦前の弾圧時に酷似=時代悪化の予兆
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