世界キリスト教情報 第928信(2008.10.27)
- 福音派がイスラム教国家の信仰を正教会と討議も
- キリスト教慈善団体の女性射殺、タリバーンが犯行声明
- 従業員への襲撃でパレスチナYWCAがイスラエル非難
- 教皇、ナチス時代の「ピオ十二世」列聖に慎重
- 「現代に共に福音を証しする」=アレクセイ二世総主教が教皇に書簡
- ベネディクト十六世の枢機卿時代までの著作全集出版へ
- 《メディア展望》
◎福音派がイスラム教国家の信仰を正教会と討議も
【ジュネーブ=ENI・CJC】(フワン・ミッシェル記)世界福音同盟(WEA)『国際宗教の自由研究所』の責任者トマス・スキルマッハー氏は、イスラム教国における福音派宣教師の働きについて、そこに数世紀にわたり存在して来た正教会と討議したい、との意向を明らかにした。
ジュネーブ近郊のシャヴァンヌ=ドボギスで10月18〜20日に開催されたイスラム教とキリスト教の対話の席上、述べたもの。イスラム教国での宣教師の活動を通し福音派キリスト教へ改宗する例が正教会や東方正統教会との緊張をもたらしている、と同氏は認めた。
「イスラム教から改宗した福音派キリスト者が、正教会信徒を福音派に転向させようとすることが緊張を生み出している。ここに問題があることは認める。それを討議したい。WEAとして、どうしたらよいか人々に教える権限を持ってはいないが、私たちの和解を達成するために、出来ることは何でもやってみたい」と語った。
WEAは全世界約4億2000万人のキリスト者を数える教会連合組織。
今回の会議は、イスラム教との対話に関して共通の神学的な理解を得ようとして世界教会協議会、WEA、カトリック教会が開催、教会指導者と専門家50人が参加した。
「このような会合以上に、イスラム教徒とキリスト者の間の個人的な関係の方が、両宗教間の対話を進められるという点ではより重要だろう」と、スキルマッハー氏は言う。その点、積極的な役割を果たせる福音派の働きとして"歓待"がある、と同氏は強調した。
イスラム教との対話に関する福音派の姿勢にはいくつかの特徴があると言う。
「一つは、伝道が穏やかに、礼儀正しく行われている限り、平和と共にある。よく知られているように伝道熱心な福音派の人たちに、そのことを語っている」と同氏。
他方で、「私たちの信仰を証しするには、迫害を必須のことと理解している。それで何か仕返しをするというのではないが、信教の自由といった権利擁護を放棄するものではない」と言う。
スキルマッハー氏は、WEAがいつも「迫害されるキリスト者の側」にいる、と語った。
WEAは現在、トルコ東部のマラティアで2007年4月18日に福音派キリスト者3人殺害事件の司法捜査に関係している。
WEAがドイツに設立したマルチン・ブーツァー神学校のロン・クブシュ教授は「犠牲者の1人は神学校の学生だった。裁判にも弁護士を派遣している」と、シャヴァンヌ=ドボギスで語った。
◎キリスト教慈善団体の女性射殺、タリバーンが犯行声明
【CJC=東京】アフガニスタンの首都カブールで、キリスト教慈善団体『SERVE』職員のゲイル・ウィリアムズさん(34)が10月20日午前8時ごろ、同市西部を徒歩で出勤途中、バイクに乗った2人組の男に数回撃たれて殺害された。現地の英国大使館が女性の国籍を確認したが、南アとの二重国籍を保持しているものと見られる。
アフガニスタン内務省ゼメリ・バシャリ報道官は、実行犯が犯行直後に現場から逃走し、動機も不明だとしているが、タリバンのザビフラ・ムジャヒド広報担当は同日、彼女がアフガニスタンにキリスト教を教えに来たとし、指導者が殺害を命じたと発表した。ウィリアムズさんをしばらく前から追跡していたという。
『SERVE』は英国に拠点を置き、アフガニスタンでは1980年から身体障害を持つ人たちなど難民を支援、同国内では外国人23人、アフガン人450人が活動しているという。
アフガニスタンでは8月にも、国際NGO(非政府組織)の『国際救済委員会』(IRC)の車が銃撃を受け、外国人スタッフら4人が死亡した。さらにNGO『ペシャワール会』の伊藤和也さん(31)が拉致・殺害されている。
◎従業員への襲撃でパレスチナYWCAがイスラエル非難
【エルサレム=ENI・CJC】(ジュディス・スディロフスキー記)パレスチナYWCAの従業員マイディ・フセイニさん(27)が10月18日夜、エルサレムの繁華街でイスラエル人暴徒により殴打された。
YWCAのマイラ・リゼク総主事とハナディ・スーダ=ユーナン会長は22日、共同声明で「この暴行にイスラエル当局は責任がある。現場にいた警察はマイディさんを助けようとせず、襲撃者を阻止もしなかった」と述べた。
「パートナーであるYWCAとYMCA、キリスト教組織、世界の全ての平和を愛する人々に、この粗暴で人種差別的な攻撃と、聖地でパレスチナ人に対し、政府が保護した人権侵害が続いていることに抗議するよう呼び掛ける」とリゼク氏はENI通信に語っている。事件に「衝撃を受けた」と言う。
イスラエル警察の報道担当は「アラブ人数人が当日の夕、中心街で発生した多数の抗争の中で軽傷を負った。警察は事件に関連して3人を逮捕した」と語った。
◎教皇、ナチス時代の「ピオ十二世」列聖に慎重
【CJC=東京】第二次大戦中、ナチスのホロコースト(ユダヤ人虐殺)に対し沈黙を守ったとしてユダヤ人団体から批判されている、当時の教皇ピオ十二世の列福を承認するか否かについて、現教皇ベネディクト十六世が二の足を踏んでいる、とAFP通信が報じた。
教皇は、10月5日からローマで開催した世界司教会議(シノドス)で、ピオ十二世を擁護するとともに、近々列福したいとの意向も示したことから、出席したユダヤ教の大ラビ、シェアー=ヤシュフ・コーエン氏は、聖書についてユダヤ教の理解を語った後、予定していなかったホロコーストに触れている。
ラビは「多くの人が、偉大な宗教指導者を含め、わたしたちの仲間を救おうとして声をあげることをせず、沈黙を守り、極秘裏に手を差し伸べる道を選んだ、という悲しく苦しい事実を忘れることは出来ない。わたしたちはそれを許せず、また忘れることは出来ない。あなたがたが、欧州でつい昨日に起きたことに対するわたしたちの痛み、わたしたちの悲しみを理解することを望む」と、教皇始め、枢機卿、司教ら253人の参加者を前にして語った。
ピオ十二世の列聖を申請したピーター・ガンペル神父が18日に伊ANSA通信に語ったところによると、列福の前段階である列福調査は5月8日には終了しているが、教皇は「ユダヤ人との関係を考慮」して手続き書類に署名をしていないという。
AFP通信によると、エルサレムのホロコースト記念館『ヤド・バシェム』に展示されているピオ十二世の顔写真には、「ピオ十二世はホロコーストに抗議しなかった」と非難する説明がある。神父はこれについて「歴史の明らかな改ざんだ」として、「教皇はできる限り早期のイスラエル訪問を希望しているが、このキャプションが外されない限りは実現しないだろう」と語った。
教皇庁は、このキャプションは、教皇がイスラエル訪問を検討するか否かを決定する材料にはならないとの声明を出した、とAFP通信が報じている。
◎「現代に共に福音を証しする」=アレクセイ二世総主教が教皇に書簡
【CJC=東京】ロシア正教会のアレクセイ二世総主教から教皇ベネディクト十六世に宛てた書簡が、バチカン(教皇庁)機関紙オッセルバトーレ・ロマーノに掲載された。
10月1日、ナポリ大司教クレシェンツォ・セーペ枢機卿はモスクワを訪問。アレクセイ二世と会見した際、教皇からのメッセージを手渡した。
教皇はこのメッセージの中で、ロシア正教会への深い親愛を表しながら、イエス・キリストへの信仰に結ばれ、闘争や苦しみに傷ついた現代世界に、尊重と平和のうちに生きるということを共に証しできるよう希望した。
バチカン放送(日本語電子版)によると、総主教はこれを受けて、教皇への返信をセーペ枢機卿に託した。総主教は、教皇への深い敬愛を述べつつ、両教会の友好と前向きな協力関係の発展に喜びを表明。これらの関係は両教会の共通の源と、世界の多くの問題に対する一致した立場に基礎を置いたものであると記した。
総主教は、「神は愛である」(1ヨハネ4・8)という福音の最も偉大な啓示をすべてのキリスト者の指針とし、この神秘の証しを通して今日の世界の不和と疎外を克服していく必要を示した。
◎ベネディクト十六世の枢機卿時代までの著作全集出版へ
【CJC=東京】教皇ベネディクト十六世の枢機卿時代までの著作の全集化の計画と、その第1巻(ドイツ語版)の刊行が10月22日、バチカン広報局で発表された。ドイツ語版はヘルダー社が発行した。
バチカン放送(日本語電子版)によると、「ヨーゼフ・ラッツィンガー全集」は、現教皇の大学時代から、枢機卿時代・教皇登位前の2005年までの著作を、未発表作をも含めて集成したもので、全16巻からなる。
第1巻と第2巻は、アウグスティヌスの教会をめぐる教説をテーマにした教皇の大学卒業論文(1953年)と、ボナヴェントゥーラの啓示についての教説の考察、第3巻はボンにおける講義「信仰の神と哲学者の神」(1959年)、第4巻は「キリスト教序論」(1968年)などが中心になっている。
第1巻のイタリア語訳は、バチカン出版局より来年の春頃の発行される。ドイツ語版およびイタリア語訳の全巻を6年以内に発行の予定。
《メディア展望》
=カトリック新聞(10月26日)=https://www.cwjpn.com
★教皇、"食糧不足"を非難=原因は利己主義と「投機」
★教皇=インドでの暴力終結を=列聖式で強く訴える
★横浜教区一粒会大会=司祭召命の土壌づくり=教区一丸となって努力
★札幌地区 使徒職大会に900人参加=殉教の意義など学ぶ=札幌教区
★聖書と教理 しっかりと学ぶ機会に「喜び」=パウロ年記念し、信徒養成の神学講座=広島教区岩徳ブロック
=キリスト新聞(10月25日)=https://www.kirishin.com
★"聖餐は「高価な恵み」"=アリスター・E・マクグラス講演=歴史と実践に学ぶ=パンとぶどう酒は"象徴""誓約"
★"避妊反対"改めて表明=教皇 結婚と家庭に関する国際会議で
★同窓会連合「楓の会」発足=東洋英和女学院=記念にチャリティコンサート
★献血者8万人達成=関西学院大学 クラブ活動で
★グローバルフェスタに9万人 キリスト教関係団体も参加
=クリスチャン新聞(10月26日)=https://jpnews.org
★「宗教者九条の和」=宗派超え平和行動=「時代の監視役としてあるべき」=憲法9条を日本の宝から「世界の宝」へ
★ロシア 米国務省の「宗教の自由」報告書を拒否
★聖学院大学総合研究所創立20周年=世界史の問題に神学で斬り込む=英・独・日の神学者らが戦後デモクラシー再検討
★BFPフェスティバル200=イスラエルに和解と平和を=最高運営責任者レベッカ・ブリマー氏講演
★独で初=福音派新学校を大学認可
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